鵜飼啓

鵜飼啓うかい さとし

朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
関心ジャンル:外交・安全保障国際メディア

最新コメント一覧

  • マスク外す?外さない? 自分で決められない日本社会の空気感

    鵜飼啓
    鵜飼啓
    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年6月15日11時29分 投稿

    【視点】 米国でマスクに対する拒否感が強いのは、政府という権威に対する反発という森本あんりさんの指摘はその通りだと思います。外国から見ればアメリカは一つの国に見えますが、実際には州という小さな「国」が集まって出来ているようなものです。コロナに対する規制もそうでしたが、さまざまな決まりも州ごとに異なります。市民にしてみれば、自分たちの意見を政策に反映できるのはせいぜい州レベルまで。連邦政府に対しては「自分たちの思いを反映していない、遠い存在」という思いが強いのです。  かつてシートベルト着用義務化をめぐる論争がありました。交換留学でアメリカに滞在した1980年代後半、アメリカ人から「事故を起こしてけがをしようが、自分の問題。シートベルトをするかどうかは個人の自由で、政府に決められるいわれはない」と言われて、ビックリしました。今ではシートベルトに対する拒否感はそれほど強くないと思いますが、こうした思いは脈々と続いているようです。

  • トランプ氏、中間選挙で存在感 推薦すれば人気、対立には「刺客」

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年5月1日12時38分 投稿

    【解説】トランプ氏が影響力を発揮できる背景には、「予備選挙」という仕組みがあります。本選に臨む各党の候補者を決める選挙で、州ごとに違いはありますが、基本的にはその党(あるいは候補者)の熱心な支持者たちが投票しています。  アメリカの世論・データ調査機関ピュー・リサーチセンターによると、前回の中間選挙(2018年)の際には、連邦下院議員の予備選では投票率は登録有権者の19.6%にとどまりました。これでもその前の14年の13.7%に比べると「大幅アップ」でした。  つまり、予備選には一部の人しか投票に行かないのです。そういう中で、トランプ氏は熱狂的な支持者を抱えているので、大きな影響力を持ちうるのです。国民全体で見るとトランプ氏の支持者が1、2割だったとしても、予備選ではこの人たちの支持を得られないと勝ち抜くのが難しくなるというわけです。このため、共和党内では穏健派が追い落とされたり、立候補断念に追い込まれたりして、ますます「トランプ党」の色彩が強まっています。  ただ、これが本選でどういう影響があるのかは見極めが必要です。共和党支持者の中にはトランプ氏に反対する人たちもいます。予備選で選ばれた候補があまりにトランプ色が強いと、共和党の支持者の一部が民主党候補に流れる可能性があります。特に両党の勢力が拮抗している地域では、そうした票の動向が当落を左右しかねません。予備選ではトランプ氏にすり寄りつつ、本選では距離を置こうとする候補が出てくるかもしれません。

  • ツイッター買収も「楽しんでる」? マスク氏が変えたいSNSの未来

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年4月26日12時39分 投稿

    【視点】ツイッターなどSNS上で陰謀論や虚偽言説、ヘイトスピーチが増幅し、そのたどり着いた先がアメリカの民主主義の根幹を揺るがす21年1月6日の連邦議事堂襲撃事件でした。マスク氏がツイッターを手中に収めることで、パンドラの箱を開けてしまうのではないかという懸念が強まっています。  こうした懸念が生じる背景には、マスク氏自身がツイッターで根拠のない言説を展開するなどしてきた経緯もあります。政治的なスタンスは伝統的な保守かリベラルかの構図では分類しにくいようですが、米国で新型コロナ感染が拡大した当初、マスク氏は自宅待機令に「ファシスト」などと反発し、感染対策の厳しいカリフォルニアから緩いテキサスにテスラの本社を移転するなど、議論を呼ぶ振る舞いも見せてきました。こうした人物に、ときに一国の政府以上に強大な力を持つとも言われるプラットフォームを委ねてしまっていいのだろうかというわけです。  マスク氏の言う「表現の自由」とはどういうものなのか、ツイッターの経営にどう関与していくのかなど見極めが必要です。アカウントを「永久凍結」されたトランプ前大統領は今のところ「買収されてもツイッターには戻らない」と言っていますが、利用したいと言い出した場合に認めるのかどうかが一つの試金石になりそうです。

