排水溝に酒粕に 見つけた!私たちの未来大学SDGs ACTION! AWARDS 2021 最終選考会:朝日新聞DIALOG
2021/03/29

排水溝に酒粕に 見つけた!私たちの未来
大学SDGs ACTION! AWARDS 2021 最終選考会

By 内田早紀・徳田美妃(DIALOG学生記者)

 国連は貧困や格差、環境など17分野で2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。この目標達成に向けて、大学生が独自の提案をする「大学SDGs ACTION!AWARDS 2021」(主催:朝日新聞社、特別協賛:住友金属鉱山、日本ガイシ、出光興産)の最終選考会が3月5日、開催されました。

 96件の中から選ばれたファイナリストは12チーム。オンラインで実施された選考会の模様を、SDGsに関心のあるDIALOG学生記者がお伝えします。

未来の模索——ファイナリスト12チームの提案

※キーワードをクリックすると、提案の正式タイトルと詳細が見られます。

【イベント採録】動画を含む当日の様子(SDGs ACTION!サイトに遷移します)

酒粕のにおいが…困ってうれしい

 まずは12チームによるパネルトーク。代表者たちが映し出された大きなスクリーンを前に、進行役が二つの質問を投げかけます。

——今回のアイデアを出すのに、苦労したこと、印象的なことは何ですか?

 最初の質問に、手元の紙にそれぞれ回答を書き込んでいきます。「試験場所」「0から始まること」「資金獲得」「繋(つな)ぐ力」など、さまざまな言葉が寄せられました。

 目を引いたのは「25㎏の酒粕(さけかす)」。書いたのは福井大学大学院の南知希さんです。酒造会社から酒粕を提供してもらったものの、研究室の中が酒粕だらけになったといいます。「においがすごくて……」と、うれしい困りごとを振り返りました。

すでに実行中の提案も 互いに刺激

——他のチームのプレゼンを聞いて、印象に残ったことや、すごいなと思ったことは何ですか?

 国際大学の吉村美弥さんが書いたのは「実行力」。ファイナリストの提案の中には、すでに実施しているプロジェクトも多く、「自分たちはまだ実行に移せていないので、連携や提携の規模がすごいと、ひしひし感じました」と語り、触発された様子でした。

 複数のチームから、静岡大学の防災への取り組みに称賛の声が寄せられました。「みなさんに伝わった、というのがうれしい」と笑顔をみせた代表の鈴木希実さんの手元には「シングルイシューからマルチイシュー」との言葉が。「ボーダレス弁当」を提案した立命館アジア太平洋大学の浅井瞭太さんたちの問題の捉え方が印象に残ったと言います。「今までは地震災害だけに取り組んできましたが、新型コロナウイルスも災害の一つだと感じています。複合災害にも取り組んでいきたいです」と語りました。

 今年は、12チームの最終プレゼンが事前に動画で公表されたこともあり、お互いに刺激をうけ、わがことのように問題を捉えて意見を交わす様子に、会場からは拍手が送られました。

金属・セラミックス・モビリティー 企業も挑戦

 パネルトークの後、特別協賛の3社がSDGsの取り組みについてプレゼンテーションしました。

 住友金属鉱山は、非鉄金属であるニッケルや銅をつくっている会社で、テーマは「未来につながる資源の話」。資源を掘り出す鉱山開発や金属の純度を高める精錬をするだけでなく、使用済みの金属を再利用する取り組みに力を入れているそうです。

 セラミックス事業を展開する日本ガイシは100年前からSDGsの発想を持っていたと説明。社会を陰で支える黒衣(クロコ)として、環境を考慮した再生可能エネルギー分野で、気象状況に左右されるデメリットを克服しながらの普及・発展に貢献している、などと発表しました。

 出光興産は「油を売っているだけじゃない、出光興産の挑戦」をテーマに解説。カーボンニュートラルな世界を目指してEV(電気自動車)事業に参入。新たな移動手段の提供やモビリティーの開発に取り組み、「社会課題の解決に尽力していきたい」と訴えました。

