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仮面劇にアジア融合 「楽劇真伎楽」中国で上演

2007年11月26日14時40分

 7世紀に朝鮮半島から日本に渡来した仮面舞踊劇「伎楽(ぎがく)」を現代によみがえらせた「楽劇真伎楽」が、日中国交正常化35周年、遣隋使1400周年記念事業として、この10〜11月に中国4都市で上演された(朝日新聞社後援)。04年に44歳で亡くなった狂言師、野村万之丞さんがアジア各国の芸能や仮面に関する調査・研究を重ね、約10年かけて復元・再創造した芸能の「里帰り」だ。公演に同行した演劇評論家、山本健一さんが報告する。

 鼻が高いペルシャの酔胡王(すいこおう)、インドの神鳥の迦楼羅(かるら)、中国王家の呉公(ごこう)と呉女(ごじょ)。怪異でエキゾチックな仮面と衣装をつけた人々が舞い、演じる。鑑真が修行した江蘇省の揚州・大明寺。荘厳な柱廊の奥から打楽器の激しいリズムにのって登場する異形の俳優たちを見ていると、伎楽の楽人たちがシルクロードの彼方(かなた)から時空を超えてやってきたようなめまいを感じた。

 伎楽はユーラシア大陸の祭祀(さいし)芸能が交じり、中国から朝鮮半島を経て渡来。日本の芸能に大きな影響を与えながら、中世には滅びた幻の芸能だ。故万之丞さん(没後に八世万蔵を追贈)が「楽劇真伎楽」として再創造し、01年の東京を皮切りに、韓国と北朝鮮で公演し、大陸をさかのぼっての上演を計画していた。シルクロードのまち、西安などでの中国公演(団長・西原春夫元早大総長)は、急逝したその遺志を継ぐ旅だった。

 「前世紀が文化交流とすれば、今世紀は文化共有」が、万之丞さんの信念だった。それを受け継いでいるのは日本、中国、韓国、インド、セネガルの26人。メンバーの一人、上海昆劇界のスター梁谷音さんは「アジア各地まで視野を広げた壮大な計画。個人が膨大な労力と私費で成し遂げた。中国ではこのような試みはない」と言う。

 インド伝統舞踊家N・クマールさんとA・ジョイさんは「舞台上に様々な国の芸態が共存する。仮面劇なので顔の表情に頼らず身体で表現する貴重な体験」。韓国の舞踊家・金容睦さんは「未完成のまま、公演する国々で作り上げるべきだ。シルクロード遡上(そじょう)の旅が終わった時に完成するはず」と見る。日本から参加した舞踊家の三浦恒夫さんは「文化融合のダイナミズムがある」と確信を持つ。

 西安では「遣隋使1400周年」記念会場で上演した。アジア5カ国の獅子が乱舞する場面に会場はどよめく。中国の演劇学者・麻国欽さんは「獅子には悪いものを退治する起源がある。お国柄を反映した5頭を並べることで、現代悪である戦争を退治する国際平和への希求を感じた」と評価した。

 スケールの大きな古代ロマンと現代的メッセージ。プロジェクトを見守る、万之丞さんの父で狂言の人間国宝、野村萬さんは「人々が集まり、愛されるのが芸能本来の姿。息子の思いがようやくシルクロードまで動いた」と語る。

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