  • (現場へ!)「かわいそう」を問う:1 人気者15匹、苦悩の安楽死

    鵜飼啓
    鵜飼啓
    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年4月12日17時15分 投稿

    【視点】日本ではまだ一般的ではないかもしれませんが、昨年まで暮らしたアメリカではペットの安楽死が当然というか、むしろ意味も無く苦痛を長引かせるのは残酷だから「やるべきだ」と言う考えが主流でした。私も19年ともに過ごしたネコをニューヨークで看取りましたが、調子が悪くなって空気を食べるようにあえぐようになり、あまりにかわいそうで最期は安らかに眠ってもらいました。ただ、獣医からはもっと早く、「寿命が来た」「もう助からない」といった段階で「安楽死も検討したらどうか」と薦められました。それから何カ月か生き、最期の時間を過ごすことができたのですが、何が正しい選択なのか、難しい問題だと感じました。

  • 台湾、日本食品の禁輸の大半解除 5県産の一部食品は継続

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年2月8日12時45分 投稿

    【視点】ようやく、という感じの解禁です。蔡英文政権は2016年の発足直後から、5県産の食品の輸入解禁という方針を打ち出していました。当時、解禁に向けた公聴会が台湾各地で開かれたのですが、野党に転落した国民党の立法議員や地方議員が強硬に反対。支持者と一緒に公聴会会場に乗り込んで議事の進行を妨害し、流会になる事態が相次ぎました。  反対派が使うのが「核災食品」という言葉です。危険な食べ物だぞ、と市民感情をあおる狙いがあるのだと思います。ただ、これらの産地の食品は安全が確認され、日本で普通に流通しているものです。今でこそコロナで来られませんが、それ以前は台湾では訪日旅行が大人気でした。おそらく台湾の方たちも日本に来たときには産地を気にすることなく食事を楽しまれていたのではないでしょうか。  国民党側としては「食の安全」を旗印に政権に打撃を与えたい、という思いがあります。また、同党の支持者の中には歴史的な経緯から日本のことをよく思っていない人たちもいます。方針を打ち出してから解除まで6年もかかったのは、こうした政治的対立の材料に使われてしまったという面が大きかったと思います。

  • 五輪でデジタル人民元をPRする中国の狙い 揺らぐユーロと日本円

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年2月5日12時40分 投稿

    【視点】米国の金融制裁の強力さを目の当たりにしたのは、北朝鮮核問題を取材していたときでした。米国は2005年に「北朝鮮の非合法活動を助けた」として北朝鮮が使っていたマカオの銀行バンコ・デルタ・アジアを資金洗浄への関与が濃厚な金融機関に指定しました。これにより、バンコ・デルタ・アジアは国際送金網から閉め出され、北朝鮮も預けていた資金を動かせなくなりました。  北朝鮮は猛反発して当時行われていた核問題をめぐる6者協議が膠着状態に陥るのですが、北朝鮮にとって大きな圧力となり、07年2月には寧辺の核施設の稼働停止などの合意にいたりました。  その後の展開も米国の制裁の強さを感じさせました。米国は結局、北朝鮮の資金を本国に送金することを認めるのですが、各国の金融機関が「そんな変な送金に関わって自分が制裁されたら大変」と言って、送金の中継ぎを断ったのです。このため、しばらくお金を返すに返せない、という時期が続き、これには米国の当局者も頭を抱えていました。

  • 台湾、北京五輪の開閉会式に一転出席へ IOC要請で欠席を取り消し

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2022年2月1日16時44分 投稿

    【解説】スポーツの国際大会や国際会議で台湾をどういう呼称とするかは常に議論を呼んできました。中国が台湾を自国の一部と主張して譲らないためで、台湾の国際社会における苦境を象徴する問題です。  台湾は「国家」としては「中華民国」と名乗っていますが、諸外国の多くは台湾を国として承認しておらず、この名前は国際社会ではなかなか使えません。五輪ではChinese Taipei(中華台北)という名前が使われ、選手がメダルを取った際に掲揚される際などの旗も「国旗」ではなく、台湾の五輪委員会の旗が使われます。  古い話になりますが、2000年のシドニー五輪で女子卓球の試合を取材した際、台湾の選手が試合を終えて退場するときに観客の女性がスタンドから身を乗り出し、中華民国の旗を一瞬さっと広げて見せたのが印象に残っています。  昨夏の東京五輪の開会式では各国は国名のアイウエオ順で入場しましたが、台湾選手団はチャイニーズタイペイや中華台北の「チ」ではなく、「タ」のところで出てきました。実況中継のアナウンサーが「台湾です」と紹介したこともあり、喜んだ台湾の人たちも多かったようです。

