2018/07/04

汎用人工知能の開発を
脳に学んでBeneficialなものとする
AIフォーラムレポート

朝日新聞DIALOG編集部

山川宏(株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所 所長/NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表)

近年、飛躍的に進化しているのは、特定の作業の効率化や最適化などに役立つ「特化型」の人工知能(AI)ですが、SF小説や映画によく登場するのは、人間の脳のように異なる領域の多様で複雑な問題を解決できる「汎用」AIでしょう。そんな究極のAIを2030年までに完成させることを目指すNPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブを率いる山川宏さんが、「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」に登壇し、一般にはまだなじみの薄い汎用AIについて解説しました。

汎用人工知能が知のフロンティアを開拓する

特定のタスクのみを実行するAIを「特化型」と呼ぶ一方で、人間のように様々なタスクを担えるAIを「汎用人工知能(AGI)」と呼びます。まだ実現されていない技術ですが、私たちNPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブは「人類と調和した人工知能のある世界」というビジョンのもと、「全脳アーキテクチャーのオープンな開発を促進する」というミッションを掲げて、2030年を目標に、このAGIを実現すべく研究に取り組んでいます。

赤ちゃんが外界のモノに触れて世界がどうなっているかを学ぶ様子を、コンピューターにまねさせ、ロボットの目で物体を見ながらアームを動かし、それがどのようなモノで、動かすとどうなるか、「世界」を理解させることが、最近になってようやく実現しました。車の自動運転でも次に何が起こるかを予測しますが、物質世界の常識を理解するところまでが現在の到達点です。

AGIが実現すると、未知の領域について何が起こるかを推定し、そこに知識を獲得しようという自律性が組み合わさることで、知のフロンティアを開拓します。これまでも、経済は新たな科学技術の導入による自動化の進展によって大きく成長してきましたが、AGIのインパクトは産業革命以来最大となるでしょう。しかし、一方で、AGIが不均衡を拡大することも懸念されています。開発コミュニティーなど主要な利害関係者が、協調性をもって努力していかなければ、より良い未来の実現は保証されません。

人とAIが共存する望ましい未来社会像は、万人の幸福と、人類の存続の間に生じるトレードオフをAIが担うことで、その両方を目指せる社会です。こうした未来社会では、共有財産としての多様なAIと、時に能力が拡張された人類によって生態系が形成されます。これを「EcSIA」と呼びますが、このEcSIAが生み出す恵みや富を万人に分配するのです。それを実現するには、現在のような特化型のAIではなく、人間により近い考え方をもった、人間の脳に近いAGIが求められます。

人間のようなAGIをつくるためには、脳全体のアーキテクチャーに学ぶ必要があります。人間の脳は一様な機構で、多様な機能を獲得します。これが知能の汎用性を支えているのです。AGIを実現するうえで技術的に重要なのは、多様な問題解決機能を、経験を通して獲得することで、学習データが少ない状況でも有力な仮説を生成する能力です。そのためには、既存の知識を柔軟に組み合わせて推論する機構が必要となります。

山川 宏
1965年生まれ。ドワンゴ人工知能研究所所長。NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表。東京大学大学院工学研究科博士課程修了。専門は人工知能、特に認知アーキテクチャ、概念獲得、ニューロコンピューティング、意見集約技術など

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