佐藤優

佐藤優さとう まさる

作家・元外務省主任分析官
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最新コメント一覧

  • 「プーチンは皇帝か」 崩壊する帝国の未来のために ロシア作家寄稿

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年7月4日7時42分 投稿

    【視点】 シーシキン氏の政治的主張で最も注目されるのは以下のくだりです。 <新しいロシアが誕生するとしたら、1945年にナチ・ドイツが経験したように、国の内側からの生まれ変わりを経て初めて成されるだろう。ロシアの帝国的意識には、ヒトラー政権に見られたような、屈辱的なまでの完敗と「シュトゥンデ・ヌル」(訳注=ドイツ語で「零時」の意。ドイツにおけるナチ体制の崩壊に伴う戦後体制の出発点を表す)が不可欠だ。悪性のがんを切除するように、ロシア人から帝国を切り離さなければならない。ロシア帝国の最終的な崩壊なくして、私の国に民主的な未来はあり得ないのだ。チェチェンが独立し、他の民族や地域も追随するだろう。>  シーシキン氏が考えるロシアとは、ネーション・ステイト(民族国家、国民国家)の原則によるロシア国家の解体です。ロシアはモスクワ、サンクトペテルブルクなどを中心とする小国家になり、チェチェンのみならず、ダゲスタン、タタールスタン、バシコルトスタン、トゥバ、ヤマロ=ネネツなども独立国家となるというシナリオです。その結果、現在ロシアが位置するユーラシア空間は著しく不安定になります。これは、ロシアの政治エリートのみならず、民衆、知識人(作家を含む)の圧倒的大多数が最も忌避するシナリオです。シーシキン氏の考えがロシア人の中で主流になる可能性は皆無です。

  • 【詳報】ウクライナ侵攻27、6月21日~24日(日本時間)の動き

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年6月28日7時45分 投稿

    【解説】 6月24日、日本時間17:42(モスクワ時間11:42)に配信された<戦勝記念日に「軍国主義日本に対する勝利」の名称を追加法案 ロシア下院>というニュースは扱いは小さいですが、今後の日ロ関係にとって大きな意味を持ちます。  国際法的に第2次世界大戦が終結したのは日本政府代表団が東京湾において米戦艦ミズーリ号の上で降伏調印をした1945年9月2日です(8月15日は、前日に日本政府がポツダム宣言を受諾した事実を国民に知らせた日で、内政的意味は大きいですが、国際法とは関係しません)。しかし、スターリンは、この日ではなく翌3日を「軍国主義日本に対する勝利の日」としました。戦争終結の日を戦勝国であるソ連が恣意的に決めることができるという意思表示です。  スターリンは同2日にソ連国民に向けたラジオ演説を行い、<1904年の日露戦争でのロシア軍隊の敗北は国民の意識に重苦しい思い出をのこした。この敗北はわが国に汚点を印した。わが国民は、日本が粉砕され、汚点が一掃される日がくることを信じ、そして待っていた。40年間、われわれ古い世代のものはこの日を待っていた。そして、ここにその日はおとずれた。きょう、 日本は敗北を認め、無条件降伏文書に署名した。 このことは、南樺太と千島列島がソ連邦にうつり、そして今後はこれがソ連邦を大洋から切りはなす手段、 わが極東にたいする日本の攻撃基地としてではなくて、わがソ連邦を大洋と直接にむすびつける手段、日本の 侵略からわが国を防衛する基地として役だつようになるということを意味している>(外務省編『われらの北方領土2020年版 資料編』)と述べました。  ソ連崩壊後、ロシアが9月3日の「軍国主義日本に対する勝利の日」を軍の祝日から外したのは、スターリン主義から訣別するという国家意思を示したかったからです。9月2日ならば、第2次世界大戦が終結したという史実に基づく客観的な記念日です。対して、一日遅れの3日だとスターリンの歴史認識を追認するという意味になります。さらに「軍国主義日本に対する」という言葉を付け加えることで、対日関係におけるスターリン主義の正当化が決定的になりました。