  • ビットコインが法定通貨になった国 「ばらまいた」30ドルの成果は

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年12月13日18時15分 投稿

    【視点】2019年6月、ブケレ氏の大統領就任式を現地で取材しました。既存の政治構造を打ち破って当選したブケレ氏には当時の米トランプ政権も期待をかけていましたが、就任後は予測しがたい行動が目立つようです。ブケレ氏は一時、ツイッターのプロフィールで「世界で最もクールな独裁者」を自称していました(今は「エルサルバドルのCEO」と書かれています)。20年には、政権が打ち出した法案を通そうと武装した警官や軍が議会に突入したこともありました。  取材時に自国通貨を廃止して米ドルを法定通貨としていると知って驚きましたが、今度はビットコインです。貧困にあえぐエルサルバドルにとって、海外出稼ぎは大きな「産業」となっています。アメリカなどで約250万人が働いているとされ、海外送金はGDPの約23%にのぼります。ビットコインはこうした送金に便利、といった説明もされています。  一方で、記事にも出てきますが、エルサルバドルではギャングが大きな力を持っていて、旅行書の地図に「危ないから近づいてはいけない地域」が示されているほどです。中でも「MS13」という組織はその凶暴さでアメリカでも知られています。追跡や規制が難しいビットコインは犯罪にも使われやすいとされ、こうした面でもどういう影響があるのか気になります。 *誤字がありましたので投稿し直しました。

  • 七面鳥食べる感謝祭、400年の複雑な歴史 あの大統領も一役

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年12月4日15時32分 投稿

    【視点】 アメリカで取材していた2018年、ちょうど感謝祭(サンクスギビング)の頃に選挙での投票制限をめぐって先住民の方を取材する機会がありました。取材の約束をするときに「感謝祭直前ですが大丈夫ですか」と聞いたら、「自分たちにとっては特別な日でも何でもない」と言われ、「しまった」と思ったことがあります。  アメリカの歴史や文化は欧州から渡ってきた白人の立場から捉えられることが多かったのですが、最近は多様性や少数者の権利という視点から問い直されています。感謝祭のほか、アメリカ大陸を「発見」したとされるクリストファー・コロンブスの最初の航海を記念する「コロンブス・デー」(10月第2月曜日)もその一つ。「発見」によってアメリカ大陸への白人の入植が加速し、先住民の苦難の歴史が始まったからです。このため、コロンブス・デーを「先住民の日」に置き換える動きも出ています。

  • 米バージニア州知事選、共和党のヤンキン氏が当選確実 民主党に打撃

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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年11月3日19時6分 投稿

    【視点】バージニア州は首都ワシントンに隣接した地域など都市部ではリベラルな住民が多く民主党が優勢で、それ以外の地域は保守的で共和党が強いという土地柄。近年は州全体の選挙では民主党が優勢になっていました。それは今回が揺り戻された形です。米紙ニューヨークタイムズがまとめた郡ごとの投票動向を示した地図を2020年の大統領選時のものと比べると、共和党が強い地域では共和党支持がさらに伸び、民主党が強い地域では民主党支持が弱まっているのが分かります。つまり、共和党が州全体で盛り返したと言えます。  ニューヨークの隣のニュージャージー州でも知事選が行われており、民主党現職と共和党新顔が大接戦となっています。開票率88%で236万票余りの集計が終わった時点で、得票差はわずか約1200。当落の判定はまだ出ていません。2州で共和党が勢いを見せているということから考えると、候補者の問題だけでなく、新型コロナ対策やアフガン撤退の混乱など、バイデン政権に対する評価が表れたと言えそうです。バイデン政権は大規模なインフラ投資計画をぶち上げましたが、党内がまとまらず、思うように進められていません。そうした点でも民主党に対する批判が強まっています。今回の結果は共和党や同党に大きな影響力を持つトランプ氏にとって大きな弾みとなり、バイデン大統領は苦しい政権運営を迫られそうです。  

