曽我部真裕

曽我部真裕そがべまさひろ

京都大学大学院法学研究科教授
関心ジャンル:政治司法メディア人権

最新コメント一覧

  • 同性婚を認めないのは「合憲」 原告側の賠償請求を棄却 大阪地裁

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年6月22日6時41分 投稿

    【視点】 この判決は、裁判所と民主政プロセスとの関係について理解を深める機会を提供しているように感じます。  判決を一読して、大阪地裁は、最高裁判例の枠内で丁寧に議論をし、その限りでは穏当な判断となっていると考えます。SNS上などで批判されている「〔婚姻は〕単なる婚姻した二当事者の関係としてではなく、男女が生涯続く安定した関係の下で、子を産み育てながら家族として共同生活を送り次世代に継承していく関係として捉え」というくだりも、裁判所自身の婚姻制度観を提示したものではなく、現在の制度の趣旨がそうなっていると捉えた上で、これが幅広い立法裁量の範囲内に収まっているという文脈で述べられたものです。  憲法研究者の間では、もちろん諸説があるものの、憲法24条は同性婚を禁止するものではないが、保障するものでもないという理解が主流であり、そこまで意見が割れているわけではないように思います。  今回の判決は、このような判例や学説の状況をも踏まえ、司法としての限界を示し、この問題は民主政プロセスで解決されるべきだとして、立法府にボールを投げたものと言えるでしょう。おりしも参議院選挙が行われるところで、この問題についても争点となることが期待されます。  裁判所は少数派の権利を守るべきではありますが、あくまでも憲法や法律の解釈として許す範囲内でのことです。実際、憲法の規定が十分でない中で、同性婚を認めていないことが違憲だと裁判所が判断するのは容易ではありません。有名なアメリカ連邦最高裁のオーバーゲフェル判決も、その理由付けについては独断的であるとの批判が少なくなく、違憲審査に普段から積極的な同裁判所だからこそ出せた判断だという側面が強いところです。このほか、台湾のように違憲判決によって制度改正がなされたところもありますが、多くの国では同性婚は立法主導で実現しています。  札幌地裁は違憲だとはしたものの、パートナーシップ制度でもよいという趣旨だともとれる判断でした。大阪地裁は、むしろ同性婚の問題を正面から捉えた上で、立法府が対応すべきだというアプローチだったとも理解できます。    最後に、今回もそうですが、最近、「公共訴訟」と位置付けられる訴訟では、当事者の主張や証拠がネットで全文公開され、SNS上で、法律家からも一般の市民からも注視される中で判決が出され、場合によっては膨大な賛否のコメントが集まり反応が可視化されます。このような状況の中、裁判所の判決行動がどのような影響を受けるのか受けないのかということも、興味深いところです。  

  • 大阪地検特捜部の捜査は「違法」? 無罪確定事件の国賠訴訟始まる

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年6月14日8時42分 投稿

    【視点】 問題の取り調べを行ったという検察官が匿名で報じられているのはなぜでしょうか。  日本新聞協会は、実名報道原則の根拠の1つとして、「不正の追及と権力の監視」の必要性を挙げています。検察官が違法な取り調べを行った疑いがあるということは、権力の濫用に関わる重大な問題であり、上記の原則に照らせば、当然実名で報じるべきものであるように思われます。  本件では、先行する刑事事件の判決で、取調べ時の検察官の発言について「真実と異なる供述に及ぶ強い動機を生じさせかねない」と事実認定されているとのことで、問題とされうる言動そのものが存在した可能性は非常に高く、原告の一方的な主張ではないのではないでしょうか。  実名報道原則を強調されるのであれば、本件で匿名にしている理由を説明されたいものです。もし原告勝訴の判決が出たとなれば、その際には実名にされるのでしょうか。  今年3月、新聞協会は、事件の犠牲者の実名報道の意義を強調する見解を発表しました(https://www.pressnet.or.jp/statement/report/220310_14533.html)。対権力と対弱者とで対応が違う、と批判されないような姿勢が重要だと感じます。

