高津祐典

高津祐典たかつ ゆうすけ

朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
関心ジャンル:囲碁・将棋カルチャーIT・テックダイバーシティーメディア

最新コメント一覧

  • BTS、グループ活動休止の意向 多忙な日々で「成長する時間ない」

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2022年6月15日12時21分 投稿

    【視点】「私には罪悪感がある。休みたいと言ったら、罪を犯すようで」という言葉は、ファンの期待に応えたいと思って活動を続けているクリエーター共通の悩みなのではと思います。大きなユーチューブチャンネルを運営するユーチューバーでも、同じような思いを口にするのを聞いたことがあります。 先日、漫画の「ONE PIECE」が最終章に向けて1カ月休載するというニュースがありました。漫画界はずいぶん変わってきています。BTSの場合は兵役などの複雑な事情も背景にあるのかもしれませんが、これからはクリエーターがもっと自然に休めるようになればいいなと思います。その間、ファンが活動再開を楽しみにできるような取り組みが充実していくと、また新しい「創作」が現れるのかもしれません。

  • 作家の西村京太郎さん、91歳で死去 トラベルミステリーの第一人者

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2022年3月6日15時56分 投稿

    【視点】西村京太郎さんにインタビューしたときの言葉で、忘れられないのが「列車のミステリーを書いていますが、僕は社会派の生き残りだと思っています。生まれた頃が戦争中でしたから、その根があるんです」というものでした。なるほど、社会派の系譜にご自身を位置づけておられるのかと妙に納得したのでした。 戦争が終わり、人事院に勤めた西村さんでしたが、急に友人がいなくなることがあったそうです。朝鮮戦争の頃はレッドパージがあって、聞くと共産党員だったから地下に潜りました、と言われたそうです。そういった経験から「どうしても事件を『社会派』にする癖は抜けません」とおっしゃっていました。 ただ、作家になってから社会派が売れない時代になり、書いたのが鉄道ミステリーの第1作『寝台特急殺人事件』だったそうです。それから長い間、西村さんは年に6回取材旅行に行っていました。1年に出版社12社分を書くので、2社分が1回という計算でした。 社会派の生き残りとしての矜恃を抱きながら、広く愛されるキャラクターとして十津川警部を描いてきました。2019年の時点で著作が600冊超、累計発行部数は2億部という記事があります。さらりと読めて楽しめるだけでなく、社会の矛盾を見つめている小説だからこそ、これほど支持されたのだと思います。

  • 今は「森林限界の手前」 藤井聡太王将が五冠達成から一夜明けて会見

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2022年2月13日14時32分 投稿

    【視点】藤井聡太王将は、口語では使わないような言葉で思いを表現することがあり、そのたびに話題になってきました。中学生の頃から「僥倖」や「望外」という言葉を使っていたのは有名なエピソードですが、今回の「森林限界」にも驚かされました。 カズオ・イシグロの小説「クララとお日さま」の感想を聞いたときも「実際社会に示唆するところがある」といっていました。ジッサイシャカイニシサ、と音だけで聞くと、一瞬うまく変換できませんでした。 かつて、藤井王将は手を読むときに「必ず言語は使います。読む前にその局面における目的設定や、ある程度の方針を決めます」と語っていました(法学、思考に共通点 藤井聡太七段に憲法学者・木村草太さんが聞く:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/DA3S13834239.html ) 言語思考に長けているからこそ、豊かな語彙が時折口語にも現れるのかもしれません。 ちなみに羽生善治九段は英語でインタビューに応じられるほど、語学にも力を入れています。棋士の魅力は盤上だけでは語れないなと改めて思いました。