  • ウクライナで米国人2人が行方不明 戦闘に参加、ロシア軍が拘束か

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年6月17日18時55分 投稿

    【解説】 1977年に採択されたジュネーヴ諸条約追加議定書の第1追加議定書第47条で、<傭兵は、戦闘員である権利又は捕虜となる権利を有しない>と定められています。すなわち傭兵に関しては捕虜の資格が認められないので敵側に捕まると殺人罪や傷害罪などの刑事責任を追及される可能性があります。6月2日、ロシア国防省スポークスマンのイーゴリ・コナシェンコフ少将は記者会見で「キエフ当局は傭兵を法的に擁護するためにウクライナ軍傘下の名簿に加え、ウクライナ国民であることを示す新しいパスポートを発給している。しかし、このようなことをしても傭兵を助けることにはならない」(6月2日「イズヴェスチヤ」電子版)と述べました。さらにコナシェンコフ氏は「今日までにウクライナの傭兵は約半分に減少した。すなわち6600人から3500人に減少した」と述べました。  6月9日、「ドネツク人民共和国」最高裁判所は、英国人2人、モロッコ人1人の傭兵に死刑を言い渡しました。死刑に怯え国際義勇兵がウクライナから逃亡することをロシアは促しています。  2人の米国人がロシア軍か「人民共和国」警察部隊に捕まると傭兵と認定され、厳しく処断される可能性があります。

  • 33歳のブラジル人→実はロシアのスパイ オランダで摘発、潜入防ぐ

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年6月17日9時32分 投稿

    【提案】 偽の履歴は、インテリジェンス機関の非合法な情報収集活動ではよく使われます。西側情報機関ではカバー・ストーリー(偽装物語)、ロシアの情報機関ではレゲンダ(伝説)と呼ばれます。偽の履歴の作り方については、モサド(イスラエル諜報特務庁)がエジプトに派遣した有名なインテリジェンス・オフィサーだったウォルフガング・ロッツ氏の『スパイのためのハンドブック』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)「第4章:第二の皮膚」で詳しく述べられています。  ロシアの対外諜報に関しては、SVR(対外諜報庁)とGRU(軍参謀本部諜報総局)が行っていますが、両者の間で仕事の調整は行われていません。SVRは十年以上かけて諜報機関員を養成しています。対してGRUは促成教育を行っているようです。そのため工作が乱暴です。<摘発されたスパイの「自分史」は、ブラジルで使われるポルトガル語で書かれていたものの、文法上のミスが複数あったとも指摘した>ということですが、促成教育だからこういう初歩的なミスをしたのだと思います。一級のスパイならば、偽の履歴が簡単に綻びることはありません。