  • アマゾン配達員「荷物量が異常」、AIで決まる激務 労組結成の背景

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年6月14日8時23分 投稿

    【視点】 配送を担う働き手の法的保護の拡充が重要であることはもちろんですが、アマゾンなどECサイトを利用する私たち消費者も考える時期に来ているように感じました。  実質は労働者でありつつ、雇用法制では守られないギグワーカーの保護は何年も前から課題として認識されており、欧州などで法整備が進んでいる一方で日本では後手後手に回っており、改めて議論の加速が求められます。  ところで、ECサイトは全国どこにいても多様な商品が購入できる点で、都会と地方との格差を埋めるなどの意義があった一方で、近所で買えるものもECサイトで注文することにより、配送を担う人々やひいては環境に負担をかけ、また地域の小売業に苦境をもたらして地域社会の衰退の一因となっているようにも思われます。  エシカルな消費の一側面として、近所で買えるものは近所で購入するということを意識する時期が来ているのかもしれません。

  • コリア国際学園に火付けた疑いで男を逮捕 辻元氏事務所侵入でも起訴

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年6月9日12時0分 投稿

    【視点】 地元大阪本社版の紙面でもごく短い記事にしかなっていませんが、ヘイトクライムの可能性もあり、しっかり取材報道して頂きたい事件です。この被疑者は辻元議員の事務所に侵入した容疑で起訴されており、議員に危害を加える目的だったと供述しているとの報道もあります。  そうだとすれば、こちらの放火事件も、政治的・思想的背景のある、大げさに言えばテロ事件の疑いがあるわけで、多大の関心をもって報道にあたって頂きたいところです。  朝日新聞は、明確なヘイトクライムであることが明らかになってきたウトロ地区放火事件についてもやや冷淡な扱いで、本件とあわせて気になるところです。  ダイバーシティはジェンダー平等だけではないのではないでしょうか。

  • 菅前首相の高校講演が中止に 参院選直前、18歳への影響懸念する声

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年6月9日8時1分 投稿

    【視点】 議論の構図が日本の政治空間の貧困さを象徴するようで、残念さを感じました。  本来、高校生にとって、元首相に直接会って話が聞けるというのは極めて貴重な機会であり、むしろ、政治家、特に首相や大臣等をつとめた人物は積極的にこうした機会を設けるべきだとも考えられるところです。  こうした機会が党派性や選挙への影響の名のもとに阻害されることは、政治や政治家が矮小化して見られていることを意味し、そういう目で見てしまう側も見られてしまう側にも、残念なものを感じます。  本来、政治とは社会の課題を解決し未来を作っていく創造的な営みであり、そこに積極的に参加することはポジティブに捉えられるべきで、その中で地位をなした人々には高い見識があり尊敬を集める存在であるべきであって、そうしたイメージとの対比で、今回の出来事は残念でした。

  • 安倍元首相、改憲発議めぐり「状況整いつつある」 超党派議員の大会

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月24日9時14分 投稿

    【視点】 「しっかり国会で議論して国民の審判を受けるべきときがやってきた」という点について、先日別のところで述べたことをここでも記しておきたいと思います。  現在の憲法改正論議の体制には課題があるように思われます。  すなわち、憲法改正論議は、各政党のほか、公式には衆議院と参議院とにおかれている憲法審査会で行われています。そこでは、基本的には日本国憲法そのものの条文改正の是非が検討されており、憲法のそれぞれの条文を具体化する法令や政策の全体像とは切り離されています。それとも関連して、憲法審査会での議論の中心は、名実ともに国会議員であり、官僚の補佐がほとんどありません。実際、憲法そのものを所管する省庁は存在せず、憲法改正論議において政府の存在感は薄いものとなっています。その結果、専門的な知見を提供したり意見の調整を図ったりすることが難しくなっており、このことが憲法改正論議が進展しない理由の1つとなっていると思われます。また、専門的な知見の提供に関しては、憲法の専門家の関与がほとんどないことも指摘しておく必要があるでしょう。

