DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/11/22

女性の起業支援、日本に足りないことは?
――女性実業家3人の座談会・前編

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日本では上場企業の女性役員比率が4.1%に留まっています。組織の幹部比率や給与格差など、経済分野での男女平等が実現すれば、日本のGDPが5500億ドル(約62兆円)増えると、「世界経済フォーラム」の報告書は指摘しています。また、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の17項目の中に「ジェンダー平等の実現」があるように、男女格差の解消は世界的な課題でもあります。

カナダ・トロントで開催されたDWENの様子

そんななか、IT総合メーカーのデルは2010年から女性起業家を支援するプログラム「Dell Women’s Entrepreneur Network(DWEN)」をスタートし、毎年Global Summitを国際都市で開催しています。参加者はスタートアップを終え、事業拡大やスケールアップを視野に入れる女性起業家。今年7月、カナダ・トロントで開催されたDWEN Summitに参加した3人が集まり、起業を目指す女子大学生も交えて日本で女性が起業するときの課題や今後の展望を語り合いました。

座談会に参加した3人の皆さんはこちら。

【高橋真知】
株式会社Stroly 共同CEO/代表取締役社長
アメリカの大学を卒業後、ITベンチャーを経て国際電気通信基礎技術研究所(ATR)入社。
社内ベンチャーで2010年ごろから、オンライン地図共有サービスを開始。2016年にマネジメント・バイアウト(MBO)によって独立し、社名とサービス名を「Stroly」に。古地図や観光マップといった縮尺のゆがんだアナログの地図をウェブプラットフォームにアップロードすると、その地図上でのユーザーの位置情報が示される。

【川又尋美】
Lindoors株式会社 代表取締役
慶応義塾大学SFC武蔵佳恭研究室所員
大学卒業後、コンサルティング会社や外資系企業での勤務を経て、2011年に会社設立。 広告媒体の編集や、日本製品のアメリカへの輸出事業などを展開し、アメリカ、上海、台湾に子会社を置く。AI(人工知能)によって肌の健康状態を解析し、どの化粧品がその人に合うかを自動判断するサービスを美容皮膚科や整形外科向けに提供する新事業を展開予定。

【パトリシア・ベーダージョンストン】
innHealth 代表取締役社長
カナダ出身、日本在住歴32年。在日カナダ大使館で約10年勤務の後、ゴールドマン・サックスやブリティッシュ・アメリカン・タバコ、IBMなどで役員を歴任。2008年にエネルギー開発・コンサルティング会社のSilverbirch KKを設立以降、これまでに四つの会社を起業。今年、海外の一流ドクターからセカンドオピニオンを受けられるサービスや、健康や生活サポートに関する情報をAIやブロックチェーンを活用して提供するデジタル情報プラットフォームを手掛けるinnHealthを設立予定。

「こんな世の中に変えたい」という思いが起業の原点

――高橋さんは、どうやって地図プラットフォームのビジネスに行き着いたのですか?

高橋 アメリカの大学で美術史を専攻していた頃から、アナログの世界にデジタルを持ち込みたいという気持ちが、ずっとありました。美術館や博物館には眠ったままの作品がたくさんあるのです。展示スペースがないからという理由で、多くの作品が永遠に日の目をみないというのはおかしい、これをデジタル化しなければ、と思ったのがきっかけです。京都のATRという研究所では、地図サービスの前にAI技術を使った博物館の屋内ガイドシステムを作っていました。さらに屋外のシステムも手がけているときに、倉庫や搬入路といった来場客には不要な情報がマップに表示されることが引っかかり、テーマパークなどのオリジナル地図の上に現在地を示せれば、いらない情報を減らし、その世界観を体験できると考えたのが始まりです。

――川又さんの人工知能との出会いは、どこにあったのでしょうか?

川又 現在、社長業をやりながら、慶応義塾大学で人工知能を使った画像解析の研究をしています。そこで画像解析によって血流まで読み取れることを知りました。血流から肌の健康状態が分かると書かれた海外の論文も読みました。約10年の実業家としての経験から、この技法を使って社会課題を解決するサービスができないかという視点で、ビジネスを考えました。

――パトリシアさんの五つ目の会社で、ヘルスケアに着目したきっかけは何ですか?

