DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/03/27

東京でどんなチャレンジをしたい? 高校生が大学生・大学院生と考えた
WOMAN & TOKYO×朝日新聞DIALOG 特別出前授業@文化学園大学杉並高等学校

Written by 小平理央 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル(POTETO)

国際社会が協力して実現すべき重要な課題のひとつ、それがジェンダーの平等です。「国際女性デー」の3月8日には今年も、男女平等を訴えるデモ行進「ウィメンズマーチ」が、東京を含む世界の都市で行われました。

そうした機運のなか、今を生きる女性と次世代を担う女性をエンパワーメントする取り組みが「WOMAN & TOKYO」です。東京都と朝日新聞社が、東京ブランド推進プロジェクトの一環として立ち上げました。「WOMAN & TOKYO」では、未来の東京の担い手である高校生が都の政策を知り、自分たちの将来を考えるきっかけとなる「特別出前授業」を展開しています。第1回の授業は1月30日に東京・駒場の都立国際高等学校で開催しました。(記事はhttps://www.asahi.com/dialog/articles/12159532でご覧になれます)

そして3月14日、2回目の授業が東京・阿佐谷南の文化学園大学杉並高等学校で開かれました。この高校は、カナダのブリティッシュコロンビア州の教育課程を採り入れ、3年間で、日本とカナダ双方の高校卒業資格を得られる「ダブルディプロマコース」を設けています。今回、授業を受けたのは、同コースに在籍する高校1年生44人です。講師は前回と同様、政治や経済、国際ニュースを分かりやすく発信するメディア「POTETO」を運営する「POTETO Media」の大学生、大学院生が担当しました。

まずスクリーンに映し出されたのは、「110位」という数字です。
世界149カ国中の日本の順位ですが、何の順位かと問われると、生徒からは「男女平等!」「女性参画!」との予想が挙がりました。

この数字は、非営利の国際機関「世界経済フォーラム」が2018年12月に発表した、ジェンダーギャップ指数のランキングです。この指数は政治・経済・教育・健康の分野における男女格差をもとに算出しています。日本は主要7カ国(G7)の中では断トツの最下位。生徒たちは見事、正解を言い当てました。

日本の順位を下げている分野を問うと、生徒からはすかさず「政治!」という声があがりました。理由は「国会に女性が少ないから」です。分野別の日本の数値を講師が紹介すると、「政治」は4分野のうち、最低の125位。高校生にも、政治分野における後進性が伝わっていることがうかがえます。また、ある生徒は「医学部受験で女子が不当に落とされていた」と発言しました。教育分野のランキングは65位ですが、それでも深刻な問題があると指摘したのです。

こうして現在の日本の状況を認識した後、講師で東京学芸大学大学院生の古野香織さんは、話題を150年前にタイムスリップさせました。150年前といえば、江戸から明治になった時代です。女性の地位は今より圧倒的に低かったのですが、それでも、東京を舞台に偉業を残した女性たちがいたのです。

紹介したのは、村岡花子(翻訳家)、広岡浅子(起業家)、平塚らいてう(政治活動家)、津田梅子(教育者)の4人。村岡花子や広岡浅子は、「朝ドラ(NHK連続テレビ小説)で見た!」と認知度が高く、女子教育のパイオニアである津田梅子が創立した「津田塾大学」も、広く生徒に知られていました。

文化学園大学杉並高等学校は2018年度に女子校から共学に変わったばかりで、生徒の大半は女子生徒。それもあってか、女性参政権のために闘った平塚らいてうの言葉「元始、女性は太陽であった」も、多くの生徒が「授業でやった!」と手を挙げていました。

日本の女性偉人に加え、カナダの高校教育課程を履修する生徒たちに向けて、カナダのジェンダーをめぐる状況も紹介されました。取り上げたのは、ジャスティン・トルドー首相です。2015年の組閣時に閣僚を男女同数にし、その理由を問われて「2015年だから」と答えたことで、ジェンダー平等の推進者として国際的に知られています。ちなみに、カナダで女性参政権が法制化されたのは1918年と、日本より約30年も先んじています。昨年のカナダのジェンダーギャップ指数ランキングは世界16位でしたが、100年前から女性参画の先進国だったことが分かります。

