2018/10/22

連続セッション「平成世代が考える『平成30年』の先の未来」
第2回 「人口減少と外国人」

Written by 関谷尚子(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 松本哉人(POTETO)

「平成」の時代は、来年4月に幕を閉じます。朝日新聞DIALOGでは、平成を創った大人たちをゲストに迎え、新しい時代を担う若者たちがさまざまなテーマで平成を総括する連続セッション「平成世代が考える『平成30年』の先の未来」を開催しています。第2回のテーマは「人口減少と外国人」。9月19日に東京・築地で開かれたセッションには、約70人の参加者が集まりました。その模様をお伝えします。

セッションは3部構成。ゲストに、人口減少問題と定住外国人(移民)政策に詳しい日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩さんと、大手コンビニチェーンのローソンでアルバイトの募集・定着施策の企画・実行を担当している千葉寛之さんを迎え、平成世代の若者たちとパネルディスカッションを行いました。

定住外国人の受け入れは、日本の未来を明るくする

第1部では、毛受さんが、日本の人口減少の見通しと影響に触れながら、移民政策の展望について概説しました。

講演の冒頭で毛受さんがセッションの参加者に、移民受け入れへの賛否を聞いたところ、「賛成」が6割強、「反対」が2人、「どちらとも言えない」が3割強でした。

10年以上前から移民の本格的な受け入れの必要性を訴えてきた毛受さんは、「日本の人口減少問題は深刻で、2020年代には急速に悪化する。これからの20年間で、東京都の人口とほぼ同じ約1300万人が減ると、国の研究機関が予測している。実際に、公立小中高校は毎年約500校が廃校になり、この10年間で5000校が日本から消えた」と説明しました。さらに、国の少子化対策について、「若い女性の数は年を経るごとに減っていく。仮に出生率が多少上がっても、子どもの数は増えません」と、その限界を指摘しました。

毛受さんは、「移民の受け入れは長年、タブー視されてきた」と説明したうえで、「外国人による犯罪は減っているし、『移民に職が奪われる』ことを懸念するなら、人数制限をしたうえで、人手不足で困っている職種から優先して受け入れればいい。対中関係が気になるなら、東南アジアの人々を優先して受け入れればいい。もっと多くの外国人に日本で働いてもらわないと、経済が回らなくなる」と危機感をあらわにしました。
また、日本的な同質性が損なわれるといった懸念についても、「秋田県では地元の国際教養大学で学ぶ留学生が、なまはげを演じている。日本の伝統文化を日本人だけで維持していくのは、すでに難しくなっている。日本文化に関心のある外国人に関わってもらわないと、伝統行事がなくなってしまう」と話しました。

では、日本は外国人をどのように受け入れていけばよいのでしょうか。毛受さんは四つの柱からなる私案を示しました。
一つ目は、どこの国からどんな人を受け入れるかを決め、段階的に受け入れる「入国割り当て政策」です。「一時的な労働のための受け入れでは意味がない。日本に定住して日本語を覚え、日本社会に貢献していく人材を受け入れていく必要があります」
二つ目は、定住外国人に日本語教育をし、多文化共生を目指す「ソフトランディング政策」です。「外国人の日本語教育は文化庁の担当で、予算はたったの2億円。多文化共生施策は政府が自治体に丸投げしてしまっている」
三つ目は「日本人の意識改革」です。「移民は日本を共に担う仲間だという認識が日本人側にないと、差別はなくならない。政府が責任をもって日本人の意識を変えていくことが必要です」
四つ目は「外国人受け入れ後の日本の社会ビジョン」です。「単一民族的な色彩の強い日本では、外国人がたくさん入ってくると、不安を感じる人も出てくる。経済面だけでなく文化面からも長期的なビジョンを議論する必要があります」

講演の最後に毛受さんは、今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」に言及。「国は『移民政策とは異なる』としつつも、かなり踏み込んだ外国人定住政策を打ち出した」と評価する一方で、「民間任せでクリーンな制度ができるのか。国際的な競争力のある受け入れ制度なのか。秋の臨時国会で予定されている入国管理法改正が、次のステップとして外国人受け入れ法へつながるのか」と課題も指摘しました。

