村瀬信也

村瀬信也むらせ しんや

朝日新聞記者=文化、将棋
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最新コメント一覧

  • 羽生善治九段と山崎隆之八段は「言語の棋士」 将棋担当・北野新太

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年6月17日19時1分 投稿

    【視点】記者にとって、山崎隆之八段は取材のやりがいがある棋士だと思います。「約2時間の間、こちらが質問をしたのは4問か5問。彼は、私が何を聞きたいかを初めから理解していたような様子で語り続けた」とこの記事にあるように、自らの思いを惜しむことなく存分に語ってくれるからです。キラリと光る言葉が次々と飛び出す話を原稿にまとめるのは苦労もありますが、腕の見せどころでもあります。以前取材した際、そう感じたことを思い出しました。 16日の白星で羽生善治九段が通算1500勝を達成しましたが、41歳の山崎隆之八段が挙げている661勝も素晴らしい数字です。現在45歳以下の棋士に限ってみてみると、通算600勝で対象となる「将棋栄誉賞」の受賞者は山崎八段と渡辺明名人(712勝)しかいません。初戦は黒星スタートとなった山崎八段ですが、2回戦以降の戦いぶりにも注目しています。

  • 永瀬拓矢王座、僕が掲げる旗は銅色 「少数派の子どもたちのために」

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年6月15日21時9分 投稿

    【視点】「才能はないとすぐに分かりましたけど、努力することはできたんです」 少年時代の永瀬拓矢王座がこう感じた背景には1人の棋士の存在がいます。2歳下の佐々木勇気七段です。 佐々木七段は2004年、小学生名人戦で年上の強豪たちを破って優勝を果たしました。小学4年での優勝は10年ぶりでした。小学6年だった永瀬王座は全国大会の出場権を争う東日本大会で敗れています。 3年前に取材した際、永瀬王座はこう話していました。 「自分が子どもの頃、一番の才能の持ち主は佐々木勇気氏でした」 「自分は将棋しかできなかった。でも、佐々木勇気氏は、書道がうまくて勉強もできるんですよ」 既にタイトル保持者となっていた永瀬王座の率直な言葉に驚いた記憶があります。 コンプレックスをバネにして努力する人は少なくないと思いますが、将棋一色の生活をここまで継続できる人は少ないと思います。トップ棋士の仲間入りを果たせるのは、熾烈な競争を勝ち抜いたプロの中でも、さらに一握りだけです。将棋界の競争の厳しさを知れば知るほど、永瀬王座の言葉の重みがより感じられます。

  • 深夜0時、渡辺明名人は2度繰り返した「誰もが指せる将棋ではない」

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年4月24日19時49分 投稿

    【視点】斎藤慎太郎挑戦者が採用した作戦は角換わり早繰り銀でした。渡辺明名人にとって、やや意外な戦型だったと思います。それでも渡辺明名人には「△6五歩」という用意の作戦がありました。この手が勝因になったわけではないと思いますが、斎藤挑戦者の予定が狂ったのは間違いありません。 渡辺名人は昨年、100万円を超すパソコンを買って、新しい将棋AIを導入しました。今期の名人戦開幕前のインタビュ-では「研究が効率良くできるようになった。(局面に対して)間違った認識で手を進めてしまうというミスがなくなった」と話していました。AIを活用して様々な局面を綿密に想定した上で対局に臨むのが渡辺名人のスタイルですが、「そんなところまで準備しているのか」と思わせるような本局の戦いぶりは、そのコメントの成果が具現化したものだったと言えるのかもしれません。 渡辺名人は、今年に入って王将は失冠したものの、棋王の防衛に成功。この名人戦も開幕2連勝としました。第2局から一夜明けての取材では、38歳の誕生日が23日に迫っていたことについて「キャリアの終わりが近づいている」と冗談めかして話していましたが、「渡辺将棋」は今もなお進化の途上にあるように思えます。

