2018/07/18

コネクティッドデザイン考 序説
AIフォーラムレポート

朝日新聞DIALOG編集部

松井 龍哉
フラワー・ロボティクス(株)代表/コネクティッドホーム アライアンス デザインディレクター

グッドデザイン賞をはじめ数々の賞を受賞し、ロボットデザイナーとして第一線で活躍を続けるフラワー・ロボティクス株式会社の松井龍哉代表。「朝日新聞DIALOG AI FORUM 2018」5日目の講演では、人工知能(AI)とロボットの関係性を分かりやすく語りました。

AIはロボットという「体」を持つことで新しい領域へ

パソコンやスマートフォンみたいに、ロボットを日常の風景にするのが、私たちフラワー・ロボティクスの目標です。今から11年前にiPhoneが登場し、それまでスマートフォンなど見たこともなかった人たちにも一気に浸透しました。100年前は車もそうでしたし、30年、40年前はパソコンもそうした存在でした。

では、これから10年かけてロボットを日常の風景にするには何が大切かと考えると、一番はデザインです。プロダクトデザインという意味ではなく、新しいライフスタイルをつくるためのインターフェースとしてのデザイン。例えば、ユーザーが情報に最も簡単にアクセスできるとか、使っていること自体が新しいライフスタイルを感じられるとか、そういうことが次のプロダクトとしては大事なポイントになってくると考えています。

AIの研究者として有名な中島秀之先生(札幌市立大学理事長・学長)が「知能は主体と環境との相互作用としてとらえるべきだ」と話しています。AIを語るとき、それからロボットを語るときは、使われる場所、環境によってその働き方や動き方が違う。つまり、我々がつくっている社会によってAIの働き方が相当変わってくるわけです。ですから、AIが進んだからといって社会が良くなるという考え方はおかしい。どちらもあっての進化ということになっていくわけです。

我々の体も、脳だけがあるのではなく、脳を載せるボディーを持っているから一つの知的なシステムとして存在しています。環境とAIをつなぐ体のようなもの、それがロボットです。体には二つの役割があって、一つは、環境から情報を得る知覚としてのシステム。もう一つは、環境に働きかける作用としての手段。AIも体を持ってはじめて新しい領域に進むことができます。

フラワー・ロボティクスの最新ロボット「Patin(パタン)」は、スケートシューズの形をしていて、AIで環境と空間を認識し、周囲のモノにぶつからないように動きます。上に物が取り付けられるようになっていて、扇風機を取り付けると移動式の扇風機になるし、ランプを付けると移動式のランプになる。上に取り付けるものは、どの会社がどのようなものをつくってもいいという考え方で設計しています。なぜこんなルールにしたかというと、我々のようなベンチャー企業が単独で新しい産業をつくるのは無理なんです。そこで、メーカーやサードパーティーに興味を持ってもらい、これから一緒に産業をつくっていきたいと考えているのです。

スマートフォンが登場したことで、ネットワークへのアクセスの質が変わりました。ネットワークにつながっていなかった自律型ロボットに代わり、これからはクラウド化したコネクティッドロボットが、ロボットの主流になってくると思っています。つまり、人間の生活を見ながら自分で行動していくロボットです。このロボットが家庭と情報と人とを結ぶ様相をデザインするのが、私たちの仕事だと考えています。

松井 龍哉
1969年、東京都生まれ。91年、日本大学芸術学部卒業後、丹下健三・都市・建築設計研究所を経て渡仏。2001年フラワー・ロボティクス社を設立。ヒューマノイドロボット「Posy」「Palette」などを自社開発。現在、自律移動型家庭用ロボット「Patin」を開発中。17年よりヨーロッパ各地の美術館/博物館にて開催される巡回展”Hello, Robot”展に出展中。iFデザイン賞(ドイツ)red dotデザイン賞(ドイツ)など受賞多数。日本大学藝術学部客員教授

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