清川卓史

清川卓史きよかわ たかし

朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
関心ジャンル:社会保障働き方ライフ

最新コメント一覧

  • 50代で認知症になった夫と「最後の家族旅行」 介護する妻の願い

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年7月6日9時55分 投稿

    【視点】 働き盛りの若年性認知症の方と家族にとって、介護問題とは介助にともなう心身の負担だけではありません。大きな課題になるのが経済的な不安だと思います。本人が仕事を失ったり、教育費の負担や住宅ローンを抱えたりしていれば、さらに切実です。  精神疾患にかかわる医療費の軽減制度(自立支援医療)、障害年金など、若年性認知症の人が利用できる制度があります。生活保護を利用している方もいます。こうした経済的な支援策は、介護の安心という観点からも欠かせないものです。  長期的な家計不安のなかにある若年性認知症の人や家族にとって、わずかであっても、社会保障の利用者負担の引き上げや補助縮小は大きな打撃となります。そのことを忘れてはいけないと感じます。

  • 2度目のひきこもり 「死ぬなら餓死」と言った37歳息子は母の日に

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年7月1日11時14分 投稿

    【視点】 高齢の親とひきこもる中高年の未婚の子ども。多くの人にとって無関係と言えない社会的課題となっています。こうした世帯では、子どもの生活費はもちろん国民年金などの社会保険料まで、高齢の親の年金から負担している事例が少なくないと聞きます。それなりの金額の年金を受け取っていると思われる高齢者世帯でも、無職の子どもを支える費用を含めれば、家計はぎりぎりで経済的不安を抱いているという実態もあると思います。  医療や介護などの社会保障では、高齢者であっても負担能力のある人には応分の負担を求める、という見直しが繰り返されています。やむを得ない方向性であるとは思います。ただ、記事で伝えられるような家族の切実な状況を考えれば、「負担能力がある人」を見極めるのは、それほど簡単なことではない。それを忘れてはいけないと改めて思います。

  • 認知症介護1人に年350万円 家族が担う「隠れコスト」減らすには

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月30日11時13分 投稿

    【視点】 全世代型社会保障構築会議が5月にまとめた中間整理においても、「家庭における介護の負担軽減」は柱の一つに掲げられています。認知症の人が増え、「独居」「老老」世帯が増えて家族の支える力が弱っていくなかで、「介護の社会化」はますます重要になってきます。  しかし一方で、家族介護の負担を今より重くしかねない制度見直し案が打ち出されています。認知症の人を含む要介護高齢者の急増と財政難を背景に、制度の持続可能性を高めるためにサービスを絞り込み、負担増を求める方向性です。  財務省の財政制度等審議会が公表した「歴史の転換点における財政運営」においては、介護保険サービスの利用者負担を原則2割にすること、ケアマネジメントの利用者負担導入、要介護1・2の「軽度者」へのサービス抑制につながる見直し(地域支援事業への移行)、などが並んでいます。いずれも家族介護負担の軽減と逆行すると言わざるを得ない内容です。  介護事業者や介護家族からは、要介護1・2は決して「軽度」ではない、などと強い反対の声があがっています。  「介護の社会化」と「制度の持続」という二つの要請の矛盾は、今後ますます深刻になっていくと思います。  忘れてはならないのは、公的介護サービスを強引に縮小すれば、その分は家族などが見えにくい負担、コストとして背負い込むだけだ、ということです。介護離職による労働力の減少、高齢者虐待の増加など別な問題を生じ、新たな社会的コストを増やすことにつながります。こうした視点を欠いた制度見直し論議は危険だと思います。