  • ビジネス目的入国、月内にも緩和 短期は待機3日で調整 留学生らも

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年11月2日19時49分 投稿

    【視点】水際対策は大事だとは思いますが、実態に即して対応する必要があると思います。日本社会には「外から来るものは危ない」という思い込みがあるのではないでしょうか。私自身、ニューヨークでワクチンを接種し、出発直前にPCR検査で陰性を確認した上で3月末に帰国しました。まだ日本では一般向けのワクチン接種が始まっていない段階だったので、「ワクチン接種済みの私の方がほかの人よりも感染しているリスクは低いはずなのに」と少し釈然としない思いで14日間の待機をしました。夏の東京五輪で来日した海外の関係者からも同様の声を聞きました。  最近ニュースでも取り上げられていますが、日本入国を待ちわびている留学希望者たちが「入国を認めて欲しい」と声を上げています。かつての経済大国としてのパワーを失いつつある日本に対する海外の学生の関心は弱まっており、留学希望者は日本にとっては貴重な財産です。ワクチン接種など感染対策を条件に水際対策を緩和するのは遅すぎたと言ってもいいくらいだと思います。  解せないのは、ビジネス客を留学生や技能実習生より待機期間などで優遇しようという考えです。ワクチンを接種していれば留学生や技能実習生の感染リスクがビジネス客より高いということはないはずです。どちらも大事なお客さまなので、同等に対応すべきではないでしょうか。

  • カナダで拘束のファーウェイ副会長、米と司法取引 中国へ向けて出国

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年9月25日11時52分 投稿

    【視点】 カナダのトルドー首相は、孟氏逮捕の直後に中国で拘束されたカナダ人2人も釈放され、中国を離れたと発表しました。カナダ側は2人の拘束を「恣意的拘束だ」と強く非難していましたが、中国側は孟氏の事件との関係を否定し、法に基づく措置であると何度も主張していました。米国、中国、カナダの3カ国の間での何らかの「合意」が成立したものと見られますが、2人の拘束はやはり中国の報復で、取引の「カード」だったと言えるでしょう。  カナダは米国の要請を受けて孟氏の逮捕に踏み切りましたが、中国はカナダに対してさまざまな報復措置を繰り出しました。これを受けて、カナダにおける対中感情も悪化しました。一連の経緯で一番苦しかったのは、米中対立のはざまに立たされたカナダだったと思います。

  • 菅首相、月内の訪米検討 バイデン氏との会談視野、国連総会出席も?

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年9月9日9時20分 投稿

    【視点】昨年はコロナでオンラインとなりましたが、毎年9月下旬に開かれる国連総会には多くの首脳が集まり、活発な二国間会合も行われます。日本にとっても、首相が行けば一気に何人もの首脳と会談ができるので、とても大事な外交活動の場でした。今回はどうでしょうか。  総会のサイドでの二国間会合は各国ともに力を入れているので、分刻みでスケジュールが組まれます。支持を失い、退任する首相との会談を相手国が歓迎するとはちょっと思えません。  特に目玉となるのは日米首脳会談ですが、アメリカ大統領は暇ではありません。緊密な同盟関係とは言え、首脳会談を実現させるためには外務省や現地の大使館が奔走して時間を確保するのが常です。バイデン氏にとってはアフガニスタン情勢などをめぐって会いたい相手も多いでしょうし、そうした中で「自分はピンチヒッターだったんだよ」と言いに来られても正直迷惑なのでは。  また、今回時間を確保してしまうと、次の首相が「訪米したい」となったときに、アメリカ側は「こないだ日本の首相と会ったばかりではないか」となりかねず、次の首相の手を縛ることになります。国連総会で演説するのはともかく、日米首脳会談を目指すのはタイミングとしてどうかと思います。

