DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2020/03/27

「Guessイイ(下水イイ)!!」プロジェクト (下水道から考える未来の防災プロジェクト) 浸水を防ぐために何ができるか、高校生が考えた
特別出前授業@東京都立総合工科高等学校

【PR】 株式会社明電舎、東亜グラウト工業株式会社

地下に埋まっていて見えないけれど、下水道は私たちの生活を支えている大事なインフラです。地震や台風、大雨で下水道が被災すると、トイレが使用できなくなったり、汚水があふれて街が汚染されたりします。災害が起きてはじめて、下水道は私たちの生活になくてはならないものだと実感することができます。

そんな下水道の重要性をもっと若者に知ってもらうため、下水道事業に携わる明電舎と東亜グラウト工業が「Guessイイ(下水イイ)‼プロジェクト」を立ち上げました。「Guess」は推測する、解き当てるという意味で、「下水」と掛け合わせました。目には見えない下水道を題材に、私たちの暮らしを支えてくれるたくさんの「見えない何か・誰か」に思いをはせてほしい、という願いが込められています。

同プロジェクトは朝日新聞DIALOGとコラボし、2月20日、東京都立総合工科高等学校(世田谷区)で特別出前授業を行いました。同校は、大学進学を重視する工業系高校で、機械、自動車、電気、情報デザイン、建築、都市工学の六つの分野のスペシャリストを育成することを目指しています。

講師は教員養成課程で学ぶ大学生・大学院生5人と両社の社員が務め、同校の建築・都市工学科に在籍する2年生の男子18人と一緒に、下水道の役割や課題を解決する方策などについて考えました。活気と笑顔があふれた授業の模様をお届けします。

河川が近くになくても浸水被害が起きるのはなぜ?

今回の授業は2コマ、計100分。授業を始めるにあたり、同校で都市工学を担当する東君康先生は、「下水道法の第1条には、下水道は『都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し』と書いてあります。下水道が私たちの暮らしになぜ必要なのかをしっかり学んでください」と話しました。

1コマ目の前半は、学生メンバーを代表し、東京学芸大学大学院修士2年の古野香織さんが授業を進めます。まずは東京都のハザードマップを見て、自分たちの高校の場所を探します。すぐに見つける生徒たち。高校があるエリアは無色。近くに河川がなく、浸水の恐れがないということが分かりました。

「でも、実は、ちょっとしたからくりがあります」と古野さん。このハザードマップは、大雨で河川の水位が上昇し、堤防の高さを超えたり、堤防が壊れて水があふれたりした場合(「外水氾濫はんらん」)による浸水の危険性を予測したものです。

一方、河川が近くにない場所でも浸水被害が生じる可能性があります。急激な豪雨で雨量が下水道の排水能力を超えると、道路が冠水したり、地下室へ水が流れ込んだり、マンホールのふたが噴き上げられたりするからです。これを「内水氾濫」と言います。東京都の水害による被害額の8割は内水氾濫によるものです。

なぜ、東京都では頻繁に内水氾濫が起こるのでしょうか。

グラフを見ると、東京都は、都市化の影響が比較的小さい地域と比べると気温が大きく上昇していることがわかります。理由は何でしょう。
「人が多い!」「エアコンを使いすぎ!」と生徒たち。
「それは何という現象が起きていますか?」と古野さん。
「ヒートアイランド現象!」
正解です。拍手が起こりました。

「では、ヒートアイランド現象は何が原因で起こると思いますか」と再び問いかけます。
「コンクリート」「ビルがある」「風通しが悪い」。次々と声が上がります。
古野さんが解説します。「第一の原因は、緑地や水面が少なく、太陽の熱を吸収しづらいことです。建築物の影響で熱が上方に拡散し、風速も抑えてしまいます。それに加えて、車の運転や、消費活動に伴う人工排熱が多いことも原因です」

こうした条件がそろうと、局地的、急激な豪雨が増え、雨量が下水道の排水能力を超えると内水氾濫が起きてしまうのです。

下水道のプロから仕組みを教わる

水害の仕組みについて学んだ後は、下水道の役割と課題について、東亜グラウト工業執行役員の南洞誠さんが解説しました。「下水道は地下に埋まっているので、普段目にすることはありませんが、私たちの生活の安全と安心、そして快適な生活を支えています」