  • 月給半分以下 でも1千円差で支援対象外に タクシー運転手の見る夢

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月22日19時20分 投稿

    【視点】  コロナ禍のなかの2年間で、2人のタクシー運転手の方に取材をしました。いずれも60代の男性でした。この記事の男性と同様に、歩合制の給料が激減し、暮らしが立ちゆかなくなっていました。  おひとりは、タクシー運転手として仕事をしつつ、生活保護を利用。もうおひとりは自己破産の手続きをしました。もともと返済を続けていた民間ローンに加え、政府の特例貸し付け(緊急小口資金、総合支援資金)も上限額200万円まで借り入れて、返済の見通しが立たなくなったためでした。  記事で言及されているように、この特例貸し付けの返済がこれから大きな課題になることは間違いないと思います。政府の困窮者支援策の柱として利用が急増、貸し付け件数は325万件を超え、総額は約1.4兆円に達しています。  住民税非課税世帯は返済が免除されます。しかしその線引きはかなり厳しく、東京23区の単身世帯なら給与収入が年100万円を超えれば課税されます。わずかに課税ラインを超えるような所得層では、家計が窮迫したまま返済を迫られる人が出る恐れがあります。特例貸し付けの返済不安から、少しでも生活費を節約しようと、食料支援の列に並ぶ人がいる、とも聞きました。  コロナ禍は長期化しており、特例貸し付けを利用した人の多くが、返済で生活危機に陥る懸念があります。これはまさに、参院選で論じられるべき政治の課題だと思います。

  • ロシアに占拠され、病院にも行けず 僕のお父さんは裏庭に埋められた

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月21日10時36分 投稿

    【視点】  戦禍のなかで親を失う子どもたち。いまから七十数年前、戦後日本の戦争孤児たちのなかには、預けられた親戚宅や養父母宅で虐待的な仕打ちを受けたり、「浮浪児」と呼ばれて犯罪者予備軍のように白眼視されたりする子どももいました。多くの子どもが路上で命を落としました。  悲しいことですが、それが大混乱期の現実でした。親と一緒に空襲で死ねばよかったと思った、と振り返る元戦争孤児の声を取材で聞いたことがあります。  当然ながら、ウクライナと当時の日本では社会状況が全く異なります。同じことが起きると言っているのではありません。ただ、親を失った子どもたちが社会的に不利な状況に追い込まれやすいことは、戦後日本の歴史が証明しています。  「終わりなき悲しみ」を生きていく子どもたちに、さらなる苦しみが重ならないよう、心から祈っています。  ※記事で紹介されている子どもや関係者の個別の状況についてではなく、社会全体の課題としてコメントしました。

  • 「殺す気か?」 新電力崩壊、料金1カ月で2倍に 危機の町工場

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月20日9時57分 投稿

    【視点】 恐るべき状況だと思いました。記事後半で言及されているように、家庭用電気代も2倍になるような事態が万が一にも生じれば、ぎりぎりで家計をやりくりしている人の暮らしは破壊的な打撃を受けてしまいます。  生活が追い詰められたとき、家賃は節約をすることはできないし、光熱水費の圧縮にも限界があります。真夏や真冬でもエアコンを使わず電気代を切り詰めているという声を幾度も取材で聞きました。  そうしたなか、さらに電気代が高騰すれば、圧縮できるのは「食費」になってしまいます。考えるだけで重苦しい気持ちになります。  経済政策、社会保障政策、あらゆる政策的対応を用いて、「万が一」の危機的事態を防がなければならないと感じます。

  • 障害者施設で虐待、怒鳴りつけ平手打ち 工賃未払いや水増し請求も

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月15日12時33分 投稿

    【視点】 障害者施設や高齢者施設での虐待のニュースを目にすると、暗い気持ちになります。一部の施設の、一部の職員の問題だと思いたいのですが、構造的な要因にも目を向ける必要があります。  障害のある人や認知症の高齢者ら施設の入居者は、残念ながら自ら虐待被害を証言することが難しい場合が少なくないと思います。家族らが本人の訴えを聞き取ったり、面会などで異変に気づいたりするわけです。しかし単身世帯の増加によって、身寄りがなく、「家族の目」がない入居者がますます増えていきます。  職員同士のチェック機能も働くと思いますが、人手不足のなかで現場は余裕がなくなっています。とりわけ夜勤時など、人目の少ない時間帯のケアは、他の職員の目も届かないことが多いとも聞きます。  少子高齢化が進むなかでは、施設のケアが「ブラックボックス」化していくことは避けられません。この実態をふまえ、施設ケアの公的なチェックシステムの検討が急務だと考えます。同時に、ケアワーカーが良心的なケアを提供できるよう、労働環境を改善していくことが不可欠です。

