DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2020/06/01

未来を思い描けば 今が見えてくる
慶応義塾大学大学院教授 蟹江憲史さん
SDGs169ターゲットアイコン日本版制作プロジェクト

By 杉本詩織(DIALOG学生記者)
写真=石黒シエル撮影

 SDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールはご存じの方も多いでしょうが、それを具体化した「ターゲット」が169もあるって知っていますか? 例えば、ゴールの5番「ジェンダー平等を実現しよう」には、「未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する」など九つのターゲットが設定されています。

 17のゴールの公式日本版アイコンはいろんな所で目にしますが、実は169のターゲットにもそれぞれアイコンがあります。ターゲットの内容を考えながら、169ターゲットそれぞれに適した短い日本語を考え、これらのアイコンに添えて表現する「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作プロジェクト」が5月から始まりました。誰に、どんなふうに参加してもらいたいのか。プロジェクトリーダーを務める慶応義塾大学大学院教授の蟹江憲史さん(51)に聞きました。

【SDGs】みんなでつくる、みんなの目標

SDGs浸透 次はどう行動するか

——大学では何を教えているのですか。

 私の専門は国際政治ですが、2011年ごろからSDGsに関する制度設計や国際政治の動向を見ています。2015年にSDGsが採択されてから日本でも関心が高まり、私はSDGsに関するなんでも屋みたいになっています(笑)。SDGsは新しいグローバルガバナンスの仕組み。最近は、SDGsを使っていろんなことを考えたいという学生が増えています。授業は地球環境政策がメインです。

——SDGsは日本でどれくらい浸透していますか。

 ここ1年ぐらいで急速に浸透のギアが上がってきました。特に大企業の人たちの認知度は100%に近づいています。ここからは次の段階です。どうやって行動し、取り組みを深めていくのか。今までやってこなかったことに取り組むので、難しい点も少なくありませんが、いちばん大事なところだと思います。

 本格的に持続可能な社会をつくるためには、工夫すべきことがたくさんあります。例えば、環境面に力を入れている企業は、もう少し社会的な側面、人権とか働き方とかジェンダーなどにも目配りをしたほうがいい。そうすることで、自社の取り組みが、より持続可能な社会づくりにつながっていくでしょう。

蟹江憲史(かにえ・のりちか) 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授/国連大学サステイナビリティ高等研究所非常勤教授。1969年生まれ。専門は国際関係論、地球システムガバナンス。編著書に『持続可能な開発目標とは何か』(ミネルヴァ書房)など。

若い世代とともに やわらかい頭で

——子どもや若者を対象に169のターゲットを日本語化するプロジェクトを始めるのは、なぜですか。

 これまでの企業の取り組みを見ると、ターゲットのレベルまで課題を落とし込んで考えていないケースがほとんどです。SDGsのゴールは非常に抽象的ですが、ターゲットまで見ると、このゴールはこういうことを言っているのかということがよく分かる。日本語化プロジェクトを通じて、多くの人がターゲットのレベルでSDGsを考えるようになればいいなと思っています。

 また、子どもや若者こそが世の中を変える力になると確信しています。その人たちが、いま世界はどういう方向に行こうとしているのかをちゃんと学んでおくことが大事です。私たち大人がこれまで経験してきたことと比べても、今の子どもや若者がこれから10年、20年で遭遇する世界は、はるかに大きく変化するでしょう。どういう世界になっていくのかを想像しながら、自分はその中で何をやっていきたいのかを考えることが必要になる。今回の日本語化プロジェクトを、未来から今を考えるきっかけにしてもらいたい。

 さらに、これは英語の勉強にもなります。英文を読んで、何を言っているのかを一生懸命調べ、周りの人たちと話し合う。長く書かれた文章を短くまとめると、要約する力もつきます。

 このプロジェクトには本当にいろいろな要素が含まれているので、普通に大人が訳すのではなく、未来を担う子どもたちや若者たちが考えたものを形にしたい。SDGsを“自分事”として捉える機会になればいいなと考えています。

——参加する子どもや若者、家族、先生方に期待していることは何ですか。

 子どもたち、若者たちには、やわらかい頭で臨んでもらいたい。こんな言葉を使っちゃっていいのかなと気になることもあるかもしれませんが、今までの常識に縛られずに取り組んでほしい。例えば、ギャル語でもいいし、逆に古典で使われるような熟語でもいい。それらを組み合わせて遊んでもいい。まじめに考えすぎないで、ちょっと遊びながらやろうと思うと、夢中になっているうちに本当に大事なところが見えてくる。

 ご家族も一緒に考えてもらえるといいし、先生方にはダメって言わないでもらいたい。ダメを禁句にして、基本的にすべて受け入れながらサポートしてほしい。その訳は違うよと言いたくなっても、ダイレクトには言わない。あまりに突拍子がない場合も、子どもがそう考えた理由を聞くなど、寛容さをもって接していただきたい。寛容さは、SDGsでは大事なことです。

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