2019/03/20

みんなで考えた「これからの銭湯」とは?
ワークセッション「SENTO meet-up」開催

Written by 黒澤太朗 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 松本哉人(POTETO)

ユニークなアイデアで銭湯を元気にしたい!
朝日新聞DIALOGは東京都とコラボし、ワークセッション「SENTO meet-up!~お風呂屋さんの未来を語ろう」を2月16日、東京・蒲田の銭湯「ゆ〜シティー蒲田」で開催しました。
戦後、銭湯の数は減り続け、東京都では1986年時点で2000軒以上あったのに、今では約540軒。後継者不足などの問題も深刻です。そこで、今回のワークセッションでは、銭湯を愛する若者や銭湯経営に関心がある人と、個性的な銭湯の経営者たちが一堂に会し、銭湯を元気にするアイデアを語り合い、未来の銭湯について考えました。20代の若者を中心に、小学6年生の女子から50代の男性まで約30人が参加した、活気あふれる対話の様子をお伝えします。

継承したい「人と人とがつながる」文化

セッションの会場は、舞台やカラオケ装置もある畳敷きの大広間。テーブルを囲んで座布団に座った参加者は、まず、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合の理事長で、「はすぬま温泉」(蒲田)を経営する近藤和幸さんの基調講演に耳を傾けました。

「人と人とのつながりを持てるところが銭湯の良さ。江戸時代の商いは銭湯から始まったと言われています」
近藤さんは、銭湯が今も昔もコミュニケーションの場として機能していることに触れたうえで、1人当たりの銭湯の数が江戸時代よりも少なくなっていると指摘。「地域の人と人とのつながりが、最近は弱くなっています。銭湯は地域のために何ができるのか。銭湯がこれからどんどん繁栄するにはどうすればいいのか。そのためのアイデアを、ぜひ出していただきたい」と話しました。
さらに、銭湯が廃業する理由として、経営者の高齢化や後継者不足、労働時間の長さなどを挙げました。「そうした悩みを抱えている銭湯経営者はたくさんいます。その人たちにも寄り添ったアイデアをいただきたい」とセッションへの期待感を示しました。

続いて、今回のセッションでアドバイザーを務める3人の経営者、「梅の湯」(立川)の佐伯雅斗さん、「ひだまりの泉 萩の湯」(鶯谷)の長沼雄三さん、「改正湯」(蒲田)の小林千加史さんが、それぞれの取り組みを紹介しました。

課題は? 打開策は? 参加者同士でディスカッション

そして、いよいよ、この日のメインイベント、ワークセッションが始まりました。参加者は4〜5人ずつ計8グループに分かれ、グループごとに「銭湯を元気にするアイデア」を考えました。初対面の人がほとんどなのに、銭湯が好きという1点で同志意識が高まります。議論が進むにつれ、各グループが経営者を呼んで、実体験を踏まえた具体的なアドバイスを求めるシーンも続出しました。

議論がまとまると、各グループの発表です。
最初のグループは、働き手を求める銭湯経営者と、銭湯で働きたい人たちとのマッチングがうまくいっていないことに着目。求人などの情報提供・収集を行えるシステムの構築を提案しました。
次のグループは、利用したことがない人にとって銭湯は入りづらい施設だと指摘したうえで、初心者や外国人観光客向けに銭湯の手ほどきをするアプリの開発や、SNSで銭湯の情報を拡散してくれた人への割引制度を設けるといったアイデアを出しました。

3番目のグループは、銭湯が営業していない空き時間に着目し、「朝の女性」をメインターゲットとした戦略を考えました。お酒を飲んだ翌朝を想定し、出勤前にお風呂に入って化粧もできる「早朝レンタルパウダールーム」の設置を提案しました。
4番目のグループは、近くの医院と連携したり、健康状態を測定する機器を充実させたりして、銭湯に医療的な側面を持たせてはどうかと提起しました。地域の高齢者を見守り、変化を把握することもできるのではないかと話しました。
5番目のグループは、外国人観光客へのアピール手段として銭湯体験イベントを実施するほか、人手不足解消のため、「1時間働いたら入浴1回無料」といった仕組みを作ったらどうかと提案しました。

6番目のグループは、「銭湯に最も遠い存在」として女子高生を想定し、彼女たちを銭湯に呼び込むため、お風呂用品セットを充実させたり、銭湯で音楽ライブを開催したりといったアイデアを紹介しました。
7番目のグループは、主に大学生を対象とした「2656(風呂に行くと五臓六腑を刺激する)」企画を提案しました。入浴後に銭湯でビールとおつまみを提供したり、地元の居酒屋とコラボして風呂帰りの客に割引したりすれば、若い世代を呼び込めるのではないか、と話しました。
8番目のグループは、銭湯をなくさないことを重視し、起業家にアピールして後継者がいない銭湯の担い手になってもらうなどのアイデアを出しました。「企業とタイアップして良いシャンプーとリンスを置けば、女性客は絶対来る」とか「あいさつをしっかりすれば、お客さんは増える」といった意見も出ました。

熱心にメモを取りながら発表を聞いていた経営者たちが、最後に講評しました。近藤さんは「各グループの発表には、ドキッとするものや、なるほどと思うような話があった」としたうえで、「アイデアを実現するにはいくつもハードルがありますが、前向きな姿勢を失ったら、一歩前へは進めません。みなさんからいただいた意見をじっくり考えつつ、頑張っていきたいと思います」と話しました。

佐伯さんは、「みなさんと話して、番頭さんのような人を育てていく銭湯が増えることが大事だなあと改めて思いました。そういう人がいれば、経営者がいなくなった銭湯が出たときに、すぐに継がせることができる。そういう仕組みを作っていきたい。ぜひ今後も力を貸してください」と語りかけました。

長沼さんは、「男子大学生の参加者から『銭湯で460円を払うか、カフェで同じ値段のロイヤルミルクティーを買うかの二者択一ならカフェを選ぶ』と言われ、『ああ、やっぱり銭湯は負けるのか』とショックを受けました。カフェに勝てるように、銭湯業界も460円以上の魅力を作っていかないといけないなと再認識させられました」と笑顔でコメントしました。

小林さんは、「経営者同士の寄り合いはよくあるけれど、一般の方と銭湯の未来について語り合う会には初めて参加しました。改めて、危機感を持って日々営業していかないといけないなと思いました。『可能であれば、全員うちのスタッフになるかい?』という気持ちです。それができれば、すごくもうかるかもしれない。そう感じるぐらい参考になりました」と締めくくりました。

その後は、参加者と経営者の交流会が開かれました。セッションのファシリテーターを務めた慶応義塾大学4年の古井康介さんが、「参加者のなかには、今日が人生のなかでいちばん銭湯について考えた日という人もいると思う。そういう人と、銭湯について365日24時間考え続けてきたプロとが、ひざを交えて語り合える貴重な機会。未来の銭湯についてさらにディスカッションしましょう」と呼びかけ、軽食をつまみながら、にぎやかな銭湯談義が続きました。

家庭に内風呂が普及し、行く機会が少なくなってしまった銭湯。しかし、そこには、現状をなんとか打破し、伝統文化を継承しようという意気込みを持った人たちがいます。大きなお風呂でくつろぎながら、その場所をもっと面白くする方法を考えてみるのもまた一興。みなさんも足を運んでみてはいかがでしょうか?

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