DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/10/31

先端技術が実現する「人間味のあるかかわり」がコミュニケーションを変える
Social Innovator’s EXPO for 2025 ~未来社会を考える3日 初日レポート[PR]

[PR]2025日本万国博覧会誘致委員会 協力 日本財団、朝日新聞社

9月15~17日の3日間にわたって東京・渋谷で開かれた「Social Innovator’s EXPO for 2025 ~未来社会を考える3日間」(2025日本万国博覧会誘致委員会主催)は、2025年大阪・関西万博の誘致活動で掲げている「SDGs達成への貢献」について、若きソーシャル・イノベーターたちとともに考えようという試みです。
初日のテーマは「技術の進化が関わりを変える。」。2025年大阪・関西万博がめざすのは、デジタル技術の進化によって人と社会、人と行政、人と人がよりよい関係で結ばれる社会です。経済産業省の武田家明・博覧会推進室長の基調講演に続き、キーノートスピーチや事例紹介など、盛りだくさんの内容で進められました。

【キーノートスピーチ】
●下山紗代子氏(一般社団法人リンクデータ代表理事)

「私は、オープンデータが社会変革をもたらすと考えています。データの組み合わせは、新しい価値を生みます」
国内最大級のオープンデータ活用支援プラットフォーム「LinkData.org」を運営する一般社団法人リンクデータの代表理事、下山紗代子氏がめざすのは、世の中にあるオープンデータを“フル活用”した社会の実現だ。

「オープンデータとは、行政機関などによってだれでも自由に使えるように公開されているデータのことです。税金で作られたデータは、公平にオープンでなければなりません。そのデータを民間企業などが使うことによって新たな価値が生まれるのです。たとえば米国では、世界最大級の口コミサイト『Yelp(イェルプ)』(日本の『食べログ』のようなサービス)がサンフランシスコ市と提携し、市の保健衛生調査を点数にして表示することで、ユーザーにこれまで以上の安心・安全を届けるサービスを展開しています。市の公式データを多くのユーザーが集まる場で活用するという象徴的なケースです」
日本でも、静岡市がオープンデータ化した道路交通情報を使って、トヨタ自動車がカーナビで情報発信する「しずみちinfo」などの試みが始まっている、と言う。
「これまで公共サービスといえば行政が主体でしたが、企業や研究機関、市民などが組織を超えて、それぞれの得意分野で役割を分担できる社会が、オープンデータで実現できるのです」
こうしたデータを有効活用することで、「長い目で見通せる社会」が実現するという。
「データによって正確に現状を把握できれば、そこから“見通し”を考えることができます。そして、それによって長期的に物事を考えられるようになるのです」

【事例紹介】

続いて、デジタル技術によって社会を変えていく挑戦を続ける2社の事例紹介が行われた。どちらも、日本財団の「ソーシャルイノベーションアワード2017」で優秀賞を受賞したプロジェクトだ。

●川口良氏(一般社団法人tonari代表理事)

「私たちがいま開発に取り組んでいるのは、床から天井まである巨大スクリーンを通して、遠くにいる人と、あたかもすぐ隣にいて話をするかのようなコミュニケーションができるシステムです。遠く離れた空間が、スクリーンを通してシームレスにつながる。等身大の相手と、まるでスクリーンがなくて同じ場所にいるような感覚を作り出すテクノロジーです。私たちはそれを『ポータル』と名付けました」
自身が開発を進める新技術について熱っぽく語る一般社団法人tonari(トナリ)の代表理事、川口良氏は、グーグルジャパンに6年間在籍し、グーグルマップの機能開発などに携わった気鋭の技術者だ。
「現在、東京で働く人の55%以上が片道1時間以上かけて通勤しています。一生に換算すると2年半になります。その時間があれば、もしかしたら自分の趣味に使えたかも知れない。もっと家族と過ごせたかもしれない。私たちの技術を使えば、その通勤時間を省き、オフィスにいるかのように自宅で仕事ができます。さらに言えば、地方にいても、東京のオフィスにいるかのように仕事ができるようになるわけです」