  • 日本の議員は少ない?給与は? 「月給100万円しか」発言の背景

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月17日8時25分 投稿

    【視点】 少し調べた限りでは発言全文を見つけられませんでしたのではっきりはしませんが、細田議長の発言の趣旨は、歳費が少ないことそのものではなく、議員の数が少ないということだったのかもしれません。  それであれば、本記事にもあるように、国際比較では日本の議員数は決して多いわけではないことは事実であり、地方部の議員が減少傾向にあることも踏まえれば、1つの提言としてありうるものではないかと思います。  歳費が少ないとした点が切り取られて批判される背景には、記事にある松本正生先生のご指摘の通り、政治家への信頼感がないことが背景にあると思われます。しかし、私の接した数少ない例に過ぎませんが、公益を考え真摯に職務に取り組んでいる議員も多いように思われ、そうした姿は国民には十分知られていないのではないかと感じます。その一因は、議員の活動の中核が、国会の本会議や委員会ではなく、非公開の場で行われていて、透明性が低いことにあるようにも思われます。  議員の活動がもっと国民に知られることを通じて、信頼性の向上が図られ、今回提起された国会議員の数の問題もまともに取り上げられる状況が訪れることが望まれます。今回の発言を矮小化して受け止め、バッシングして終わりとするべきではないでしょう。

  • 公表1年間は無条件で契約解除可能に AV対策新法、与野党が素案

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月14日9時6分 投稿

    【視点】 強要等の被害の救済という、反対の余地のない目的で立案された法案ではありますが、それだけに、具体的な規制内容に仮に問題があっても反対しにくく、慎重な吟味が必要だと考えます。  その観点から慎重な検討を要すると感じられるのは、出演者の年齢を問わず、公表後1年(施行当初は2年間)は無条件に契約を解除できるとする規定です。そもそも、契約には拘束されるというのが近代社会の大原則であり、無条件で解除できるとする規定はこうした原則を真っ向から否定する異例のものであることを確認する必要があります。  その上で、異例ではあるが例外として許容できるような正当性があるかどうかを検討すべきです。この点、本法案では、出演後のリスクも含めて事前に十分な説明をすることとなっており、こうした説明を受けて契約にサインした上で、なお事後的に無条件で解除できるという出演者にとって手厚い保護を提供するものとなっています。前述のように、この解除権は年齢を問わず与えられているので、成人が十分な説明を受けて契約をした場合でも、解除できることになります。  確かに、性行為を撮影するという特殊性から、見方によっては手厚すぎるとも捉えられる保護を与えることには理由があると思われます。例えば、事前説明が不十分だったとか、実は契約時の意思に反していた、といった場合に限って事後の解除権を認めるという選択肢も考えられますが(なお、こうした場合には別途取消権が認められるようです。)、その立証にはハードルがあるために現実には解除権行使が難しい場合もありえます。こうした場合も念頭に、無条件で解除権を認めるという制度設計は、ありうるものと考えます。  しかし、現状、AV産業は、一般的には適法な事業活動であると理解されている以上、出演者保護のための規制が過剰なものとならないことも求められます。現時点での筆者の理解では、解除後の法律関係の全体を把握できていないのですが、出演者の行動によるものも含め、解除後の事業者の負担が過剰なものとなり、ひいては事業活動の足かせとなることのないような検討が求められます。  また、記事からは明らかではありませんが、「出演者」を保護するのであれば、女優だけでなく男優に関しても、同様の事前説明義務や解除権が定められていることになります。仮にそうだとすれば、長年、業界で活動する男優についてこのような規定を置くことは明らかに過剰規制であると考えられます。  ところで、先ほど述べた「AV産業は、一般的には適法な事業活動であると理解されている」という点について疑問を呈する向きもあります。「金銭を介して、性行為の撮影を行うことが性暴力や性的搾取にあたる」という考えによるもののようです。しかし、こうした考えを巡っては様々な意見がありうるのであり、また、AVだけに限らない、より大きな問題です。  したがって、この問題は、今回の法案の議論とは切り離して、別途、継続的に議論をしていくべきもので、報道機関においても多角的な取り上げ方が求められます。また、前述のような観点からして過剰だと言える規制は、事業活動を困難にし、結局のところいま見た考えを裏から導入する結果となりかねないと思われます。  なお、筆者は、強要被害の防止・救済等のための自主規制に取り組む「AV人権倫理機構」の顧問を仰せつかっていますが、ここで述べた意見は同団体とは無関係です。

  • 「男女欄」は必要か?政府の各種統計調査あり方検討、夏ごろに指針

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月11日7時43分 投稿

    【視点】 記事中にもありますが、異なるマイノリティの考慮が衝突してなかなか悩ましい問題です。個人的な経験でも、入試の願書で性別欄は不要ではないかということが話題になったことがありますが、所属先の大学では女性比率の低さが課題になっていることからして、必要だということになりました。