  • ゼレンスキー大統領「持ちこたえてる」東部攻略目指すロシア軍に抵抗

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年6月10日19時3分 投稿

    【視点】 ウクライナのゼレンスキー大統領は、<セベロドネツクの攻防しだいで「ドンバスの運命が決められる」>と述べている由ですが、論理的に考えるとロシアがセベルドネツクを制圧すると「ドンバスの運命はロシアに支配されることになる」ということになります。  ドンバス(ウクライナのルハンスク州とドネツク州)の戦闘でロシアが攻勢を強めるにつれて、米国の政策が変化してきました。6月に入ってからバイデン政権からウクライナの勝利とロシアの戦略的敗北という話が出なくなりました。対して戦闘の終結に関する声が聞かれるようになりました。バイデン大統領自身がこう言っています。 <記者:和平を達成するためにウクライナは領土を諦めなくてはならないか。  バイデン:私は当初から、ウクライナに関しては同国が参加することがなくして、何かを決めることはできないと繰り返し述べている。あそこはウクライナの人々の土地だ。私は彼らに何かしろとは言えない。ただし、いずれかの時点で紛争は交渉によって解決されなくてはならない。そこに何が含まれるかについては、わからない>(6月3日「ワシントン・ポスト」)  バイデン氏は交渉による解決の必要性については強調しますが、内容についてウクライナが譲歩する可能性を排除していません。  また、6月2日の「ワシントン・ポスト」ではホワイトハウスとの関係が深く、歴代米政権のメッセンジャーの役割を果たしているコラムニストのデイヴィッド・イグナチウス氏が、朝鮮戦争の例にならってウクライナ戦争の凍結を図るべきだと主張しました。ウクライナは分断国家になるが、制裁をかけ続けることでロシアとその影響下にあるウクライナは北朝鮮化し、残りのウクライナは繁栄するというシナリオです。<バイデンはウクライナにおける長期にわたる限定された戦争を準備している。(朝鮮停戦協定時に)多くの米国人には同盟国である勇敢な韓国が敗れたように見えた。しかし、平和条約が存在しないにもかかわらず(国際法的には戦争が続いているということ)、今日、韓国は世界の経済的成功例の1つになっている>。このような米国の対ロシア政策の変更につながる要素を見逃してはいけないと思います。

  • ウクライナは譲歩すべきか 元米高官らの発言、ゼレンスキー氏が批判

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年5月31日9時14分 投稿

    【視点】 キッシンジャー氏の発言とニューヨーク・タイムズの論説は、ロシアのテレビでも大きく取り上げられ、繰り返し放送されました。その際には、リアリズム外交を体現するキッシンジャー氏と自由、民主主義の価値観を重視するリベラル派のニューヨーク・タイムズの両紙がバイデン大統領の対ウクライナ政策を批判しているとのコメントが付されました。  ウクライナの東部と南部に住むロシア語を解する人々は、ロシアのテレビを見ています。このニュースが国民に与える動揺を危惧して、ゼレンスキー大統領は、キッシンジャー氏とニューヨーク・タイムズを名指しで批判したのだと思います。  今後も地政学を根拠に米国のウクライナへの関与に限界を設けるべきだという声が、米国のエリートから出てくるでしょう。ロシアはそのような米国人の見解をウクライナに対する情報戦で最大限に活用します。

  • 「ロシア」「中国」なしの共同声明 インドをつなぎとめる苦心の跡

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年5月25日8時55分 投稿

    【視点】 日本政府は、クアッドの意義についてこう説明しています。<日米豪印は、基本的価値を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化にコミット。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、ワクチン、インフラ、気候変動、重要・新興技術などの幅広い分野で実践的な協力を進めてきており、4か国の間では、地域に前向きな形で貢献していくことの重要性で一致している。>(日本外務省HP)。この規定によると、クアッドは自由や民主主義という基本的価値観を共有した協力体制ということになります。ならばロシアによるウクライナ侵攻に対して、クワッドとして明確な立場表明をしなくてはなりません。しかし、24日に発表された共同声明において、<我々は、ウクライナにおける紛争及び進行中の悲劇的な人道的危機に対するそれぞれの対応について議論し、そのインド太平洋への影響を評価した。4か国の首脳は、地域における平和と安定を維持するという我々の強い決意を改めて表明した。我々は、国際秩序の中心は国連憲章を含む国際法及び全ての国家の主権と領土一体性の尊重であることを明確に強調した。我々はまた、全ての国が、国際法に従って紛争の平和的解決を追求しなければならないことを強調した>(外務省HP)と記されるだけです。ロシアに対する非難は含まれていないのみならず、侵略という言葉も避けています。インドにとって自由や民主主義という基本的価値観に対する共鳴というのはあくまでも建前に過ぎません。本音では、軍事的、経済的に急速に国力をつけている中国に対して日米豪と連携して対抗することをインドは追求しています。クアッドを日米豪が民主主義対権威主義という価値観の対立軸で考えているのに対して、インドは地政学的な勢力均衡の原理で考えています。ウクライナ戦争に対してインドが日米豪と共同歩調をとることは今後もないでしょう。

