2018/06/19

絶滅の危機から野生動物を救え! 学生団体企画の謎解きイベント
よこはま動物園ズーラシアで2千人が参加

Written by 樋山 輝(学生団体palmstream代表/明治大学3年)

皆さんは「パーム油」とは何か、ご存じだろうか。アブラヤシの実から採れる、世界で最も多く使用されている植物油だ。ポテトチップスや菓子パンといった食品をはじめ、シャンプーや化粧品など、あらゆる製品に使用されている。だが原材料には「植物油」や「ショートニング」と表記されることが多く、日本ではあまり知られていない。

私がパーム油のことを知ったのは、高校時代の生物の授業。名も知らぬ油だったが、気づかぬうちに毎日消費し、かつ、その生産がボルネオ島の熱帯林破壊を引き起こしているという事実に、大きな衝撃を受けた。実際の生産現場の様子を見ようと、大学入学後、さっそく現地を訪ねた。

見渡す限り広がる、アブラヤシ農園。大学1年の時にボルネオ島サバ州を訪れた際、最も印象に残った光景だ。それから毎年現地に渡航し、環境NGOやその地域の先住民の方たちとの交流を通じた学びを進めていくうちに、この問題が想像以上に深刻で複雑だと感じるようになった。世界のパーム油生産の85%を占めるインドネシアやマレーシアでは特に被害が大きく、驚くべきことにこの30年間で、ボルネオ島の約3分の1、スマトラ島の約半分の熱帯林が切り倒されたという。失われた森林面積は約2740万haにのぼり、日本の森林面積約2510万haを優に超える。

さらに、アブラヤシ農園の開発は野生動物たちの命を奪うだけでなく、違法労働や農薬による汚染など、人々の暮らしまでをも脅かしているのだ。

シビアな現状を日本の多くの人々に伝えたいという思いで、私は昨夏、志を同じくする仲間約10人とともに学生団体「palmstream(パームストリーム)」を立ち上げた。企業訪問やワークショップなどを実施しているが、遠い国で起こっていることを「自分のこと」としてとらえてもらうのはなかなか難しい。こうしたなか、実際に熱帯林で暮らす動物たちを間近に見られる動物園であれば、よりこの問題の切実さを伝えられるのではないだろうかというアイデアが浮かんだ。そこで、今回5月19、20日のイベントを企画することにした。

会場は、横浜市旭区の「よこはま動物園ズーラシア」。園内の「アジアの熱帯林」ゾーンには、ボルネオオランウータンやスマトラトラなど、熱帯林破壊の影響で絶滅危惧種となった希少な動物たちが飼育されている。

イベントの設定は、100年後の未来。現代の私たちの暮らしぶりが原因で、熱帯林の動物たちの半分が、絶滅してしまった世界だ。イベントの参加者は、熱帯林を守るエージェントとして、託された謎解きシートを片手に園内を周遊し、クイズに答えながらパーム油と森林破壊、生態系との関わりを知る。ゴール地点では、熱帯林を守るために実践できるアクションについて、楽しく分かりやすいレクチャーを実施する。専門知識を押しつけるのではなく、老若男女問わず楽しみながら学んでもらえるように工夫した。

イベント当日まで、ズーラシアの職員をはじめ、動物園で生物多様性の保全教育活動をする団体「ShoeZ(シューズ)」、環境配慮商品を選択する「グリーン購入」の普及活動を行う団体「グリーン購入ネットワーク(GPN)」の皆さんとともに、実行委員会形式で準備を進めた。学生ボランティアスタッフの協力も得て、2日間で約2千人に参加していただくことができた。

私たち日本人は1人あたり1年間に約5kgのパーム油を使用していると言われている。生活に身近なあらゆる製品に使用されているため、今日から全てやめるというのは非現実的だ。加えて、アブラヤシは単位面積当たりの採油量が他のどの植物よりも多いため、代替油を使用するとなると、別の植物を育てるのにさらに広い土地が必要になってしまう。

この問題を解決する手段として、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)が出す国際認証がある。環境や社会に配慮して生産されたパーム油であることを証明するもので、欧米ではかなり普及している。一方、日本では一般的でなく、マーク付き製品も少ない。RSPOには8つの原則と43の基準があり、手つかずの森林や、保護する価値の高い地域で、アブラヤシ農園を開発しないことなどを求めている。

イベント参加者は、ゲームのミッションを達成した後、パーム油の課題とその解決策に関するレクチャーを受ける。今回は「パーム油」を知らない方が大多数だったが、最後には「少し高くても、RSPOマーク付きの製品を選んで買いたい」という声が多く寄せられた。このイベントの大きな成果だったと感じている。

課題解決に向けては多くの人が手を携える必要があるが、一番のカギを握っているのは、私たち消費者だ。「パーム油が使われているかどうか、商品の成分表を少し気にしてみる」「RSPOマーク付き商品を取り扱ってもらえるよう、メーカーのお客様相談窓口に問い合わせてみる」といった、ちょっとした行動が、解決に向けた力となる。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック、そしてSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて、日本でもあらゆる製品の持続可能な調達に注目が集まっている。私たちはRSPOマークの普及とともに、マークが必要でなくなる、サステイナブルな未来を実現するという「真のミッション」達成を目指すエージェントとして、今後も行動を続けていきたい。

2018年5月19、20日のイベントの様子

環境や社会面に配慮したパーム油を使用した製品のサイト:
http://www.gpn.jp/project/palm/products.html

「未来を変える買い物」を考えるサイト『EARTH MALL』:
https://event.rakuten.co.jp/eco/earthmall/

palmstream…食品や洗剤に使用される「パーム油」の持続可能な調達が行われる社会の実現を目指し、勉強会やイベントを通じて「企業と消費者をつなぐ橋渡し」になることを目標に活動している。
Twitter: https://twitter.com/team_palmstream
Facebook: https://ja-jp.facebook.com/team.palmstream/

AUTHOR… 樋山 ( ひやま )( ひかる ) /palmstream代表 明治大学農学部食料環境政策学科 共生社会論研究室3年。大学の所属研究室では、環境・社会的課題の解決と経済の共存を目指し、行動経済学に基づいたマーケティングを学んでいる。

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