  • 最年少五冠 将棋・藤井聡太竜王が「相懸かり」を採用する理由

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年2月20日20時7分 投稿

    【視点】記事では書ききれなかったことを少し補足します。 「相懸かりは角換わりのような指定局面戦になりづらい」 藤井竜王からこのような答えが返ってきた時、思い出した対局があります。2年前の棋聖戦第3局です。初めてのタイトル戦だった藤井竜王は先手で角換わりを採用したものの、渡辺明棋聖(当時)の想定通りの展開になって敗れました。藤井竜王が相懸かりを指すようになったのは、この苦い経験も理由の一つと言えるかもしれません。 圧倒的な強さを誇る藤井竜王でも、他の棋士の研究を全て網羅することはできません。互いに想定しやすい局面ではなく、双方の総合力が問われる未知の局面に持ち込んで戦う方が、勝負の観点からも理にかなっているように思われます。藤井竜王がどんな考えで、どの戦型を選ぶのか。これからも注目していきたいと思います。

  • 桝太一アナ、日テレ退社し研究者へ 「的確に科学伝える方法考える」

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年1月25日14時6分 投稿

    【視点】放送の取材を担当していた頃、朝日新聞紙面に載るコラムの執筆をお願いしたことがあります。情報番組「ZIP!」の司会を務めることが決まったことを受けて依頼したものでした。全4回のコラムが載ったのは2011年3月。東日本大震災の発生直後という時期を意識した内容になるよう、修正を依頼したところ、多忙な中、とても誠実に対応していただいたことを記憶しています。 第1回のコラムには、「自然番組の制作に携わりたい」と考えてテレビ局を志望し、内定を得たものの、「自分みたいな人間がこの道に進んで大丈夫か?」と不安になったとつづられています。その一方で、「お前に足りない」と言われ続けたことを必要とするアナウンサーになることで「変われるチャンスかもしれない」と感じたそうです。「アナウンサーの中に、そういった考えを持つ方がいるんだ」と驚かされました。 今回の退社と研究者への転身は、「今までの自分を変える」と同時に「初心にかえる」ことでもあるのかなという印象を受けました。新天地でどのような活躍をされるのか、楽しみです。

  • 藤井聡太竜王が先勝、最年少五冠へ好スタート 将棋・王将戦七番勝負

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2022年1月10日22時54分 投稿

    【視点】終盤までどちらが勝つかわからない白熱した攻防の末、藤井竜王が勝利をつかみました。トッププロ同士ならではの名局でした。 将棋の対局で、持ち時間を使い果たして1手1分未満で指すことを「1分将棋」と言いますが、特に今回のような「双方1分将棋」は熱戦の証しと言えます。両者の対局で双方1分将棋になるのは早指し戦を含めて5回目ですが、いずれも藤井竜王が制しています。短い時間でも読みの精度がずば抜けて高い藤井竜王の長所が今回も光る形となりました。 一方で、先にリードを奪って逃げ切ることを得意としている渡辺王将にとっては、本局のような将棋は勝ちパターンではなかったと捉えることもできます(渡辺王将は過去のインタビューで、そうした趣旨のことを述べています https://digital.asahi.com/articles/ASP414TRJP3ZUCVL018.html?iref=pc_ss_date_article )。今回は、主導権を握りにくい後手番でもありました。「先手の渡辺王将がどんな作戦を見せるのか」「8時間の持ち時間をどんなペースで消費していくのか」。22、23日にある第2局では、そんな点に注目してみるといいかもしれません。

  • 斎藤八段は無傷の6勝、羽生九段は2勝で望みつなぐ 将棋A級順位戦

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年12月16日10時26分 投稿

    【視点】2期連続挑戦を目指す斎藤慎太郎八段の対局と共に大きな注目を集めたのが、羽生善治九段―山崎隆之八段戦でした。結果は羽生九段が制して今期A級2勝目。中盤戦の大きな山場と言える一戦でした。 羽生九段は永世名人の資格を持ち、1993年からA級・名人の地位を連続29期保っています。名人挑戦権を争うA級の座はトップ棋士の証しですが、今期の羽生九段は2回戦から4連敗。苦しい戦いが続き、B級1組に降級する恐れがあります。この日は、終盤で山崎八段がチャンスを逃したようで、羽生九段にとっては薄氷の勝利でした。 ただ、残留への道のりはまだ険しいと言えます。10人が総当たりで戦うA級の降級枠は成績下位2人。羽生九段は前期成績に基づく順位が8位と低く、残り3戦を1勝2敗で3勝止まりだとかなり危険です。1月の7回戦では、この日の勝利で6勝0敗として単独首位をキープした斎藤八段と対戦します。

