DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/06/14

若者オピニオンリーダーが考える、AI時代に求められる教育とは
朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018 ナイトセッション2日目

Written by 関谷尚子(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部

2030年の日本社会は、どうなっているのでしょうか。テクノロジーの発達により「社会の分断」が進むと言われるなか、必要となる教育とは。2018年5月21日に東京ミッドタウン日比谷で開かれた「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」のナイトセッションでは、「AI時代に求められる教育とは」をテーマに、若手世代のオピニオンリーダーが意見を交わしました。

登壇したのは、中高生にプロジェクト型学習の出前授業を実施しているNPO法人青春基地の代表理事・石黒和己(わこ)さん、若者が自分自身やキャリアについて考える合宿事業などを展開している株式会社キタイエ 代表取締役の喜多恒介さん、 現役高校3年生でクレジットカードの決済アプリ事業などを手がけるワンファイナンシャル株式会社CEOの山内奏人(そうと)さんの3人。

(山内さん)

山内さんは2030年の社会について「知りたいことをすぐ知ることができ、知識を身につけることの価値が低下すると思う。AIが夕食のメニューや週末のレジャーをサジェストするのが当たり前になり、人が意思決定する機会も減っていく。でも、それは一概に悪いこととも言えないと思います」と語りました。

高校3年生でフィンテックのスタートアップを率いる山内さん自身は、どのような教育を受けてきたのでしょうか。最初にパソコンを触ったのは6歳のころ。ネットにつながっていないパソコンでワードやエクセルを使って遊んでいたそうです。そのうち、ソフトが欲しくなったものの、高くて買えず、お年玉を2年分つぎ込んで購入した経験から、「ソフトを自分で開発したい」と思うようになったといいます。10歳になると、図書館でプログラミングの本を借りては、明けても暮れてもパソコン漬けの日々。親からは「宿題は?」「お風呂は?」と促されることもあったそうですが、「気にせず、没頭していました」と語っていました。小学6年の時に、国際的なプログラミングコンテストに出場し、最優秀賞を最年少で受賞。ITのスタートアップ経営者の方々の目にとまり、「うちでインターンしたら?」「シェアオフィス使っていいよ」と声をかけられるようになったそうです。

一方、「想定外の未来をつくる!」をコンセプトに、中高生のやりたいことや好奇心を後押しする活動を公立高校で展開する石黒さんは、中高時代をシュタイナー教育の学校で過ごしたそうです。銅板を好きな形に成型したり、数カ月かけて仲間とともに演劇を一から作り上げたりするなど、独特の学びを経験してきたことを、豊富な写真資料とともに紹介しました。

(左から山内さん、石黒さん、喜多さん)

石黒さんは、山内さんの話にうなずきながら、「これからは、『好き』や『もっと知りたい』といった内発的な動機からアクションを起こせる人材を育てるこ とが、教育の最も重要なミッションになる」と語りました。また、これからの学校のあるべき姿については「生徒に答えを教えるのではなく、生徒が答えを探し、様々な経験ができる機会を与える場になってほしいです」と述べました。

「そもそも、学校に毎日行く必要があるのか」という話題になった際、石黒さんは「オンライン学習の設備なども充実してきたなか、勉強目的での通学日数は減ってもいいかもしれない。ただ、学校には友達と会う場としての役割もあり、定期的に集まることはやはり大事だと思います」と語りました。

大学から大学院に進学し、休学や留学を経て学生生活が10年になるという喜多さんは、「人と人とのつながりで、社会をよくする」をテーマに活動しています。キャリア支援のNPOで大学生の就活支援をしたり、文部科学省の「トビタテ! 留学JAPAN」のプロジェクト創設を手伝ったりと、大学生のキャリアプランニングに関する様々な活動を展開しています。

喜多さんには全国の若者から「やりたいことが見つからない、どうすればよいか」という趣旨の相談が、メールなどで1日30件以上届くそうです。「若者は内発的な欲求を持っているが、世間の目や自分自身の『どうせ無理』という思い込みで、実行できない状況にある」と、喜多さんは指摘しました。そして、夢を開花させるには「自分の『好き』に没頭できる環境」と「社会のことを広く知り、人と向き合うスキルが高い“イケてる大人”から良質なフィードバックが得られる環境」が重要だとし、そうした信頼できる大人が周囲にいない場合は、「バーチャルな空間にメンターをつくってもよいのではないか」と提案しました。

会場から出た「AIに負けない人材を育てるにはどうしたらいいか」という質問に、山内さんは「勝ち負けで考えるのではなく、実生活でAIを生かせる人をいかに育てるかが大切だと思う」と述べました。また、「好きなことばかりしていては食べていけないのでは」という質問には、3人とも「食べていく、の概念が変わるのではないか」と答えました。「例えば、地方では人口減で空き家が増え、生活コストも都会よりかなり抑えられる。自分の好きなことをしながら、食べるための数万円を稼ぐのはそう難しくないと思う」と石黒さんは語りました。

(参加者)

石黒 和己 NPO法人青春基地 代表理事
1994年生まれ。東京大学教育研究科在学中。2015年、「想定外の未来をつくる!」をコンセプトに、全国の公立高校などで、好奇心や探究から始まるPBL(プロジェクト型学習)を生徒たちに届ける。中高時代は、教科書も試験もない「シュタイナー教育」の学び舎で自由に過ごし、慶応義塾大学総合政策学部在学中は東京都文京区の青少年プラザ「b-lab」立ち上げに参画。NPOや社会的企業が連携し、課題解決に取り組むことを目指す特定非営利活動法人「新公益連盟」に加盟。

喜多 恒介 (株)キタイエ 代表取締役
1989年生まれ。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科在学中。東京大学卒。社団法人「全国学生連携機構」理事。山梨学院大学国際教養学部キャリアアドバイザー。大企業50社を巻き込んだキャリア教育プラットフォーム「キャリア大学」、7年間で1万人の国費留学生を生み出す「トビタテ! 留学JAPAN」、全都道府県に70支部を持つキャリア支援団体「en-courage」、若者への奨学金を支給する「孫正義育英財団」の発足などに関わる。現在は、日本版のミネルバ大学のようなリカレント教育機関として「ナラティブ・キャリアスクール」を立ち上げ中。「コミュニティを通じたソーシャルイノベーションの創出」を目指している。

山内 奏人 ワンファイナンシャル(株)CEO
2001年生まれ。都内の高校3年生。6歳で父親から中古のパソコンをもらう。小学4年のころからプログラミングを独学し、小学6年で「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト(15歳以下の部)」の最優秀賞に。中1の時にはビジネスプランコンテストで優勝し、「TED×Kids」に登壇して英語でプレゼンを行う。IT企業を立ち上げ、社会の役に立つシステムを開発したいと、中学では友人たちと子ども向けにプログラミングのワークショップなどを開催。2016年に15歳で企業し、ビットコインをプリペイドカードに交換できるサービスなどを展開してきた。2017年夏にはクレジットカード決済アプリ「ONEPAYMENT」をリリース

前田 育穂(モデレーター) 朝日新聞DIALOG 副編集長

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