  • 米ロ国防相が侵攻後初の電話協議 ロシア側の発言に変化なく

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年5月15日15時16分 投稿

    【視点】 5日13日の米ロ国防相電話会談で、「米側は即時の停戦を求めた」という報道が事実ならば、米国は錯綜したシグナルをロシアに送っていることになります。なぜなら、即時停戦が実現すれば、常識的に考えて、停戦ラインは現在、ロシア軍と「ドネツク人民共和国」人民民警部隊と「ルガンスク人民共和国」人民民警部隊が実効支配している領域とウクライナ政府が実効支配している領域の境界になるからです。これでは、ウクライナのゼレンスキー大統領が主張するルハンスク州、ドネツク州、クリミアをウクライナの主権下に置くという目標は達成できなくなります。4月25日、ロシアのウクライナ侵攻を受けた米国の目標について、オースティン氏は「ロシアが、ウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望む」と述べました。5月8日のG7首脳会談で採択された共同声明では「ウクライナに対する戦争でプーチン大統領が勝利しないという決意でわれわれは一致している」と述べています。即時停戦にロシアが応じてしまえば、「プーチン大統領が勝利しない」「ロシアが、ウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化する」という目標の達成も難しくなります。米国がこのようなシグナルを出したことで、ロシアは軍事力による実効支配領域の拡大に一層力を入れることになると思います。

  • 実は「小物」だとばれたロシア 負けられない戦いはどこに帰結するか

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年5月9日14時58分 投稿

    【視点】 ウクライナとロシアの戦争に関して、今後のシナリオは3つあります。  第1は、ニクシー氏や大多数の日本人が望んでいる、ウクライナの果敢な抵抗によって、ロシア軍がドネツク州、ルハンスク州、クリミアを含む同国全域から放逐されるというシナリオです。  第2は、ロシア軍がウクライナ全域を制覇し、ゼレンスキー政権が崩壊し、ロシアと融和的な新政権が生まれるというシナリオです。  第3は戦線が膠着状態になり、ウクライナが分解するというシナリオです。ウクライナの東部と南部はロシアに併合され、西部のガリツィア地方に新欧米的なゼレンスキー大統領、もしくはその政権を継承する政府ができ、それ以外の地域(中央部)には中立国ウクライナが生まれる可能性があります。  いずれのシナリオの可能性が強くなるかは、現在、ウクライナ軍とロシア軍・ドネツク人民警察部隊が死闘を展開しているドネツク決戦の結果次第です。

  • カナダ、ウクライナへの軍事支援を強化 榴弾砲を提供し使い方教える

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年4月29日17時21分 投稿

    【視点】 米国は、ウクライナにおける戦争をできる限り長引かせて、ロシアのプーチン政権を弱体化させることが、民主主義体制を維持するために不可能と考えているようです。ロシアとしては米国の武器供給の通路となっているポーランドに対する警告を強めています。4月25日午後10時55分(モスクワ時間、日本時間26日午前4時55分)から約1時間放映されたテレビ「第1チャンネル」(政府系)の番組「グレート・ゲーム」で、ロシアのラブロフ外相が米国とポーランドに対して重要なメッセージを発しました。ラブロフ氏は現状が1962年のキューバ危機よりも緊張しているとの認識を示しました。ラブロフ氏は、「キューバ危機の時期には、『文書化された』ルールは多くなかった。しかし、行動上のルールは十分明確だった。モスクワはワシントンがどう行動するかを理解していた。ワシントンもモスクワがどういう振る舞いをするかを理解していた。現在はルールがほとんど残っていない」と述べました。さらにラブロフ氏は、「すべての人が、いかなる場合においても第三次世界大戦を起こしてはいけないと『呪文』を唱える。この文脈でゼレンスキー・ウクライナ大統領とそのチームによる挑発について検討しなくてはならない。この人たちは、ウクライナの政権を守るためにNATO軍のほとんどを投入することを要求している。そして、いつもキーウに武器を寄こすようにと言っている。これが『火に油を注ぐ』ことになる。この人たちは、武器の供給によって、紛争をできるだけ長引かせ、ウクライナの最後の一兵までロシアと戦わせ、少しでも多くロシアに犠牲が生じることを望んでいる。武器を供給し、この方向でプロパガンダを展開する(ポーランドを除く)すべての指導者は、NATO軍を派遣することはないと述べている。ワルシャワは、モラビエツキ首相の口を通じてウクライナに『平和維持軍』なるものを提案しており、平和維持軍の旗の下で軍人の派遣に関心を持っている」と述べました。ラブロフ氏は、ポーランドが「平和維持軍」の名目でウクライナに派兵すれば、ロシアは、それを敵対行動とみなし、ポーランドを攻撃するので、第三次世界大戦に発展すると警告を発しています。

