

国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)を、みんなの力で達成しよう——。そんな思いで始まった「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作プロジェクト」。これまでに慶応義塾中等部(東京都港区)、青山学院中等部(東京都渋谷区)で出張授業がありました。動画やワークシートを使った課題や、SDGsに取り組む企業から「先生」を招いた講義。生徒たちの話し合いから生まれた、生き生きとした言葉やアイデア。こうした動きが全国に広がるように、SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会の取り組みを紹介します。

「SDGs169ターゲットアイコン日本版制作委員会」は、サポート企業(住友林業、大和証券グループ、フラグスポート、ライオン)とともに、各地の学校で出張授業を実施しています。コピーは11月末まで、こちらで募集しています。
専門家 動画でアドバイス
出張授業では、まず一人ひとりが動画を見て学びます。

一つ目の動画は、SDGsを専門とする慶応義塾大学大学院の蟹江憲史教授。169ターゲットの意味と重みを説明して「169ターゲットを丁寧に見て、考えるプロセスが大切」を訴えます。

二つ目は、SDGs17ゴールの日本語コピーをつくった博報堂クリエイティブディレクター井口雄大さん。ターゲットごとに「一番伝えたいことは何か」を考えてほしいと語り、「かっこいい言葉を作るよりも、伝わる言葉つくるのが目的。丁寧に考えてほしい」とアドバイスします。
さらに、学校ごとに、SDGsに取り組む企業から、関係するゴールの説明とメッセージも寄せられました。
これらの動画は、プロジェクトの応募してくださる学校などで、自由に使っていただけます。
■生徒のみなさんへ 企業からメッセージ(要旨)
住友林業から慶応義塾中等部へ
大和証券グループから青山学院中等部へ
フラグスポート(マニフレックス)から和洋九段女子中学高等学校へ
ワークシート工夫 取り組みやすく
授業で使ったのは、工夫を凝らしたワークシート。英語の原文は難しい単語や文法が多く、いきなり日本語コピーに取り組むのは大変です。そこで、まずはウォーミングアップから。アイコンを見て、何が言いたいのかを想像してもらいます。
次に、原文を見て、分からない単語や文法を辞書で調べます。自分の言葉で訳してみたら、すでに公表されている日本の外務省などによる仮訳で「答え合わせ」。でも、外務省の仮訳は長文だったり、難しい表現が多く使われていたりします。なぜ、このターゲットが設けられ、どういう取り組みが必要なのか——。一人ひとりが調べて、より短く、やさしい表現にできないかを考えます。
そして、締めくくりに日本語コピーを考案。一つだけはなく、いくつかの案が思いつくように、思考の幅を広げます。

■ワークシートの構成(例)
Warming Up! アイコンからターゲットを予想してみよう
Step 1 英語の原文からターゲットの意味をとらえよう
Step 2 このターゲットが設定された背景について知ろう
Step 3 ターゲット達成に向けた取り組みについて知ろう
Step 4 英文コピーをヒントに、 オリジナルの日本語コピーを考えてみよう
Step 5 このターゲットを達成するためにできることを考えよう
グループワーク 一人ひとりの考え尊重
出張授業では、みんなで考えを共有して尊重し合えるよう、グループワークに力を入れます。5人前後に分かれ、テーマごとの課題、解決への道、そして日本語コピーを1人ずつ発表。どの表現がより多くの人に届くか、相談しながらグループとしての案をまとめていきます。
慶応義塾中等部では、森林保全を考えたグループで「全世界に豊かな自然を持続させる資金を」「世界の森林の復元に協力しよう」といった案が出ましたが、分かりやすい表現をみんなで考えた結果、「未来にも豊かな緑を保ち続けられる資金を」というコピーが生まれました。
青山学院中等部でも、医薬品やワクチンの普及について考えたグループで「誰にでも平等に医療」「全員で健康になろう」といった案が出ましたが、最後は「空気のように広がる健康」という詩的な表現にまとまりました。
身の回りのことに引きつけて考えることも大切です。慶応義塾中等部では学校法人の所有する「慶應義塾の森」の活用法を議論。青山学院中等部でも「私たちが考えるSDGs債(SDGsに活用される債券)」をテーマに話し合い、たくさんのアイデアが集まりました。
中高大 塾も対象 全国から応募
プロジェクトには、すでに全国のみなさんが参加しています。小・中学校・高校・大学・大学院・専門学校などのほか、塾やクラブといった教育団体、社会人学生なども対象。個人でもグループ単位でも応募でき、169ターゲットのうち一部を除くほぼ全ての日本語コピーを考え、応募してくださった方もいます。
SDGsへの理解を深め、世界の未来を切りひらくために―。11月末の締め切りに向けて、ぜひみなさんもご参加ください。