上原佳久

上原佳久うえはらよしひさ

朝日新聞記者=文化、文芸
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最新コメント一覧

  • 本屋大賞の逢坂冬馬さん「絶望することはやめる」ロシアへの思い語る

    上原佳久
    上原佳久
    朝日新聞記者=文化、文芸
    2022年4月11日15時43分 投稿

    【視点】逢坂冬馬さんの本屋大賞の受賞スピーチに感銘を受けました。SNS上でも反響が広がっているようです。 「この虐殺を含むひどい侵略戦争について、ロシア国民が一体となって支持しているようにも見えるでしょう。しかし(中略)欺瞞に背を向け、長期拘束の危険をおかし、あるいは最悪の場合、戦地に行かされる可能性があるにもかかわらず立ち上がった人たちのことを私はロシアととらえたいし、その小さな声に耳を傾け、忘れないようにしながら、その声をできるだけ増幅させていきたい」 先週、ロシアのリベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」編集長が列車内で突然、赤いペンキをかけられるというニュースもありました。直接的な身の危険を感じながら、それでも「国民にとって心地の良い物語」に異を唱える人たちが、ロシアに確かにいることをあらためて知りました。 逢坂さんがスピーチで触れた、個の「小さな声に耳を傾け」ること。戦争をモチーフにした受賞作「同志少女よ、敵を撃て」を読むと、彼がまさに登場人物一人ひとりの「小さな声に耳を傾け」るようにして物語を紡いだことが伝わってきます。

  • 見城徹が語る石原慎太郎 「弟」「天才」はこうして生まれた

    上原佳久
    上原佳久
    朝日新聞記者=文化、文芸
    2022年2月10日6時1分 投稿

    【視点】私は作家・石原慎太郎さんを一度も取材したことがなく、一読者としての感想です。 初めて石原さんの小説を読んだのは2000年代前半、彼が都知事の立場で、外国人排斥、女性蔑視と受けとめざるをえない発言を繰り返し、物議をかもしていたころです。古本屋で私小説的な短編集『わが人生の時の時』(新潮文庫)をたまたま見かけ、学生だった私は失礼ながら「どんな古くさいことが書いてあるのか、ひとつ確かめてみよう」と手に取りました。 ところが、読んでみると印象はずいぶん違いました。そのうちの一編「落雷」では、ヨットレースに向かう洋上で、船をかすめるように稲妻が海面を撃った瞬間がとらえられています。 〈次の一瞬、目に見えぬ巨きな手が、見上げる空を引裂き何かをそぎ落して過ぎた。そして私たちは髪の毛ひと筋の際どさでその手の内からこぼれて逃れることが出来ていたのだ。私たちの船から一艇身もへだてぬ水の上に、すがすがしいほど鮮かな紫色の炎の大きな柱が立ち上がった〉(「落雷」) 死のほとりに立たされ、そこからかろうじて引き返すことで、生のエネルギーを得る。生死を分けるのはただの偶然に過ぎない。そして、その偶然の意味をあえて問うことはない。そんなモチーフが、乾いた緊密な文体によって、繰り返し描かれます。 私は石原さんの政治的思想には共感しませんが、彼が書いた小説の中には、それでも否定しえない魅力を持つ作品があると感じます。と同時に、石原さんのこれまでの差別的発言は決して容認できず、それは社会が容認してはならないことだと表明する必要があるとも考えます。 そのうえで、私はこのインタビュー記事を、石原さんという特異な魅力を持った作家・政治家を内在的に理解する手がかりをあたえてくれるものとして、とても興味深く読みました。何が石原さんを突き動かしていたのか、読む人を引きつける魅力の源泉は何だったのか。それらを知ることは、なぜ「私たち」は(数々の差別的発言があったにも関わらず)石原さんという政治家を選び続けてきたのか、を考えることにもつながると思います。 長々と書いてしまいましたが、一読者としては、作家・石原慎太郎の本を自分の心の本棚のどこに挿したらいいのか、まだ分からずにいる。というのが正直なところです。

  • 文庫の用紙を出版4社が共通化「各社のアイデンティティーだったが」

    上原佳久
    上原佳久
    朝日新聞記者=文化、文芸
    2022年2月5日3時0分 投稿

    【視点】恥ずかしながら、いままで文庫本の用紙の違いを意識したことがありませんでした。遅まきながら、記事中の4社の文庫本(この数年内に刊行された「オリジナル用紙」のもの)を本棚から取り出してくらべてみると、違いは明らかでした。 手触りは、中公文庫と河出文庫がしっとりシルキータイプ。ハルキ文庫とちくま文庫は手になじむサラサラタイプと感じます。手触りは似た傾向でも、ややグリーンを帯びた中公文庫と、少し赤みがかった河出文庫とでは、本を開いた時の印象がずいぶん違います。 岩波書店の本で有名な「精興社書体」など、活字の違いにはわりあい気がつくものですが、用紙にもこんなに違いがあったとは。たとえ意識はされなくても、手触りまで含んだこだわりの読書体験を提供することが、きっと出版各社の「アイデンティティー」だったのですね。 そんな用紙の共通化は、本を届け続けるための苦渋の決断だったことと思います。新しい用紙の色みは、手触りはどんなものか? 街の書店で手に取って確かめてみます。

  • ダンスの先生から直木賞作家の今村翔吾さん「30歳からでも夢叶う」

    上原佳久
    上原佳久
    朝日新聞記者=文化、文芸
    2022年1月20日21時47分 投稿

    【視点】今村翔吾さんが歴史時代小説のおもしろさに目覚めたのは、小学5年生のとき。書店で池波正太郎の長編『真田太平記』を買ってもらい、夏休みに読破したのがきっかけだそうです。 記事の中で「僕はいま書店も経営していて」と話しているのは、昨年11月にリニューアルオープンした「きのしたブックセンター」(大阪府箕面市)のこと。元の経営者が廃業も視野に入れていたところ、縁あって今村さんが経営を引き継いだといいます。 書店調査会社アルメディアのデータによると、全国の書店数は2000年の2万1654店から、20年でほぼ半減しています。全体の数字の上では半減ですが、生活圏から「街の本屋さん」が消えてしまったという人も少なくないのでは。 今村さんが書店の経営を引き継いだのも、かつての自分のような子どもたちに本と出会ってほしいからだそうです。受賞が決まる前の取材の際には「直木賞を取ったら、僕の物語が終わってまう!」と冗談めかしていましたが、作家として、街の本屋さんとして、これからの出版界を盛り上げてくれそうです。

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