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「妖精研究」集大成を刊行 現代癒やす神話的世界

2008年11月18日14時43分

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写真「妖精は多彩な性格を持ち、パターン化すると面白さが消えてしまう」と井村君江さん=宇都宮市内

 井村君江・明星大学名誉教授が刊行した『妖精学大全』(東京書籍)が面白い。英国とアイルランドを中心に民間伝承を網羅しただけでなく、その起源や人間との関係、さらに妖精を題材にした文学、美術、音楽などの芸術作品まで追究したユニークな内容。浮かび上がるのは、18世紀以降の合理主義が捨ててきた奔放な異教的精神だ。(上坂樹)

 文学作品や作家は120ほど取り上げた。シェークスピアだけでも「夏の夜の夢」や「テンペスト」など多くの作品に、妖精は、実に多彩なキャラクターで登場する。

 「彼は様々な伝承を溶け合わせ、独自の妖精世界を作り出した。深層心理や運命の不可思議を妖精で擬人化し、魅力あふれる作品に仕立てた。妖精に光を当てれば、作品解釈は一層深みを増すはず」

 『指輪物語』、『ナルニア国物語』、『ハリー・ポッター』シリーズ、さらに宮崎駿のアニメ映画などに登場する妖精たちも時代を反映する現象として注目する。

 「殺伐さを増す現代社会を生きる我々は癒やしを求めている。ウィリアム・ブレイクが『一時間の中に永遠を生きろ』と言ったように、現実の枠を超えた神話的世界を一瞬でも生きたいのです」

 妖精が生まれた素地としてケルト文化の役割を重視する。自然と融合したアニミズムの色濃い異教的文化はキリスト教の興隆とともに衰退へ向かうが、巧妙にキリスト教に溶け込みつつ、ヨーロッパ文化の基層としてたくましく生き続けた。

 家事を手伝うゴブリン、わき水の守護者コリガン、巨人の亡霊スプリガン、人魚マーメイド、さらに現代イングランドの機械に住むというグレムリン……。その姿と性格は時代や場所ごとに多種多様に発展したのだ。

 一見妖精とはなじまないデジタル世界を、「新しい可能性を秘めた空間」と期待する。「CGを駆使したバーチャルリアリティー(仮想現実)で、妖精のイメージがより豊かになるのは楽しい。若い世代に夢を託したい」

 オスカー・ワイルドの妖精物語に触発されて研究を始めた。C・S・ルイスやトールキンと仲間で、英オックスフォード大教授だった亡夫ジョン・ローラー氏から彼らの創作ぶりも聞いた。本書は半世紀に及ぶ研究の集大成だ。

 恩師の故K・ブリッグズの『妖精事典』(冨山房)を進化させ、「人類学、民俗学、心理学などの視点も入れた」という。

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