  • (憲法を考える)施行75年、政治は:上 憲法審査会、数の力じわり 「オンライン国会」解釈で対応

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月3日20時57分 投稿

    【視点】 この種の憲法論議の論評の仕方につき疑問を呈しておきたいと思います。  少なくとも例外的な場合に、オンライン出席を「出席」とみなすことが議院自律権(憲法58条2項)の範囲内であることは、衆参の憲法審査会で発言した研究者(4名中3名はこの種の立場かと思われます。)も含め、憲法学では有力な理解であると思われ、今回の両院の憲法審査会の判断は、その限りでは批判を受けるようなものではないと考えます。  そもそも、この記事も前提としているようにも思われる「立憲主義のもとでは、憲法によって縛られるはずの国家機関が憲法の解釈をするのはおかしい」という考え方自体が過度の単純化を含むものです。国家機関はその権限行使をするにあたって、ひとまずは自ら憲法の解釈を行うことが必要であり、かつそれは認められます(それに対する二次的な統制の問題は別論です。)。  例えば、内閣は、国民に権利を与えあるいは義務を課すようなルールを定めるのは法律による必要があるけれども、防衛大綱のような重要なものも含め、政府の計画は法律による必要ではないとしていますが、これも憲法41条の「立法」という文言を政府が解釈した結果です。何を「立法」だと考えるかは、国会と内閣との権限分配にかかわる重要なポイントですが、これについては内閣が解釈できることが当然視されています。  オンライン出席問題における「出席」の解釈も同様ではないでしょうか。  また、現在では多くの政党が憲法改正論議の必要性を認めているところ、それが自民党の「技術」によるものだとどこまで言えるのでしょうか。現在の憲法論議の方法やその質については課題があることは確かですが、「中山方式」が唯一の正解だとは言えないと思います。  なお、筆者も、自民党の4項目に賛成するわけではありません。あくまで、憲法論議の論評の仕方につき疑問を呈するものです。

  • 改憲「必要」56% 13年以降で最多 朝日新聞社世論調査

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年5月3日16時6分 投稿

    【視点】 「憲法改正が必要かどうか」と一般的に聞く世論調査には以前から批判が寄せられていますが、朝日新聞を含めた報道各社は依然として漫然とこれを継続しており、問題を感じます。  『憲法と世論 戦後日本人は憲法とどう向き合ってきたのか』(筑摩書房、2017年)の著者である政治学の境家史郎教授は、本日の朝日新聞でも別途コメントされていますが、そこでは、憲法には様々な条文があり、改正が必要だとする回答者でも、どの条文についてそうだとするのかは多様でありうることが指摘されています。  この点について、上掲書302頁ではもっと辛辣で、「一般改正質問はもはや『大雑把なだけの質問』と化しており、このため調査結果の解釈が極めて困難になっている。方法の継続は重要とはいえ、回答結果の解釈が困難なのは致命的な欠点であ」るとされています。  また、これは私見になりますが、市民が憲法問題だと考えるものはしばしば日本国憲法そのものの問題ではないことがあり、それが上記のようなアンケート結果に影響しているとすれば、こうした世論調査はますます意味を失うのではないでしょうか。  無益であっても無害なら問題ないとも言えますが、これが憲法改正の機運に影響を及ぼすとすれば、不幸なことです。憲法改正論議の質的向上に向けて、課題が残されていると言えるのではないでしょうか。  

