DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/06/14

ビジネスにおけるデータ活用とその実践「AI Assisted Workの未来」
AIフォーラムレポート

朝日新聞DIALOG編集部

東 圭三(富士通株式会社 AIサービス事業本部 本部長)
長谷川晃一(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー)

ビッグデータや、AIなどの最先端の技術を使って、ビジネスをどう変革すればよいのか。「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」4日目に登壇したデロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナーの長谷川晃一さんは、ビジネスにおけるデータ活用の事例と今後の課題について解説しました。さらに、富士通株式会社 AIサービス事業本部長の東圭三さんが、「組み合わせ最適化問題」を解く新技術として正式リリースしたばかりの「Digital Annealer(デジタルアニーラ)」について紹介しました。

「Think Big」「Start Small」「Scale Fast」がAI時代のビジネスを成功に導く

長谷川晃一(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー)

近年、ビジネスにおけるデータの活用が飛躍的に伸びています。1990年代は「何が起こっていたのか?」という過去の状況を説明するために利用するのがメインでしたが、2000年代に入ると「なぜ起こったのか?」という分析に用いられるようになり、2005年以降になると「何が起こるのか?」、つまり、将来の分析に活用され始めました。さらに2011年以降は、そうした未来予測に対し「何をすべきか?」といった意思決定にまでデータが用いられるようになっています。

一方で、課題もあります。例えば、どの機械で、どのタイミングで、何を作るかという生産スケジュールの立案を自動化している生産現場でも、故障や不良品の発生、急なオーダーによる割り込み生産への対応など、目の前の状況は刻一刻と変わります。そのため、生産スケジュールのリアルタイムでの更新が不可欠となります。

こうしたリアルタイムでの最適化処理は、従来のコンピューターでは時間がかかります。コンピューティング能力の強化が必須です。そこで、いま注目されているのが「量子コンピューティング技術」です。実際、「D-Wave」という会社が量子コンピューターを2年間運用した結果、従来型コンピューターの1億倍の処理速度があることを証明しました。現在、複数の企業が研究開発を進めており、日本でも富士通が研究開発を行っています。さらに2030年にはグローバルトップ企業の20%が量子コンピューティング技術の導入を検討するという予測もあります。この新技術をどこで活用するかを見極めることが、これからのビジネスにとってはとても重要なポイントになります。

日本の企業は米国やドイツと比べると、AIなどの導入は低調です。その理由は「結果が分からない」「新たな技術を理解できない」「扱えない」といったものです。そこで私たちが提案しているのは、「Think Big」「Start Small」「Scale Fast」といった考え方です。テクノロジーを理解して、何が変わるかを実感したうえでまずは戦略を立て、小さくスタートし、ステップ・バイ・ステップで大きくして、社内外にパートナーをつくりましょう。

量子コンピューターの理論を生かしたデジタルアニーラで「組み合わせ最適化問題」を解決

東 圭三(富士通株式会社 AIサービス事業本部 本部長)

2018年5月15日、富士通は、新しいアーキテクチャーのコンピューターである「Digital Annealer(デジタルアニーラ)」によるクラウドサービスを正式にリリースしました。デジタルコンピューターの世界では、18カ月ごとに半導体の性能が2倍になるという「ムーアの法則」がすでに限界を迎えつつあります。量子コンピューターや脳型コンピューターが研究されていますが、まだ実社会に適用できる段階ではありません。

そこで、現在のデジタル回路でも量子コンピューターの理論を生かして同じようなことができるのでは、という発想から開発したのが、デジタルアニーラです。デジタルアニーラは、計算量が指数関数的に増加する「組み合わせ最適化問題」を高速で解く技術で、科学(創薬)、金融(投資ポートフォリオ)、製造、流通(倉庫作業)といった分野での問題解決に力を発揮します。実際、富士通グループではデジタルアニーラを用い、倉庫内の部品配置や棚のレイアウトを最適化し、倉庫内の移動距離を最大で月45%削減することに成功しました。

対談: 一社では解決できない課題に向けて

長谷川 私たちは「デロイト ハイテク コンピテンス センター」を立ち上げ、実際のビジネスや社会課題の解決に向けてテクノロジーをどう使えるかをご紹介しています。企業や社会が抱える課題の多くは、一つの会社では解決が難しく、様々なプレーヤーが情報共有して新たな取り組みを行う必要があります。私たちは、こうした活動を可能にするコミュニティーをつくり、先端的な研究者をつなぐ役割を果たしていこうと考えています。デジタルアニーラの、お客さまからの反応はいかがですか。

 金融、科学、流通といった分野からの引き合いが多いですね。国内では既存の処理時間を短縮したいというニーズが多いのですが、海外からは、今までやったことのない新たなアイデアにチャレンジしたいという声も寄せられています。

長谷川 今後、どういう領域で伸びるとお考えですか。

 物流における交通動線の最適化や、工場内の無人搬送車の移動経路の最適化などでしょうか。普及させるには、事例をたくさんつくって提供することと、API化するなど標準化して使いやすくすることが大切です。

東 圭三
大阪府出身。京都大学工学部卒業後、富士通(株)に入社。サーバ用OSの研究開発を経て、AIサービス事業本部の本部長として、AIおよびデジタルアニーラ、ロボットの3つの事業を統括。

長谷川 晃一
外務省及び日系メーカー関連会社を経て現職。電機メーカー・ITにおける事業戦略・業務改革に従事。技術戦略、新規事業開発などに深く精通している。

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