  • 佐藤天彦九段が勝利 羽生善治九段は連勝すれば残留 将棋A級順位戦

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2022年1月14日12時54分 投稿

    【視点】羽生善治九段がA級に残留できるかどうかは、将棋ファンならずとも注目しているのではないでしょうか。自力での残留の可能性は出てきましたが、次の永瀬拓矢王座戦に敗れた瞬間に降級が決まってしまいます。 A級から降級するのは2人。現状では4勝3敗以上の佐藤天彦九段までが残留を決めています。順位戦は同じ成績になっても、前期の成績に基づく「順位」が下位の棋士が降級します。 羽生九段がもし次に敗れてしまうと、最終戦に勝ったとしても3勝6敗。現在3勝の棋士のうち、羽生九段より順位が下位なのは永瀬王座だけなので、次の直接対決で永瀬王座が「4勝目」をあげると、羽生九段は誰も逆転できなくなってしまいます。 もし永瀬王座に勝ったとしても、最終戦に敗れると残留のケースは一つだけ。永瀬王座ー山崎隆之八段戦で、永瀬王座が敗れた場合です。 とても厳しい状況ですが、こういった大きな勝負を勝ってきたのが羽生九段。固唾をのんで勝負の行方を見守りたいと思います。

  • 深夜の1分将棋、藤井聡太四冠が敗れる 名人戦B級1組順位戦

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2022年1月14日11時22分 投稿

    【解説】「鬼のすみか」と呼ばれるB級1組順位戦は、まさに鬼勝負だらけの最終盤を迎えることになりました。残りは2局。昇級の可能性があるのは以下の4人で、対戦相手は次の通りです。(冒頭の数字は前期の成績に基づくリーグ内の順位) 11)藤井聡太竜王(8勝2敗) 阿久津主税八段 佐々木勇気七段  7)千田翔太七段(8勝3敗) (抜け番) 木村一基九段 1)稲葉陽八段(7勝3敗) 松尾歩八段 郷田真隆九段 12)佐々木勇気七段(7勝3敗) 郷田真隆九段 藤井聡太竜王 次局にA級昇級者が決まるケースは、藤井聡竜王が勝って、稲葉八段が敗れた場合のみです。この場合は、藤井竜王が最終戦で佐々木七段との直接対決に敗れて同じ「3敗」になったとしても、リーグ内の順位は佐々木七段より藤井竜王が上です。同成績だと順位が上の棋士が昇級するので、逆転できません。そうなると藤井竜王の成績を超える可能性があるのが千田七段のみとなり、藤井竜王の昇級が決まります。 ただ、ことはそう簡単ではありません。4人の対戦相手のうち、郷田九段をのぞいた棋士はいずれも降級争いをしています。いずれも実力者ですから、鬼のような強さを発揮してくるでしょう。 もし藤井竜王、稲葉八段ともに勝った場合でも最終局は大変です。藤井竜王は佐々木七段との直接対決が待っています。佐々木七段は、藤井竜王の30連勝を阻んだ棋士としても有名です。しかも藤井竜王は少し不利とされる後手番です。 もし藤井竜王が敗れると、最終成績は9勝3敗ということになります。そして千田七段が木村九段に、稲葉八段が郷田九段に勝つと、この2人も9勝3敗で並びます。ただ、2人とも順位は藤井竜王より上。昇級は稲葉八段と千田七段ということになります。 最後の対局になる3月9日は、いくつもの対局が昇級・降級に絡むような目が離せない展開になるかもしれません。

  • 藤井聡太竜王に木村一基九段「飛車振らない?」 将棋・朝日杯を展望

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年12月15日15時43分 投稿

    【視点】収録に立ち会いましたが、心から面白いと思えるイベントでした。藤井聡太竜王と木村一基九段は、タイトル戦でも盤を挟んで「対話」してきた2人です。そんな信頼からか、普段の会見などでは聞けないようなコメントが次から次へと飛び出しました。 イベントの最後に、村瀬信也記者が藤井竜王に「2022年は20歳になる年ですが」と尋ねました。藤井竜王が笑顔で「お酒には気をつけたいと思います」というジョークで返していたのも印象的でした。 (ちなみに木村九段は、お酒がとても好きなことで有名です) 朝日杯の決勝トーナメントを戦う棋士たちについて、2人が語り合うところは永遠に聞いていられるような時間でした。記事冒頭にある2分のダイジェスト版を作りましたので、こちらで少し雰囲気を感じて頂きながら、ぜひ本編(約1時間)をお楽しみいただければと存じます。(申し込みはこちらです。https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11006400) 最後に、撮影後のこぼれ話を。藤井聡太竜王がイベント中に好きな車両について語っているのですが、「車両のどこを楽しんでいるんですか」とお尋ねしたら、「乗り心地」とおっしゃっていました。電車に乗るのが本当に好きなんですね。

