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〈第6回朝日舞台芸術賞 グランプリ〉「時のなかの時――とき」

2007年02月01日17時49分

 第6回朝日舞台芸術賞(朝日新聞社主催、テレビ朝日後援)5部門の受賞者が決まった。肉体と言葉を磨き、卓越した舞台を作り上げた受賞者を紹介する。

写真天児牛大さん

●「対話」が誘う自己発見 山海塾主宰・天児牛大「劇場の不可思議さ、出発点」

 舞踊作品として初のグランプリに輝いた「時のなかの時――とき」は、舞踏カンパニー「山海塾」がパリ市立劇場、北九州芸術劇場と共同で制作した。砂が敷かれ、7枚の黒い板が扇状に立つ舞台で、全身を白く塗った男たちが舞う。

 冒頭、中央に横たわった4人が天に向けてゆっくり脚を伸ばす。幾何学文様の動くオブジェ、あるいは浄土に咲くハスの花にも見える鮮烈なイメージ。簡素で象徴的な装置、緊張と弛緩(しかん)を繰り返す抑制した動き、そして瞑想(めいそう)的な音楽が、静けさと美しさに満ちたミクロコスモスを作る。

 「私たちと観客の間に言葉は介在しないけれど、むしろ介在しないからこそ想像が広がり、対話が生まれる。作品は見る人との対話によって“生かされる”のだと思う。その対話が、自己発見のきっかけにもなってくれれば素晴らしい」と、山海塾主宰の天児牛大は話す。

 振り付け、演出、デザインを担当。自らもソロを踊り、光を放つかのような圧倒的存在感を見せた。「劇場というものに感じる不可思議さが、この作品の出発点」という。

 「外の光と音を遮断した空間で、日常と異なる時間が流れる。そして次の公演が、また別の時空を展開し消えていく。都市の中にいくつも点在する、日常の中の異空間、“時のなかの時”を入れ子のように作品のうちに込め、劇場へのいざないのつもりで作った」

 拠点とするパリでの初演は05年12月。山海塾を設立して30周年の節目だった。「うちのようなデラシネ(根無し草)カンパニーがよくもったと思う。共同制作を申し出てくれる劇場には、毎回『バクチですよ』と言う。何も形がないものに賭けるんですから」

 40カ国、のべ700都市で公演を重ねてきた。その年の優れた舞台芸術に与えられる英国のローレンス・オリビエ賞を02年に獲得、国際的評価も高い。

 次の新作は08年5月に発表する予定だ。

 「異なる文化の中に身を置き、触れることが大事だ。文化は違うが肉体は共通。その差異と普遍性が、自分の中で常に揺れ動いている。それを感じつつ、作品と向き合っていきたい」

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 〈あまがつ・うしお〉 49年生まれ。75年に山海塾を設立、81年からパリ市立劇場を創作の拠点とし、2年に1作のペースで新作を発表している。主な作品に「金柑少年」や「闇に沈む静寂――しじま」「遥か彼方からの――ひびき」など。

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●受賞あいさつから(山海塾主宰の天児牛大さん)

 大野一雄さん、土方巽さんというお二人の舞踏の先達、それに続く諸先輩の流れのなかで、私はここに立たせていただいた。彼らに対して敬意と感謝を捧げたいと思います。これからも今までと同じように、リズムを損なうことなく、こつこつと仕事を進めていきたいと思っています。

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