2018/12/20

就職先はSDGsに熱心な会社がいい!?
「価値創造とSDGs」テーマに企業勉強会

朝日新聞DIALOG編集部

SDGsに対する企業の関心が高まっています。そこで朝日新聞社は10月30日、企業・団体を対象に社会価値ブランディング勉強会「価値創造とSDGs」を東京・築地で開催しました。広報やCSRの担当者約70人が参加し、SDGsに先進的に取り組む企業の事例報告などに聴き入りました。

前半では、一橋大学大学院経営管理研究科の 名和高司 なわたかし 客員教授と、伊藤園の 笹谷秀光 ささやひでみつ 顧問(元常務執行役員)が対談しました。名和さんは企業利益の追求と社会課題解決を両立させる考え方「CSV(Creating Shared Value)」の研究者。笹谷さんは元農林水産省の官僚で、伊藤園の経営にSDGsを取り込み、先進企業に育てました。
SDGsは、国連が環境や貧困など17の分野で2030年までに達成しようと定めた「持続的な開発目標」のことです。その認知度ですが、朝日新聞社マーケティング部の調査(7月実施、回答者3000人)によると、「SDGs」という言葉を「聞いたことがある」と答えた人は14%で、年代別では男女とも15~39歳の若い世代のほうが、その上の世代よりも高い傾向がみられました。

伊藤園の笹谷秀光顧問

この結果について、笹谷さんは次のような見方を示しました。
「ミレニアル世代にとって、SDGsは当たり前。昨秋に経団連がSDGsの達成を柱に企業行動憲章を改定したことを受けて、様々な業界が取り組み始めており、2020年の東京五輪・パラリンピックの際には社会全体でもっとSDGsが盛り上がっているでしょう。東京五輪・パラリンピックはSDGsの取り組みを発信する絶好の場です」

一橋大学大学院の名和高司客員教授

名和さんは、学生たちが就職先を選ぶ際、社会への貢献度を重視する傾向にあると指摘しました。そのうえで、次のように言いました。
「SDGsに取り組むことは当然であって、取り組むだけでは差別化できません。各企業が独自性を出していくことが大切です」
これに笹谷さんは「SDGsが掲げる17の目標に別の目標を追加するなど、自社でどんどんルールを作っていけばいい」と応じました。
二人が共通して強調したのは、次のことです。
「SDGsの実践は、社会課題を解決するとともに企業利益にもつながります」

誰にとってもメリットのある仕組み作りが重要

後半は、企業による事例報告で、住友生命、味の素、住友商事が登壇しました。

住友生命の古河久人執行役常務

住友生命は、 古河久人 こがわひさと 執行役常務が7月に発売した健康増進型保険「Vitality」を紹介しました。保険といえば、病気やケガなどリスクに備えるものですが、Vitalityは違います。加入者の健康診断の結果や毎日の運動などの健康増進活動を評価します。評価が高かった加入者は保険料が下がったり、特典がもらえたりする仕組みです。加入者は健康になり、病気のリスクが減ることになります。
古河さんは、こう話しています。
「大きな転換でした。Vitalityを通じて、お客様に健康になっていただければ、社会全体に健康づくりの機運が高まり、当社は支払う給付金が減るという、誰にとってもメリットのある仕組みを築いていきたいと考えています」

味の素広報部の室俊幸CSRチーム長

味の素は、広報部ダイレクトコミュニケーショングループの 室俊幸 むろとしゆき CSRチーム長が説明しました。同社はビジネスを通じて社会課題の解決に貢献する活動を「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」と呼び、企業理念の中核に位置づけています。例えば、2012年からベトナムの小学校で給食の献立の栄養バランスや衛生状況の改善活動に取り組みました。食育の時間を設けたり、学校関係者や保護者向けの試食会を実施したりした結果、今年8月までに全国の小学校の約7割にあたる2900校が、味の素の献立作成ソフトを導入したそうです。2019年度までに全校での導入をめざしています。
この取り組みはSDGsの「飢餓をゼロに」と「すべての人に健康と福祉を」の二つの目標に当てはまります。室さんは、次のように話しています。
「ベトナムの社会課題の解決に貢献できるうえ、献立に当社の調味料を使ってもらえます。営業マンが学校との接点を持てるといったメリットもあります」

住友商事サステナビリティ推進部の大野茂樹部長

住友商事は、サステナビリティ推進部の 大野茂樹 おおのしげき 部長が報告しました。住友グループ各社には、住友の事業は自社だけでなく国家、社会も利するものでなければならない、という事業精神「自利利他公私一如」が脈々と受け継がれています。同社はその精神とSDGsを照らし合わせ、「地域と産業の発展への貢献」「快適で心躍る暮らしの基盤づくり」「多様なアクセスの構築」など、独自に六つのマテリアリティー(重要課題)を設定しました。SDGsの17分野の目標とは、少し異なりますが、大野さんはこう言っています。
「SDGsを分析した結果、当社の事業はSDGsのすべてに関係しているという結論になりました。であれば、当社ならではの強みを大切にしようということで(マテリアリティーの)切り口を考えました」
課題解決の具体例としては、石垣島で行っている電動スクーターのシェアリング事業や、ミャンマーでの携帯電話通信事業などを紹介しました。
「どの事業も経済性は必ず必要ですが、時間軸を長くみて育てていこうと思っています」(大野さん)
こうしたマテリアリティーに対する取り組みが、ステークホルダーからの評価向上や、従業員のモチベーションのアップにもつながると期待しているそうです。

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