  • 藤井聡太竜王が松尾歩八段を破り、7勝目 将棋・B級1組順位戦

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年11月17日12時44分 投稿

    【視点】藤井聡太竜王が棋士の序列1位になって、初めての対局でした。竜王のタイトルを獲得した直後。疲れもあったと思いますが、切れ味鋭い一瞬の反撃を決めて勝利しました。藤井将棋らしい鮮やかな1手でした。 感想戦ではいつも通り、朗らかな笑顔を浮かべながら松尾歩八段の質問に丁寧に答えていました。ただ、局面をじっと考えはじめると表情が一変します。瞳に何も映っていないような深い集中状態になり、対局室全体の空気がすっと空気が冷え込んだ気がしてくるほどでした。恐ろしいとすら思います。これは羽生善治九段が集中している時にも感じるものです。記事冒頭の動画で対局中や感想戦の様子をご覧頂けますが、肌で感じる空気感はなかなか伝えきれません。 明けて17日は「将棋の日」。日本将棋連盟のHPには「1975年に制定したものだ。これは江戸時代中期から御城将棋が11月17日(旧暦)に行われていたことにちなむ」とあります。徳川将軍の御前で年に1回行われた対局のことだそうです。 長い将棋の歴史の先端に立つ19歳は、深い集中を続けてどんな歴史を刻んでいくのか。記事や映像に記録しつつ、見守っていきたいと思います。

  • 藤井聡太三冠、むずむずと動いた手 木村一基九段「折れてしまった」

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年10月27日13時31分 投稿

    【視点】オンラインゲーム「将棋ウォーズ」などを使い、プロ棋士が対局をユーチューブでゲーム実況する時代になりました。将棋連盟ライブ中継アプリ「日本将棋連盟モバイル」の棋譜中継では、手の解説を対局の進行を大きな時差なく読むことができます。将棋の楽しみ方は、ますますリアルタイム化、多様化しています。 もっとも伝統的な楽しみ方の一つが、新聞の観戦記です。観戦記者が棋士たちの表情も交えながら、盤上の攻防を読み解いていくものです。新しい将棋ファンは「観戦記」という言葉自体に馴染みがない方もいると思いますが、優れた観戦記は文学だと私は思っています。ただ新聞紙面に特化したつくりになっていて、なかなかデジタルでは読まれてきませんでした。 冒頭に書いたとおり、将棋界はSNSやライブ中継などのリアルタイムの情報発信が多くなり、とても充実しています。一方で日々の対局を追うので精いっぱいになり、せっかくの対局をじっくり味わう機会がないようにも感じます。 この対局は9月20日にあったものです。最も遅い情報発信として、時間を置いてもう一度対局を味わう楽しさがファンに根づけば、観戦記がもっと読まれるようになるかもしれない。そんな思いを込めて、デジタル記事を編集してみました。

  • 扇子に記した「雲外蒼天」 就位式後に明かした藤井聡太棋聖の思い

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年10月11日11時48分 投稿

    【視点】藤井聡太三冠のすごさは、将棋を指さない人たちにどう伝えればいいのか。佐藤康光九段は「フルマラソンの残り100メートルを10秒切って走るような感じ」と表現しました。(ちなみに佐藤会長自身は「1秒間に1億と3手読む棋士」といわれています) これまでも「神の手」「AI超え」「バケモノ」といった表現がありましたが、いずれも藤井三冠が人間離れしていることを伝えようとしたものだと思います。 棋士には「光速流」「不倒流」「さばきのアーティスト」といったネーミングがつくことがあります。かつて藤井三冠の師匠、杉本昌隆八段が「ネーミングがつくと、指していてやりがいもあります」と語っていました。杉本八段は藤井三冠が3次元の目で盤面を見ていることから「3Dアイ」と名付けたそうですが、「いっこうに流行らない」と笑っていました。 (https://youtu.be/cImmVgzfsg8) 最近ではAIの評価値がきれいに上昇していく「藤井曲線」が話題になりましたが、特定の「二つ名」では収まらないのが藤井流なのかもしれません。人間離れした藤井将棋ですから、記者たちも表現の限界を超えて伝えないといけないのでしょう。