みんなで「大喜利」 新たな気づき

 パネルトークの後のワークショップでは、「大喜利」のように三つのお題が示されました。これに飛び入り参加したのが内田早紀・DIALOG学生記者です。

Q プラスチック→洋服(フリース)の転職がうらやましい銅くんに、華麗なる転職をプロデュースしてください。〈住友金属鉱山〉
Q クロコをやってて切ないこと、第1位は「あまり褒めてもらえない」。では、第2位は?〈日本ガイシ〉
Q 2030年、地元に暮らす私が、まちなかでチャージしたいものとは?〈出光興産〉


 私が割り当てられたのは、住友金属鉱山の部屋でした。筑波大学の齊藤滉平さんとともに大喜利にチャレンジです。

 「日常で意識していない銅の使い方ってあるのかな?」「銅の抗菌作用は生かせるかも」など、思いついたことを口にしていきます。プラスチックがフリースの素材として使用されるに至る研究の一歩目は、誰かの「思いつき」だったのかもしれないと考えると、柔軟な発想には大きな可能性があると感じます。

 時間内に大胆なアイデアは思いつきませんでしたが、「難しいね」で終わらせることなく自由に発想を飛ばしたいと思いました。

 あっという間に時間はすぎて、全体討議に戻り、各部屋のアイデアが披露されました。

 「クロコは一生、若手感」との言葉には、逆に「活躍したらフレッシュな存在でなくなる?」との気づきが生まれました。チャージしたいものを考えた部屋では、「家で完結しかねない時代において人は地域に何を求めるのだろう?」という問いが投げかけられました。「問い」を呼び水に、考えが広がる時間でした。


まさかのダブル受賞! どのチームに?

 いよいよ、結果発表です。

 まずは、視聴者からの投票で選ばれる「オーディエンス賞」。全1689票のうち、約4分の1の支持(452票)を集めた静岡大学チームに授与されました。

 選考委員特別賞、スタディツアー賞(下記)に続き、準グランプリ3チームの発表です。

 準グランプリ(住友金属鉱山賞)は、筑波大学。代表者は「私たちのチームは実行に至っていないため、賞をいただいたからには実行にまで移していきたい」と語りました。

 準グランプリ(日本ガイシ賞)は、東京大学大学院。代表者は「拠点となる和歌山へ移住を始めた段階でしたので、準グランプリをいただけたからにはプロジェクトを成功させたいと思います」。

 準グランプリ(出光興産賞)は、立命館大学。代表者は「今回のコンテストが私たちのプロジェクトについて知っていただく機会になれば、と思いながら取り組んでいました」とコメントしました。

 そして、グランプリは……オーディエンス賞も受賞した、静岡大学です。

 まさかのダブル受賞に、代表者は「防災はどこの国でも問題になっていると思います。先進国と呼ばれる日本の防災を、世界へ広げていきたいです」と興奮気味に語りました。

グランプリ (賞金50万円)
・静岡大学 「日本の BOSAI を世界へ」教職を目指す学生たちによるSDGs への挑戦

準グランプリ 住友金属鉱山賞 (賞金30万円)
・筑波大学 魚の実る森~放棄池を活用したマングローブ共存型ティラピア養殖~

準グランプリ 日本ガイシ賞 (賞金30万円)
・東京大学大学院 環境配慮型コンクリートを活用した子供向け海の教育プログラムの開発と実践

準グランプリ 出光興産賞 (賞金30万円)
・立命館大学 Uni-Comプロジェクト~地域単位で食品ロスを資源として循環させよう~

オーディエンス賞(賞金20万円)
・静岡大学 「日本のBOSAIを世界へ」教職を目指す学生たちによるSDGsへの挑戦

スタディツアー 下川町賞 (ツアー代金20万円)
・立命館アジア太平洋大学 ボーダレス弁当 ~宗教・主義をボーダレスに包括した弁当販売~

スタディツアー 瀬戸内町賞 (ツアー代金20万円)
・福井大学大学院 大量廃棄される酒粕を救う!腸(なか)からキレイにプロジェクト

選考委員特別賞(賞金10万円)
・北九州市立大学 排水溝用の油水分離装置の新規開発、回収した油の二次利用方法の模索

ファイナリスト賞 (賞金3万円)
・国際大学 COVID-19 の時代の教育におけるデジタル格差をなくそう
・立命館アジア太平洋大学 社会によりよい変革をもたらすアフガニスタンの小中高一貫校「サフラスクール」
・高千穂大学 SDGsや社会課題に取り組む企業と学生による就活プラットフォーム『エシカル就活』
・北海道大学大学院 大雪山国立公園の野営指定地の協働型維持管理の枠組み構築
・清華大学 真っ白キャンパスプロジェクト