  • (現場へ!)憲法を手に:1 同性婚、誰もが持つ尊厳を

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月29日6時12分 投稿

    【解説】 裁判で争われる(あるいは社会的に大きく注目される)憲法問題の傾向は、時代によって違いがあります。かつては、9条関係の裁判が注目されましたが、これは、裁判所の役割の一丁目一番地である当事者の救済とは離れた抽象的な主張の戦いとなりがちで、裁判所にとって判断しにくいものだったことは否めません。  他方、近年は、家族関係に関する違憲訴訟が相次いでいます。しばらく前には非嫡出子の差別問題が争われましたが、これは最高裁の違憲判断が出て決着しました。その後、夫婦関係では、夫婦同氏制、さらには本件のような同性婚の問題が裁判を通じて提起されています。  これらは、9条関係の裁判とは違い、問題となっているのは、記事にある代理人弁護士の語りからも分かるように、裁判当事者の個人の生き方そのもので、その意味では裁判所の判断に馴染むものです。  他方で、婚姻制度そのものの設計は本来は国会の役割であることは否めず、また、憲法解釈としても意見が分かれる中、裁判所が「同性婚を認めないことが違憲だ」とまで踏み込むことには躊躇もあるはずです。  そうした中、札幌地裁は、「同性婚を認めないことが違憲だ」とまでは踏み込まず、異性カップルと同性カップルの法的保護に極端な落差がある(前者は婚姻できるが、後者は何もない)点に着目し、そこが違憲(平等原則に反する)だとした苦心の見える判断を行いました。  このような判断に基づけば、国会は、同性カップルに同性婚を認めてもいいし、同性婚までは認めずとも、パートナーシップ制度を導入することでもよいということになりそうです。  同性婚を認める諸外国でも、まずはパートナーシップ制度を作った上で、同性婚立法に移行した例が多く見られます。  いずれにしても、国会及び裁判所は、「個人の尊重」という憲法の最重要の価値を踏まえて、それぞれの役割を果たすことが求められます。

  • テレ東同時配信、喜ぶ地方ファン 全国放送っぽくふるまった―「お詫び広告」話題

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月25日8時23分 投稿

    【視点】 日本のテレビ局のインターネット利用は全般的に進展が遅れていますが、その背景の1つにはこれまでの全国ネットワークの完成度の高さがあります。制度上は放送免許は県単位(東名阪は広域圏単位)で交付されるものの、東京のキー局を頂点に、大阪の準キー局、さらに地方局が系列化され、全国津々浦々をカバーされ、全国で同じ番組が見られるという体制が確立していました。  しかし、インターネットでの番組配信が可能になると、技術的には、このような系列の必要性は低下し、かえって、地方局への配慮からネット配信が進めにくいという状況が生じました。イノベーションのジレンマというべきでしょうか。  この点、テレビ東京は、自社含めて6局しか系列局がなく(他系列は30弱)、もともと全国をカバーしていなかったため、今回のような判断がしやすかったものと思われます。  とはいえ、他の系列も少しずつネット事業を進めています。そうした中、地方局にはどのような展望を描けるのでしょうか。各社あるいは業界全体で議論を進めるとともに、視聴者・市民も放送に何を求めるのか、考えなければならない時期に来ています。

  • EU、巨大IT企業へのコンテンツ規制法に合意 デマなど排除が義務

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月24日17時16分 投稿

    【解説】 超巨大プラットフォームには、通報受付・削除体制の整備のほか、定期的な自己監査や情報公開などを義務付け、自主規制に加えて、市民や研究者による監視によって適正を確保しようとする試みです。  日本でのSNS上の誹謗中傷や偽情報対策の議論も、すでにデジタルサービス法の発想に影響を受けて進んでおり、今後の動向も引き続き注目されます。

  • リスク無視したフェイスブック そして告発を後押しする事件が起きた

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月17日8時48分 投稿

    【視点】 勇気ある内部告発をしたホーゲン氏のロングインタビューで、必読の記事だと思います。  アメリカではFBでニュースを得る人々の割合が多いことがエコーチェンバーの弊害の現実化につながっていることは知られていましたが、途上国ではインターネット≒FBだというところもあり、かつ、適切なモデレーションがされていないという証言は驚きで、民族対立の激化などにつながらないのか懸念されます。  これらと比較すると、日本ではマスメディアがなお健在であることや、主要なニュースサイトもエコーチェンバーの弊害に留意した運営をしていることなどから、問題の顕在化はしていないように見えます。  ただ、一部の動画共有サイトではやや懸念されるような状態にあるほか、直近ではウトロ地区放火の被疑者がヤフコメを見てヘイトクライムに至った旨供述しているとの報道があるなど、対岸の火事ではなく、今回のインタビューも貴重な警告として受け止めるべきかと思います。

  • オンライン国会実現への道のり 整備費は数百万~数十億円と試算に幅

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月7日9時5分 投稿

    【視点】 実現に向けて論点が多数あるのは確かでしょうが、諸外国でも実施されているわけで、それら自体として解決不可能なわけではなく、日本では困難だと感じられるのであれば、意思決定の仕方の問題ではないでしょうか。  官僚に頼ることのできる通常の政策とは異なり、国会関係の制度改革については、実務上の論点を整理する事務局的な能力と、それを踏まえて調整を強力に進める存在とが十分ではないためになかなか進まないのは、オンライン国会に限った話ではないと思います。