  • (三谷幸喜のありふれた生活:1055)特別編 小説「殺意の湯煙」:1

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月30日18時14分 投稿

    【視点】あの古畑任三郎が復活しました。前回の小説「一瞬の過ち」(https://www.asahi.com/articles/ASN4Q5K7HN4PUPQJ00C.html)の時は、田村正和さんの演じる古畑任三郎が頭の中にありありと浮かんできました。きっと今回も古畑任三郎が登場した瞬間、あの独特の節回しが聞こえてくるはずです。 三谷さん自身が書かれているように、田村正和さんが亡くなった今、「古畑任三郎」の新作が作られることはありえない。でも小説なら、いつでも頭の中に古畑任三郎を感じることができます。 ミステリーを愛し、田村正和さんを心から尊敬していた三谷さんの「追悼文」でもあるのでしょう。小説を思い切り楽しんで、何度でも田村正和さんの古畑任三郎を復活させたいと思います。

  • 対局中、棋士に抜き打ち持ち物検査 AI不正対策で囲碁の日本棋院

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月24日12時40分 投稿

    【視点】スポーツ界のドーピングと似ている問題だと思います。抜き打ち検査も、不正使用を防ぐために踏み込んだ措置を取った結果でしょう。さまざまなものがインターネットと接続できる時代になれば、もっと踏み込んだ対策すら必要になるかもしれません。 ですが、抜き打ち検査の方法がこれでいいのかは考えていく必要がありそうです。ブザーが鳴り、対局がスタートした瞬間に時計を止めるというのは、対局自体への影響が少なからずあるはずです。すでに昼夕食時の外出禁止といった不正をさせない環境作りも進んでいます。疑いの目をもたれないようにしながら、対局に集中できる環境をつくっていくのは容易ではありません。 スポーツ選手はドーピングを疑われないようにするために、差し入れも断ることがあるそうです。検査のために突然、早朝に起こされるという話も耳にします。棋士たちにも、これまでと違った対応が求められる時代になっていくのは間違いないでしょう。

  • 藤井聡太三冠が見せたサーカスのような王手 木村一基九段の隙突く

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月21日12時52分 投稿

    【視点】ABEMAの将棋中継では、AIの評価値を示すのが定番になっています。画面上部に「先手59%-後手41%」というような表示がされていて、どちらが勝っているのか、野球のスコアを見るかのように分かります。初めて将棋を観る人への入り口を大きく開けている功績は、とても大きいと思います。AIの示す指し手を追って「なるほど、こんな手順があるのか」と知れるのも、楽しみ方の一つでしょう。 ただ、AIが優勢という評価を下していても「人間的には互角」という局面もあります。「人間にはとても指せない」という手を前提にしているからです。羽生善治九段と豊島将之竜王の対局では、羽生九段が「優勢」とされた局面で投了したことが話題になりました。 逆にAIがない方が、人間的な解説の妙で楽しめることもあります。答えが見えないなかで、ああでもない、こうでもないとみんなで「盤面を突っつく」のも、大切な将棋の魅力だと思います。 なかなかどちらがいいとは言いにくいと思いますが、例えば局面の「複雑度」をAIが判定していくようになればどうでしょうか。人間には難しい局面なのかどうかが分かれば、評価値だけに一喜一憂しすぎないで対局を楽しめるようになるのかもしれません。 さて、藤井聡太三冠といえばスケジュールが過密になり、対局が続いています。疲れもたまっているはずですが、昨日の終局後はいつも通りの足取りで、スニーカーを履いて帰っていかれました。

  • 快進撃の藤井聡太三冠、「七冠」達成時の羽生善治九段と同じ?違う?

