米国の銃をめぐる議論で日本人にわかりにくいひとつが、議論の焦点があくまでも、殺傷力の高い銃器の販売や、購入者の年齢や犯罪歴のチェックの是非であって、国民が武器を保有し携行する権利を定めた「米憲法修正第2条」そのものの是非をめぐる議論にはな
戦争がもたらすトラウマは、近年、注目されつつある分野であり、もっと注目されるべき分野だろう。かつて私が会った人の中には、こういうケースもある。 その人の父親は子供たちへのしつけに厳しく、家庭の中で威厳があった。黒井さんの場合と異なり、子
第2次大戦中、勤労学徒として動員された旧制中学生たちのうち、事故や空襲で命を落としたのは1万966人(旧文部省資料による。実態はもっと多いという見方もある)。一方で広島ではたった1発の原子爆弾で、約7200人が亡くなった。その8割が、建物疎
コラムの取材をしていて、戦時中の学徒勤労動員の過酷さを改めて知った。戦況の悪化と労働力不足が顕著になるに従って、動員の時間と頻度も増える。軍需工場での慣れない作業で事故が相次ぎ、目など顔に負傷した生徒も多かったという。食料が十分にないことに
私がセネガルの港町サンルイを訪れたのは17年前のこと。当時は大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島を経由して欧州への渡航を図るアフリカ人たちの密航ポイントとなっていた。 この記事の写真にも見えるのと似た極彩色の木造船(ピロク)に100人近
パリ特派員だった18年前にフランスの郊外暴動を、3年前のワシントン勤務時代にブラック・ライブズ・マター運動の盛り上がりを取材した。今回も含め、いずれも警官の理不尽な対応がきっかけであり、警察組織に巣くう人種差別が背景にある点でも米仏の状況は
10年ほど前に中国・丹東を訪れたことがある。国境を流れる大河、鴨緑江をのぞむホテルの部屋から見える北朝鮮は夜になると吸い込まれるように真っ暗で、照明がきらびやかな中国側との違いは瞭然だった。ホテルの部屋には対岸を見る双眼鏡が備え付けられ、鴨
市町村から「字(あざ)」まで、沖縄では地域の記憶を後世に残そうという取り組みが盛んに行われている。那覇市の沖縄県立図書館では専門コーナーもあり、それぞれ数百ページに及ぶものも少なくない市町村史や字(あざ)史がずらりと並ぶさまは壮観ですらある
祝日が多いことが有給休暇の取得を妨げているのか、有給をあまりとらないから祝日に意味があるのか――ニワトリか卵かのような話だが、私が特派員として駐在した英国、米国、フランスと比べても、日本は祝日が多い。そして英国人もフランス人も、そしてたいて
自らのスキャンダルや疑惑をむしろ「糧」にして支持を固めてきたトランプ氏も、さすがに今回の起訴を「耐えぬくこと(サバイバル)」はできるのか、という方向に米国内の関心は向かっているようだ。次の大統領選は、ホワイトハウスに復権できるかどうかより、
習近平氏を持ち上げるフランスのマクロン大統領に対して、台湾問題のほか新疆ウイグル自治区での人権問題に関しても習氏に懸念を直言したとされるフォンデアライエン欧州委員長。訪中した欧州の政治リーダーの対照を、「good copとbad cop」と
祝日を減らして税収を増やすのは、一見すれば手っ取り早い財源捻出策のようにも思えるが、かなり政治的勇気を要する決断だ。 私がパリ特派員だった2005年、フランス政府は5月の休日を「廃止」した。その2年前の2003年夏に欧州を襲った猛暑で
移民に厳しい姿勢をとるイタリアのメローニ政権と、遭難した移民・難民の救援活動にあたるNGOの対立が深まるなかで起きた悲劇である。現地からの報道によると、イタリアの政権側は、救助してくれる船の存在が、かえって密航船の活動を助長していると疑っ
もし「王務」という言葉が許されるなら、無私かつ実直、勤勉にその職務を70年にわたり勤め上げた女性――。ロンドン特派員時代の経験もふまえ、私がエリザベス女王に抱くイメージだ。 2大政党が根づいた英国では、政策の違いが国や社会の分断に結びつ
藤田編集委員のコメントのとおり、米国では大統領記録法により、在任中に大統領が保有した文書は手書きメモや書簡、写真も含め、退任時に提出が求められ、公共の財産として国立公文書館の管理下に移る。後に、歴代大統領を記念して建てられる図書館に置かれる
まさにこの記事にあるように、トランプ氏側は法廷闘争に持ち込んで、捜査のスピードを遅らせると同時に、「FBI、司法省の被害者」を自演することで、支持層への求心力を固める計算なのだろう。 2016年の米大統領選挙にロシアが介入したとされる疑
一口に太平洋諸島地域といっても、ポリネシア、 ミクロネシア、メラネシアといった民族的・地理的に多様なアイデンティティーに加え、それぞれ、国ごとに複雑な被支配の歴史をもっている。たとえばパラオはスペイン人発見→ドイツ支配→国際連盟により日本が
古い話になるが、私がロンドン特派員だった21年前、ジャーナリストから保守党政治家に転身してイギリス総選挙に出馬したボリス・ジョンソン氏の選挙運動に半日、密着取材した。まさしくジョンソン氏本人がハンドルを握る車の助手席に乗せてもらい、英国では
人工妊娠中絶の是非は、米国社会を分断する様々な問題の中でも、とりわけ「是」と「非」を分かつウェッジ(社会にくさびを打ち込む)イシューだ。記事にもあるように、中絶反対派の集会はカトリックやキリスト教福音派などの宗教色が充満し、冷静な対話や論
たいへん胸が痛む話だが、これだけの惨劇をもってしても、米国の銃規制強化はたぶん進まないだろう。そして、同様の事件が起こる可能性は小さくない。秋の中間選挙、2年後の大統領選と、米国はこれから政治の季節を迎え、すでに「南北戦争レベル」ともいわれ