  • タリバン、生活の正常化を強調 銀行や学校の再開を約束

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年8月25日18時6分 投稿

    【視点】 タリバンが本当に女性の権利を尊重するのか、国際社会に受け入れられるためのリップサービスに過ぎないのか、慎重に見極める必要がありそうです。約20年前、当時のタリバン政権がアメリカの空爆で敗走した後、アフガニスタンに取材に入りました。確かカブール郊外だったと思いますが、タリバンから逃れるために捨てた家に数年ぶりに戻ったという話を取材していたら、家の中で何かがさっと動きました。「何だろう」と思ってそちらを見ようとすると「見るな」と制止されました。女性が中にいたようです。女性は全身を覆うブルカをかぶり、家族以外に素顔を見せないというのは何もタリバンの専売特許だったわけではなく、アフガニスタンの農村の風習でもあったのです。  この20年で首都カブールなどの大都市では、女性の教育が進むなど大きな変化がありました。しかし、地方はどうだったのでしょうか。アフガニスタンの中央政府は日本や普通の国のように全国をすみずみまでしっかり統治していたわけではありません。地方には有力な部族がいて、中央政府の統治やサービスは行き届いていませんでした。女性の環境を取り巻く変化も都市部のようにはありませんでした。タリバンはこうした地方に身を潜めて勢力を回復させ、今回カブールに戻ってきたのです。タリバン、特に末端の構成員の考え方は20年前から劇的には変わっていないのかもしれません。

  • 米軍アフガニスタン撤退、蘇るサイゴン陥落 再び敗走か

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年8月16日13時10分 投稿

    【視点】 ブリンケン米国務長官はカブール大使館からの退避が続く中で米テレビのインタビュー番組をはしごし、アフガンに過去20年で1兆ドル(約110兆円)を費やし、米軍などの2300人が犠牲になったなどとして、「大統領は米国にとっての戦争を終えるときが来たと決断した」とその判断を正当化しました。しかし、それだけのお金と犠牲を払って何を成し遂げたのでしょうか。アフガンから伝えられる混乱を見ると、いくら「政策決定に基づく撤退」と言いつのっても「アメリカの敗北」としか見えません。タリバーン時代の再来で今後混乱は長期化し、この間に進んだ女性の教育や社会進出などは揺り戻しが起き、中国やロシアが影響力を強めて地政学的な変化も生まれるでしょう。米国が政府軍に供給した武器や装備を奪い、タリバーンは軍事的にもこれまで以上の力をつけることになります。米軍の撤退はもともとトランプ前政権がタリバーンとの間で合意したことですが、バイデン大統領は就任後に見直しをせず、期限を今月末に先延ばしした上で撤退を進めました。「外交通」を自認するバイデン氏にとっては大きな失点で、自身の再選戦略にも影を落とすことになりそうです。

  • スマホで映したリアルな絶望 アフガン難民命がけの越境

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年8月8日11時59分 投稿

    【視点】 アフガン空爆でタリバーン政権が敗走した後の2002年1月にカブール発で一本の記事を書きました。「廃墟の劇場に歌声 戦乱の幕は下がり、歓喜の第2幕へ」という見出しで、内戦で破壊されて廃墟になり、タリバーンの音楽禁止で使われていなかった劇場に演劇や音楽の公演が戻ってきたという内容でした。記事自体は「写真もの」という写真がメインで短い記事を添えるというスタイルでしたが、当時たくさん書いた記事の中でもどこか心に残っていたものでした。集まった人たちが音楽を聴く喜び、演劇を見る幸せをかみしめていたのが現場でひしひしと伝わってきたからです。  あれから約20年。米軍は撤退を決め、タリバーンが盛り返しています。タリバーンは南西部ニムルーズ州の州都の支配権を握るなど、地方都市で攻勢を強めているという記事も出ていました。以前は教育の機会もほとんど与えられていなかった女性の社会進出が一定程度進むなど変化もありましたが、米国には現地の実態に即した国造りのビジョンがなく、アフガン政府は汚職や権力争いで十分機能しなかったが故に、タリバーンに再び力をつける余地を与えてしまったのでしょう。  また音楽も聴けないあの時代に戻ってしまうのかもしれないと思うと、胸が締め付けられる思いです。

  • 小売りや外食に臨時休業の波 デルタ株拡大「自衛限界」

    鵜飼啓
    鵜飼啓
    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年8月3日12時30分 投稿

