DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/05/21

ビールを飲んで、地球を救おう
パタゴニア新商品発表会を学生記者がのぞいてみた

Written by 乙部修平 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル(POTETO)

アウトドアブランド「パタゴニア」から新たに発売されるビール 「ロング・ルート・ウィット」の記者発表会が4月25日、東京・神宮前で行われました。 それに合わせ、1日限りのメディア限定「パタゴニア プロビジョンズ バー」が開催され、同社が手がけるオーガニックフードとともに新商品のビールを味わう機会がありました。アウトドアウェアで知られるパタゴニアが手がけるビールとは、いったいどのようなものなのか。そこに込められた思いとは――。ビール好きの学生記者が取材しました。

CO₂を出さないだけでは不十分

発表会は、パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんのあいさつから始まりました。

パタゴニア日本支社長の辻井隆行さん

1950年代、クライマー向けのピトン(ハーケン)の製造から始まった同社は、70年代にはウェアなどを取り扱うようになり、アウトドア用品ブランドとして成長してきました。これまで「There is no business to be done on a dead planet(死んだ地球からビジネスは生まれない)」を信条とし、有機栽培されたコットンを原材料とした服や、フェアトレード商品などを扱うことに力を注いできました。

現在では「We’re in business to save our home planet(私たちは故郷である地球を救うためのビジネスを営む)」というミッションに発展させ、全てのビジネスを2025年までにカーボンニュートラル(*1)にすることを目標としています。「自分たちの行いが二酸化炭素(CO₂)を出さない、というだけでは不十分」と辻井さんは訴えます。

(*1)カーボンニュートラル……一連の活動を通して排出されるCO₂と吸収されるCO₂を同じ量にするという考え方

原料に多年生穀物を使用

同社は「食物連鎖を修復するための解決策を探る試み」として「パタゴニア プロビジョンズ」という食品事業も始め、日本では16年から本格的に展開しています。この事業のマネージャーを務める近藤勝宏さんが、新商品を紹介しました。

「パタゴニア プロビジョンズ」マネージャーの近藤勝宏さん

「ロング・ルート・ウィット」は、麦とともに多年生穀物「カーンザ」を使って醸造したビールです(日本では発泡酒に分類)。「ロング・ルート」という名前の由来にもなっているように、カーンザは最大約3.7メートルにも及ぶ長い根が特徴です。一般的な小麦は1年で枯れてしまいますが、カーンザは多年生穀物のため、収穫時に根の部分を残しておけば土を耕さなくても少ない水で再び成長し、多くのCO₂を大気中から取り込み、健康な土壌を育むそうです。パタゴニアは、この穀物を使ってビールを醸造するという世界初の試みに挑み、17年に「ロング・ルート・ペールエール」(「ロング・ルート・エール」から名称変更)を発売 。今回の「ウィット」はそれに続く新商品です。原材料だけでなく製造過程にもこだわり、アメリカ北西海岸で初めてBコーポレーション(*2)を取得したブルワリーで醸造されています。

近藤さんは「従来の食品産業は地球環境を破壊する主犯格のような存在でしたが、私たちは食品によって環境問題を解決することを目指しています」と話しました。

(*2) Bコーポレーション……株主だけでなく、その他のステークホルダー(従業員、地域社会、顧客、自然環境など)の利益も追求している企業に発行される米国発の民間認証制度。企業の社会・環境へのパフォーマンスを評価する厳しい審査基準がある

おいしくないと続かない

商品の紹介が終わった後は、いよいよ試飲です。

白い缶が「ロング・ルート・ウィット」。青い缶が「ロング・ルート・ペールエール」

まずは琥珀色をした「ペールエール」から。フルーティーなホップの風味と飲みごたえのあるコクがグッときます。続いて、新商品の「ウィット」。淡い小麦色で、さっぱりとしたクセのないのど越し。伝統的なベルギー風のホワイトビールをアメリカ北西部風にアレンジした風味とのこと。「環境によい商品でも、おいしくなければ長続きしない」という考えで作られた商品だけに、麦を主原料とした従来のビールと比べても遜色ありません。暑い夏の昼下がりにはぴったりだと思いました。

ビールのお供はパタゴニアのオーガニックフードです。こちらは、環境への配慮だけでなく、おいしくて手軽であることも重視。アウトドアでの利用も想定し、そのまま、あるいはお湯に入れて軽く煮込むといった簡単な調理で食べられるように味つけされています。

試食に供されたフード類。ムール貝の貝殻をスプーン代わりにするなど、環境への配慮がのぞく

環境を守る伝統的な漁法で捕獲された「ワイルド・ソッカイ・サーモン」や、海をきれいにしてくれる肉厚のムール貝を使用した「ムール貝オリーブオイル漬・スモーク」はお酒に合うので、ついつい手が伸びてしまいます。さらに、緑レンズ豆にタマネギやショウガを加え、スパイスを利かせた「オーガニック・グリーン・レンティル・スープ」や、有機栽培で作られた遺伝子組み換えなしのフルーツを使った「オーガニック・マンゴー+アーモンド・バー」などは小腹がすいたときにも、ちょうどよさそうです。

記者発表の会場に設けられたカウンターに並ぶフード類

様々な思いとストーリーが詰まったパタゴニアの食品。その素材が食卓に運ばれてくるまでの背景も味わうと、より楽しむことができるかもしれません。

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