私大生が斬る オンライン講義倍速再生いいね! 人気教授が残念な感じ…:朝日新聞DIALOG
2020/06/17

私大生が斬る オンライン講義
倍速再生いいね! 人気教授が残念な感じ…

By 大谷津元(DIALOG学生記者)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出もままならぬ昨今。多くの大学では対面式の講義から、インターネットを使ったオンライン講義に切り替える動きが広がっています。現役の大学生たちは、突如はじまった新形態の講義に何を感じているのでしょうか。朝日新聞DIALOGでは「オンライン講義のメリット・デメリット」をテーマにトークセッションを行いました。

 セッションに参加したのは東京都内の私立大学に通う4人。セッションを行った5月15日現在、全員がオンラインで講義を受けているそうです。しかし、オンライン講義といっても形態はさまざま。ライブ配信や録画、音声のみなど、大学や講義によって異なるようでした。

 「へー! そんな講義形式があるんだ!」。さっそく4人は互いの講義形態に興味津々。いったい、どんな話が展開されるのでしょうか。

 語り合った人たち

 ・中央R太 中央大学3年男性

 ・立教H子 立教大学3年女性

 ・法政R実 法政大学4年女性

 ・司会  法政大学4年女性

無情…時間たつと消える講義

 まず4人はオンライン講義のメリットについて語り始めました。

 「普通の授業だと学生はそんなに発言しないけど、オンラインは発言しやすい感じがする」。法政R実さんがチャット機能を活用した講義について話すと、立教H子さんは「その場で疑問を解消できるのは良いよね」と共感しました。中央R太さんも話したい様子で画面を見つめています。他のメリットを聞いてみると——

中央R太 講義によってはパワポに音声がついていて、その音声速度を自分で変えられるからうれしい。1.5倍速とか2倍速にすると、ちゃんと聞かざるを得ない状況になるから、集中して講義を受けられる感じがしているかな。

司会 自分を追い込んでいるね(笑)。

中央R太 時間の短縮にもなるからいいんだよ。録音や録画データがあると、分からないところは聞き直せるしね。

立教H子 たしかに録画されている講義だと、夜とかにまとめて視聴できるから受講しやすいよね。

中央R太 そうなの!? 中央大では授業の公開時間が決まっていて、指定の時間に見ないと講義を受けられないんだよ。しかも、公開期限が過ぎてしまうと講義のスライドが消えてしまうという悲劇も……。

司会 えー! じゃあ期限までにスライドを保存していないと、テスト前に見返したりできなくなるね。

コンビニで印刷 お金ないのに

 メリットがいくつも挙げられていて満足感が高そうです。では、デメリットについてはどうでしょうか?

 立教H子さんは「ネットの接続状況が悪いとZoomが落ちたり、先生の声が聞こえづらかったりすることがある」と、ネット回線のトラブルを挙げました。中央R太さんも「“あるある"だよね。大人数が参加していると回線が遅くなって落ちてしまう」と続きます。社会全体で「ネット回線の混雑」が指摘されている今、通信環境の悪化は「オンライン講義」でも問題になっているようです。さらにデメリットを掘り下げてみると——

法政R実 ゼミに関してはリアル形式の方がいいと感じているかな。Zoomでディスカッションをしていると、4人ですら話し始めるタイミングがかぶってしまったり、話すのを躊躇(ちゅうちょ)してしまったり。普段なら「あの子が話し出しそうだ」と、その場の雰囲気で分かるんだけどね。

立教H子 私は講義資料の印刷費用で困っている。普段なら講義中に紙で資料が配られるけど、オンライン講義だと自分で資料をダウンロードして印刷しないといけないのが負担で……。

司会 それ、私も思った! 印刷は大学の構内なら1枚3円で済むけど、自分で印刷する1枚10円のコンビニを使うしかない。定期代より印刷代の方がかかっているかな。バイトができない状況だからお金はないんだけど、資料を印刷しておかないと理解が深まらないし。

法政R実 あと、ひどいなって思うのは、音声も動画もついてないスライド6枚が教材として掲示されていて、それをもとに課題を提出する講義。スライドや教科書を書き写すだけで「講義」ってされてしまうのはどうなのかな。

司会 オンラインになって講義の質が落ちた感じ?

法政R実 うん。リアルの講義では人気があった先生だけど、オンラインでは残念な感じになっちゃった。

中央R太 オンライン講義の質とか内容は、先生それぞれのデジタル対応力によるよね。

学生に給付5万円 「うち、ないし」

 話題は各大学で実施されている「給付金」や「支援金」の制度にも及びました。

 現在、複数の大学では新型コロナウイルスによる経済的混乱やオンライン講義の開始をふまえ、学生に対して特別支援を実施しています。中央大と立教大は、全学生に給付金を支給する「一律給付型」を採用。法政大は、経済的な問題を抱えた一部の学生に給付金を支給する「条件付き給付型」を採用しています。大学ごとに異なる対応に、それぞれ思うところがあるようです。

中央R太 中央大は全学生を対象に、学生1人あたり5万円の給付が決まっているよ。

司会 パソコンとかネット環境が整っている人にも給付するのはどうして?