  • ロシア外交官は「ペルソナ・ノン・グラータ」 日本政府が追放決定

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年4月10日12時4分 投稿

    【提案】ペルソナ・ノン・グラータ(PNG)は、外交的に相当重い措置です。日本政府がほんとうにロシア外交官にPNGをかけたとは、過去、外務省で対ソ連外交、対ロシア外交を担当した私の経験からすると、考えられません。「一定の期日までに出国しないと、別の措置を取るかもしれない」くらいのことは、追放の際に言いますが、明確にPNGに指定することは考えがたいです。日本政府がロシア外交官にPNGをかけたという事実があるのか、精査する必要があると思います。

  • 米国務省高官「北朝鮮が核実験する可能性」 故金日成主席の生誕記念

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年4月7日8時55分 投稿

    【視点】 3月28日、モスクワから私のところに「最終確認の情報ではないが、おそらく金正恩はまもなく(4月の可能性もある)、核計画の再開を公式に宣言するかもしれない。その場合、年内に新しい核実験を実行し、これまでの交渉路線が完全に終わったこと、米国との対話再開はゼロから、北朝鮮が決める条件においてのみ始められることを明確に伝えるという」という情報が入ってきました。SVR(ロシア対外諜報庁)は、北朝鮮のインテリジェンス機関と協力関係にあります。北朝鮮がロシアを通じて核実験再開のメッセージを流してきたと私は受け止めています。

  • ロシア軍の一部はベラルーシへ、米国防総省「撤退ではなく再配置」

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年4月1日7時9分 投稿

    【視点】ロシアは戦線をジョージアに拡大しようとしています。3月30日夕刻のロシア「第一チャンネル」(政府系テレビ)のニュース番組によると「南オセチア共和国」のアナトリー・ビビロフ大統領が「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明しました。「南オセチア共和国」はロシア軍の介入により2008年にジョージアからの一方的独立を宣言した「未承認国家」です。「未承認国家」と言っても国連加盟国では、ロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウル、シリアの5か国が承認しています。国民投票が行われれば、圧倒的多数の賛成でロシアとの再統一が決定されることは必至です。ジョージアは激しく反発し、軍事介入する可能性もあります。プーチン大統領はジョージアが軍事介入しても力で叩き潰し、「南オセチア共和国」を併合する腹を固めているのだと思います。ロシアによる領土拡張がジョージアに及ぶのは時間の問題と私は見ています。 訂正:3月31日のコメントで、<アラン・タドタエフ国会議長が「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明しました>と記しましたが、正しくは<アナトリー・ビビロフ大統領が「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明しました>です。

