下水道がひらく 函館の未来——「学生シンクタンク」が斬新アイデアGuessイイ(下水イイ)!!プロジェクト:朝日新聞DIALOG
2021/01/25

下水道がひらく 函館の未来——「学生シンクタンク」が斬新アイデア
Guessイイ(下水イイ)!!プロジェクト

【PR】明電舎、東亜グラウト工業

※2021年2月10日 記事更新(動画の追加)

 学生シンクタンク「はこだて未来カンパニー」が、2050年の函館をより豊かにするためのまちづくりをご提案。活用するのは、私たちの暮らしを支える下水道!

 「光の水族館で、昆布もPR」「処理熱を利用し、道路の融雪を」「地下に音楽ホールを作る」——。架空の会社の高校生「社員」から、次々と飛び出す斬新なアイデア。事業パートナーは、実際に下水道事業に携わる明電舎と東亜グラウト工業です。12月13日に開かれたオンライン発表会の、熱いやりとりをご覧ください。

3カ月かけて議論 2050年を描く

 私たちの暮らしを支えている下水道の役割を、若い世代に知ってもらおうと、明電舎と東亜グラウト工業の2社が2019年にGuessイイ(下水イイ)‼プロジェクトを始めました。

■Guessイイ(下水イイ)‼プロジェクト
「Guess」は英語で、推測する・解き当てるという意味で、「下水(gesui)」と掛けています。普段、目にすることが少ない下水道は、私たちの暮らしを支える大事な社会インフラです。プロジェクト名には、こうした見えない何か・誰かに、「いいね!」と思いをはせてほしいという願いを込めています。

 2年目となる2020年は、8月に開催された市民参加型の科学イベント「はこだて国際科学祭」とコラボレーション。函館の高校生と大学院生、東京の大学生と専門家らがオンラインでワークショップをし、2050年の函館市が直面していると想定される課題について、下水道がどう解決に寄与できるか、話し合いました。

■「はこだて未来カンパニー」のみなさん
【チーム1】早稲田大学・中路将伍さん、公立はこだて未来大学大学院・比佐翔太さん、函館中部高校・井上真綾さん、熊谷光里さん
【チーム2】早稲田大学・大和田奈津さん、公立はこだて未来大学大学院・増井元康さん、函館中部高校・泉田明澄美さん、吉田光さん
【チーム3】津田塾大学・渡邉有佳里さん、公立はこだて未来大学大学院・伴田まどかさん、函館中部高校・川守田奏真さん、西後亜子さん

 このワークショップで出たアイデアを、10~12月の放課後に計6回、高校生が大学生・院生、両社の社員らと議論しながらブラッシュアップ。「下水道を利用した、豊かなまちづくり」という観点でまとめた企画書を、12月13日のオンライン発表会で両社の専門家らに披露しました。

光の水族館・イカ釣りができる博物館・下水管アート……

 発表に臨んだ高校生は、8月のワークショップに参加した、函館中部高校1年生の井上さん、泉田さん、川守田さん、熊谷さん、西後さん、吉田さんの6人です。同校は今年度からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校となり、SSHカリキュラムの一環として本プロジェクトに参加。当日は高校に集まり、約40人の同級生や担当の柴田治久先生が見守る中、企画のプレゼンテーションに挑戦しました。

 発表会での6人は、架空のシンクタンク「はこだて未来カンパニー」の社員という設定です。3チームに分かれ、「2050年の函館を豊かで魅力ある街にする」ための施策を立案。実現に向けて下水道をどう活用していくかを盛り込んだ企画書を制作し、事業パートナーの明電舎と東亜グラウト工業に提案するという流れで進めました。

高校生たちは「はこだて未来カンパニー」の社員として、「魅力的な街をつくる」ための企画をプレゼンテーションしました
8月のワークショップで披露された原案
【チーム1】下水道施設の空き空間を利用した水族館
【チーム2】下水道科学館の整備
【チーム3】下水管の空きスペースを活用した公園の整備

【はこだて国際科学祭】下水道の力! ワークショップ

【チーム1】光の水族館 昆布とデジタルアート

 若者が集う場所の少なさや、観光業の盛り上げを課題ととらえ、水族館の建設というアイデアを披露したチーム1の井上さん・熊谷さんペア。「函館らしい」水族館というコンセプトづくりのため、昆布漁師へインタビューをしたり、函館空港に設置された、道南の海で採れるメバルやホタテ、真昆布などを展示する大型水槽などを見学したりして、「海藻・哺乳類・光」という三つのキーワードを柱にすることを決めました。

(左から)井上さん、熊谷さん

 「最近の子どもたちは自然の中で遊ぶ機会が減り、海の生き物を身近に見ることもありません。函館は実は道内一、昆布の生産量が多いのですが、そのことも知られていません」と井上さん。こうした点を踏まえて、水族館の図面を示しながら、次の提案をしました。