  • (戦後77年)海に眠る30万柱、遠い収集 国着手の矢先、コロナでめど立たず

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年4月5日12時40分 投稿

    【視点】 海外戦没者の遺骨収集事業は1952年から継続していますが、本文にある通り半分ほどが未収容で、とりわけ海没遺骨はほとんど手つかずです。  戦時中、兵士の命は極めて軽視されました。「参謀部の将校から『何千人殺せば〔(注)自軍の犠牲者が出れば、という趣旨〕、どこがとれる』という言葉をよく耳にした。」といった証言もあるとのことです(NHK・Nスペ+「無謀と言われたインパール作戦 戦慄の記録」(https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20170922/index.html))。  国のために殉じた方々の遺骨収集事業に対する政策的プライオリティの低さは、こうした人命軽視の意識を戦後も引きずっている現れのようにも見えます。戦争自体に対する評価は政治的立場によって分かれていますが、それとは別に、政治の側もこの問題にはもっと力を入れて然るべきではないでしょうか。  また、近年は、安全保障の強化に関する様々な議論がなされており、個人的にはそうした必要性があることは否定出来ないと考えるところですが、こうした議論と、犠牲者の処遇の問題とは切り離せないところで、この記事はそうした意味でも今日性を持っていると考えます。

  • 「強制連行」→「強制的に動員」政府見解に沿う記述求めた教科書検定

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年3月30日7時50分 投稿

    【視点】 「政府見解が明示されていればその趣旨と異なる表現があっても検定上は問題ない」ということであれば、併記した上で政府見解を検討させるという授業も可能なはずで、「多面的な考え 奪わないで」などとするこの記事の趣旨がよく分かりませんでした。併記した教科書も実際にあるということであれば、端的に修正に応じた社の姿勢を問題にすることもできたはずで、よく分からない記事でした。

  • (多事奏論)番組審議会 放送の自律へ、議論もっと可視化を 田玉恵美

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年3月16日8時5分 投稿

    【視点】 日本の放送制度(番組規律)は、ここでも日本独特で、法律及び監督機関による番組規律が少なく、多くを放送局の自律に委ねることになっています。制度上、その要となるのが番組審議会で、放送局は、自社の取り組みを番組審議会に対して説明をすることで、自律を確保することになっています。  なお、BPOも放送局の自律を促進するための組織ですが、業界が設立した任意の存在であり、法制度の外側に位置づけられるものです。  さて、(少し古いもので恐縮ですが)後掲の拙稿でも明らかにした通り、このような建て付けのもと、度重なる法改正によって番組審議会の権限は増加し、制度上の役割は大きくなってきました。他方で、その実態は記事にあるようなものであり、そのギャップは年々大きくなってきたところです。  インターネットの普及で情報空間に多様な情報が流通するようになっている今日、放送は産業としての曲がり角を迎えつつあります。そうした中で放送が制度的裏付けを得て存続していくためには、その公共性の弁証が欠かせません。現在の制度では、公共性を担保する方策の1つが番組審議会制度です。今回のMBSのケースはそれを明らかにした事例と言えるでしょう。  放送界はその存在意義を再確認し、その充実を図ることが求められます。 (参考)拙稿「放送番組規律の『日本モデル』の形成と展開」       http://hdl.handle.net/2433/173401

  • 池袋暴走遺族に「金や反響目当て」 SNSで侮辱疑い、警視庁が捜査

    曽我部真裕
    曽我部真裕
    京都大学大学院法学研究科教授
    2022年3月16日7時49分 投稿

    【視点】 ネットの誹謗中傷の加害者は、指先1つで簡単に投稿できる手軽さや、被害者の苦しみに想像が及ばないといったことから、民事や刑事の法的責任を問われた場合でも、反省するというよりは、「みんなやっているのに自分だけなぜ責任を問われるのか」という自分の不運を嘆き「逆ギレ」する態度になりがちだと言われます。  これは、スピード違反など交通違反の場合と少し似たところがあるように思います。  今回のように悪質なものについては積極的に捜査をしていくこと(そしてそれを周知すること)、それを促すために侮辱罪の法定刑を引き上げることは、こうした投稿をすれば責任を問われてもおかしくはないのだという社会の意識を定着させることにつながるのではないでしょうか。

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