2018/04/24

〈U25連続セッション〉「22世紀まで、君たちはどう生きるか」
ソニーコンピュータサイエンス研究所・北野宏明所長が見据える、未来のビジョンとは

Written by 呉本謙勝(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部

テクノロジーの進化、グローバリズムの広がり、人口減少――。東京2020を経た2030年の日本社会は、どんな姿になっているのだろうか。

「22世紀まで、君たちはどう生きるか」
AI(人工知能)が幅広い分野に実装され、22世紀まで生きる可能性のある今の若者たちは、どんなスキルを身につけていけばよいのか。そのあり方を考える公開セッションが3月20日夜、東京都渋谷区の朝日新聞メディアラボ分室で開かれた。朝日新聞DIALOGが主催する連続セッション「U25が考える 2030年に求められる人材とは」の第4回で、北野宏明・ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長を講師に迎え、学生や起業家、官僚など13人の若者がディスカッションに参加した。

この連続セッションでは、今年1月からテクノロジーに詳しい様々な分野の専門家を招き、日本の未来を担うU25の若手世代とともに、2030年視点で議論してきた。一連のセッションを踏まえ、「2030年人材に求められるスキル」についての議論をまとめた提言書を公開する予定だ。

北野所長は基調講演で、この先100年のグローバル社会とテック業界の展望、日本が直面する課題について語った。「人口が5000万〜7000万まで減っていく日本では、今の経済規模は維持できない。人口が増え、経済が発展するアフリカ、中国、インド、イスラム諸国が強くなる」。そして、ライト兄弟の初飛行からジェット飛行までに約50年かかったことを例に、革新的な発明・発見が社会を変えるまでのスパンは概ね50年だと指摘。「受精卵をデザインし、人工的に特徴を持たせた人類をつくり出す技術が、数十年後には世界のスタンダードになるかもしれない。倫理面の問題はあるが、技術的に可能であり、需要があれば、広がっていく」と話した。

テクノロジーが進化した具体例として、北野所長は、自身が発起人となったロボットの国際競技大会「ロボカップ」の動画を見せながら裏話を紹介。ソフトバンクのペッパーやアマゾンの在庫管理・品出しロボット、災害救助ロボットなども、元になった技術は「ロボカップ」にルーツがあると説明した。北野所長自身がロボットとサッカー対決した動画では、疲れ知らずでグイグイ迫ってくるロボットに囲まれ、タジタジとなったシーンで、会場から笑いが起きた。

その後に行われたディスカッションでは、激変する時代と社会に向けて私たちが持つべきスキルやマインドセットに関して活発に意見が交わされた。

「これからの社会で必要なコミュニケーションスキルは?」と参加者から聞かれた北野所長は、「大切なのは声が大きなこと」と笑顔で断言。多文化社会の中で自らの主張を通すには、その中身も大事だが、存在感を示すことが重要だと話した。それに加えて、「ヨーロッパの経済力が低下しても、文化の影響力は残る。文化を理解する力がより重要になってくる」と指摘した。

また、北野所長は「これからの日本の若者のリーダーシップに必要なスキル」として、「理系のスキル。具体的には数学とデータ分析の力が必要」と語った。経営陣やリーダー層に理系の知見がないと、長期的には経営判断を誤る可能性が高いとも話した。

「22世紀まで生きる上で役立つスキル」については、「イマジネーション(想像力)とオブセッション(執着心)」と回答。イマジネーションを育むには「まずは体験すること。そして一次情報をしっかり確認すること。行かないと、知らないと何もわからない」と述べ、自身が世界各地を飛び回った経験を語った。

最後に、参加した若者たちへ「どれくらいアグレッシブに、志を持って生きるかが大事。中国人やインド人と比べて、日本人の能力はほぼ変わらないが、アグレッシブさが足りないことに、とても危機感を持っている。頑張ってほしい」とエールを送った。

朝日新聞社は、社会実装フェーズにある人工知能を中心としたテクノロジーの可能性について考えるイベント「朝日新聞DIALOG AI FORUM」を5/20~24の5日間にわたり開催します。
北野所長にもご登壇いただくほか、「テクノロジー」「ビジネス」「社会課題」に架橋するキーパーソン、フロントランナー、アントレプレナーに多数登壇していただきます。
詳しくはこちら

【講師】
北野宏明・ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長、ソニー株式会社執行役員コーポレートエグゼクティブ
1961年生まれ。国際基督教大学教養学部理学科(物理学専攻)卒業。米カーネギーメロン大学客員研究員、京都大学博士課程(工学)を経て、1993年にソニーコンピュータサイエンス研究所入社。2011年から現職。ソニーの犬型ロボットAIBOの開発者、国際的ロボット競技大会であるロボカップの発起人としても知られる。

【主な出席者】
●新居日南恵(司会) 子育て家庭に学生を派遣し、生き方のロールモデルに出会う「家族留学」を実施する(株)manma代表取締役社長、慶應義塾大学大学院在籍中。
●牧浦土雅 アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とをつなげるプロジェクトを牽引。2014年1月、TEDの『世界の12人の若者』に選出。
●須田英太郎 「自動運転の論点」編集長。東京大学総合文化研究科で開発人類学を専攻。東大新聞オンライン編集長を経て、現在は東京大学新聞社マーケティング・プロデューサーを兼務。
●古井康介 慶應義塾大学経済学部在学中。若者の、政治に対するイメージを変えるための情報発信・教育事業を行う株式会社POTETO Media代表取締役社長。

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