下水道の役割は四つあります。一つ目は、街を清潔にすること。家庭や事業所から出た汚水をできるだけ早く排除することで、街を清潔に保ちます。二つ目は、冠水、浸水、洪水から街を守ること。三つ目は、下水を適切に処理して身近な環境を守ること。四つ目は、下水道を活用して資源やエネルギーをつくることです。

下水道は社会にとってなくてはならないインフラですが、南洞さんは、①下水道管の老朽化、②管路の目詰まりが特に深刻な課題だと指摘しました。「雨がたくさん降ったら、速やかに街から排除し、川に流さなければいけませんが、下水道管が古くなってひびが入っていたり、何かが詰まって閉塞へいそくしていたりしたら、うまく流れません」。

南洞さんは、「うわ、汚い、とますます下水道の印象が悪くなるかもしれませんが……」と言いながら、下水道管が土砂やラード(油)、工事に使うモルタルなどで詰まっている写真を見せます。ひどい場合には、管の半分が詰まっていることもあるそうです。

下水道管の寿命は50年ほどで、古いものは洗ったり、取り換えたりする必要があります。しかし、地下に埋まっている下水道管を一気に掘り起こすと、交通渋滞を引き起こします。東京では、掘り起こさずに、既存のパイプを内面から直す「管更生」という方法が主流だそうです。東亜グラウト工業も、老朽化した下水道を掘り起こさずにリニューアルする光硬化管路更生工法や、シャーベット状の氷を入れてパイプの中の汚れを洗浄するアイスピグ管内洗浄工法などで下水道管のメンテナンスをしています。

次に、明電舎上席理事の横井学さんが、下水処理の仕組みについて説明しました。同社は、電力や水道などの社会インフラを支える重電メーカーで、上下水道の水処理施設を動かすのに必要な電気設備の製造、運用、メンテナンスなどを手掛けています。また、内水氾濫の危険を警告する技術も開発しました。マンホールに取り付けたセンサーで下水管路内の状況をリアルタイムで収集し、下水があふれそうな地域に知らせるシステムです。

水はどうやってきれいになり、海に戻されるのでしょうか。まずは、水処理施設で下水の中の汚泥を沈殿させます。その後、下水を生物反応槽へ移し、水中の有機物を微生物に食べさせることによって浄化します。最後にもう一度、汚泥を沈殿させ、その上澄み部分を消毒してから川や海に流します。汚泥は焼却し、灰にして再利用します。れんがやコンクリートなどになるそうです。

下水道の仕組みや課題などをじっくり学んだところで、1コマ目の授業が終わりました。

4グループに分かれて、内水氾濫の対策を発表

2コマ目は、先ほど学んだ「内水氾濫」について、どんな対策が立てられるのかを4グループに分かれて議論しました。各グループには、大学生1人と両社の社員が付き、サポートします。現在の課題を列挙したうえで解決方法を考えました。実現可能性は問いません。Guess=思いをはせることが大切だからです。

「下水道がこんなに汚いとは思わなかった。午後7時にテレビで下水道の映像を流したらインパクトがありそう」「ラーメンスープのような油物を台所の排水溝に流してきたけど、下水道が詰まる原因になっていたんだ」などと30分間、様々な意見が飛び出しました。

では、発表に移ります。

1班 SNSで関心がある人を増やし、人手不足を解消する

下水道管の老朽化や閉塞という課題を解決する技術はあるものの、人手が足りないことに注目しました。「SNSを使って、関心がある人をもっと増やそうと考えました。中高生をターゲットにYouTubeやInstagram、TiKTokなどで動画を配信します。例えば、下水道の様子だけでなく、僕たちが実際に職場を体験し、それを動画にして、初心者にもできることをアピールしたい」。

さらに、仕事のイメージを変えようという提案も出ました。「この仕事は3K(きつい、汚い、危険)と思われがちですが、きつい代わりに給料が高いよ、ということをいろいろな人に伝えたい。調べてみたら、高校生に人気のあるIT系の仕事って平均年収が1000万円。でも、下水道関連の仕事も900万円とか1000万円とか普通にあるんですよ、と動画で伝えたい」

