DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/02/22

東京の歴史をつくった女性たちに学ぶ
自分らしい生き方とは WOMAN&TOKYO × 朝日新聞DIALOG 特別出前授業 @都立国際高等学校

Written by押山麟太郎(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 武田和(POTETO)

朝日新聞社は昨年から、東京ブランド推進プロジェクトの一環として「WOMAN&TOKYO」を立ち上げ、3月8日の国際女性デーに向けて、さまざまな企画を展開しています。WOMAN&TOKYOの目的は「今を生きる女性たちを励まし、エールを送る」ことと、「未来の東京を担う少女たちに、自分を誇る言葉を獲得してもらう」ことです。昨年の国際ガールズデーの10月11日には、明治維新以来の150年間に東京で活躍した女性たちについて若者たちが学び、時代を切り開く生き方を高校生に伝えるための授業案を考えるユースセッション「東京の女性たちよ、ユニークであれ!」が東京・渋谷で開催されました(その模様は2018年12月7日の記事「朝日新聞DIALOG × WOMAN&TOKYOユースセッション 東京の女性たちよ、ユニークであれ!」でご覧になれます)。

さて、2019年1月30日、東京・駒場の都立国際高等学校で、その授業案に沿った朝日新聞DIALOG主催の特別出前授業が行われました。講師は、政治・経済・国際ニュースを、イラストやアニメーションなどでわかりやすく発信するメディア「POTETO」を運営するPOTETO Mediaの学生たち。
国際高校は「国際学科」を擁する公立高校で、帰国子女、在京外国人などを含む多様なバックグラウンドの生徒たちが在籍しています。今回の出前授業は、選択科目「社会生活」の枠を使い、休憩を挟んで90分間行われました。受講したのは2年生の生徒40人で、そのうち女子が35人です。「社会生活」という科目ではこれまで、在日韓国・朝鮮人や交通犯罪遺族など様々なゲスト講師を招き、人権や国際関係などの社会問題を学んでいるそうです。

授業は大きく「110位」と記されたスライドの問いかけから始まりました。「これは日本のとある順位を表しています。何のランキングでしょう?」
積極的に答える生徒たち。「食料自給率」「自己肯定感」 国際高校の生徒たちは、日本を客観視する視点を若くして持っていました。講師をうならせる回答が教室を飛び交います。

その答えは、「ジェンダー・ギャップ指数」。受講者の9割が女子というこの教室でしたが、この言葉を知る生徒は1人だけ。課題研究のリサーチでたまたま一度見た、とのことでした。

ジェンダー・ギャップ指数は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利の公益財団「世界経済フォーラム(WEF)」が毎年公表している、各国の社会における男女格差を表す指標です。経済活動や政治への参画度、教育水準、出生率や健康寿命の国連統計などから算出されます。

女性議員比率、企業の女性役員比率など、女性の社会進出において、日本は先進国の中で大きく後れをとっています。とりわけ「政治」分野の指数が「完全不平等」の「0」に非常に近く、149カ国中125位の現状となっています。

ここで教室は150年前の東京にタイムスリップし、明治期の東京で活躍した女性の偉人について学びます。女性の社会進出がまだ珍しかった当時の日本で、様々な困難や圧力を乗り越え活躍した平塚らいてう(活動家)、広岡浅子(実業家)、村岡花子(翻訳家)、津田梅子(教育者)。生徒たちは、スマートフォンを活用して、彼女たちの功績を調べていきました。
「朝の連続ドラマ『あさが来た』のヒロイン(広岡浅子)って、日本女子大を創設したんだ!」 東京が持つ人脈、インフラ、メディアの発信力などのリソースの活用が、偉人たちの共通項として挙げられました。

(東京ブランド公式サイト “&TOKYO”から)

2019年の現代に舞い戻った教室は、東京の魅力を発信するロゴ「&TOKYO」の話題に。伝統と革新が織りなす独自のスタイルを創り出す都市・東京都が掲げる五つの価値(UNIQUE、EXCELLENT、EXCITING、DELIGHT、COMFORT)を確認しました。
まずは「UNIQUE」以外の四つの言葉を提示し、「あと一つの価値はなんだと思いますか?」と問いかけます。生徒たちからは「universal」「amazing!」といった様々な形容詞が飛び出し、ここで教室はこの日一番の盛り上がりを見せました。「UNIQUE」という価値は、前出の4人の偉人にも共通するものです。 「UNIQUE」な女性たちが活躍できるように、東京都が、女性ベンチャー成長促進事業、働き方改革推進事業、ベビーシッター利用支援事業などの取り組みを行っていることも紹介されました。