単なるコミュニケーションツールなら、VR(仮想現実)技術を使って本物のような3D空間をつくる方向性もあるが、川口氏は「そうではなくて、もう少し人間味にあふれた“かかわり”を実現したい」と言う。
それはグーグルでの経験が原体験になっている。同社では四半期に1回、世界に散らばる技術者チームが米国の本社に集まることになっていたという。「どんなにツールが発達しても、人は実際に顔を合わせて、一緒に食事をして、そういうなかで信頼関係が育まれて、ようやくスムーズに仕事ができる、ということです」と川口氏は確信する。
「tonariが重要視するのは、日常生活の中での“つながり”です。技術が確立した際には、こんな利用方法を想定しています。 ①遠隔チームの円滑な打ち合わせ(両オフィスの休憩室をつなげる)②育児と仕事の両立(オフィスと保育施設をつなげる)③健康相談・カウンセリング(自宅と診療所をつなげる)④家族のぬくもり(自宅と祖父母宅を玄関でつなげる)。私たちはいま、場所に縛られたシステムの中で生きています。それは本当に持続可能な社会なのでしょうか。私たちはいままで何度もネットのイノベーションを経験してきましたが、これからもっと大きなコミュニケーションの変革が起きるんじゃないかと思っています」
川口氏は、その変革の可能性に目を向けている。

●岡勇樹a.k.aゆーく氏(NPO法人Ubdobe代表理事)、野呂ゆき乃氏(NPO法人Ubdobeデジリハ事業部)※岡氏は出張中のベルリンからテレビ会議システムで参加

NPO法人Ubdobe(ウブドベ)が掲げるのは、「医療福祉の課題をエンターテインメントで解決」することだ。2008年に創立、2010年に法人化して以来、暗くなりがちなガン患者や認知症患者、難病患者の生活に明るいイメージを持ち込もうと、大音量の音楽で踊るクラブイベントなどを開く活動を続けてきた。
「私たちが昨年から取り組んでいるのが、難病を抱えた子どもたちのための『デジタル・インタラクティブ・リハビリテーション』(デジリハ)、つまりデジタル技術を使ったリハビリ・プログラムの開発です」

代表理事の岡勇樹氏が、力を込めてこう訴える。
「リハビリを必要としている18歳未満の子どもたちは、全国で14万人いると推測されます。たとえば、筋ジストロフィーや脳性麻痺の子どもたちが器具をつけて立つ練習をするのは、苦痛を伴うとても厳しいリハビリです。10歳にもならない子どもにとって、日々のリハビリと向き合うのは難しい。それならば、せめてそのリハビリを楽しくできないか。リハビリも楽しければ続けられます。そこで、子どもの動きに合わせてキャラクターが飛び出すなど、デジタルアートを融合したゲーム感覚のリハビリ・プログラムを開発しています」
開発には「キッズプログラマー」として子どもたちも参加している。障がい者、健常者を問わず子どもたちが一緒になってアイデアを出し、医師や作業療法士、セラピストなどの“大人”が医学知識をベースに形にしていく、という手順だ。子どもたちのデジタル感覚を伸ばすための研修「デジタルLAB」の開催にも取り組んでいるという。
「子どもたちは、『vvvv』と呼ばれるビジュアルプログラミング言語に取り組んでいます。ただ、技術開発そのものも大切ですが、それまで出会うことのなかった子ども同士が出会い、自分たちの好きなものを素材として使って楽しみながら解決策を考えていく、そういうアナログのコミュニケーションが重要なポイントです。目の前で苦しんでいるこの子のために何かできないか、という思いです。いま、すでにいくつかの病院や施設とパートナーシップを結び、仕組みや方向性を試行錯誤しながら進めています。最終的には、そうした病院や施設に、大きな部屋で遊びながらリハビリができる『デジリハルーム』が常設されることをめざしています」

【パネルディスカッション】

モデレーター
野村恭彦氏(株式会社フューチャーセッションズ)
パネラー
下山紗代子氏(一般社団法人リンクデータ代表理事)
川口良氏(一般社団法人tonari代表理事)
福垣アリスン氏(一般社団法人tonari)
岡勇樹a.k.aゆーく氏(NPO法人Ubdobe代表理事)
野呂ゆき乃氏(NPO法人Ubdobeデジリハ事業部)

休憩を挟んで行われたパネルディスカッションでは、先の登壇者に加えてtonariの福垣アリスン氏がパネラーとして参加した。モデレーターは、ソーシャル・イノベーションをけん引するフューチャーセッションズの野村恭彦氏が務め、技術の進化によってより良い社会が実現される可能性について語り合った。

