DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2020/01/28

大学SDGs ACTION! AWARDS 受賞者リポート③近畿大学 「環境負荷と農家の無賃労働を低減するために」

Written by 監物杏菜(近畿大学薬学部病態分子解析学研究室)

「大学SDGs ACTION! AWARDS」は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて活動する学生や若手研究者を対象とした、朝日新聞社が主催するコンテストです。2020年2月の第3回開催に向けて、現在、準備を進めています。ここでは、19年2月に行われた第2回の受賞者の活動報告をお届けします。「環境負荷と農家の無賃労働を低減するために」で「準グランプリ 住友金属鉱山賞」を受賞した近畿大学薬学部病態分子解析学研究室の皆さんのリポートです。

廃棄されていた梅酢やマグロの皮を活用

私たちの研究室では、環境負荷や農家の無賃労働を低減するとともに、地域産物の高付加価値化を図ることを目的とした様々な研究を行っています。その結果、化粧品や食品などを大手企業と共同開発したり、コラボレーション商品などを発売したりしています。

2019年の大学SDGs ACTION! AWARDSでは、以下の三つのテーマについて発表しました。
①陸上生態系の保護としての、梅酢の新しい利用方法
②海洋保全としての、養殖魚皮の高付加価値化とアカモクによる地域復興
③今後の目標としての、農家の無賃労働を低減する新しい取り組み

和歌山県の名産である梅干しを製造する際に生成される梅酢には、高濃度の塩分が含まれていて、廃棄すると環境に大きな負荷がかかってしまいます。そこで、梅酢からできる梅塩を使い、熱中症予防のための塩分補給タブレット「梅塩ちゅあぶる」を開発しました。梅由来のクエン酸などが含まれているほか、血液中の塩分濃度が緩やかに上昇するような調整も施しました。

また、近大の代名詞と言えば養殖マグロです。飲食店などで廃棄されてしまうその魚皮から、特殊な立体構造をもつ「フルレングスコラーゲン」を抽出し、企業と共同で美容液などの化粧品の開発に成功しました。また、様々な効能を持つ水溶性植物繊維のフコイダンを多く含む海藻「アカモク」による地域復興にも力を入れています。

さらに、農家の無賃労働を低減する新たな取り組みとして、干し柿の生産過程で廃棄される柿の皮に含まれる「柿タンニン」に着目し、抗酸化・抗菌・整腸作用を生かした製品開発の可能性を探っています。

こうした内容を発表させていただき、準グランプリ 住友金属鉱山賞をいただきました。

地場食材の新メニューも考案

私たちの研究室では、その後も新たな海洋資源の高付加価値化や農作物廃棄物の有効利用に、継続的に取り組んでいます。

フルレングスコラーゲンは、その後の研究で、天然素材への親和性が非常に高いことが分かりました。シルクプロテインと混合して天然素材を加工することで、手触りが滑らかになり、抗菌性も付与できました。洗濯耐性も高いため、機能性繊維の製造に利用され、アパレルメーカーで実際に使われています。

3月には「じゃばらちゅあぶる」が発売されました。「じゃばら」とは和歌山県有田川町で生産している柑橘類の一種ですが、温州みかんや八朔など比べると可食部が極端に少なく、大部分を占める果皮は破棄されています。そこで私たちの研究室では、抗アレルギー作用のある機能性成分「ナリルチン」が、じゃばらの果皮にも豊富に含まれていることに着目しました。そして、花粉症など様々なアレルギー反応に効果が期待される1日の推奨量を鑑みて、最適なじゃばら皮の含有量を推定するなど、「じゃばらちゅあぶる」の開発に協力しました。

さらに11月には「生姜ちゅあぶる」が発売されました。「生姜ちゅあぶる」には、生姜の成分のなかでも特に効能が注目されている「ギンゲロール」と「ショウガオール」が含まれています。ギンゲロールには強い殺菌力があるだけでなく、解熱作用や鎮痛作用、抗炎症作用など、感染症のさまざまな症状に効果があるとされています。ショウガオールは、冷えによって滞りがちな血流を促進し、体の深部を温める効果があると言われています。この製品には、調理や加工食品を製造する際、見た目の問題で廃棄される生姜の「ヘタ」の部分を使用しています。

また、アカモクの認知度向上のために、「紀州アカモク」を使用した新しいアカモクメニューとして、アカモクのネバネバとシャキシャキした食感を生かした「アカモクネバシャキ冷製茶漬け」と、ほんのり磯の香りがする「アカモク海鮮かき揚げ丼」を考案し、学内の食堂で期間限定販売してもらいました。和歌山県の漁業協同組合に主催をお願いした「紀州アカモク」の現地PRイベントでは、消費者の意見を直接聞くことで、私たち自身の研究意欲を高めるとともに、「紀州アカモク」の認知度向上と海洋保全を呼びかけました。AWARDSの賞金の一部は、このときの旅費に充てさせていただきました!! さらに、採取時期が遅れたために牡蠣が付着し食用に利用できないアカモクを、廃棄せずに有効利用するためのプロジェクトも始めました。

非過食アカモクの有効利用と高付加価値化を地域住民も交えて検討

現地でのイベントでは、地元の住民の方々にも参加してもらい、アカモク由来フコイダンの高付加価値化をテーマにした意見交換会も行いました。

「~のために」を持った活動を

これから大学SDGs ACTION! AWARDSを目指す皆さんには、「~のために」という明確な目的を持って活動をしていただければ、と思います。「~のために」は、自分のため・誰かのため・世界のため、何でも構いません。明確な目的を持って取り組めば、必ず「誰か」や「何か」の役に立つはずです。従来の枠にとらわれず、一所懸命に頑張ることが一番大切だと思います。持続可能な社会の実現に向けて、みんなで精いっぱい頑張りましょう!

お知らせ
大学SDGs ACTION! AWARDSの最終選考会は2月15日(土)午後に東京・渋谷で開催されます。当日は、100組以上の応募者から選ばれたファイナリストが公開プレゼンテーションを行うほか、来場者全員が参加してSDGsをテーマにしたワークショップも行います。来場者は事前登録制(1月31日締め切り)で、大学SDGs ACTION! AWARDSのページから申し込めます。振るってご参加ください!

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