①水族館の入り口はトンネル型の水槽にし、夜光虫を光らせて函館のステータスシンボルとも言える夜景の「光」を表現

②水族館の1階には、津軽海峡に生息するイルカのショーが見られるコーナーを設置

③地下1階には、道南の海に生息する生き物に触れるコーナーを設けるほか、クラゲなどの発光する生き物を展示する水槽、リン酸や窒素が豊富な下水汚泥を肥料にした昆布の養殖が見られる水槽を展示する

④昆布の水槽は、デジタルアートのスクリーンとしても活用。来場者が描いた魚の絵を、プロジェクターで昆布に投影し、あたかも魚が泳いでいるかのように見せる

⑤館内の電力は下水の処理熱などを活用

⑥レストランを併設し、水族館以外の客も取り込む

 熊谷さんは、「夜光虫を刺激するための波の発生装置や、昆布の養殖方法がまだ確立されていないといった課題はありますが、この水族館が市民の憩いの場になり、新たな観光スポットにもなればいいと思います」と語りました。

【チーム2】イカが釣れる博物館 下水処理熱で融雪

 チーム2の吉田さんは、泉田さんとともに考えた、「下水道博物館」のアイデアを披露しました。観光名所である五稜郭の近くに新たな集客施設として建設し、少子高齢化が進む函館市で、多世代が楽しく下水道について学べるようにと、次のようなコンテンツを考えました。

(左から)泉田さん、吉田さん

①函館名産のイカを釣れる水槽

②下水道の流れを体験できるVRゲーム。ゴーグルをつけると、自分が下水管を流れていく疑似体験ができる

③ご当地マンホールの展示や、その図柄などをもとにしたクイズやスタンプラリー、地球環境問題について学べるコーナー

④埼玉県にある、大雨による洪水を防ぐ巨大な地下施設「首都圏外郭放水路」や、ドイツ・ベルリン市にある、地上に設置された配管など、珍しい写真を展示

 また、雪の多い時期にも来館してもらうための工夫も。「下水の処理熱を利用して、博物館周辺の道路を融雪します。ゆくゆくは市内全域の道路の融雪ができるようにしたいです」と吉田さんは語りました。

【チーム3】下水管アートと音楽ホール 成長する街

 チーム3の企画名は「UGプロジェクト」。地下(underground)にある下水道にちなみ、下水道を核に市民が団結(unite)し、共に成長(grow)していけるようにという願いを込めました。函館市の人口減少を課題ととらえ、安心して子育てができる環境づくりのため、下水管の廃材を使ったアイデアを二つ披露しました。

(左から)川守田さん、西後さん

 一つが、下水管の廃材を用いたオブジェの展示です。「捨てられてしまう廃材を有効利用し、デザインのアイデアは市民から公募します」と西後さん。オブジェは函館駅、五稜郭タワー、函館湾浄化センター、赤川低区浄水場の4カ所に展示して、スタンプラリーで回ってもらう仕掛けを考えました。

 もう一つが、地下に作る音楽ホールです。既存のコンサートホールや劇場は市中心部に集中しているため、市街地の昭和公園の地下に建設。「反響板には、下水管の廃材を利用して、音をより響かせるようにしたいと考えました」と川守田さん。館内の電力は、下水の流れや下水汚泥から出るメタンガスでまかなうということです。

ときめき、イノベーション、広がる下水道の可能性

 発表が終わると、質問タイムへ。同級生からの「下水の処理熱はどのくらいのエネルギーを生み出すのでしょうか」との問いに、発表を聞いていた、東京大学大学院下水道システムイノベーション研究室の加藤裕之・特任准教授が解説しました。「下水は夏は大気より冷たく、冬は大気より暖かいという特性があり、その熱が冷暖房に活用されています。たとえば、東京ドーム周辺を流れる下水は1日あたり6万4千立米あり、その熱はドーム付近のホテルなど、近隣の10ヘクタールのほどの区域のビルの冷暖房に使われています。電気エネルギーは遠くから運ぶため、途中で減ってしまって非効率なのですが、下水の熱はその場で使えるため、ロスが少ないというメリットがあります」

 続いては講評タイム。明電舎で水処理プラントの技術部門を統括する安藤正勝さん、東亜グラウト工業で管路事業の技術開発室室長を務める田熊章さん、東京大学大学院の加藤特任准教授と、公立はこだて未来大学で学習科学を専門とする美馬のゆり教授の4人です。①企画書の要素である「5W1H」を満たしているか②説得力③実現性④独自性⑤地域性⑥発展性があるかといった観点からコメントをしました。

