2018/06/25

日本企業の99.7%が中小、暮らし密着で社会を支える/後継者不足が課題、650万人の雇用失う恐れも

Written by 鈴木詩織(POTETO) with 朝日新聞DIALOG
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日本にある約382万の企業のうち、ほとんどが中小企業だということをご存じですか。大企業は1万超ありますが、比率は1%未満。従業員数でみても、7割が中小企業で働いています(2014年7月時点)。また、大企業は東京などの都市圏に集まっているため、中小企業の割合は地方ほど高くなっています。

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「中小企業」の定義は、中小企業基本法で定められています。
常勤の従業員数が、「製造業その他」で300人以下、「卸売業」と「サービス業」で100人以下、「小売業」で50人以下の事業者は中小企業とされています。このうち、「製造業その他」で20人以下、「卸売業」・「小売業」・「サービス業」で5人以下は小規模企業とされています。一般社団法人CRD協会のデータによると、中小企業の業種別では、建設業(21.5%)と製造業(14.7%)が多く、小売業(12.3%)、卸売業(10.7%)が続きます。

慶應義塾大の植田浩史教授(中小企業論)は、「配線工事やガソリンスタンド、街の小さな商店など、生活に密着したニーズを満たす分野に中小企業が多い」と話します。製造業のなかには大企業の下請けとして部品などをつくり、自動車などのサプライチェーンを支えている企業も多くあります。

日本の企業数は年々減少しており、2009年から2014年の間に約39万減少しました。なかでも小規模企業の減少幅が大きく、約41万減です。業種ごとに推移をみると、小売業の中小企業数が約6割にまで減っています。

経営者の高齢化、事業承継が課題

中小企業経営者の高齢化も進んでいます。中小企業庁によると、経営者の年齢のピークは1995年から2015年までの20年間で47歳から66歳に推移しました。2025年までの10年間で中小企業の経営者は約245万人が70歳以上となりますが、そのうち約6割は後継者が決まっていない状況です。同庁は、このままでは中小企業の廃業が相次ぎ、2025年までに累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしており、中小企業の事業承継は喫緊の課題です。

経営者の高齢化の背景には、日本で起業する人が少ないことも指摘されています。「中小企業白書2018」によれば、全事業所数に対して新規に雇用関係が成立した事業所数から算出した起業率は、日本では5.6%にとどまっています。一方、正確な比較はできませんが、イギリスやフランスでは10%を超えており、ドイツやアメリカも日本より高いです。日本は廃業率も低く、企業の新陳代謝が進まないため、若い経営者が増えにくい状況といえます。

事業承継を国が支援

雇用の受け皿になっていたり、他にない技術をもっていたりする企業の廃業は、社会にとっても大きな損失です。そこで国は、47都道府県に「事業引継ぎ支援センター」を設置し、後継者が決まっていない企業からの相談受け付けやマッチングを行っています。支援した事業引き継ぎ件数は年々増加しており、2017年度は687件で前年度の1.5倍でした。

かつては9割以上の中小企業で親族が後継者となっていましたが、現在は6割程度に。「家業を継ぐ」ことは当たり前ではなくなっています。そこで増えているのが、親族でも従業員でもない第三者が後継者になるケースです。支援センターの引き継ぎ案件に占める第三者承継の割合は約7割に及びます。

前出の植田教授は、「社会的責任を強く意識する経営者が増えてほしい」と言います。例えば東京都墨田区にある金属加工会社は、試作品づくりに使える工房をつくってベンチャー企業の支援に力を入れています。建築資材のレンタル業を営む福岡市の会社は、有休消化率100%や完全週休2日といった働きやすさを実現して、人手不足が深刻な建設業界では珍しく新卒採用に100人近い応募が集まるそうです。「自分の会社の役割を突き詰めて考え、企業としての経営理念を明確に持ち、その実現に向かって計画的に経営を実践すれば、景気や求人倍率など外部環境が変わっても、ぶれずに生き残れる。理念や経営の方向性を社員とも共有していくことが大事だし、そうすれば幹部や後継者の育成も進んでいくはずだ」

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