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月14日18時30分 投稿

    【視点】羽生善治九段と藤井聡太三冠、似たような質問にどんな言葉を返したのかを比べてみると、勝負への向き合い方の違いが少しだけ浮かぶような気もします。 例えば「神様にお願いしたいこと」では、藤井聡太三冠は「神様がいるのなら、1局お手合わせしてもらいたい」と答え、羽生九段は1988年のインタビューに「将棋というのは、結局最後はどうなるのか、たとえば先手は本当に必勝なんだろうかとか、そういう将棋の結論を教えてもらいたいですね」と答えています。 モチベーションの維持についてはどうでしょうか。羽生九段は2012年の取材に「あまり強く維持しようとすると、かえって苦しくなる」と割り切りつつ、「遠い目標ではなく、近くの目標を設定するのが大事ですね。しかも、目標にはバリエーションをつけたほうがいい」と話していました。一方の藤井三冠は「結果ばかりを追い求めると、それが出ない時にモチベーションを維持するのが難しくなってしまう。結果よりも内容を重視して、一局指すごとに改善していけるところが新たに見つかる。それをモチベーションにして、やっていきたい」すると言っています。 これから藤井聡太三冠は、タイトル戦前後の記者会見などが増えていくでしょう。羽生九段が全冠制覇していくプロセスで語った言葉との違いはあるのか、はたまた将棋観は変化していくのか。野球でイチローの言葉に注目が集まるように、歴史を作っていく棋士の言葉はファンの楽しみの一つです。

  • 将棋の藤井聡太二冠が史上最年少で三冠に 叡王戦五番勝負を制す

    高津祐典
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    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月14日12時33分 投稿

    【視点】過去に三冠になった棋士は9人だけで、いずれも名人になっています。しかも史上最年少での達成なので、勢い「次」に期待が先走ってしまいがちです。八大タイトルの状況を整理すると… 名人 B級1組順位戦に在籍(今年度の挑戦はなし) 竜王 タイトル挑戦決定 王位 保持 王座 挑戦者決定トーナメントで深浦康市九段に敗退 棋王 挑戦者決定トーナメントベスト16(次戦は斎藤慎太郎八段) 叡王 保持 王将 挑戦者決定リーグ入り 棋聖 保持 このように、さらなる戴冠の可能性もあるからです。と、ここまで書いておきながらなのですが、藤井聡太三冠からは「結果」を意識する言葉はほとんど聞くことができません。かつて語った通り、「結果ばかり求めていると逆にそれが出ない時にモチベーションを維持するのが難しくなってしまう」という勝負哲学があるからでしょう。 でも今後は、藤井三冠が「結果」を意識してしまう局面もくるはずです。あの羽生善治九段は1995年のインタビューで全冠制覇について問われ、こう語っています。 「(意識したのは)一昨年の夏、王位を取ってタイトルが五つになった時です。その年は暮れの竜王戦に負けて、早くも夢が消えた。だから、今年度は七冠にどこまで迫れるか、自分にチャレンジしていこうと。幸い、名人戦と竜王戦に勝てて六冠まできましたが、正直言って、昨年末の王将リーグで挑戦者になるまでは苦しかった。もう一つも負けられない。毎局、カド番に追い込まれた心境でした。『夢のまた夢』が『努力目標』になり、最近になって現実味を帯びてきた。いまは、もちろん意識しています」【95年2月7日朝日新聞夕刊 夢の七冠 自身の重圧に負けるのは嫌(羽生善治の世界:2)】 より全冠制覇が現実味が帯びてきたときに、藤井三冠がどうプレッシャーと向かっていくのでしょうか。その時にどんな言葉を語ってくれるのでしょうか。できるだけのびのびと将棋を指してほしいと願いつつ、藤井三冠の言葉にも注目してしまいます。