  • 藤井聡太竜王、名人戦B級トップに 長考、逆転、寄せきって8勝目

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年12月3日23時9分 投稿

    【視点】藤井竜王が14時間超に及ぶ熱戦を制し、今年最後の対局を白星で終えました。6月以降、2日制の対局を含めて週2局のペースで対局をこなしてきましたが、今月の対局は本局だけ。厳しい戦いの日々も、これで一休みとなります。 藤井竜王は今年、叡王と竜王を獲得して四冠となりました。今年度中に五冠となる可能性もありますが、タイトルを増やすことは対局数の減少につながる可能性もあります。挑戦権を争うトーナメントやリーグの対局が減るからです。藤井竜王は竜王の他に王位、叡王、棋聖を保持していますが、現在進行中のそれらのトーナメントにはもちろん参加していません。来年1月以降は王将戦七番勝負と順位戦、朝日杯将棋オープン戦を戦いますが、今年夏から秋にかけて経験したようなハードスケジュールにはならない見込みです。 藤井竜王の今年度の成績は44勝9敗(未放映のテレビ対局を除く)。勝数は2位の28勝に大差をつけています。デビュー以来毎年クリアしている「勝率8割超」と過去2回記録している「50勝以上」を達成できるかどうかも見どころとなりそうです。

  • 「十九番勝負」の藤井聡太三冠と豊島将之竜王 7年前から紡ぐ物語

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年11月17日14時4分 投稿

    【視点】例年、秋の行楽シーズンには各地で様々な行事が行われますが、将棋界も例外ではありません。日本将棋連盟は11月17日の「将棋の日」に合わせ、毎年この時期に棋士の公開対局などを披露するイベント「将棋の日」を開いています。 江戸時代、将棋の家元は幕府の庇護を受けており、八代将軍徳川吉宗の頃からは江戸城内で腕前を披露する「御城将棋」が毎年11月17日に行われていました。将棋の日はこの故事にちなんだものです。日本将棋連盟が1975年に蔵前国技館で開いた第1回のイベントには、多くのファンが詰めかけました。今年は千葉県木更津市で開催され、渡辺明名人と羽生善治九段の対局などが行われました。 「向こうの方が明らかに終盤は強い。大変な相手です」 記事にあるように、豊島将之九段が藤井聡太竜王の強さをそう絶賛したのは、将棋の日に合わせて3年前に大阪で開かれたイベントでのことでした。棋士の思わぬ本音が聞けるのも、こうした場の良さと言えます。最近は、コロナ禍で減ったイベントがようやく元の姿を取り戻しつつありますが、依然として開催が困難なケースも少なくありません。来年の将棋の日の頃には、かつてのようなにぎわいが少しでも復活していることを願っています。

  • 将棋の藤井聡太三冠、王将リーグ3連勝で挑戦に前進

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年11月6日0時34分 投稿

    【視点】竜王のタイトル獲得まであと1勝に迫っている藤井聡太三冠が、王将の挑戦権獲得に一歩近づきました。とどまるところを知らない19歳の活躍に改めて目を見張りますが、今回は敗れた豊島将之竜王の成績に目を向けてみます。 豊島竜王と藤井三冠の公式戦での対戦は、豊島竜王が初対戦から6連勝しました。しかし、今年1月に藤井三冠が初勝利を挙げてから流れが変わり、二つのタイトル戦(王位戦と叡王戦)はいずれも藤井三冠が制する結果となりました。対戦成績は既に逆転しており、豊島竜王の9勝12敗となっています。 豊島竜王の今年度の成績は17勝16敗(未放映のテレビ対局を除く)で、トップ棋士としてはいま一つに思えます。しかし、対藤井三冠戦の3勝11敗を除けば14勝5敗で、むしろ好成績です。他の棋士との競争を勝ち抜いて藤井三冠とこれだけ多く対戦できること自体が、豊島竜王の強さを示しているとも言えます。 豊島竜王にはかつて、タイトル戦でなかなか勝てない相手がいました。羽生善治九段です。2014年の王座戦は2勝3敗、2015年の棋聖戦は1勝3敗で敗れましたが、2018年の棋聖戦を3勝2敗で制して念願の初タイトルを獲得しました。どうすれば羽生九段に勝てるかを必死に考え、AI(人工知能)を活用して地道な研究を積み重ねた末につかんだ栄冠でした。 今は藤井三冠に苦しめられていますが、豊島竜王もまだ31歳。敗戦を糧にして強くなる過程にあるように思えます。両者は今月12、13日に竜王戦第4局を戦います。後がない豊島竜王の戦いぶりに注目したいと思います。