東京の持つ「UNIQUE」についての理解を深めてもらったあとは、各自の持つ「UNIQUE」を考えるグループワークです。
「自分の『UNIQUE』な部分は?」「30歳までに何を実現したい?」「実現に向けてどんな困難が予想される?」「東京で活用したいリソースは何?」
大学生のプレゼンに熱いまなざしを向ける生徒たち。

高校2年生といえば、進路や将来の展望について少しずつ考え始める時期です。
「CA(キャビンアテンダント)になりたい!」「児童福祉施設をつくりたい!」 
普段は将来の話をあまりしないという生徒たちも、この機会に惜しみなく夢を語りました。
動物愛護のための活動をしているという女子生徒は、「ペットショップをなくすための運動をしていきたい」と、秘めていた「UNIQUE」な思いを明かしました。「予想される困難」を挙げてもらうと、「まだ全くといっていいほど運動が認知されていない」「浸透してしまった文化を覆すのはすごく難しいことだと思う」と表情を曇らせますが、大学生の励ましが彼女を勇気づけます。彼女が最後に語ったのは、決して簡単ではないこの目標の実現のために、東京で出会える「同じ志を持つ人たち」のネットワークを活用したい、ということでした。

今回の授業は共学の高校で行われたため、男子生徒にも「女性の活躍」を考えてもらいました。格差や権利の問題では、当事者の意志だけで現状を打破することはできません。男子生徒の一人は「女性の社会進出や性的マイノリティーの権利のためには、政治の中から主張しないといけない。だから政界に進出したい」と語っていました。

授業後のアンケートには、「周りの人と意見を交換できて刺激になった」「大学生の話が聞けて考えが深まった」といった感想が寄せられました。キャリアについて考えることがなかった生徒にとっては、考えるきっかけに。思い悩んでいる生徒にとっては、人の話を聞き、そして自分も発信することで整理ができる時間になったようです。
以下、生徒たちの声をいくつかご紹介します。
「東京は文化だけでなく人や機会、教育など様々な資源に満ちていることを知った。それらを自分の将来の夢の実現のために活用していきたい」
「自分を見つめ直すいい機会になったと思う。自分の『UNIQUE』な部分って意外と見つけられなくて、でも一回見つかると、もうガーッてしゃべってしまった。自分が言いたいことがまとまらなくて、言いたいことがたくさんあって、でもみんな真剣に私の話を聞いてくれて本当にうれしかった」
「今回の授業ではメインテーマとして東京が掲げられていたが、それを通して何か違うもっと大切なことを見つけられた気がした。東京のもつユニークさを自分の中にも見つける時間は、生まれて初めて自分の内面について考えた機会だった」

国際高校を選んだ生徒たちの多くは、外国語を学ぶ強い意欲があり、海外で活躍することに憧れて入学します。広く世界に目を向けている生徒たちに、授業を通して伝えられたのは、「いま暮らしている東京で得られる、知見の価値」でした。中高生の世代は海外留学や外国語の習得に大きな期待を寄せがちですが、留学は万能ではありません。本当の意味での「グローバルな人材」のあり方が問われるなかで、まず、いま暮らしているこの日本に、東京に、すぐ近くに転がっている学びと経験のチャンスを生かすことが重要なのではないでしょうか。

※「東京ブランド推進プロジェクト」とは
東京ブランドロゴ「&TOKYO」を効果的に活用しながら、東京都及び東京観光財団と民間事業者が連携して、東京の魅力の発信等を行う事業です。

※「東京ブランド」について
東京都は、旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた取り組みを行っています。「東京ブランド」では、UNIQUE、EXCELLENT、EXCITING、DELIGHT、COMFORTの五つのキーワードで東京が持つ独自の価値や魅力を表現しています。 WOMAN&TOKYOでは、この五つの価値に、「東京がUNIQUEなモノ・ヒト・コトを受容することでEXCELLENT、EXCITING、DELIGHTな価値が生まれ、誰もが暮らしやすいCOMFORTな空間へ成長し、そのことによって新たなUNIQUEが生み出される」という循環を見いだしました。 東京にUNIQUEな女性たちが活躍できる場があることで好循環が生まれている、という視点から、さまざまな企画を通じて「東京ブランド」を広く浸透させ、シティープライドを醸成することを目指しています。

東京ブランドコンセプト:https://andtokyo.jp/brand/concept.html

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