  • 2年前には貯金90万円あったのに 弁当配布に並ぶ26歳女性の願い

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月15日11時21分 投稿

    【視点】 記事で紹介されている「TENOHASI」など、東京都内で支援活動を続けている団体の食品配布の列に並ぶ人の数は、過去最多水準が続いています。東京・新宿区の東京都庁前で活動する自立生活サポートセンター・もやいの場合、2年前の春と比べて約5倍の人数に急増しています。現場で取材をしていても、路上で暮らすホームレス状態の人以外に、食費の節約のために並んでいる人が明らかに増えていることを感じます。物価上昇はこうした傾向をさらに加速させる可能性があります。  さらに物価上昇は、民間支援団体の運営にも影響する心配があります。さらに値上がりが続けば、寄付金などの活動資金で購入できる弁当や食料品の数が減り、結果として支援できる人数も減ってしまいます。  生活困窮者自立支援制度など公助の仕組みのなかに「食」支援をより明確に位置づけ、国や自治体が「食」の緊急支援に本格的に乗り出すべき局面にあると思います。

  • 厚生年金の適用拡大を検討 企業規模要件を撤廃、飲食や理美容にも

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月8日12時4分 投稿

    【視点】 社会保険の適用拡大の必要性に異論はなく、取り組まねばならない大きな見直しであると考えます。そのうえで一言コメントしたいことがあります。  「社会保障の中心をなすものは自らをしてそれに必要な経費を拠出せしめるところの社会保険制度でなければならない」。1950年の社会保障制度審議会はこう提唱しました。保険料を負担し、それに見合ったサービス・給付を受ける。そうした社会保険の仕組みが社会保障の中核であることは今も変わりません。「勤労者皆保険の実現」は、その社会保険の機能をさらに強化するものと言えます。  雇用の非正規化などによって、社会保険のセーフティネットからこぼれ落ちる人が増えています。その一つの解決策が「適用拡大」です。ただ、社会保険の機能を徹底強化しても、それだけで「生活不安」「老後不安」を解消できるとは、私には思えません。  同じぐらい、あるいはそれ以上に力を入れて進めなければいけないのは、社会手当や公的扶助(生活保護)の拡充だと考えます。これらは戦後の社会保障のなかで社会保険の補助的な役割と位置づけられてきました。コロナ禍による経済危機のなかで、その安全網としての重要性が改めて示されています。  社会保険中心主義を変えるとまでは言わなくとも、従来よりも社会手当・公的扶助に力点を置く社会保障への転換が求められている局面ではないかと思います。  喫緊の課題と言えるのが、住宅支援の弱さの是正です。住宅手当(家賃補助)の創設など住まいの保障に関わる公的支援は、人生100年時代の日本で、若者から子育て世代、高齢者まで、すべての世代に必要な安全網です。  社会保険の適用拡大という大きな議論のかげで、社会手当や公的扶助の強化の検討が不十分なままになってはいけないと思います。  

  • 少子化の内実は? 子どもの数と親の学歴の関係、東大チームが分析

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月6日17時57分 投稿

    【視点】 政治や社会がきちんと向き合うべき研究成果だと感じます。スマートフォンを手に食料支援の列に並ぶ若者たち、フードバンクに食料支援を求める大学生。コロナ禍のなかの取材で見聞きした現実を思い返すと、インタビューで語られる「生活苦によって恋愛や結婚や出産をしたくてもできない若者たち」は、さらに増加していると考えざるをえません。  若い世代の経済的不安を解消する政策は、困窮者支援という枠にとどまらず、少子化対策という視点からも不可欠であることを、この記事を読んで改めて認識しました。学費の負担軽減、細切れで不安定な雇用の解消、住宅手当の創設などによる住居費負担のサポート。これらに本気で取り組まない限り、出生数の減少に歯止めはかからない、ということだと思います。

