2018/07/02

「AIの民主化」への取り組みと目指す未来 
AIフォーラムレポート

朝日新聞DIALOG編集部

榊原 彰さん
日本マイクロソフト(株) 執行役員/最高技術責任者
マイクロソフト ディベロップメント(株) 代表取締役社長

パソコンのOSやビジネスソフトでおなじみのマイクロソフトは、いまやAIなども駆使したクラウド企業に変貌している。「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」の2日目に登壇した日本マイクロソフト株式会社執行役員 最高技術責任者の榊原彰さんは、AIをいかに使いやすいものにするかを中心に、「ITの巨人」が目指す未来について語った。

AIを使いやすい形で、みんなの手に

マイクロソフトはいま、「インテリジェントクラウド」と「インテリジェントエッジ」という言葉で、自社のテクノロジープロデュースの方向性を説明しています。インテリジェンス、つまり人工知能のパワーをあらゆる場所に導入していくという宣言です。我々が目指すのは「AIの民主化」です。AIの機能やパワーを、お金持ちの企業だけに提供するのではなく、どなたにも、リーズナブルなコストで、使いやすい形で提供していきます。

その最たる例が、コグニティブサービスという、クラウド上で展開しているAPI提供サービスです。APIは「Application Programming Interface」の略で、みなさんが作るアプリケーションの中にこれを1行組み込んでいただくだけで、たとえば画像解析ができたり、音声認識ができたり、翻訳ができたりするようになります。ただ、ここまでは競合他社もやっています。我々と他社との違いは、我々がカスタマイズの機能まで提供している点です。提供しているAPIは汎用的な学習をさせたもので、例えば画像認識では「車」を認識できるようになっています。しかし、そこから先に、BMW、ポルシェ、トヨタ、日産といった車種の違いまで認識させたい場合は、ご自身で写真をアップし、タグづけすることで学習させることができます。

我々は「AI for Earth」をはじめ、様々なプロジェクトに取り組んでいますが、いま実施しているものはどんどんオープンにしており、AIラボというサイトでプロジェクトの進行状況やオープンにするソースコードが見られるようになっています。テクノロジーを使って社会に役立つことをやっていこうとしています。

AIに関しては、少しだけ懸案事項があります。以前、画像検索をしたら黒人の方にゴリラというタグづけがされたことがありました。また東洋人の写真を上げると、目が開いていない写真だと指摘されたこともあります。これはいわば学習ミスです。ミスが人種差別や性差別、宗教差別につながる危険性があるということ。我々には、人種や性別などデータをもっと公平に学習させ、こうしたミスを防ぐという大きな課題があります。

そこで我々はAIの開発・運用原則を守るために倫理委員会をつくりました。研究、製品開発といったところで、社会にとってソーシャルグッドか、倫理に反していないかを、アドバイザリーパネルがチェックするようにしています。社内でやるだけでは不十分なので、これに関しては「パートナーシップ・オン・AI」というコミュニティーをつくって、他社とも手を組みました。AmazonやIBM、日本ではソニーなど世界中の企業が参加しています。AIの世界的な社会実装に向けて、どんな問題があって、我々は何をしたらいいのか。こうした企業の皆さまとディスカッションしながら進めていきます。

榊原 彰
1986年、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。99年、同エグゼクティブ IT アーキテクトに任命。2003 年、IBM アカデミー会員に選出。05年、IBM ディスティングイッシュト・エンジニア(技術職のグローバル最高位)に任命。その後同社でグローバル・ビジネス・サービス事業 CTO、スマーター・シティ事業 CTOなどを歴任。16年に日本マイクロソフト株式会社に入社し、18年2月より現職

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