  • 藤井聡太三冠が70手で快勝 豊島将之竜王との将棋竜王戦第2局

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年10月23日20時24分 投稿

    【視点】 藤井聡太三冠と豊島将之竜王の公式戦の対戦は今回が19戦目。当初は豊島竜王が6連勝しましたが、今年に入って藤井三冠が盛り返し、これで藤井三冠の10勝9敗となりました。以前は「藤井三冠は豊島竜王が苦手」と言われていましたが、今やそれがはるか昔のことのようです。  本局は70手で決着しましたが、これは2人のこれまでの対戦で最短の手数です。「相懸かり」という戦型は、双方の守備力が弱いまま早い段階で戦いになることが多いのですが、本局はまさにそうした展開になり、劣勢に立たされた豊島竜王は粘ることができませんでした。中盤以降、ほとんど「攻めの手」を続けて勝負を決めた藤井三冠の強さが際立ちました。初の竜王獲得、そして四冠に向けて大きな勝利です。  主導権を握りやすい先手番の本局を落とした豊島竜王は苦しくなりました。後手番の第3局で敗れると、シリーズの行方はほぼ決定づけられてしまいます。30、31日に福島県いわき市で指される第3局は、まさに負けられない戦い。豊島竜王がどんな作戦を用意してくるのかが注目されます。

  • 扇子に記した「雲外蒼天」 就位式後に明かした藤井聡太棋聖の思い

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年10月11日9時24分 投稿

    【視点】 将棋の公式戦が行われる将棋会館の売店の目玉商品の一つに、棋士の揮毫が入った扇子があります。通常は、タイトルを取るような活躍をした棋士のものが作られますが、藤井聡太棋聖はデビュー当初から驚異的な勢いで勝ち続けたため、まだ四段の時点で扇子が作られました。その時に選んだ言葉は「大志」。将来のさらなる活躍を予感させました。  七段の時の扇子にしたためた言葉は「飛翔」。そして、今回の言葉は「雲外蒼天」でした。大空に飛翔し、次は雲の外へ――。そんなつながりがあるとも受け取れます。「強くなることで今まで見えなかった新しい景色が見えてくる」。藤井棋聖はそう述べましたが、この扇子を見て「これからどんな景色を見せてくれるのだろう」と改めて期待が膨らんだのは私だけではないでしょう。  扇子は、棋士が対局をする際の定番アイテムの一つでもあります。トップ棋士の場合、自分の扇子を使うのが自然ですが、他の棋士の扇子を使う棋士もいます。9月20日、木村一基九段とB級1組順位戦を戦った際、藤井棋聖が手にしていたのは自分の扇子ではありませんでした。はっきりとは見えませんでしたが、どうやら渡辺明名人のものだったようです。盤上以外では強いこだわりを見せない藤井棋聖らしさが感じられました。

  • 村上春樹ライブラリー、早大に開館へ 「生きている間にできて緊張」

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月23日18時32分 投稿

    【視点】 早稲田大学早稲田キャンパスの4号館には、2001年まで将棋部の部室がありました。授業を受けているより将棋を指している時間の方が長い人、将棋を指すというより麻雀のメンツを探しに来ているという表現がふさわしい人など様々な部員がいました。その建物が、かつて学生に「占拠」されていたことは、村上春樹さんのこのスピーチを読んで初めて知りました。いま考えてみれば、政治経済学部がある「3号館」などと同様に番号が振られた大学の建物なのに、様々なサークル活動の拠点になっていたというのは何だか不思議な感じがします。村上さんが52年前のエピソードを紹介した4号館に「村上春樹ライブラリー」ができるというニュースに、この建物に足しげく通った1人として時の流れと「物語」を感じました。  ちなみに、村上さんはかつて、東京・千駄ケ谷の将棋会館の近くでジャズバーを経営していました。現在、その場所に入っている飲食店は、棋士が対局の際に食事の出前を注文する人気店の一つとなっています。