  • 弁当配布に過去最多の列、「現役世代増の印象」 路上生活者らの支援

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年6月2日10時2分 投稿

    【視点】 厚生労働省が定期的に実施している調査では、ホームレス状態の人の数は、コロナ禍のなかでも減少が続いています。しかし、その一方で、「TENOHASI」などの支援団体が実施する食料支援を利用する人の数は、過去最多水準に達しています。これは、コロナ以前には見えにくかった潜在的な困窮層が、新たに食料支援の列に加わっている、ということだと思います。  食料支援会場で取材をすると、スマートフォンを見つめながら順番を待つ若い世代がいます。ネットカフェで寝起きしながらアルバイトを続ける若者にも話を聞きました。女性の姿も目立ちます。年末年始、寒風のなかで幼い子の手をひいて並ぶ女性を見たときは衝撃を受けました。「仕事はあるが」「家はあるが」生活が苦しいので並んでいる、という人にも多く出会うようになりました。少しでも食費を切り詰めるために食料支援を利用しているのです。  食料支援に並ぶ人の増加は、生活保護「一歩手前」の困窮層への支援の欠如など、公助の「穴」を示しているものだと考えます。最低生活保障の構造的な欠陥を修正するような制度見直しが求められています。

  • 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」に男優賞 カンヌ映画祭

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年5月29日11時2分 投稿

    【視点】 新人監督の作品に贈られるカメラドールの次点に当たる特別表彰を受けた早川千絵監督の「PLAN 75」。描かれるのは、少子高齢化の進行で、75歳以上の高齢者が自ら安楽死を選択できる制度ができた近未来の日本です。  この長編作品の原型となった同タイトルの短編映画について、早川監督にインタビューしたことがあります。監督は当時「(国の制度は)一見すると困った高齢者を助けているようにすら見える。利用する人も、不安を抱えて一人で生きるよりもそのほうがいいと思って、選んでいます。それを計算して国は制度を提示する。みなが受け身で、あきらめに近い空気、あらがいたくても、あらがう先がわからない。私はそんな見えない『システム』が描きたかった」と語っていました。3年前のことです。  最近、「今後の介護保険をとりまく状況」という厚生労働省の資料を見ました。75歳以上の高齢者人口が急速に増えていること、とりわけ85歳以上の人口の増加が急激で2035年ごろまで一貫して増え続ける、というグラフが示されていました。そして、その次のページには、要介護認定率がとくに85歳以上で上昇するというデータがありました。そのときふと、この映画のことを思い出してしまいました。  映画が描く重苦しい空気感、高齢者に自己責任を求める流れは、これからますます強まる気がします。「映画の世界」と受け流すことのできない、不気味なリアリティーが「PLAN 75」という作品にはあります。

  • 国の特例貸し付け、使い切っても「仕事なし」 自己破産増える懸念

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年5月2日10時7分 投稿

    【視点】 特例貸し付けの利用が1兆3800億円という水準まで増えたという事実は、日本の困窮者支援の構造的な課題を浮き彫りにしていると思います。生活保護利用にはいたらないが生活が苦しい「一歩手前」の困窮層、住民税非課税ラインをわずかに上回って課税世帯となり、各種給付の対象から外れるボーダー層、これらの人々に対する支援が極めて乏しいのです。社会保障に「穴」があいている状態と言ってもよいと思います。  困窮者を対象に食料を配布する支援現場では、従来から多かったホームレス状態の人に加えて、非正規雇用などで仕事はしているが食費をぎりぎりまで節約するため食品配布の列に並ぶ新たな困窮層が増えている、と懸念されています。  記事のなかで識者が指摘するように、生活保護を教育費や家賃など部分的にでも支給できるようにする、住居確保給付金を期間制限のない住宅手当にするなど、困窮者支援の思い切った見直しが必要だと感じます。