野村 デジリハによって、どのような社会になるんでしょうか。

野呂 デジタル技術を医療で活用したいと考えている企業やプログラマー、ゲームエンジニアは多いです。だから医療とデジタルの距離は近くなるし、変わっていくと思います。

福垣 デジリハの仕組みは、教育にも導入してもらいたいですね。学校を退屈だと思っている子どもたちが、実は多いんです。自分に興味があるから取り組み、それが誰かのためになるから学びたいという気持ちを大事にするデジリハの考え方は、子どもたちの意欲を高めるはずです。ぜひ学校と組んで、その考えを学校でも実践してほしいですね。

 楽しくやることが大事なんです。でもね、その楽しいことを選択できない人、選択したいけど無理な状態にある人など、いろいろあるわけです。それを近くの人が力を貸すことで解決すればいいわけで、そうした関係性ができていけば、きっといい時代をつくれるんじゃないかと思います。

下山 リンクデータのオープンデータ・プラットフォームを使ってくれている最年少は、小学3年生です。自分の得意分野の情報を集めてきて公開し、それをほかの人が使ってくれるのが、すごく楽しいらしいんです。サッカーもやっているので、「プログラミングとサッカーと、どっちが楽しい?」と聞いたら、「プログラミング」だと答えました。喜んでもらえる、褒めてもらえたという体験が大事なんですね。誰かが強制するのではなく、自分が興味を持った分野で自由に楽しみながら、がんばることができる環境ができていけばいいですね。

野村 万博が開催される2025年に向かって、社会はどんどんオープンになっていくと思います。この会場で話を聞いていると、社会がオープンになっていくなかで、人間味のあるかかわりを持ちながら、お互いの力を生かし合う関係がつくられていく可能性を感じます。

川口 テクノロジーをしっかり理解したうえで、同時に人間性・人間味も理解し、その二つをくっつけていくことが重要だと思います。「UX(ユーザー体験)」という言葉がありますが、その考え方自体がまだまだ日本では広がっていない。やみくもに技術を押しつけるのではなく、技術が目立つ存在ではなくても、しっかり役に立っている。そういう提供の仕方になっていくんじゃないでしょうか。

野村 これまで技術は専門化したクローズドなものだったけど、これからはオープンになって、つながっていく。その役割を果たすのが、「人間味」だったり「楽しさ」なんでしょうね。

下山 プラットフォームで地域をつなぐ仕事をしていると、自分の組織内ですべてを解決しようとすると失敗するケースが多いと感じます。すでに良いものが存在したり、ほかに技術を持った人がいたりするのに、そこに目を向けようとしない。自分の組織内でできないことは組織外の得意な人に任せるという柔軟性が、成功するためには大切です。

野村 そういう社会を実現させるには、いま何をする必要がありますか。

川口 いまの常識に縛られないで、こういうものがあればいいな、というイメージを誰もが持ち続けることではないでしょうか。それをオープンにしていくことで、私たちを含めて解決できる人が必ず出てきますからね。

福垣 できることを、すぐにでもやってみたらいい、と私は考えています。たとえば、フレックスタイムで働きたいと思ったら、あれこれ迷わずに上司に相談してみたらいい。そこから何かが生まれていく可能性はありますからね。

下山 いまはネットでの情報発信が簡単にできる時代です。だから、自分のアイデアを絵でもいいし、文章でもいいし、とにかく発信していけばいいんじゃないでしょうか。さらに言えば、オープンデータをつくるツールがあるので、それを使って自分の専門を生かした独自のオープンデータをつくる人が増えていけばいいなと思います。

 こういうプロダクトがあるからこういう社会になる、という話し方を日本人はします。だけど、海外の人と話をしていると、こういう社会にしたいから、こういうプロダクトが必要。だからつくる、といった話し方をするんですよね。初対面であっても、そういうことをオープンに話す。日本人も「こういう社会にしたい」という話を積極的にしたほうがいいと思います。そういう思いをオープンにして交流していくことで、具体的な話も生まれてくるし、それによって、どんどん日本は変わっていくと考えています。

野村 いいよね、楽しいよね、という気持ちを大事にするところから社会は変わっていくのかな、とディスカッションを聞いて感じました。そういうスタンスの人がイノベーターとして増えてくれば、まわりの人も幸せになっていく。そして、そういう社会に近づいていくのかな、と思います。今日はありがとうございました。

2025年万博の開催国は今年11月23日にBIE(博覧会国際事務局)総会で決定します。
2025年万博を日本、大阪・関西へ
詳しくは、こちら(2025日本万国博覧会誘致委員会のページ)をご覧ください。
https://www.expo2025-osaka-japan.jp/

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