2班 自ら区議会議員になって、下水道に光を当てる

下水道が臭いということに着目し、下水道管の詰まりを取るための予算について熱く語ります。「予算が足りない。これは今の政治家がちょっと悪い。彼らは票がほしいから、目に見えるものばかりにお金を使ってしまうんですよ(笑)。じゃあ、どうすればいいのか。目に見えるようにすればいいんです。テレビに下水道の映像をバーンと流して、『マジかよ、こんな汚いのかよ』と思わせることによって、(政治家も)やったほうがいいんじゃないってなるんですよ」

まだまだアイデアは止まりません。「Twitterで有名人が『下水道汚ねぇ』ってつぶやく。もう一つは、わざと被害をバーンと出して、朝日新聞が取り上げる。取り上げてもらって、すげぇ問題だね~ってことにします。あとは、自分が区議会議員になって、世の中を変えちゃう」。ユーモアたっぷりの提案に、大きな拍手が送られました。

3班 まずは下水道の現状を知ってもらいたい

こちらは2人の掛け合いで発表しました。
「いま、下水道について知らない人が多いんじゃないかと。どう思いますか、塚本君?」
「講演会やテレビで取り上げてもらって、興味をもつ人を増やすことが大事だと思いました」
「下水道に水が入りきらないという話が出ました。洪水が起こるってことは、地下に水をためる施設が小さいんじゃないか。これについてどうしますか、塚本君?」
「これは、単純に水が入るところを増やせばいいんじゃないですか」

「整備が追い付かないっていうのは、配水管の中が汚かったりだとか、ひびが入ったりとか。これについてどう思いますか、塚本君?」
「整備が追い付かないということは、そもそも工事をする人の人手不足。人を増やすために、現状に興味を持ってもらうことが大事だと思う。さっきも言ったんですけど、講演会をしたり、メディアに取り上げてもらったりしたほうがいいと思います」

4班 ビルを減らして緑を増やす

自然災害などの環境面と、人の行動による人為的な側面の二つに分けて考えました。「環境系では、ビルを減らして緑を増やそうという意見が出ました」。ヒートアイランド現象の原因の一つは、緑地や水面が少ないために、太陽の熱を吸収できないことでした。そこから、緑を増やすということにつなげました。

人為的な問題点としては、私たちの知識が不足していることに焦点を当てました。「例えば、洗面台を使ったときに、毛髪などが水と一緒に流れて、それが詰まったりする。そういう小さいところにも問題があると思う。学校教育などで一人ひとりの意識を高めていくことが大切だと思います」

発表終了後、同校の東先生から講評をいただきました。
「君たちが日々学んでいることが、ダイレクトに人々の生活を支える重要な社会基盤になっていることがわかったと思います。下水道もその一つです。こうした授業を通じて、卒業後はどういう仕事に就けばいいのか、今後どういうことに協力すべきなのかを考えるきっかけにしてほしいと思います。区議会議員になって世の中を変えるのも一つの手だと思います(笑)。主体的でないと、人任せの生き方になるし、社会基盤も人任せになってしまう。今日はみんなが一人ひとり考えていて、本当に良かったです。こういう実践的な機会を提供してくださった企業の方々にも深く感謝したいと思います」

参加した生徒たちにも感想を聞きました。2班の発表を担当した生徒は、「下水道には問題が多いことを、今日初めて知りました。普段見えないところで何が起こっているか、もっと多くの人に知ってもらえればいいですね」と話しました。別の生徒からは、「下水道について真剣に考えたのは初めて。目に見えていない部分でも、たくさんの人が努力していることに改めて気づかされました」という感想も出ました。

下水道の大切さを啓発する「Guessイイ(下水イイ)‼プロジェクト」の第1回の特別出前授業は、参加者全員にとって充実したものになりました。明電舎と東亜グラウト工業は今後、趣旨に賛同してくれる企業をさらに募って、プロジェクトの進化・拡大を目指しています。見えないものへ思いをはせることの大切さを若者たちに伝える授業は、日本の未来につながっています。

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