外国人に選ばれるには、日本を好きになってもらう努力が必要

第2部では、ローソンの運営本部運営人財開発部マネジャーを務める千葉さんが、外国人アルバイトに対する取り組みや、今後の課題などについて話しました。

ローソンの店舗は全国に約1万5000あり、約20万人のアルバイトのうち約1万人が外国籍だそうです。そのほとんどは留学生なので、日本語学校や専門学校、大学が多い都市部を中心に働いています。「最近の人手不足は深刻で、昔はアルバイトを選ぶ側だったが、今は選ばれる側になっている。選んでもらうための努力が必要です」

同社では2014年に人材派遣会社「ローソンスタッフ」を設立し、ベトナムや韓国で来日前の留学生に向けた研修所もつくっています。そこで日本文化や接客方法の基礎を教えたうえで、Skypeを使って面接。来日後はより実践的な研修をして、店舗に派遣や紹介をしています。

では、なぜこうしたスキームを考えたのでしょうか。「留学生のバイト先は、かつては日本語を使わずにすむ夜勤工場の仕事が中心で、日本語が上達しないまま帰国する人も多かった。コンビニは接客で日本語に触れる機会が豊富で、季節や行事に合わせて変化する商品を通して日本の文化も学べるため、留学生には人気のあるバイト先。留学生やその両親にとっては、訪日前に学校だけでなくバイト先まで決まっていたほうが安心できると考えました」

ローソンスタッフでは、多くの留学生と接した経験を、次に生かそうとしています。
一つ目は、留学生に特化したマニュアルの制作。袋詰めをする際には「硬いものと軟らかいものを別々に入れる」「氷と新聞は別々に入れる」といったことや、日本の文化やマナーを分かりやすく解説して研修にも取り入れています。
二つ目は、日本文化の体験とコミュニケーションの向上を目的としたレクリエーションを行うこと。「せっかく日本で働いているのだから、日本を好きになってもらいたい」と考え、留学生との運動会や、雪国でのふるさと体験、富士山でのボランティア活動なども実施しているそうです。

なぜ、そうした取り組みをしているのでしょうか。「アジアの学生に一番人気がある留学先は米国。今は、アニメなど日本文化の人気や帰国後の日系企業への就職で日本に引きつけているが、いつまでも続く保証はありません。日本に来たいと思う人を増やせば、ローソンで働く人も増えると考えています」

最後に千葉さんは、今後の課題として「『未来の当たり前』をつくらないといけない」とし、「外国人の店員に慣れていない店舗経営者やお客さまもまだ多い。お互いを理解し合いながら議論をすることが大切。議論を深め、あるべき日本の姿が見えてくるといい」と話し、多文化共生を意識することの重要性を強調しました。

寛容ではない人に、寛容になることの重要性をどう伝えるか

第3部のパネルディスカッションでは、毛受さん、千葉さんと、平成生まれのパネリスト2人が、実体験を通じて見つけた課題と、その解決策について意見を交わしました。

日本に来た難民申請者の社会参画とエンパワーメントを目指すNPO法人WELgee の代表理事を務める渡部清花さん(27)は、「私は『人は移動するもの』と考えている。人がよりよい生活や夢に向かって移動することに、今の難民条約では対応しきれない。日本では正面から難民認定を求めても、まず認定されない。難民申請中は立場が不安定なので、優れた能力のある人でも企業は採用しない。意欲のある人に安定した留学ビザを与え、就活させるべきです。意外かもしれないが、難民申請者のペルソナは、職歴も学歴もパッションもある人です」と話しました。

難民申請者だけでなく、留学生にとっても、日本で働き続けることは容易ではないようです。千葉さんは、ローソンで働く外国人について、「(卒業後は)働き続けることができないため、多くの人が帰国してしまう」と話しました。

