DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/07/04

ロボットとAIによる無人経済化、災害時の保健医療支援、
検品自動化への工程とブロックチェーン社会
AIフォーラム DAY3 講演ダイジェスト

朝日新聞DIALOG編集部

5月20日から5日間にわたって開催された「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」。3日目の講演・対談では、無人経済社会の可能性や災害時の保健医療支援、工場における自動検品技術、ブロックチェーンなど、AIやロボットが具体的に活躍するシーンやその可能性が紹介されました。その概要をお伝えします。

現場をロボットに合わせるロボットバリアフリーという発想

ロボットの駆動を制御する汎用ソフトウェアを開発するアスラテック株式会社の羽田卓生事業開発部長は、「人間が新しい業務を行う際、トレーニングが必要なように、人間の仕事をロボットにサポートさせるときには、まずロボットに業務を覚えさせないといけない。そのためには、業務分析からスタートする必要がある」と話しました。

現在のロボットは万能なわけではないので、業務フローと照らしあわせながら、ロボットが担える作業を検証し、実際にどの部分を任せるかを検討する必要があるそうです。さらに、「現場自体をロボットに合わせる『ロボットバリアフリー』という視点も重要になる」と指摘しました。

災害時に備え、人工知能はどのように活用可能か

国立保健医療科学院 健康危機管理研究部の金谷泰宏部長は「東日本大震災の際、災害派遣医療チーム(DMAT)が被災地に入れなかった。チームを現地までナビゲートするシステムもなく、どの病院にどのような患者がいるのかといったことも把握できず、支援のミスマッチが起こった」と当時の様子を振り返りました。以来、これまで以上に大規模な自然災害に対応できる技術の開発が進められています。

災害時にDMATを効果的に動かすには、患者ごとの状況を把握する必要があります。「患者をどのような経路、運搬手段で、どの病院に、何時間後に運べばよいのか。その最適な組み合わせを導き出すのは、これまで困難だった」。そこで、重傷者の運搬能力向上に向けたAIの開発が進められ、「H-CRISIS Assistant 災害時保健医療活動支援機能」というプラットフォームが完成したそうです。

モノづくりの現場とAIベンチャーの協業がイノベーションを生む

「ディープラーニングの登場によって、ビジネスの壁を越えるようなイノベーションが起こる」。株式会社ABEJAの岡田陽介代表取締役社長CEO兼CTOはそう断言しました。その一例が、鉄の精密加工を行っている武蔵精密工業株式会社の主力製品「ベベルギヤ」の外観検査へのAI活用だそうです。
岡田さんと一緒に登壇した武蔵精密工業の大塚浩史代表取締役社長によれば、「不良品率0.002%という中から不良品を探すのは容易ではないが、安全に関わる部品なので、不良品を出荷することは絶対に許されない」とのこと。ところが、オートメーション化が進む工場内で、最後まで自動化ができなかったのがこの検査でした。人の五感に頼るため、検査する人の習熟度にバラつきがあるうえ、高負荷な作業でもあるので、なんとか自動化したいと10年前から取り組んできました。

しかし、そこには思わぬ“壁”が。不良品率が低いため、不良品のデータがなかなか集まらず、AIの学習が進まなかったのです。そこで、AIベンチャーであるABEJAとタッグを組み、良品のデータを使って不良品を検知する仕組みを開発したそうです。

今後の社会の礎をなす重要技術と期待されるブロックチェーン

ブロックチェーンの特徴は「内容も存在も誰にも否定できない記録を保存・維持する」「その確かさを誰でも確認できる」「以上のことを誰にも止めさせない」という技術を提供すること。株式会社ブロックチェーンハブの斉藤賢爾チーフ・サイエンス・オフィサーはそう解説しました。

今後、私たちの社会の礎となる重要技術の一つとして注目されているブロックチェーン。その課題と、実装後の社会の姿はどのようなものなのでしょうか。斉藤さんは、「新しい技術は、新しい事故を生む」というフランスの思想家、ポール・ヴィリリオの言葉を引用し、私たちは社会の変わり目を生きていることを強調しました。
ブロックチェーンにはまだ技術的、ガバナンス的課題があり、夢の技術と呼ばれるような仕組みは誕生していないそうですが、技術が進むと「売り主、買い主の分離という考え方が崩壊し、もはや単純な消費者はいなくなる。そういう時代に貨幣経済を続けるのか」と問題提起しました。

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