  • 白玲戦、奨励会、将棋をする女の子へ 西山朋佳女流三冠が思うこと

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月10日17時32分 投稿

    【視点】将棋界には女流棋士はいますが、女性棋士が一人もいません。棋士と女流棋士はともにプロ棋士ですが、なるための制度が異なります。ざっくりと、棋士になるほうがはるかに難易度が高いといえます。 西山女流三冠はプロ棋士に最も近づいた女性です。その彼女が「その環境は修行でしたね」「よくあの環境でやれたな」という言葉は、とても重く受け止めないといけないと思います。日本初の女性医師になった荻野吟子とか、初の大学生になった女性とか、そういった人たちのことを連想してしまいました。 麻雀のMリーグについて、ABEMAでおなじみの藤田晋チェアマンがこんなことを語っていました。 「麻雀プロの世界は男社会で、男が強いと決めてかかることもあります。活躍の場も男性プロが多くて、そういうこと自体が格差を生み出しています。場を作って女性プロを育てていかないと、という思いがありました」 https://www.asahi.com/articles/ASP6H7F73P6GUCVL01T.html 将棋も似たところがあると思います。将棋も麻雀も、老若男女が楽しめるものです。プロをめざすのに性別が壁になっていたら、せっかくの魅力が半減してしまいます。女性の競技人口を増やすだけでは不十分で、女性が強くなれる環境をどうやったら作れるのか。裾野を広げたうえで、頂上に登ろうとする道を整える必要があるはずです。 新しく創設された女流タイトル戦の白玲戦は、活躍の「場」を提供している一つだと思います。将棋界がより広くファンを増やしていくためにも、西山女流三冠の経験はとても大きなものがあると思います。

  • 井山名人連勝か、一力挑戦者タイか 「肝」の囲碁名人戦第2局

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月7日22時47分 投稿

    【視点】囲碁界の大きな物語というような視点からも、重要な第2局になると思います。 囲碁界は将棋界と同じく、4人がタイトルを分け合っています。井山裕太名人=棋聖・本因坊・碁聖=と、芝野虎丸王座、許家元十段、そして今回の名人挑戦者でもある一力遼天元です。 将棋界は「4強」と呼ばれる時代から藤井聡太二冠が一歩抜け出すか、それともほかの棋士たちが押しとどめるかというせめぎ合いが続いていますが、囲碁界は魔王と呼ばれる井山裕太名人が第一人者の座を守るか、次世代の3人(令和三羽烏)が牙城を崩すかの争いが続いています。 井山名人と一力天元は2017年から18年にかけて、王座戦五番勝負と天元戦五番勝負、棋聖戦七番勝負という「十七番勝負」を戦いました。結果は一力天元が10連敗して、すべてのタイトルを井山名人が防衛しました。ただ当時、一力天元は早稲田大学の学生でした。ありえない日程をこなして学業と棋士の両立をはかっていました。 今回は棋士に専念して迎えた覇権争いです。ここから巻き返して名人を奪取し、かつ挑戦権獲得が近い棋聖も奪えば、新しい時代を呼び込むことになるでしょう。ですが1局目、2局目と連敗すると、どんどん心理的にも苦しくなってしまいそうです。

  • 深夜の逆転劇 菅井八段が佐藤天彦九段下す A級順位戦

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月4日10時56分 投稿

    【視点】将棋観戦を楽しむ「観る将」の醍醐味が味わえる熱戦でした。 終盤、先手の菅井竜也八段の王さまは上部に脱出して盤上を漂い、今にも寄せられてしまいそうな時間が続きます。菅井八段は自らの頰を何度も張り、太ももを叩いて気合を入れました。佐藤天彦九段も頭に手をやり、どんどん前のめりになっていきます。二人の表情やしぐさには盤上の難解さがにじみ出ていました。棋力が追いつかずに局面が分からなくても、胸に迫るものがあります。 菅井八段が巧手4六銀を指してから投了までの7分間には、ドラマが凝縮していました。敗北をさとり、脇息にもたれるように崩れた佐藤九段。盤上で攻防を14時間以上も繰り返した末の「7分」です。以前、飯島栄治八段がA級順位戦を評して「A級は別のものと闘っている。将棋だけじゃなく、人間力のすべてを身体から出して、価値に結びつけている」と語っていました。まさにすべてを出し切ったアスリートの姿がありました。 ちなみに、菅井八段は昼食、夕食とも同じ店の同じメニュー「ヤキニク」を注文していました。余計なことは一切考えたくない、すべての思考は将棋に注ぐという決意のようなものを感じました。対局はユーチューブ「囲碁将棋TV」で中継していましたが、トップ棋士が全身でぶつかり合う姿に圧倒されました。終局後、二人はすぐに切り替えて対局を振り返る「感想戦」にのぞんでいますが、最終盤との表情の違いにも心打たれます。