  • 「ずっと苦しかった」 藤井聡太三冠、棋王戦は敗退 斎藤八段の勝利

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月18日1時19分 投稿

    【視点】 先にリードを奪われ、追い上げ届かず敗れる――。藤井聡太三冠の数少ない負けパターンが見られた一局と言えそうです。藤井三冠は「途中からはずっと苦しかった」と思っていたとのこと。正確無比な終盤力をもってしても、逆転には至りませんでした。  今月13日に叡王を奪取して史上最年少で三冠となるなど勢いがある藤井三冠が、そのような展開を強いられることになったのはなぜか。推測ですが、あまり想定していない手順に誘導されたからなのだと思います。中盤では、「藤井三冠・2時間28分」「斎藤八段・41分」と消費時間に大差がつく局面もありました(持ち時間は各4時間)。トップ棋士との対戦が続く中、いつも準備万端で対局に臨んで勝つというわけにはいきません。藤井三冠は10月から豊島将之竜王と竜王戦七番勝負を戦います。今年度中に、その他にタイトル戦の挑戦権を獲得する可能性があるのは王将戦のみとなりました。  そして、当然のことながら、斎藤八段の勝利もたたえなければなりません。本局においては作戦のうまさだけでなく、終盤で藤井三冠の攻めの切っ先を見切る冷静さも光りました。斎藤八段は今年の名人戦で挑戦者になったものの、渡辺明名人に1勝4敗で敗れました。それでも、その後も崩れることなく白星を積み重ね、名人戦の挑戦権を争うA級順位戦では3勝0敗で単独トップに立っています。「西の王子」とも呼ばれる斎藤八段の活躍にも注目です。

  • 白玲戦、奨励会、将棋をする女の子へ 西山朋佳女流三冠が思うこと

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月12日19時33分 投稿

    【視点】 私が中学生の時、千駄ケ谷の将棋会館道場で1人の少女と対戦しました。終盤、私は自分が優勢だと判断していましたが、自分の玉の5手詰めを見落として敗戦。詰みに気づいた時のショックは今でも覚えています。  当時の私は二段で、相手は三段。順当な結果だったわけですが、「女の子に負けて悔しい」という気持ちもどこかにあったと思います。四半世紀前のことをこれだけ鮮明に記憶していること自体が、相手を強く意識していたことの何よりの証しと言えるでしょう。  自分の少年時代のことを思い出したのは、今回取材した西山女流三冠から「私に負けた時だけ泣く奨励会員がいた」という言葉を聞いたからです。泣いたというその少年は特別だったかもしれません。ただ、他の多くの奨励会員も、その場でただ1人の女子の存在を恐らく特別視していたのでしょう。西山女流三冠は、男子ばかりの奨励会の環境になじめない日々を送っていたそうです。  「なぜ、女性の棋士が誕生しないのか」。将棋を取材していると、そんな疑問の声に接することがあります。競技人口の差が大きいと思いますが、そうした男女の環境の違いも一因なのかもしれません。もし、将棋を続ける上で女性だけが感じる障壁があるとしたら、それは解消するべき課題だと思います。プロの道を志す思春期の頃は、当事者同士だとうまく解決できないケースもあるでしょう。そうした場合は周囲の大人が配慮し、適切なアドバイスで支えることが大切なのではないでしょうか。

  • ビジネスの世界に舞い降りた「棋神」 将棋AIが株価も予測

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月10日0時49分 投稿

    【視点】 将棋AIは、この十数年の間に飛躍的に強くなりました。棋士と対戦するイベント「電王戦」は大きな話題になりましたが、注目を集めるにつれて「将棋AIの開発は何の役に立つのか」という声も上がるようになったと記憶しています。Kishinの活躍は、その問いに対する一つの答えと言えるかもしれません。2012年、私は登場したばかりの「将棋ウォーズ」を取材して記事にしました。その頃にまかれた種が芽を出し、太く成長した幹から何本もの枝が伸びつつあるようです。  Kishinの強みが「実戦的であること」という点も興味深いです。理論だけでなく時間やその他の制約を考慮に入れないとうまくいかないのは、将棋でもビジネスでも同じです。将棋の指し手を読むプロセスが他の分野でも役に立つのかもしれないと思うと、将棋担当としてはちょっとうれしい気持ちになります。  Kishinがビジネスの分野で成功を果たす一方、将棋AIの進化は今も続いています。多くの場合、その作り手は「趣味」で開発に取り組んでいます。「強い将棋AIを作りたい。どうすれば強くなるのかを考えるのが楽しい」。将棋以外の分野で直接役に立たなくても、そんな姿勢で開発に打ち込む姿は魅力的に映ります。