  • 演説草稿になかった「権力の座に」発言 直後に波紋、軌道修正の実情

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年3月27日14時38分 投稿

    【視点】米国のバイデン大統領が「この男が権力の座にとどまり続けてはいけない」と述べたことについて米ホワイトハウス当局者は「バイデン氏の論点は、『プーチン氏は彼の隣国や地域で権力を行使することは許されていない』という点だった。バイデン氏は、プーチン氏の権力や体制転換について話していない」と軌道修正を図りましたが、ロシアはバイデン大統領がプーチン政権の打倒を本気で追求していると受け止めています。その結果、ロシアのプーチン大統領は、米国の影響下にあるウクライナのゼレンスキー政権を打倒することが、ロシアの安全保障上不可欠になると確信したと思います。バイデン発言は事態を先鋭化させる機能を果たしました。

  • ロシアの大統領特別代表が辞任、出国 ウクライナ侵攻に反対か

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年3月24日10時19分 投稿

    【視点】 チュバイス氏は、エリツィン政権の中枢にいて、米国と連携してロシア経済の資本主義への転換を積極的に推進しました。その後、経済界に転出しましたが、政商的役割を果たしています。プーチン政権になってからもチュバイス氏は権力の中枢と良好な関係を維持していました。ロシアのウクライナ侵攻に関連して欧米諸国や日本はプーチン大統領、ラブロフ外相、その側近の寡占資本家の資産を凍結する個人制裁をかけました。チュバイス氏は、制裁から免れました。このことがプーチン氏や側近の猜疑心を刺激したのだと思います。チュバイス氏は身に危険を感じているのだと思います。自分の身を守るために、米国の懐に飛び込み、生命、身体、財産の保全を図るという選択をチュバイス氏がする可能性があります。もっともチュバイス氏は、エリツィン氏からプーチン氏の権力移行期のさまざまな事情を熟知しています。その中にはプーチン氏にとって都合のよくない話が多々あると思います。チュバイス氏が米国に移住するようなことになった場合、プーチン氏は怒り心頭に発して、報復すると思います。

  • 北方領土、切り続けたカード ロシアは歩み寄るどころかはしご外し

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年3月23日12時49分 投稿

    【視点】3月21日、ロシア外務省は日本との平和条約交渉を継続する意思はないとの声明を発表しました。本件に関して、同日夜のロシア第一チャンネル(公共放送)の討論番組「グレート・ゲーム」で興味深い議論がありました。2月24日にロシアがウクライナを侵攻した後、クレムリン(ロシア大統領府)は、外国にシグナルを出すのにこの番組を用いています。  高等経済大学のスースロフ教授が政治学者のミグラニャン氏に対してこう尋ねました。 「残念ながら国際問題に対する主体性を自ら放棄した国がある。その国は日本だ。元首相だった安倍晋三は、独立した外交政策を展開した。(ロシアがクリミアを併合した)2014年のときに日本は最低限の象徴的な制裁しか行わなかった。安倍晋三はロシアとの関係を発展させようとした。現在の日本は米国に追随している。今日、ロシア外務省は日本との平和条約交渉の継続を拒否し、南クリル諸島(北方領土に対するロシア側の呼称)における共同経済活動とビザなし交流を断った。ここで質問だが、日本がトルコや中東、中国のように国際問題に独自の立場で関与できるようになる可能性はあるか」  この質問に対するミグラニャン氏の答えは次のようなものでした。 「日本は(第二次世界大戦で)敗北した大国だ。主権が制限されている国だ。米国の保護国のようになっている。だから、軍事政策、国際政治において自らの主体性を発揮することができない。そういう状況であってもすべては(日本の)指導者次第だ。安倍晋三は強い指導者だった。そしてプーチンにかなり近付いた。個人的関係を構築して、様々な問題について話し合う扉を開こうとした。しかし、ワシントンが圧力をかけてきたので日本は元に戻ってしまった」  ミグラニャン氏は、ゴルバチョフのペレストロイカ、エリツインの民主化を推進した知識人の一人で、日本の政治家、外交官、記者とも交遊を深めた知日派です。ミグラニャン氏は、日米同盟の枠内という制約条件でも安倍晋三氏のような主体性を重視する指導者が出てくれば日本との関係改善は可能であるとの見方を示しています。  3月21日の外務省声明では<ロシア側が現在の条件において、(中略)平和条約に関する日本との交渉を継続することを望まない>と述べています。「現在の条件において(v nyneshonikh usloviyakh)」とロシア外務省声明が述べていることが興味深いです。日米同盟の枠内でもある程度の対米自主性を発揮できる首相が現れれば、平和条約交渉の席にロシアが再び戻るというニュアンスがあります。