    【視点】 「阪神梅田本店」で感染した従業員のワクチン接種状況はどうだったのでしょうか。春まで暮らした米ニューヨークでは、食料品店の従業員は感染リスクが高いということでワクチンの優先接種の対象でした。ひるがえって日本では医療従事者と65歳以上の方以外に関しては優先接種の議論は深まらず、なし崩し的に接種範囲が拡大されました。スーパーなどは市民生活を支える基幹産業で、かかわる人たちに対してワクチンを優先接種すべきだったのではないかと思います。  また、米国の食料品店などでは従業員に定期的にPCR検査を受けさせていました。無症状の感染者を早めに見つけ、感染拡大を防ぐためです。日本ではPCR検査が徹底されないままここまで来てしまいましたが、無症状で感染の自覚がない人たちが出歩いてほかの人にうつしてしまうことを防ぐためにも、今からでも検査を徹底すべきだと思います。

  • 性交同意年齢めぐる発言 タブー化させてはいけない議論

    鵜飼啓
    鵜飼啓
    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年7月31日18時52分 投稿

    【解説】 アメリカでは州ごとに異なりますが、16~18歳の性交同意年齢が設けられています。年齢が近い場合には適用が除外されるという州もありますが、特に幼い少年少女を性行為の対象とすることに対しては、政治的立場にかかわらず社会全体の規範として「とんでもない行為」とみられています。違反した場合の処罰も厳しく、学校の先生が生徒と性行為をして懲役刑になったといったニュースがしばしば報じられています。  ただ、一つ「抜け穴」といえるような問題があります。それは「結婚」です。日本では結婚できる最低年齢が民法で定められていますが(現在は男性18歳、女性16歳ですが、来年4月1日から男女とも18歳に統一されます)、人権団体「イクオリティー・ナウ」によると、アメリカでは50州のうち46州で18歳以下でも結婚でき、うち20州では最低年齢が全く定められていません。連邦法では婚姻関係にあれば同意年齢未満の相手でも罪に問われないとされ、同意できる判断能力がないとみなされているにもかかわらず、「結婚」という名の下で性的搾取が行われてしまう可能性があるのです。  自らの意に沿わない結婚を強いられるケースもあり、人権団体などが改善を訴えています。    

  • 理想的な気候→「めまい」「苦しい」 酷暑五輪、秋が許されない理由

    鵜飼啓
    鵜飼啓
    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年7月29日17時52分 投稿

    【視点】 東京五輪が猛暑の中で行われていることには、海外メディアからも批判的な目が向けられています。  米ヤフースポーツのコラムニストは26日付けで、この日に行われた男子トライアスロンのゴール地点が暑さでぐったりした選手たちで「戦場のようだった」と形容し、「日本は天気について謝る必要はないが、(招致で)大うそをついたことは謝罪すべきだ」などと指摘しました。「東京に住む人はだれ一人も真夏の気候を『温暖』や『理想的』とは言わないはずだ」として、「日本はうそをついていると分かっていた」と批判しています。  米ネットメディアのデイリービーストも、立候補ファイルでの説明について「よく言えば楽観的、悪く言えばうそだ」とし、こうした事態を招いた原因を「招致合戦は参加することに意義があるというものではなく、勝つことがすべて」だから、と読み解いています。  今回の五輪では、IOCが無観客でも開催にこだわったのは巨額の放映権料収入のため、という構図が垣間見えました。猛暑に苦しむ選手たちの姿は「誰のための五輪なのか」という問いを改めて突きつけています。さまざまな問題の中で開かれている東京五輪ですが、せめて五輪が抱える構造的問題の見直しの契機になれば良いと思います。

  • 「ワクチン証明書」申請受付始まる 世界でも導入本格化

    鵜飼啓
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    朝日新聞オピニオン編集長代理=国際
    2021年7月27日15時53分 投稿

    【視点】私は今年3月末にアメリカから帰国する直前に新型コロナのワクチンを打ちました。厚生労働省のホームページによると、日本のワクチン接種証明書は、日本の予防接種法に基づくコロナワクチンの接種を受けた人が対象で、海外でワクチンを打った人は対象になりません。このため、日本の証明書を取るためには改めて日本でワクチンを打ち直す必要があります。記事中に出てくる米疾病対策センター(CDC)の「接種記録カード」はラミネート加工してもらって大切に持っているのですが、世界共通基準のようなものができるとありがたいところです。

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