  • マンション「管理拒否」増加 前代未聞のはずが 管理会社の事情は

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月7日23時12分 投稿

    【視点】 「まさに、うちのことだ」。記事を読んでそう感じました。数年前、私が住んでいるマンションでも、それまで管理組合が契約していた大手の管理会社から「来年の契約は更新できない」という通知が届くという出来事があったからです。世帯数が比較的少ないため、コストに見合わないと判断されたようでした。  当時の管理組合の理事長が新たに管理を代行してくれる会社を見つけてくれましたが、臨時総会ではそこに任せることに反対する意見も出て、なかなかすんなりとはいきませんでした。前述の大手の管理会社の対応に不満を感じましたが、記事にあるような管理コストの上昇などの事情を考えるとやむを得ないことなのかもしれません。「管理のあり方を見直す転換点が来ている」というマンション管理士の方のコメントに、改めてうなずかされました。

  • 将棋会館移転へ、クラウドファンディング募る 返礼品に羽生九段ら書の駒など

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月3日23時22分 投稿

    【視点】 東京の将棋会館は1976年、大阪の関西将棋会館は1981年に建てられました。棋士が普段の対局を戦う場所ですが、タイトル戦を始めとする大勝負の舞台にも度々なっています。藤井聡太二冠が加藤一二三九段とデビュー戦を戦ったり、公式戦の連勝記録「29」を作ったりしたのは東京の将棋会館、昨年初タイトルを獲得したのは関西将棋会館での対局でした。  将棋会館には、将棋道場や将棋の本やグッズを扱っている売店もあります。訪れたファンが棋士とすれ違うことも日常茶飯事です。将棋界はファンと棋士との距離が近いと言われますが、それを実感させられる場所でもあります。  現在の東西の将棋会館が建てられた際には、大山康晴十五世名人らが企業を足しげく回って寄付を集めました。今回はクラウドファンディングを活用して寄付を募ります。こんなところにも時代の移り変わりを感じます。

  • 藤井聡太二冠、棋王戦挑戦者決定トーナメントで初白星 3回戦へ

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月3日22時21分 投稿

    【視点】昨日書いたコメント、第1段落の「仮に挑戦権になったとしても」は、正しくは「仮に挑戦者になったとしても」でした。失礼しました。

  • 藤井聡太二冠、棋王戦挑戦者決定トーナメントで初白星 3回戦へ

    村瀬信也
    村瀬信也
    朝日新聞記者=文化、将棋
    2021年9月2日20時52分 投稿

    【視点】 将棋のタイトルは名人や竜王など八つあります。現在、叡王戦五番勝負を戦っている藤井聡太二冠は、8月末に竜王戦で挑戦権を獲得。今年度中に棋王戦と王将戦でも挑戦者になる可能性があります。「全て勝ち進めば六冠」となりますが、それをイメージするのは時期尚早でしょう。仮に挑戦権になったとしても、叡王を持つ豊島将之竜王、棋王と王将を持つ渡辺明名人からタイトルを次々と奪うのは至難の業です。  ただ、今の藤井二冠の勝ちっぷりが、それを不可能と思わせないほど傑出しているのも事実です。今年の夏は棋聖戦で渡辺名人、王位戦で豊島竜王を破って防衛を果たしましたが、スコアはそれぞれ3勝0敗、4勝1敗でした。タイトル戦は初出場から4回連続で制していますが、これは大山康晴十五世名人や、中原誠十六世名人、羽生善治九段ら歴代の棋士が達成できなかった戦後初の快挙です。今日は、売り出し中の23歳、斎藤明日斗四段との対戦でしたが、相手の攻めの切っ先を見切って着実な攻めを実らせる指し回しが見事でした。  13日には豊島竜王との叡王戦第5局が控えています。ここまで2勝2敗。勝った方がタイトル獲得となる大勝負には、大きな注目が集まりそうです。

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