  • ロシア、日本との平和条約交渉打ち切りへ 「反ロシアの選択をした」

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年3月23日11時51分 投稿

    【解説】 ロシア外務省の声明には、今後の日ロ関係改善を完全には閉ざさないようにする「仕掛け」が含まれています。声明では、<ロシア側が現在の条件において、公然たる非友好的立場をとり、わが国の利益を侵害しようと意図している国家と二国間関係の基本的関係についての文書に署名する議論をすることが不可能であると認識し、平和条約に関する日本との交渉を継続することを望まない>と述べています。  興味深いのはこの声明でロシアが「現在の条件において(v nyneshonikh usloviyakh ヴ・ヌィネシュニフ・ウスロヴィヤフ)」と述べていることです。「現在の条件において」とは、裏返していうならば条件が変化すれば平和条約交渉の席にロシアが再び戻るというニュアンスがあります。このシグナルを正確に読み取り、日本側から平和条約交渉を拒否しないことが重要です。日本側からも平和条約交渉を打ち切ると、ロシアと日本の関係は、武力衝突のリスクを含め緊張することになります。現在は戦争中なのでロシアの政治エリートは興奮状態に置かれています。ウクライナでの戦争が終結したところでロシアは国際関係を再度見直すので、その際に平和条約交渉再開に向けた外交戦略を日本は今から周到に練っておく必要があります。  さらに興味深いのは、この声明に書かれていない事柄です。  北方領土への元島民の墓参は停止の対象に含まれていません。  また、漁協関係の日本との合意をロシアは停止するといっていません。日ロ政府間の漁業協定とした重要なのは、ロシア系さけ・ますにに関する協定です。日ソ漁業協力協定(正式名称は「漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」)及び日ソ地先沖合漁業協定(正式名称は「日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定」)に基づき、「日本200海里水域」及び「ロシア200海里水域」における日本漁船の漁獲量等の操業条件に関して、毎年、日ロ両国政府は協議を行っています。また民間協定ですが、日ロ貝殻島昆布採取協定(歯舞群島の貝殻島周辺における日本漁船の昆布操業)もあります。これらの協定についてロシア外務省の声明が言及していないことは、ここについては日ロ関係を悪化させる意図はないというロシアからのシグナルの可能性があります。東西冷戦時代、日ソ関係が険悪な時期においても、両国は漁業関係だけは維持していました。  漁業においても日ロの協力関係が停止すると北方四島周辺やオホーツク海で日ロの緊張が急速に高まり、偶発的な武力衝突が起きる危険が高まります。