中央R太 大学を使えないことで発生する印刷代とか電気代とかを補う面があるのかな。

法政R実 政大では全学生への現金給付はないし、むしろ「寄付してください」っていう案内が来て、学生から「あり得ない!」という声が上がっているよ。

立教H子 立教大も全学生に給付金があったけど、「5万円あげるから、これでいいでしょ」っていう感じがする。5万円でも足りない学生はいると思うけど……。

中央R太 5万円の給付は根本的な解決にならないよね。新1年生からしたら、友達いない……っていう状況だし。いろんな付加価値をつけたり、学費を減免したりっていうことを大学はもっと考えてもいいんじゃないかな。

■主な大学における学生へのコロナ関連の給付金
大学名全学生への一律給付金(金額)条件付き給付金・奨学金(上限金額)
中央大学特別支援措置(50,000円)経済援助給付奨学金(220,000円)
立教大学学修環境整備奨学金(50,000円) 緊急給与奨学金(300,000円) 
法政大学なし家計急変学生奨学金(500,000円)
早稲田大学なし緊急支援金(100,000円)
慶應義塾大学 なし修学支援奨学金(400,000円)
専修大学なし緊急支援奨学金(200,000円)
※2020年6月5日時点、各大学HPから一部抜粋

 話を聞いていると、「全学生への一律給付金」の有無が4人にとって大きな関心事のようでした。たしかに、印刷代に困る学生もいますし、ネット環境の整備に相当のお金が必要な学生もいるでしょう。人並みの生活を送れる環境であっても、「リアル」な学習機会が失われたことによる障害や損失はあるはずです。大学は、全学生それぞれの状況に合った支援を講じる必要があるのではないでしょうか。

 一方で大学側も資金繰りに苦戦しているようです。法政R実さんがセッションのなかで挙げた「寄付金」。セッション後に各大学の状況を調査してみると、法政大に限らず多くの大学で寄付金を募っていました。例えば、立教大では「立教学院創立150周年記念募金 使途指定寄付『緊急奨学支援』」として、早稲田大では「学生への緊急的な経済的支援」として、1口1万円で保護者や卒業生に寄付を呼び掛けていました。これらの大学によると、寄付金は自校の「オンライン講義支援」と「経済支援型の給付金」に充てられるようです。

 学生にとっても大学にとっても、この社会情勢の中でオンライン環境を整え、学習環境を維持するのはやはり大変なことのようです。

オン&オフ いいとこ取り理想

 今回のセッションを通して、オンラインの授業にもオフラインの授業にも、それぞれメリットとデメリットがあることが分かりました。学生たちが、今後の大学の講義のあり方に期待することは何でしょうか?

中央R太 オンラインとオフライン両方の融合型が理想かな。例えば、自分でオンラインかオフラインかを選べる講義形態になれば、学生にとって効率がいいし、先生にとってもいいと思う。でも、友達との関係を考えたらオフラインの方がいいけどね。授業やサークルで友達に会えるのはやっぱり楽しいし。

法政R実 講義形態を選択できるのは私もいいと思う! オフラインで講義をしながら、その様子を動画で配信するとか……。それならR太くんみたいな教室に行きたい学生は直接行けるし、講義後にYouTubeで内容を飛ばしながら復習することもできるし。自分に合った受講スタイルを選べるのは私もうれしい。わがままな要望かもしれませんが(笑)。

司会 オンラインで質が保てない先生はオフラインで授業するとか……逆もしかりだけど、融合してできればいいよね。

立教H子 あとは、東京の大学に行きたいけど、地理的、経済的に厳しい学生がオンラインで受講できるようにもなればいいなと思います。オンライン講義があるから「この大学は受験できる!」っていう流れができるとか。

オンライン 慣れて気づいた「リアル」の力

 DIALOG学生記者の大谷津元です。

 「感染症の拡大防止のため、大学構内は立ち入り禁止」。私が通う専修大学から、こんな通知が届いたのは4月上旬のことでした。学生なのに通学できない……。私の新学期は「オンライン講義」という前代未聞の形で始まったのです。満員電車に乗らず、自宅でパソコンから流れる情報をひたすら拾い続ける日々。次第に「通学時間が無駄だし、もうオンライン講義のままでいいんじゃないの?」と考えるようになりました。

 しかし、今回のオンラインセッションを通して考えが大きく変わりました。オンライン講義にもたくさんの問題があり、それらを乗り越えるためには「リアル」の力が必要だと感じたのです。対面とネットが融合したスタイルこそ、これからの大学講義に適した姿であると確信しました。

 新型コロナウイルスの脅威が続くなか、人々の暮らしは「新しい生活様式」へと移行し始めています。私たち学生や大学も、「新しい講義のあり方」を模索する必要があるのではないでしょうか。

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