DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/06/13

AIの研究と実務、気鋭の若手2人が考える「人間と機械の協働」とは
朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018 ナイトセッション1日目

Written by松田直人(POTETO)

社会のあらゆる場面で人工知能(AI)が実用されるようになったとき、私たちの生活にはどのような変化がもたらされるのでしょうか? 2018年5月20日(日)夜、東京ミッドタウン日比谷で開かれた「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」のナイトセッションでは「人間と機械の協働」をテーマに2人の若者が対談しました。登場したのは、脳や人工知能に関心の高い研究者や学生、企業の社員ら2千人超で作る「全脳アーキテクチャ若手の会」の設立者である大澤正彦さんと、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部で、AIを使ったお店の経営アシスタント「Airメイト」を開発する甲斐駿介さん。モデレーターは、学生を子育て家庭に派遣する「家族留学」事業を展開する株式会社manmaの新居(におり)日南恵(ひなえ)さんが務めました。

大澤さんは、慶應義塾大学大学院理工学研究科の博士課程に在籍する研究者の卵。「全脳アーキテクチャ」とは、脳全体の構造や、それを参考に設計した人工知能の構造を指します。「ドラえもんを作りたい」という少年時代からの夢をかなえるべく取り組んでいる大澤さん。自身が思うドラえもんとは「感情と記憶を持つロボット」です。そして、感情や記憶は、のび太をはじめとした周囲の人との関わりの中で生まれるものだと考えているとのこと。このため、人工知能の研究開発においても、知能の部分にだけ注目するのではなく、人とのコミュニケーションや関係性全体を設計することを意識しているそうです。

現在、研究しているのは、「ミニドラ」を目指したロボット。ミニドラとは、ドラえもんの形をした小型ロボットで、話せる言葉は「ドララ」だけです。大澤さんは、この開発中のロボットとしりとりをする研究を続けています。「『リンゴ』って言ったら『ドララ』って返ってくるんですが、何度も続けると、『ゴリラ』に聞こえてきます。で、次に『ラッパ』って言うと、また『ドララ』と言うんですが、『パンツ』にしか聞こえない。よく、犬を飼っている人が、『この子(犬)の気持ちは手に取るように分かる』と言うのを聞きますが、人と機械の間にも、そうした関係性を築けるのではないかと思っているんです」と大澤さんは笑顔で語りました。

続いて自己紹介した甲斐駿介さんは、2016年にリクルートホールディングスに入社。東京工業大学在学中はGoogle本社でインターンをしたり、飲食店を経営したりしていたそうです。また、人とのコミュニケーションに関心があり、学生時代から現在に至るまで家庭教師として小学生から高校生までを受け持ち、世界的なプログラミングコンテストに出場した生徒もいたといいます。

そんな甲斐さんが入社1年目に携わったのが「Airレジ」。個人経営の店舗では、費用面から導入しづらいPOSレジのシステムを、スマートフォンやタブレットのアプリを使うことで安価に利用できるようにした画期的なサービスです。そして現在は、Airレジの決済データなどを用いて、飲食店の経営をAIがアシストする「Airメイト」のプロダクト責任者を務めています。「Airメイト」は、お店の会計やシフトといった店舗のデータからエリアごとの予約や求人といった業界データまでを一カ所に集め、対処法を提案して経営者や店長のお手伝いをするといったプロダクトです。

甲斐さんは、親族がロンドンで和食店を長年経営していたそうです。しかし、跡継ぎがおらず、閉店せざるを得なかったとのこと。またその後、自身も友人と飲食店を共同経営した経験から、日本のサービス業界が抱える人手不足や慢性的な忙しさといった課題を何とか解決したいと思うようになったと語りました。「個人経営の飲食店はとにかく忙しく、ITが苦手な人も少なくありません。そこで、AIに詳しくない人でも使えるツールを開発し、経営支援ができないかと考えました。また、今後、日本が直面する労働力不足、生産性の低さという課題に対して『ヒトと機械の協働』というアプローチで解決したかったんです」と語りました。

Airメイトには、メイトくん(仮称)というキャラクターがいて、経営分析や様々なアドバイスをしてくれます。甲斐さんはある時、そうしたキャラクターは機能上不要だと考えて削除したそうです。すると、利用者からは苦情が寄せられました。「彼に励まされていた。いつもアドバイスをくれていたので愛着があった」という現場の声や「人が言いづらいことも、あの子が言ってくれて助かる」という経営層の声に、「今後、人間とAIが協業していく上で、最適な提案をするだけでなく、AIからの提案をヒトが気持ちいいと思える体験をもたらすインターフェースの開発が必須だと感じました」と甲斐さん。そして、自分にとってAIとは、「世の中の問題を解決するためのツール」だと語り、AIをコミュニケーションの対象とみなす研究者の大澤さんとは違うスタンスだと話しました。

AIと聞くと、研究者や特定の分野に精通している人だけのものというイメージがつきまといます。しかし2人はそうした固定観念を否定し、「これからの時代、AIに無関係で生きられる人はいない」と断言。AIに関するプロジェクトに多様な人が関わることが社会実装に向けては大事だとし、「楽しそう、とかワクワクする感じが大事。『この指止まれ!』の精神で、多くの人を巻き込んでいきたい」という意見で一致しました。

大澤さんや甲斐さんと同世代の新居日南恵さんは、「私たちの世代は古い考えにとらわれず、協力者を集めながらプロジェクトを進めるのに慣れている。AIや最新技術で仕事の効率を高め、空いた時間で新しいことを学び、可能性を広げていきたい」と締めくくりました。

【登壇者プロフィル(敬称略、アイウエオ順)】
大澤正彦:慶應義塾大学大学院生/全脳アーキテクチャ若手の会設立者/認知科学若手の会代表
甲斐駿介:株式会社リクルートライフスタイルネットビジネス本部「Airメイト』責任者
新居日南恵:慶應義塾大学大学院生/株式会社manma代表

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