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岸田国士の短編戯曲2本 妙味掘り下げ再演

2008年02月27日15時10分

 いまや近代古典となった岸田国士の短編戯曲の2本立て公演「屋上庭園」「動員挿話」が、東京・初台の新国立劇場小劇場で再演されている。高く評価された05年秋の初演と同じキャスト・スタッフで、岸田の妙味あふれるせりふをさらに掘り下げる公演だ。

写真七瀬なつみ(左)と小林隆

 「屋上庭園」(宮田慶子演出)は大正時代、百貨店の屋上で再会した旧友(小林隆、山路和弘)が近況を語り合ううちに、屈折した感情が浮かび上がる。小林と七瀬なつみが「勝ち組」夫婦、山路と神野三鈴が貧困に沈む夫婦を演じる。

 三谷幸喜や鈴木聡の喜劇で味のある演技を見せる小林は「初演ではギリギリの心境で演じた。手ごわいせりふに加えて、一歩動いたり、視線をそらしたりするだけで大きな意味が生じる芝居。演じるたびにくたくたになった」と思い返す。

 「動員挿話」(深津篤史演出)は、日露戦争に出征する少佐(山路)に随行を求められた馬丁(小林)と断固反対する妻(七瀬)のドラマ。七瀬は「夫を行かせたくない一心で激しい行動をとる。当時としてはアブノーマルな女性かもしれませんが、それが逆に今に通じたのかも」。

 七瀬は、初演の2役で紀伊国屋演劇賞個人賞などを受けた。「友人が『演劇の面白さを知った』と言ってくれたのがうれしかった」

 2本合わせて1時間40分の小品。別の演出家で別の戯曲を続けて演じるうえ、2組の夫婦の力関係も入れ替わる。俳優にかかる負荷は大きい。わずか10分の休憩中、小林は「楽屋でダンベルを上げて馬丁の気持ちに切り替えます」と言う。

 3月9日まで。4200円。劇場(03・5352・9999)。15・16日に兵庫県西宮市、20日に岐阜県可児市でも上演。

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