現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>舞台>演劇> 記事

若者の日常・非日常 注目劇作家、新作で魅了

2008年03月06日15時06分

 若手劇作家の岡田利規(34)と前田司郎(30)がそれぞれ主宰するカンパニーを率い、東京都内で新作を上演している。ともに岸田戯曲賞を受け、小説も手がける。ジャンルをまたいで注目を集める2人が独自の劇世界をさらに深めた意欲作だ。

写真「チェルフィッチュ」主宰の岡田利規
写真「五反田団」主宰の前田司郎

■岡田利規「チェルフィッチュ」主宰 「フリータイム」

 だらだら続く会話。ひねりや屈曲を繰り返す身体。街を歩く普通の若者が進化したような俳優が日常の風景を切り取り、世界を俯瞰(ふかん)する作者の視線が時代の気分を浮かび上がらせる。

 イラク開戦時にラブホテルにこもって過ごす男女を描く「三月の5日間」で05年に岸田賞。昨年、主宰する演劇ユニット「チェルフィッチュ」の初の海外公演が好評で、各国から約50件の上演依頼が寄せられた。

 「評価はうれしい。でも一つのスタイルにとどまらず、前に進むのが僕らのやり方。演劇は本来ラジカルなもの。既存の表現で満足するなら、苦労してやる意味はありません」

 新作「フリータイム」は朝のファミリーレストランが舞台。出勤前につかの間の自由を楽しむ女性客や別の客、店員らの行動と妄想が断章形式で描かれる。

 「これまでは戯曲に肉付けして作ってきたが、今回は骨も肉もけいこ場で作った」。自分と他者、あるいは現実と虚構が等価であるような、新たな劇。「主題でもある自由を表現法でも実践した。自分の中で演劇がより自由なものになった実感があります」

 欧州3都市の芸術祭との共同制作で、年内に世界20都市を回る。「海外滞在中に時間があったら小説を書きたい。外から日本がどう見えるかが楽しみです」

 18日まで、六本木のスーパー・デラックス。4000円。プリコグ(03・3410・1816)。

■前田司郎「五反田団」主宰 「偉大なる生活の冒険」

 脱力した若者の日常から非日常や死が不意に顔をのぞかせる。そんな作風で同世代の支持を受ける。昨秋の「生きてるものはいないのか」で岸田賞を受けた。

 4年続けて最終候補に残った末の受賞。「岸田賞を二つも取った前田司郎」が主人公の「さようなら僕の小さな名声」(これも岸田賞候補)という作品も上演した。「累積点でいただけたのかな。僕にしては人が大勢死んだりして派手でしたけど」と気負いはない。

 「周りの評価や世間的知識に流されたくない。自分の中にあるものでどう創造できるかが楽しい」。劇団「五反田団」を主宰し、簡素な装置に1500円という低料金で芝居を打ち続ける。「この料金が定着すれば、才能ある人が気軽に演劇の作り手になれる、と」

 小説が芥川賞や三島賞の候補になり、新鋭作家としても期待がかかる。今回の「偉大なる生活の冒険」は芥川賞候補になった自作小説を元に、部屋でゴロゴロする男とそれに腹を立てる女の暮らしを描く。「小説と戯曲では会話のどの部分を隠すのかが全く違う。面白い発見でした」と語る。

 「将来はまず戯曲を仕上げ、出演者を決め、それから上演準備をしたい」。これは正攻法ではあるが、日本では諸事情でなかなか実践できない。そんな芝居作りに挑もうとしている。

 16日まで、駒場のこまばアゴラ劇場。1500円。劇団(03・3441・4633)。

PR情報

このページのトップに戻る