  • 「でっち上げの主張による不当攻撃」 G7声明、制裁の詳細は記さず

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年2月25日6時47分 投稿

    【視点】 今回の事態に至るにはウクライナのゼレンスキー大統領にも大きな責任があります。親ロシア派武装勢力が実効支配する地域に「特別の統治体制」を導入するための憲法改正をウクライナは2015年の「第2ミンスク合意」で約束しました。しかし、19年に大統領に就任したゼレンスキー氏はその履行を頑なに拒否しました。ウクライナが「ミンスク合意」を履行する意思を持たないと判断し、プーチン氏は両「人民共和国」領域のロシア人を守るために軍事介入を決断しました。ウクライナ、欧米諸国は、ウクライナ政府軍による攻撃というのはロシアが糸を引く親ロシア派武装勢力による「自作自演」と主張していますが、ロシアメディアの現地からの報道、避難民のインタビューから判断すると、現在起きている事態が「芝居」であるとは思えません。もちろん情報操作は行われているでしょう(米国やウクライナも情報操作を行っています)。しかし、情報操作の要素を差し引いてもドネツク州、ルハンスク州(ロシア語でルガンスク州)でロシヤ系住民の生命、身体が、ウクライナ軍によって脅かされているというのは事実と私は判断しています。  今回、ウクライナ各地をミサイル攻撃し、キエフ空港付近に空挺部隊を派遣する(ロシアのテレビ放送でも認めています)ようなロシアの取った行為は均衡を失している。1968年のチェコスロバキア侵攻の際、「社会主義共同体の利益が毀損される場合、個別国家の主権が制限されることがある」という「制限主権論」(ブレジネフドクトリン)で侵攻を正当化しました。ロシアの利益のためウクライナの主権が制限されるというのがプーチン流の「制限主権論」です。断じて認めることはできません。

  • 【速報中】ウクライナ各地で爆発音 8人死亡、東部2村の制圧情報も

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年2月24日19時13分 投稿

    【視点】 ロシアによるウクライナへの攻撃は、力による国際秩序を変更するもので、容認されません。岸田文雄首相がロシアを厳しく非難したのは当然です。日本もG7と協調して本格的な対ロシア制裁に踏み切ります。  ここでは価値判断をとりあえず、括弧に入れて、プーチン大統領の思惑について記します。 1.プーチン氏の目的は2つあります。1つはドネツク州とルハンスク州(ロシア語ではルガンスク州)のロシア系住民を守ることです。もう1つは、ウクライナの軍事力に壊滅的打撃を与えて、二度とロシアに対抗しないようにすることです。 2.「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」は、それぞれの憲法でルガンスク州、ドネツク州の全域を自国領土としています。ウクライナにもはやルハンスク州、ドネツク州は存在しないと主張し、両州の全域をロシア軍が占領する可能性があります。これは「南オセチア共和国」と「アブハジア共和国」にロシア軍が侵攻して、当該領域からジョージア軍を駆逐した先例に似ています。 3.キエフ、オデッサなどの軍事基地を占領したのは、軍事通信システムの破壊が目的で、ドネツク州、ルハンスク州以外のウクライナ領を占領することは差し控えます。 4.戦闘は比較的短期間で、ロシアの勝利によって終結すると考えています。その後、ウクライナ国内で内紛が起きて、ゼレンスキー大統領は失脚すると考えています。ロシアの傀儡政権を作るのではなく、ウクライナの政治エリートから、ロシアと宥和政策をとれる人物が出てくると読んでいるのだと思います。 5.欧米や日本は、当初、激しく反発し、最大限の制裁をロシアに対してかけますが、それ以上のことはできないと見ています。戦闘が短期に終了すれば、国際社会もいずれ現状を追認せざるを得なくなると考えていると思います。 ※誤字があったので再投稿しました。

  • ロシアによる独立承認、国際法上の問題は? ウクライナ危機の深層

    佐藤優
    佐藤優
    作家・元外務省主任分析官
    2022年2月24日10時18分 投稿

    【視点】 ロシアは国際法を無視するのではなく、濫用します。「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」を実効支配しています。この地域の人々の民族自決権によって独立承認を求めるという国際法的擬制を整えています。ロシアもこれら両「人民共和国」の主権を承認、両「人民共和国」との「友好、協力、相互援助条約」を締結し、この条約は国会で批准されています。このように法的擬制を整えた上で、プーチン大統領はロシア軍を派遣しました。明らかにジョージアから分離した「南オセチア共和国」の先例に倣っています。国連加盟国では、ニカラグア、ベネズエラ、ナウル、シリアが「南オセチア共和国」を国家承認しています。この4国が「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を国家承認する可能性は十分あると思います。

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