明治時代の女性の偉人たちのように、「東京」という舞台で一人ひとりが輝くにはどうすればいいか。授業の後半は、5〜6人の高校生グループに大学生・大学院生が1人交じる形で、未来の東京を見据え、ディスカッションを行いました。

最初に話し合ったのは、東京都の「&TOKYO」事業が推奨する五つの価値についてです。EXCELLENT(すばらしい)、EXCITING(わくわく)、DELIGHT(喜び)、COMFORT(快適)に続く、もう一つの価値とは何かを考えました。

生徒たちから出たのは、IMAGINATION(想像力)やCREATION(創造)、DIVERSITY(多様性)などでしたが、正解は、「UNIQUE」。「独創的」や「個性的」という意味を持つUNIQUEには、生徒たちが挙げたワードの要素が包括されているともいえます。

では、UNIQUEに生きる女性を応援するために、東京都が取り組んでいることは何でしょうか。講師の古野さんが挙げたのは、女性ベンチャー成長促進事業「APT Women」や、働き方改革推進事業、ベビーシッター利用支援事業などです。さらに、2年後には選挙権を持つことになる生徒たちに向けて、男女の候補者数の均等化を目指して昨年公布、施行された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(通称「パリテ法」)も紹介しました。

「男女で役割を決めつけずに、シェアする。女性活躍というのは、女性だけを支援するわけやなく、男女ともに生きやすくなる社会をつくることなんや!」。関西出身の講師、呉本謙勝さんが熱弁をふるうと、会場がわきました。

こうした点を学んだところで、ディスカッションは「東京であなたがUNIQUEなチャレンジをするなら?」というテーマに移りました。 ここでは、①自分のUNIQUEな部分、②30歳までに実現したいUNIQUEなこと、③「東京」で活用したいリソース、④実現に向けて予想される困難―― の四つのポイントから、30歳の自分を見据えたプランを考えました。

はじめに大学生・大学院生が、学外での活動を自身の「個性」として挙げ、将来の目標を語りました。少しだけ年上のお兄さん、お姉さんたちが、学業の傍ら、教育や演劇、ファッションといった、さまざまな分野で活動していることに、高校生は驚きと憧れを隠せない様子でした。

一方、生徒たちはまだ高校生活が始まったばかり。「自分の個性がわからない」という声があちこちで上がりました。「東京には人生の先輩がたくさんいる。いろんな人と出会うことで、興味の幅も広がるよ」というアドバイスを受けて、多くのグループから「人の数とつながりが東京のリソースだ!」という声が上がりました。

帰国子女など国際的なバックグラウンドを持つ生徒が多く、「日本を多様性のある国にしたい!」「日本の文化を世界へ発信したい!」など、日本と海外の「懸け橋」を目指すような目標も発表されました。

さらに「若い人が政治家になってほしい」や、「独立した女性になりたい」などといった声もあり、「都の事業を活用して将来の可能性を広げたい」と話す生徒もいました。

教師を目指して大学院で教育学を学ぶ古野さんも、「生徒のエネルギーがすごかった!」と語り、終始、にぎやかな議論で盛り上がった今回の特別出前授業。授業後のアンケートでは、高校生から「東京の価値を知り、世界と比べることで、より日本を知ることができた」「世代の近い先輩と話せてうれしかった」といった感想が寄せられました。

ディスカッションの中では「人間であることが個性だ」という発言もありました。みんな同じ人間だけれど、一人ひとり違っているという考えは、「性別に関係なく、誰もが生きやすい世の中を目指す」という男女平等の考え方にも共通します。今回、生徒たちが発見したそれぞれの「UNIQUE」さを大事にすることが、一人ひとりが生きやすい社会をつくることにつながっていくのではないかと感じました。

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