毛受さんは、「留学生は働ける時間が週28時間以内に制限されていて、それが守られていないケースもある。しっかりとした制度を作り、優秀な留学生に大手を振って日本で働いてもらうべきでしょう」と語りました。

移民への反感や反発はどのようにして生まれるのでしょうか。トランプ政権下の米国で移民排斥運動の動きをつぶさに見た弁護士の徐東輝さん(27)は、都会と地方の違いが大きいと言います。「サンノゼなど都市部では移民をケアするが、田舎では、客観的なデータに基づかないまま移民が仕事を奪ったと思い込む人がいて、身近にいる移民を攻撃する。日本の地方で東京並みに外国人が増えたとき、米国と同じようなことが起きるかもしれないという危機感がある」

これに対して渡部さんは、外国人の友人の実体験を例に挙げ、「日本人に声をかけたら逃げられたり、電車内の席に座っただけで避けられたりするときもある。『肌が黒いからかな』と感じてしまう人もいる。家を借りることも本当に難しい。国籍が日本でないというだけで断られることもある」と話しました。

徐さんは差別意識に関する課題も提起しました。自身が在日韓国人3世で、幼少期にはいじめられたこともあると明かし、「差別をなくす運動は続けるべきだが、世の中から差別意識を完全になくすことはできない。それを前提に付き合っていくしかない。全員がもっと寛容にならないといけないということを、寛容ではない人にどう伝えるかが課題」と語りました。

千葉さんは、これまでの経験を振り返り、「最初は、相手が何が分からないのかが分からなかった。また、特に地方では、お客さまに外国人を雇っていることを理解していただくのに苦労した。しかし、外国人アルバイトの数が増え、生活に溶け込み始めている。(理解の促進には、)“量”と“質”が共に上がることの影響が大きいように思います」と話しました。

来場した参加者にも、セッションの感想を聞きました。

都内の大学に通う女性(22)は、「このテーマに関心がある今日の参加者でさえ、移民の受け入れに賛成か反対かを問う質問で、3割ぐらいが『どちらとも言えない』と答えていた。実際には、外国人に日本を選んでもらうための努力が必要な段階まできているのかもしれないが、社会としては、まだ理解がそこまで進んでいないと思います」と話しました。そのうえで、「私自身、こういったテーマで家族や友人と話をする機会は今までなかった。コンビニで働く外国人が増えている実感はあるけれど、あくまで留学生と捉えていて、日本社会を共に支える仲間という感覚はなかった。今回のセッションをきっかけにそうした認識を改め、真剣に考えていきたい」と語りました。

〈登壇者プロフィル〉
毛受 敏浩(めんじゅ・としひろ)
1954年、徳島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒、米エバーグリーン州立大学大学院修士課程修了、桜美林大学大学院博士課程単位取得退学。兵庫県庁に勤務し、現在は日本国際交流センター執行理事。外国人定住政策の専門家。

千葉 寛之(ちば・ひろゆき)
1976年、埼玉県生まれ。株式会社ローソン運営本部運営人財開発部マネジャーとして、店舗で働くアルバイトの募集・定着施策の企画・実行を担当。人材派遣・紹介の関連会社、ローソンスタッフ株式会社の立ち上げに関わる。

徐 東輝 (そぉ・とんふぃ)
1991年生まれ。弁護士(法律事務所ZeLo)として企業法務に従事する傍ら、政治情報分析及び主権者教育を中心事業とするNPO法人Mielkaの代表も務める。 2016年米大統領選挙の際にリサーチャーとして渡米し、移民問題などで揺れる米国を目の当たりにした。 自身も韓国にルーツを持つ移民3世。著書に『憲法の視点からの日韓問題』(TOブックス)がある。

渡部 清花(わたなべ・さやか)
1991年生まれ。日本に来た難民申請者の社会参画とエンパワーメントを目指すNPO法人WELgee 代表。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士課程在籍中。バングラデシュの紛争地でNGOの駐在員、国連開発計画(UNDP)のインターンとして平和構築プロジェクトに携わった。空き家活用型シェアハウス事業や難民の就労事業に取り組む。

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