コロナ禍でも「ピンチをチャンスに変えて」

 イベント後の交流会に、徳田美妃・DIALOG学生記者が「潜入」。受賞者に話を聞きました。

 立命館アジア太平洋大学の北村丞司さん(ファイナリスト賞)は各チームの提案の質の高さに驚いたそうです。「どのチームもレベルが高く、グランプリに選ばれてもおかしくないと思いました。多くの学びを吸収でき、大変よい機会となりました」

 清華大学の佐々木彩乃さん(ファイナリスト賞)は「真っ白キャンパスプロジェクト」に込めた思いを、こう話します。「21世紀は与えられたものから選択するのではなく、キャリアを創造する時代です。与えられた選択肢のなかから進路を選択した高校時代。行動範囲が広がり、様々な可能性と出合った大学生活の中で、高校生に何かできないかと思いました」

 グランプリだけでなく、オーディエンス賞も受賞した「日本のBOSAIを世界へ」の静岡大学チーム。2冠を達成した鈴木希実さんはこう語ります。「コラボレーションが大切です。自分の力だけでは解決できない問題があり、人と人がつながっていくのは素敵です」

 プロジェクトを進める上で新型コロナウイルスの影響もあったそうです。「オンラインで進める中で、直接話すことの重要性も感じることができました。その半面、話し合いや共有を頻繁に行うことができ、ピンチをチャンスに変えて取り組むことができました」

 副題は「教職を目指す学生たちによるSDGsへの挑戦」でした。教職を目指す大学生に向けて一言をお願いすると、鈴木さんはこう訴えました。「防災は、教育学の視点からこそ取り扱えるところも多くあります。目の前の課題に向き合いながら、ともにがんばっていきましょう」

あなたなら どうしますか?
内田早紀(DIALOG学生記者)

 あなたは、大学の食堂でアルバイトをしています。ある日、パートの方に「排水溝が臭いんだよね……」と、話しかけられました。どうしますか?

A 「ほんとですね、においますね……」と、同調する。

B 「掃除するのも大変ですよね、丸ごと替えたりとかできないんですか?」と、一瞬考えてみる。

C 「原因は何ですかね」と、調査し研究、解決に取り組む。

 この選択肢の中からCを選んだのは、北九州市立大学の山手健矢さんでした。ファイナリストのプレゼンを聞いて、私は彼らの「きっかけ」が仰々しいものでないことに、感動しました。私たちが日常生活で何げなく行う選択で、一番難しく労力がかかる選択が「行動する」ことだと思うからです。

 ファイナリストの写真撮影で、会場に響く「SDGs Action!」の声が耳に残り、「行動するか、しないか」の間にある大きな隔たりについて考えさせられました。自分の琴線に触れる、誰かから相談されるといった、些細なきっかけを軽んじることなく拾っていきたいなと思います。

気にかけないと気づかない
徳田美妃(DIALOG学生記者)

 「SDGs達成に向けて大学生は何に取り組むことができるだろう」

 「大学SDGs ACTION! AWARDS 2021」の結果発表の日は、そんな私の疑問がいい意味で裏切られた一日でした。課題解決の取り組みやアイデアは、どのチームも面白く、すでに実践を進めているチームも多くありました。

 大学生でもSDGs達成へ貢献できることが、プレゼン動画や当日の取材で体感できました。規模の大きい課題はもちろん、気にかけないと気がつかないような身近な課題に向き合っているチームもありました。周りに解決すべき、取り組むべき課題があることを理解し、向き合っていく姿勢が求められると実感しました。

 また、教育に関わるプロジェクトを提案したグループがいくつかありました。私は現在、教育学部で学んでいますが、このイベントを通して教育はどの分野にも関連することを改めて感じました。ほかの領域と連携して進めていくことで、より大きな成果が生まれることもひしひしと感じました。

 教育の持つ可能性を、意識して学んでいきたいと思いました。

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