パトリシア 長年、糖尿病の治療のために透析を受けていた親族の男性が、2年前に腎臓移植を受けました。移植は成功したのですが、手術した医師からは「もっと早く治療すべきだった」と言われました。糖尿病は腎臓への影響が大きく、早期の段階で、複合的に診断し治療する事が出来ていれば、透析を受けずに済んだかもしれないのです。しかし、彼の主治医は糖尿病には詳しくても、腎臓の専門ではなかったのです。このとき、どんなに優秀な医師でも、専門外の分野では診断を間違うことがあると気づきました。

カナダには最適なセカンドオピニオンを得られる病院を紹介する会社があり、保険会社と組んで被保険者に無料でサービスを提供しています。日本では病院の受診回数がカナダの10倍近くあるので、このサービスを日本に持ち込めば、日本の社会保障制度の負担軽減にも貢献すると信じています。

世界の女性起業家が集まることで、新たな視点を得られる

――今回、DWENに参加した理由と感想を聞かせてください。

高橋 世界中から女性の起業家が集まるイベント自体があまりないので、どんなものか見てみたいな、という気持ちで参加しました。実際に行ってみると、単に「ビジネスプランを頑張って磨きましょう」というよりは、セルフコンフィデンスのセッションなどを通じて、「自分の内から出てくるパッションをもっと信じよう」というメッセージを受け取りました。そういうことをグローバルに同じ目線で語り合えたのは、とてもよかったなと思います。

川又 DWENに参加したのは、広くて深い視野を持った人たちが世界中から集まるからです。日本社会で起きていることでも、日本人だけでディスカッションしていたら答えが見えない問題が、海外の起業家と話すことで別の視点から問題を見ることができたり、ディスカッションが生まれたりする。10代向けのプログラムもありましたけど、参加した女の子たちの顔つきが、最初と最後で全然違っていました。

パトリシア 私は2012年にインド・ニューデリーで開催されたときに、モデレーターとして参加したのが最初で、トルコ・イスタンブールとカナダ・トロントでも参加しました。すばらしいネットワーキングの機会で、友人もでき、ビジネスにつながる出会いもありました。これから起業を目指す人ではなく、実際に活動している女性起業家が集まるところが、DWENの特にすばらしいところです。自分の経験をシェアしたり、学んだりする場になっています。

会社を成長させるためのサポートが足りない

――女性起業家支援において、日本で不足していることは何でしょうか?

高橋 最近は多くの自治体が起業家支援を始めていて、東京都の「APT Woman」や経産省近畿経済産業局の「LED関西」など、女性起業家をサポートする動きは3~4年前と比べると増えた印象があります。とはいえ、本格的な資金調達を経験したという女性はまだまだ少ないと思います。精神面では女性同士でお互いに励まし合って一緒に頑張れるけど、お金の話や事業をどう成長させるかについてのメンタリングはまだ足りないというのが実感です。私はベンチャーキャピタルの投資家に日本でかなりたくさん会っていますが、相手はほとんどが男性。女性や母親の立場でプロダクトや事業に共感してくれる投資家はまだまだ少ないと感じます。

川又 小中学生の頃から起業家教育やビジネスについて学ぶ機会を得られるようにするべきですね。たとえば、サラリーマン家庭で育って、キャリアの歩み方を一つしか知らずに社会に出てしまったら、別の視点を持つ人と触れ合う機会がないし、情報を得る機会もない。若いうちから、異なる視点を持つ大人にたくさん触れることができたら、全然違った可能性が広がると思います。そこが今の日本のシステムに足りないところです。

事業拡大、スケールアップに必要不可欠なIT

――デルが女性起業家の支援を続けるのはなぜでしょうか?

渡邊義成・デル株式会社常務執行役員コンシューマー&スモールビジネス事業統括本部長
私たちデルは、創業者のマイケル・デルのリーダーシップのもと、「テクノロジーを通して人類の進歩を推進する」ということにコミットしています。それはデルのあらゆるビジネスにおいて埋め込まれている基本的な考え方です。そして、グローバルに広がるビジネスと、我々のリソースを考えたときに、大きなポテンシャルを持ち、社会にインパクトを与えられると考えられるところに対して支援をするのは当然のことであり、女性起業家へのご支援はそういった活動の一つです。

デル株式会社の渡邊義成常務

松本笑美・Dell EMC (EMCジャパン)ダイバーシティ&インクルージョン ジャパンリード
DWENは9年目を迎え、全世界2000人以上の女性起業家ネットワークに成長しています。今年のToronto DWEN Summit参加起業家の年商総額は、約100名、36億ドル(4032億円)に上ります。事業展開やビジネスストラテジーなどで素晴らしい女性起業家が数多く存在するだけでなく、コミュニケーションやヘルスケア領域といった多くの分野で女性が持つビジネス視点を業績に結びつけています。

DWENのコーディネートを担当するDell EMCの松本笑美さん

東京でもDWEN関連イベントとして、女性から女性への投資をテーマとしたWomen Funding Womenを4月に開催し大変好評を頂きました。日本においても女性の経営参画が広がりを見せています。

(後編につづく)

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