DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル

LGBTを切り口に、世の中の「当たり前」を疑う
多様な性のあり方について情報発信する松岡宗嗣さんに聞く

Written By 間宮秀人(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部

朝日新聞DIALOGは12月21日夜に、「セクシュアリティーの軌跡」をテーマにセッションを開催します。平成の時代を振り返る連続企画の第5弾として、セクシュアルマイノリティーをめぐる30年間の社会の変化を学び、これからを議論します。

平成世代のスピーカーとして登壇予定の松岡宗嗣さん(24)は、高校卒業時にゲイであることをカミングアウトして以来、政策や法制度を中心としたLGBTに関する情報発信や、啓発キャンペーンを様々なメディアで行ってきました。そんな松岡さんに、活動にかける思いを取材しました。

LGBTに対するステレオタイプを覆したい

Q.現在、どんな活動をしているのですか?

2018年春に大学を卒業し、現在は一般社団法人fairの代表理事として、法律や法整備に関する情報発信をしています。団体名には「どんなジェンダーやセクシュアリティーであってもフェアに生きられる社会にしたい」という思いを込めました。活動について言うと、最近、台湾で同性婚に関する国民投票があったのですが、それがどういう経緯で行われ、どういう影響をもたらすのかなどの解説記事をfairのウェブサイトに掲載しています。また、10月に成立した、ヘイトスピーチの規制と性的マイノリティへの差別禁止を柱とする東京都の人権尊重条例の制定過程においては、より効力のある内容にするためにパブリックコメントを募集するキャンペーンを行いました。
学校や自治体、企業などでLGBTに関する授業、講演・研修などもしています。そこでは、LGBTに関する基礎知識や、当事者がどのように生きているのかなどについて話します。例えば学校では、授業を通して、LGBTを切り口に、様々なマイノリティの方たちへの想像力を持てるようになってほしい。世の中の「普通」や「当たり前」を疑ってほしいということを発信しています。

Q.なぜゲイをカミングアウトしたのですか?

LGBTに対する世の中の差別や偏見は依然根強く、宝塚大学看護学部の日高庸晴教授らが2016年に実施した当事者へのアンケートでは、約6割の人が学校でLGBTを理由にいじめを受けた経験があるそうです。同じく日高教授らが2005年に行った、ゲイ・バイセクシュアル男性5731人を対象にした調査では、6割以上が自殺を考えたことがあると回答しています。性的マイノリティーの人々には生きやすい世の中とはいえません。自分がカミングアウトすることで、ステレオタイプを壊していけるのではと思ったのがきっかけです。

LGBTであることをカミングアウトしづらい社会

高校卒業のタイミングで自分のセクシュアリティーをカミングアウトしましたが、友人や家族には意外にすんなり受け入れてもらうことができました。大学では、中学や高校までと違い、人間関係の幅が広がり、自分の好きなようにコミュニティーをつくれるので、自分と同じようなセクシュアリティーの人と交流していました。
しかし、ほとんどの友人は、周りに自分のセクシュアリティーをオープンにしていませんでした。平日、学校や職場では隠し、休日にだけ同じセクシュアリティーの人と集まって、平日のモヤモヤを晴らしている人もいました。自分のセクシュアリティーを周りの人に受け入れてもらえないリスクを恐れていたのだと思います。

世の中は異性愛を前提としている

受け入れてもらえない要因に、世の中が異性愛やシスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と、自分が認識している性別が一致していること)を前提としていることがあると思います。法制度という枠組みで言うと、LGBTの人が差別的な扱いを受けた際に守られる法律がないため、場合によっては泣き寝入りするしかありません。また、同性婚はできないため、同性カップルは法的に承認されていないという状況があります。
社会通念上も、異性愛が前提とされています。例えば、同性のパートナーと旅行をし、ホテルのカウンターでチェックインをしていると「ダブルベッドではなく、ツインにしなくてよろしいですか?」と聞かれたり、部屋に男性用と女性用の浴衣があったりします。パートナーと不動産屋に行った際、「お二人の関係性をお伺いします。『そっち』じゃないと思うんですけど、念のため」と言われたこともあります。男性同士で部屋を借りるのは、断られることがまだまだ多いですね。
普段の言動でも、「彼氏いるの?」や「彼女いるの?」ではなく、本当は「恋人いるの?」とか「付き合っている人いるの?」というように性別を断定しない言い方ができるはずです。そもそも性的に誰かに惹かれることがないアセクシュアル(無性愛)の人もいます。みんなが恋愛や性愛の感情を持っているわけではないのです。
また、LGBTであるかどうかにかかわらず、その人を構成する要素や、取り巻く環境は一人ひとり違いますよね。受験勉強だって、塾に行った人もいれば、家庭の経済状況で行けず、独学した人もいる。そもそも受験という選択肢がなかった人もいます。親との関係だって、良好な人もいれば、うまくいかない人もいる、親がいない人もいます。世の中の「当たり前」を疑い、さまざまな「想定」の引き出しを多く持つことが大事なのではないか、と思います。

いつか、多様な性のあり方が受け入れられる社会に

Q.松岡さんにとって、どんな社会が理想ですか?

異性愛、およびシスジェンダーを前提としない社会になるといいなと思います。例えば、「あなたのセクシュアリティーはなんですか?」と聞かれたときに、「いまのところ異性愛です、今後どうなるかわからないけど」とフラットに言える状態がいいなと思います。
そういう共通認識をみんなが持つには、やはり法整備や制度改革が重要になります。私の場合、中学や高校時代は自分のセクシュアリティーを自ら笑いにして乗り切ることができたので、いじめに発展することはありませんでした。セクシュアリティーを理由とした苦労が多かったとは感じていません。しかし、これは先を歩いてくれた人たちの活動のおかげだったり、周りの人に恵まれたり、ラッキーが重なったりしたにすぎず、現に多くのLGBTの人が悩みを抱えています。そこで、どんな時代に、どんな場所で生まれ、どんなセクシュアリティーであろうと、ちゃんと守られてのびのびと暮らしていけるような社会をつくっていきたいです。

【松岡 宗嗣(まつおか・そうし)】
1994年、名古屋市生まれ。一般社団法人fair代表理事。明治大学政治経済学部卒。2018年に一般社団法人fairを設立。政策や法制度を中心としたLGBTに関する情報発信や、啓発キャンペーンなどを行う。教育機関や企業、自治体などでの研修や講演多数。2015年、LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーンMEIJI ALLY WEEKの発起人。

「セクシュアリティーの軌跡」をテーマに議論します

朝日新聞DIALOG連続セッション 平成世代が考える「平成30年」の先の未来
第5弾 〜セクシュアリティーの軌跡〜
【日時】2018/12/21(金) 18:30 ~ 21:00
【場所】朝日新聞東京本社 本館2階 読者ホール (東京都中央区築地5-3-2)
【参加費】無料
【申し込みはこちら】https://eventregist.com/e/heisei5

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