DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/06/19

劇作家・きたむらけんじが問いかける
障害者と一緒に働く幸福感

朝日新聞DIALOG編集部

高度経済成長まっただ中の1959年、下町の工場に、知的障害のある少女が職業実習で通い始めた。「障害者が働くなんて無理」。最初はそう言って断り続けていた経営者や従業員も、日々、少女と触れあうなかで、次第に考えを改めていく……。そんな実話に基づく芝居「幸福な職場」のDVD上映会と、作・演出のきたむらけんじさん(44)の講演会が6月22日(金)夜、明治大学駿河台キャンパスで開かれる。作品に込めた思いや見どころを、一足早く、きたむらさんに聞いた。

きたむらさんは、放送作家としてラジオのニュース情報番組「JAM THE WORLD」(J-WAVE)などを手がけるかたわら、「劇団東京フェスティバル」を主宰している。選挙や震災、米軍基地といった深刻な社会問題にまつわる物語を、笑いにくるんで見せるのが持ち味だ。

「幸福な職場」のモチーフとなったのは、日本理化学工業株式会社(川崎市)。学校で使うチョーク市場の国内シェア50%以上を誇るトップメーカーとして、また、社員の7割以上を知的障害者が占める会社として知られている。

きたむらさんは、ラジオ番組の取材で同社の大山泰弘会長や従業員と出会い、舞台化を思い立った。「大山さんは正直な人で、『自分も最初は障害者への差別感情があった』とおっしゃいました。でも、職業実習で受け入れた翌年には正社員にして、半世紀以上、障害者雇用を続けている。本当にすごい。これを舞台化して、差別感情がある人に見せたら、大山さんの心の変化を追体験して意識が変わるかもしれない。それって、すごく意味のあることだと思ったんです」。取材から10日ほどで、一気に脚本の初稿を書き上げた。

2009年に初演。「重いテーマなのに、私の作風はコメディータッチなので、最初は観客の反応が怖かった。でも、障害者問題にかかわっている方から『自分たちが講演しても思いが届かなそうな人が、舞台を見て泣いていた。舞台化してもらってよかった』と言われて、私も泣きました」。以来、自らの劇団だけでなく、日本理化学工業の地元・川崎市など各地の高校生たちが上演。「初演以来、毎年どこかで演じられている。マイナー劇団としては珍しい作品(笑)」になった。

当初の上演時間は90分間だったが、昨年、世田谷パブリックシアターで公演した際、120分バージョンに拡大した。16年夏、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員が入所者19人を殺害する事件が起きた。「元職員は、人の命に優劣をつける優生思想の持ち主でした。そうした誤った考え方のカウンターになるような芝居に書き換えようと思いました」。その結果、主人公の少女が恋に落ちるエピソードが加わった。

今回上映されるのは、昨年上演された120分の“完全版”を映像化したものだ。「この作品は、私のオリジナルというより、日本理化学工業のみなさんからの“預かりもの”だと思っています。堅苦しくはないので、映画や演劇をエンターテインメントとして楽しむことが好きな方々に、ぜひ見てもらいたいですね」

「幸福な職場」舞台DVD上映会・講演会(申し込み不要、入場無料)
日時 6月22日(金)17:20~20:20(開場17:00)
場所 明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント グローバルホール
http://www.meiji.ac.jp/infocom/gender/info/6t5h7p00000rpx06.html

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