高校生の真剣さに感銘
東亜グラウト工業・田熊さん

 高校生が真剣に街の将来を考えていることに感銘を受けました。

【チーム1】佐賀・有明海では、リンや窒素を含む下水の処理水を海苔の養殖に活用している。昆布でも転用できるのでは。

【チーム2】下水道科学館は大阪・淀川にもあるので参考にするとよさそう。

【チーム3】アートや反響板への活用は若者ならではのアイデア。公園を防災拠点に、その地下を音楽ホールにしてもいいかもしれない。

アイデアさらに発展を
明電舎・安藤さん

 コロナの折、デジタル、環境、エネルギーなどの分野が注目を集めています。皆さんのアイデアを日常生活の中で更に発展させるイメージを持ち、産業振興などの観点からも検討するとよいのではないでしょうか。

【チーム1】リンや窒素といった、下水道の様々な可能性に着目している点がすばらしい。

【チーム2】VRなどの新技術をふまえている点が良い。

【チーム3】下⽔の⽔流を使った発電という発想は、エネルギーの活用をよく考えられていて良い。

異分野融合がポイント
東京大学大学院・加藤特任准教授

 イノベーションの観点からは、異分野の融合がポイント。函館のある有名ラーメン店は、鶏ガラだしと昆布だしのW使い。混ぜるから価値が出るということを考えていただけたら。

【チーム1】「光」という発想が刺激的。「下水道でときめきを与えられるか」を僕自身、いつも考えている。

【チーム2】イカはイケる。イカ釣りのキットを開発し、水槽とセットにして全国に売り出してみては。

【チーム3】地下ホールの案は意外性がある。廃管は楽器などにも活用できるのでは。

ゲームの要素 考えたら
公立はこだて未来大学・美馬教授

 厳しく言うと、企画タイトルをもっと練ってほしかった。建物の形、展示内容の相互の関連性など、コンセプトを明確に。そのためにも、まずは調べることが大事。先行事例はないか。いま、コロナ禍で各地の科学館や美術館がVRで鑑賞できます。どういう展示をしているのか、ぜひ見てヒントを得てください。

 また、函館の人口減や観光振興の解決策として、これらの施設を作るというのは、ちょっと論理の飛躍があるかも知れません。大型施設はランニングコストもかかります。入館料はいくら? どうしたら何度も来てくれる? と、ゲームの要素を取り入れて、人の行動をコントロールしようとすることを「ゲーミフィケーション」と言いますが、そうした観点からも考えてみては。函館のことだけを考えていても見えないこともある。他の都市の課題を学ぶことで、函館だったらどうする? と、視点を変えて見てみることも大事です。

オンラインならではの学び

 8月のワークショップ後、10~12月にかけて何度も放課後に話し合いを重ね、プレゼンテーションを準備してきた高校生たち。最後に、参加した感想を次のように語りました。

【チーム1】井上さん・熊谷さん

 小学生のころ、下水道施設を見学したけれど、いいイメージはありませんでした。今回のプレゼンテーションの準備で昆布漁師の方にお話を伺ったりし、発見がたくさんありました。資料の作成にあたり、大学生や社会人の方からのアドバイスがうれしかったです。

【チーム2】泉田さん・吉田さん

 ミーティングで話し合いをしていく中で、函館はもっと活性化する可能性をたくさん持っていると思いました。地元の課題を考えることができてよかったです。下水道資源は様々な利用方法があり、可能性を感じました。この街を大切にしたい気持ちも芽生え、これからも考えていきたいと思いました。

【チーム3】川守田さん・西後さん

 オンラインでのミーティングでは毎回、多くの学びがありました。専門家の方々からいただいた講評を、今後につなげていきたいです。企画のロゴやイラストを作ってくださった大学生の伴田さん、渡邊さん、ありがとうございました。

10~12月の放課後、東京と函館のメンバーが何度もオンラインで集まり、プレゼンテーションの準備を進めました

 発表準備に伴走した大学生からも、様々なコメントが飛び出しました。「夏のワークショップから、更に考えを深められたと思います。高校生の地元愛をひしひしと感じました」「大学でまちづくりのゼミに所属していますが、高校生の視点から多くの気づきをいただきました」「高校生の発想力の豊かさに驚きました」「課題解決に向けて論理の飛躍がないように、議論を進めていくところが大変でした」「私も函館中部高校OG。優秀な後輩たちとコラボレーションできてうれしかった」

 本年度のGuessイイ(下水イイ)!!プロジェクトでは、遠く離れたメンバーがオンラインでのコミュニケーションを通してチームになり、アイデアを形にしていくという、新しいアイデア創出プロセスの可能性を感じることができました。コロナ禍で様々な制約があるなか、ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

◆オンライン発表会の様子をYouTubeにて公開中。ぜひご覧ください

pagetop