
壁いっぱいに青空が描かれたオフィスの一角に立つ、一人のナイスミドル。

「この前、ドラマに出ていた人だよね?」と友達に言われたら、思わずうなずいてしまいそうになるこの人物の正体は、牧野正幸氏。2015年末、世界初の人工知能型ビジネスアプリケーション「HUE」をリリースした、株式会社ワークスアプリケーションズ(東京都港区、従業員数7,599名。以下、ワークス)の創業経営者であり、代表取締役最高経営責任者です。
ワークスは、Great Place To Work ® Institute Japanが選ぶ2017年版「働きがいのある会社」調査(従業員1000名以上の部門)で、日本一に輝きました。そんなメガベンチャー企業を率いる牧野CEOが、思わず顔を緩めてしまう場所が、この会社にはあるんです。


スゴ腕経営者を一瞬で魅了してしまった、その目線の先にいる相手とは…?

女性社員や外国籍の社員をはじめ、社内のダイバーシティが進むワークス。多様な働き方の実現を目指し、子育てと仕事を両立できる環境をつくるため、社員も子どもも、ひいては社会全体もハッピーになれる、最高の託児所を社内につくってしまいました。その名も「WithKids(ウィズキッズ)」。
日本一働きがいのある会社がつくった社内託児所、気になりませんか?
保育内容やそこに込められた思いを、設立メンバーや牧野CEOに伺ってきました!
好きな「仕事」も「育児」も思いっきりできる環境を
WithKidsは2016年12月にオープンした、社内託児所です。0~5歳までの未就学児が対象で、現在は19名の子どもを受け入れています。コンセプトは「カイシャ de 子育て」。昔は地域全体で子育てをしていたように、「会社」で子育てをしていこうというメッセージが込められています。
働く意欲も能力も高い社員が、仕事にも育児にも思いきり取り組める環境を提供したいという牧野CEOの思いからできました。プロジェクトの土台づくりには、性別も部門も世代もバラバラの社員約50人が有志で集まって進められたそうです。
WithKidsが社内託児所として画期的な点は、大きく以下の4つです。

ワークスが運営するWithKidsは、保育士や看護師、調理スタッフを正社員として雇用しています。ほかの社内託児所は、外部の保育事業者に運営が委託されている場合がほとんどですが、ワークスは保育スタッフに能力を最大限発揮できる環境を提供するため、自社雇用により、社員と同水準の待遇で、仲間として迎え入れています。高い給与と働きがいのある労働環境は、激務の割に待遇の厳しい保育業界にも一石を投じています。
保育スタッフもかけがえのない会社の「仲間」
スタッフが正社員であるメリットを、ご本人たちに聞いてみました。

メリットと課題点
では、社員の方々はWithKidsをどう考えているのでしょうか。利用する社員だけでなく、利用していない社員にもぶっちゃけトークで聞いてみました。
WithKidsを利用する社員はこう語ります。

そして、WithKidsを利用していない社員の方からも、こんな声が。

しかし、話を伺う中でこんな課題も見えてきました。
牧野CEOの思い
取材の最後に、牧野CEOにこの取り組みについて直球インタビューしてみました。
ちなみにインタビュー中も、ちびっ子が元気に走り回っていました(笑)

── WithKidsがオープンして1年ですが、実際にどんなイイことがありましたか?
牧野CEO:女性社員のモチベーションがあがったと思います。ワークスは、キャリアの成長期とも言える20代に、あえてハードな環境に身を置くことを選んでくる人が多い会社です。0から1を生み出す優秀な人材を育成するため、若手にこそ難易度の高い仕事を与えることを、人材戦略の柱の一つにしているからです。
ただ、入社当初はハードワークをバリバリこなせたとしても、出産や子育てといった将来を考えた時に、続けられるのか…。そういう不安が、社員の中にありました。
WithKidsができたことで、「安心感」を社員に与えることができたと思います。ここでずっと働けるんだという気持ちになれることで、出産や子育てでキャリアが阻害される不安がなくなり、仕事へのモチベーションにつながっていると思います。

──女性がキャリアを考えるにあたり、家庭との両立は大きな悩みです。また、男性の意識改革も求められています。女性活躍を推進されてきた牧野CEOから、これから就職活動を控える若者にアドバイスをいただけますか?
牧野CEO:ワークスは創業以来、国籍や性別に関係なく、優秀な人材が活躍できる場を整えることに力を注いできました。このため、かつては結婚を機に退社する優秀な女性社員が、「これからは家庭で頑張ってね」と声をかけられる姿を見ると、複雑な思いになったりもしました。能力のある女性が、ライフイベントを機に会社に辞めざるを得ないというのは、その人にとっても、会社にとっても、大きな損失だからです。
「働きたい」という思いがある女性は、これからの素晴らしいモデルになるのに、そういう人たちを軽視するなんてとんでもない。そういう会社は選ばないほうがいい。
また、仕事に長時間拘束され、休みの日しか子どもと接する時間が持てない働き方も、企業として健全とは言えません。どうすれば仕事と子育てを全力で楽しめるのか。既成概念にとらわれない働き方や子育てのあり方を、女性も男性も考えていくことが必要だと思います。
牧野CEOはそう語ると、部屋のちびっ子にバイバイをして颯爽と去っていきました。
パパも、ママも、会社も、一緒になって子育てをしていく。そんな「ちびっ子がいるオフィス」が、働き方改革の一つの答えなのかもしれません。
AUTHOR…呉本謙勝/慶應義塾大学法学部政治学科4年。生まれも育ちも大阪で、方言や行動も含め「マンガから出てきたような大阪人」。専攻は国際関係論。ワシントンD.C.留学中、現地のTV局でトランプ政権の報道に従事し、若者に情報を発信する重要性を実感する。帰国後、POTETOに参加し、取材や執筆活動を続けている。
POTETO…「政治をわかりやすく伝える」学生のチーム。「リテラシーインフラ」を整備することをミッションに掲げ、①日々のニュースや、様々な社会トピックを動画やイラストで伝えるメディア事業②社会課題をテーマにした出前授業を行う教育事業③NPO、政治家といった、ソーシャルな活動を行う主体の情報発信のサポート事業などを展開。