  • 「中年の星」木村一基九段が先勝、タイトル奪取へ好発進 将棋王座戦

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月1日22時34分 投稿

    【視点】将棋界は八つのタイトルを渡辺明名人=棋王・王将、豊島将之竜王・叡王、藤井聡太王位・棋聖、永瀬拓矢王座の4人が保持していて、「4強」と言われています。タイトル戦も4強同士の争いになることが増え、藤井二冠が一歩抜け出すか、それとも4強時代が続くのかが注目されています。 そんな中で、王座戦は4強の一角に48歳のベテラン・木村一基九段が挑む構図になっています。王座戦の挑戦者決定戦では、将棋連盟会長でもある51歳の佐藤康光九段と挑戦権を争いました。4強に注目が集まりますが、将棋以外の仕事でも忙しいベテラン棋士がそれぞれの方法で向上心を忘れずに励む姿は、いつも胸を打たれます。 角換わりとなったこの対局では、互いの切っ先を見切りながら身をかわすかような際どい攻防が続きました。ただ、AIの評価はずっと永瀬王座が優勢。木村九段は額に手を当てながら盤面に向き合い、じっと耐えてるように見えました。そして最後に居合抜きのような角捨て。しびれました。 一方で、敗れた永瀬王座も深すぎるほど深い研究が輝いていました。雑誌「Number」のインタビューに、将棋は自分にとって「生命」と語るほど、勉強に勉強に勉強を重ねて強くなったのが永瀬王座です。永瀬王座が「しっかり準備して」とか「頑張ります」というと、別の意味がこもって響きます。 「不倒」を掲げる永瀬王座と、「百折不撓」の木村九段。失敗だらけの自分の人生につい重ねてしまいます。王座戦も4強同士の争いにひけをとらない注目対局だと思います。

  • ホームレスへの差別発言 「過激さで稼げる」仕組み、変えるには

    高津祐典
    高津祐典
    朝日新聞文化部次長=囲碁将棋、文化
    2021年9月1日14時54分 投稿

    【視点】ユーチューブの動画は投稿する際に、広告掲載に適しているかの自己評価が問われる仕様になっています。問われるのは以下の点です。 ・不適切な表現・アダルトコンテンツ・暴力・衝撃的なコンテンツ・有害または危険な行為・快楽を得るための薬物に関するコンテンツ・差別的または中傷的なコンテンツ・銃器に関連するコンテンツ・デリケートな事象・物議を醸す問題 例えば差別的または中傷的コンテンツでいえば、広告をオフにするものとして具体的に「保護対象グループに対する誹謗を目的とする発言、または保護対象グループが劣っていると暗示 / 言及する発言(「この国の人は全員最低だ」など)」といった例がユーチューブ側から示されています。 上記を含んでいるかどうかを自己判断して、ユーチューブ側に毎回送信する必要があります。「入力内容が正確ではないと判断される明らかな兆候が見られる場合は、収益化ステータスが変更されることがあります」と案内されています。 ただ、これらの自己診断を丁寧にしているクリエーターがどれほどいるのかは疑問です。どの表現だと広告表示が外されるのか具体例が示されていますが、逐一チェックしている人は少数でしょう。 投稿者へのアプローチだけでなく、迅速対応してくれてかつ信頼できる相談窓口を設けるなど、差別を収益につなげない仕組み作りがより必要になっていると思います。

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