DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/12/27

カフェで働く仲間と社会課題を解決したい
スターバックス「Youth Entrepreneur Action」

Written by 杉山麻子 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル

一緒に働く仲間と社会課題を解決するアイデアを考え、提案する――。スターバックス コーヒー ジャパン株式会社が、自社の店舗で働く若者を対象に、そんなプログラムを実施しました。最優秀賞に選ばれた提案は、実現に向けて会社がサポートします。11月10日、東京・目黒の本社で開かれた最終セッションは、自分たちの考えを形にしたいという熱気にあふれたプレゼンテーションの場となりました。

「Youth Entrepreneur Action」と題したこのプログラムは、若者の起業家精神を養い、道を切り開くリーダーシップを応援する取り組みの一環です。初めて実施する今回は、「日本や地域のゴミ問題」「日本の農業や酪農の未来」「新しいつながりをつくること」の3テーマでアイデアを募りました。同社では、社員もアルバイトもともに「パートナー」と呼びますが、対象となるのは30歳未満のパートナーをリーダーとするチーム。全国から105組が応募し、オンライン投票などで選ばれた6組が最終セッションに臨みました。各チームのメンバーは、最終セッションへの出場が決まってから2カ月間、店舗の仲間や地域の人々の協力を得て準備をしてきました。

繁忙期の農園を支援する「ファームバリスタ」

プレゼンテーションに最初に登場したのは、弘前さくら野店(青森県弘前市)のチームです。青森はりんごの産地として知られますが、りんご農園の人手不足は深刻化しています。それに対し、「この先も、私たちの大好きなりんごを食べ続けたい」という思いから、「ファームバリスタ」というコンセプトを掲げました。具体的には、①農家の繁忙期にはバリスタが農家を手伝う、②店舗でりんごのテイスティングパーティーなどを開いて農業啓発活動をする、③農業への就業を希望する人と農園を結びつけるアプリ「UPるマッチ」を開発する、といった活動を提案。方言を駆使したユーモラスな映像や、ユニホームの赤いTシャツなども含めて審査員からは「よく仕込んだプレゼンテーション」と好評でした。

フードロス対策で社会にインパクトを与えたい

フードロスの問題に取り組んだのが、神田小川町2丁目店(東京都千代田区)のチームです。「フードを当たり前のように毎日捨てていることはおかしくないか」と問いかけ、既存のフードシェアリングサービスを利用して、店舗に残ったフードを割安で消費者に届けることを提案しました。閉店1時間前に、廃棄になりそうなフードをアプリに登録。利用者はアプリ内で決済を行い、閉店までに受け取る、という仕組みです。「スターバックスのようなブランド価値のある会社が、フードロス対策に力を入れていることが、社会にインパクトを与える」と結びました。審査員から「実施へのハードル」を問われると、「ブランドイメージが崩れる懸念を指摘されたことがある」と明かし、「それを補える内容になっている」と答えました。

スタバを子どもの「夕刻からの居場所」に

渋谷ヒカリエShinQs店(東京都渋谷区)のチームの提案も、フードロスへの関心が出発点です。子ども食堂にかかわるメンバーがいたことから、「子どもの孤独」という問題と併せた解決策を模索しました。チームで共働き世帯を調査した結果、18〜20時を1人で過ごす小学生が少なくないことがわかりました。「この時間帯を、安全で豊かに過ごせる時間にしたい」。そのためにスターバックスの店舗などでハンドクラフトのワークショップを開催する、という提案です。自分たちの店舗で試しにワークショップを開いたところ、子どもたちと保護者の双方から「またやってほしい」という要望が寄せられたそうです。メンバーは「渋谷区から始めて、全国でムーブメントを起こしたい」と意欲的です。審査員も「このサービスを待っている人は多いと思う」と期待を語りました。

スターバックスのような飲食チェーンでは日々、大量のプラスチック製品が廃棄されています。三つのチームが、この課題の解決を目指した提案を発表しました。

「透明な紙カップ」でプラごみをなくす

吹田山田店(大阪府吹田市)のチームが提案したのは「透明な紙のカップ」です。プラスチックの廃棄は避けたいけれど、カップが透明であることはおいしさを連想させるうえで欠かせない要素です。それを前提に「新素材を探したところ、透明な紙が存在することがわかりました」。実物を提示すると会場がどよめきました。原料は木材で、軽くて丈夫。耐熱性もあり、耐水性は植物由来のポリ乳酸でラミネートすることで補えるそうです。最大の課題はコスト。「認知度を上げてコストを下げるために、まずはリユーザブルのタンブラー(保温機能付きボトル)として導入します。その後、社会全体の需要を高めて大量生産につなげたい」。第一線の研究者の協力を得た提案に、審査員からは「どういう条件なら大量生産が可能か」「ぜひ実現させてください」といった声があがりました。

タンブラーを使えば地域貢献できるアプリを開発

一方、京阪枚方市駅店(大阪府枚方市)のチームは「30分以内に捨てられるプラスチックカップをゼロにする。これが私たちのゴールです」と宣言。具体的にはタンブラーの利用を推進するとともに、コミュニティーでゴミ問題に取り組むためのアプリのサンプルを一から作ったそうです。タンブラーを利用すると、その顧客が属しているコミュニティーにポイントが還元されるというアプリです。それによって「環境に配慮した行動が可視化され、タンブラーの利用が促進される」と考えています。審査員からはタンブラーの利用が増えない理由が問われました。それに対しては、「現在、タンブラーを利用すると20円引きですが、それにメリットを感じていない人が多いのでは」と答え、持参したタンブラーの大きさにかかわらず同一価格にするサービスを提供して、顧客に新しい価値体験をしてもらうことも提案しました。

エシカル消費を「見える化」して社会貢献

最後に登壇したのは、エシカル消費(倫理的消費)に着目したシャポー船橋南館店(千葉県船橋市)のチームです。アンケートを取った結果、エシカル消費への関心は高いけれど、行動するきっかけがないことが判明。そこで「10〜20代を対象に、簡単に楽しくエシカル消費のきっかけをつくれるアプリ『エシカルリワード』」を提案しました。マグカップやタンブラーを使うとポイントが付与され、プラスチック廃棄の削減を始めとする社会への貢献を「見える化」するアプリです。消費者だけでなく、社会的責任としてSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが重視されている企業や地方自治体まで視野に入れた提案が、審査員から「エキサイティング」と評価されました。

世界が驚く未来を一緒につくろう

審査の結果、最優秀賞を獲得したのは「透明な紙カップ」を提案した吹田山田店のチームでした。メンバーは学生アルバイト2人と社員2人。代表を務めた植田大智さん(20)は大学2年生のアルバイトで、「人として成長がしたくて、スターバックスで働き始めました。このプログラムにも迷うことなく参加しました」と話しました。日々の仕事のなかで課題を見つけ、その解決に向けて動く姿勢に、学生記者の杉山は同じ学生として胸が熱くなりました。

最後に、同社の水口貴文CEOがあいさつに立ちました。2カ月間、通常の業務や学業を続けながらプレゼンテーションの準備を重ねてきたことをねぎらい、「自分たちが起点になって何らかの変化を成し遂げたい、という気持ちをリアルに感じました」と感想を述べました。最優秀賞を得た提案については、「透明な紙カップを実現したら、プラスチック廃棄の問題に大きな一石を投じることができる」と声を弾ませ、「世界があっと驚くような未来を、一緒につくっていきましょう」とすべてのパートナーに呼びかけました。

関連記事

pagetop