  • 肛門に異物、数百回スクワット…神奈川の障害者施設で虐待疑い報告

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年4月27日11時32分 投稿

    【視点】 深刻な虐待が疑われる実態。徹底検証が必要であることは言うまでもありませんが、同時に、施設のブラックボックス化が年々進行してくという構造的な問題について、改めて考えさせられました。施設職員による虐待は高齢者施設でも多発しており、共通する課題です。  重い知的な障害のある人、認知症の症状が進行した人などは、虐待被害を自ら外部に訴えることは困難です。そのなかで、頼れる家族がいない利用者が少子化で増えていきます。また親やきょうだいなど身寄りがあっても、その家族も高齢化しています。施設内のケアに問題を感じても、それを家族がチェックしたり、通報したりすることが難しくなります。サービスの質を担保する行政のチェックも十分機能していないと言わざるをえません。  さらにコロナ禍による面会制限が、施設のブラックボックス化を一気に加速させています。  何が歯止めになるのか。民間団体が一部の高齢者施設で夜間の「抜き打ち調査」を実践しています。こうした取り組みを制度的に位置づけることも、真剣に考えるべき時期にきているのかも知れません。一方で、ケアを支える介護職員の厳しい労働環境を改善することも、虐待防止を考えるうえで、絶対に忘れてはいけない視点だと思います。

  • 親との別れの日のために 「8050」の親子に必要なサバイバル計画

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年4月22日19時58分 投稿

    【視点】 かつてお話を聞いた80代の男性は、「親亡き後」に50代の息子が1人で生きねばならない期間を約35年と見込んでいました。その期間を生きられる蓄えを自力で残そうと、ボーナスの半分は貯金してきた、と教えてくれました。切実でした。  2回目の対面取材の了解をいただいた直後、新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言が出ました。取材はキャンセルに。その後、男性は体調を崩されたようで、しばらくして連絡も途絶えました。コロナ禍のなかで、ご家族がどう過ごされているか、重く心に引っかかっています。  「サバイバルプラン」では、障害年金や生活保護の受給も検討されるとのことです。こうした公的支援につなぐサポートは、所得や資産が十分ではない家族にとって、とても意義あることだと思います。「最後の安全網」として生活保護があるといっても、その利用には様々なハードルがあるからです。  「8050」家族の強烈な「親亡き後」不安の背景には、この国の公助の乏しさ、利用しにくさがあると感じます。働くことが難しい人を支える公的な経済給付の選択肢が広がれば、家族の重圧はその分軽減されるのではないかと思います。        

  • 「クソどうでもいい仕事」なぜ増える やりがい搾取、のりこえるには

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年4月21日13時41分 投稿

    【視点】 無意味なのに高報酬なブルシットジョブ、命を支える不可欠な仕事なのに賃金が低いエッセンシャルワーク(ケア労働が多い)。指摘される「エッセンシャルワークの逆説」がなぜ生じるのかは、奥深い問いだと思います。  訪問介護サービスの厳しい労働条件は国の責任であるとして、ホームヘルパー3人が国家賠償を求める裁判を起こしています。提訴時から取材し、原告ヘルパーの訴えを聞いてきました。はっきりしているのは、介護を担うケアワーカーの待遇は、介護報酬という「公定価格」と連動している、ということです。「エッセンシャルワークの逆説」は、社会保障政策と関わっているのです。  ケアワークの経済的評価を高め、賃金を引き上げることができなければ、人口減社会のなかで、社会保障は財源不足の前に人材不足で崩壊してしまう、と思います。

  • 「家族だけでは無理」 小学生からうつ病の母支えたヤンググケアラー

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年4月7日18時18分 投稿

    【提案】 小学生のヤングケアラーであっても、どこにどんな支援制度や相談窓口があるか全然わからなくても、まず「助けて」「もう無理だ」とSOSを出せる仕組みが大切だと感じます。  ひとつのイメージとして、例えば、内閣官房の孤独・孤立対策のウェブサイトには、「あなたのための支援があります」として、簡単な質問に答えることで、状況にあった支援・窓口をチャットボットで探すことができる機能があります。改善したほうがいい点はあるとしても、使いやすいなと感じます。  18歳以下が対象の部分もあります。悩みの例として、「家族のお世話をしているので、勉強をしたり遊んだりする時間が少ない」という項目もあげられています。  子ども・若者が利用しやすい、こうした新たな支援をさらに拡充、発展させて、さまざまなルートで広報を徹底してほしいと思っています。  

  • 年金臨時給付金、政府・与党検討へ 一律5千円、参院選前の給付案

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年3月16日10時34分 投稿

    【提案】 低年金の高齢者支援が重要であることに異論はありません。しかし、コロナ禍のダメージから抜け出せず、生活再建の見通しが立たない現役世代が数多くいます。追加で打ち出す困窮者支援は「全世代型」であるべきだと思います。  コロナ禍のなかでの政府の困窮者支援の柱のひとつが、無利子の特例貸付です。借り入れの利用はすでに310万件を突破、総額も1.3兆円を超えています。借り入れ延長や再貸付まで利用して、これ以上借り入れることができない人が何十万人もいます。窓口となる各地の社会福祉協議会には「ほかに支援は」という相談が相次いでいます。いま切実に求められているのは、こうした生活保護一歩手前で苦境にある人々の支援ではないでしょうか。  貸付や臨時給付金などの応急対応だけではなく、社会保障全体の見直しが求められる局面だと思います。検討を求めたい支援の筆頭は、低所得層に対する家賃補助(住宅手当)の創設です。現役世代から高齢者まで、幅広い世代をカバーする困窮者対策となります。選挙に向けて、ぜひ議論を進めてほしいと期待しています。  

  • 訪問介護ヘルパーの感染リスクに加算を 署名3万7千人分集まる

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年2月18日12時33分 投稿

    【視点】 昨晩、関西のホームヘルパーの方々とオンラインでお話をしました。「新しい人が誰も来ない」「この20年賃金はほとんどあがっていない」「5年後に(訪問介護)事業所がどうなっているか、わからない」。コロナ禍のなかで介護の営みを支えるホームヘルパーたちが、こうした言葉を口にするほかない状況が、まっとうであるはずがありません。まさに介護危機です。  今回の訪問介護事業者有志による署名・要望は、尊重されるべき仕事を軽視してきた社会保障のひずみを私たちに突きつけています。コロナ禍のいまこそ、介護を含めたケアワークを正当に評価する社会に向けて舵を切らねばならないと思います。放置すれば、待ち受けるのは「介護の社会化」が崩壊したケアなき未来です。

  • 39歳ひとり暮らし、障害者の自立とは? 重度訪問介護の浸透目指す

    清川卓史
    清川卓史
    朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など
    2022年2月14日17時4分 投稿

    【視点】 この記事の内田さんと同じように、人工呼吸器をつけて暮らす女性を取材したことを思い出しました。「病院でしか生きられない。夢を見てはいけない」と言われた絶望と自己否定。「3日間でいい。外の世界で生きたい」「死んでもいい」と覚悟してアパートを借りた、と語ってくれました。19年前のことです。  「24時間介助が必要な私にも可能性に満ちた人生が送れる。『あなたにもできる』と伝えたい」。記憶に残る女性の言葉です。  勇気をもって自立生活を志す障害のある人に、こうした思いがバトンのように受け継がれてきたのだなと、記事を読んで改めて思いました。  重度訪問介護などのサービスの改善、拡充を障害のある人が求めるのは、もちろん自分自身のためでもあるけれども、本人のためだけではない。次の世代を生きる人が進む道を開拓する行為なのだ、と感じます。    

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