しなやかに自分らしく あなたの挑戦に伴走する福田恵里さん:朝日新聞DIALOG
2021/07/05

しなやかに自分らしく あなたの挑戦に伴走する
福田恵里さん

By 寺澤愛美(DIALOG学生部)

 新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけにリモートワークが普及し、いつでもどこでも働ける時代になりつつあります。このワークスタイルの変化は、結婚や出産などのライフイベントを境にキャリアを断念してしまう女性が少なくないなか、もしかしたら働く女性にとって追い風になるかもしれません。働きたい、社会とつながっていたいと“挑戦する”女性を応援するSHE株式会社のCEO(最高経営責任者)福田恵里さんに思いを聞きました。

結婚・出産…キャリアを支援

——現在の活動を教えてください。

 SHEのCEOとして、ミレニアル世代女性向けのキャリア支援サービスを行っています。30代を目前にして、結婚や出産などを境に、「今の自分の働き方でいいのか」という悩みを抱えている女性が数多くいます。そんな方々が、自分らしく生きられるようなサポートを、人生やライフイベント全てに寄り添いながら行っています。

■SHE株式会社
 ミレニアル世代の女性向けにWebデザインやWebマーケティング、ライティングなど24種以上の分野のキャリア支援サービスを行う。2017年4月に設立し、国内外から累計3万人以上が受講している。表参道、銀座、名古屋に拠点を構え、オンラインとオフラインでサービスを提供している。キャリア&ライフコーチを手がけるSHElikesのほか、トータルビューティープログラムSHEbeautyなども新規に展開を始めた。
#シーライクス https://shelikes.jp/

——なぜミレニアル世代の女性にフォーカスを?

 ちょうど自分がミレニアル世代にあたり、自分が欲しいサービスを作っていたら、こうなったという感じです。2000年以降に成人を迎えた世代を「ミレニアル世代」というのですが、原体験として課題感を共有、共感しやすかったというのがあります。

 大学4年のときにウェブのデザインやプログラミングを未経験の女性に教えるスクールを立ち上げたのがきっかけになっています。

 特に若い女性がプログラミングやデザインなどの専門技術を学ぶ場がないと感じていて。「パソコンは難しそう」「テクノロジーって自分と遠いところにある」と感じる方に、クリエーティブの力で、かわいくてわかりやすい教材をそろえることで、アイデアを形にする術(すべ)を届けられるんじゃないかな、と始めました。

——「自分らしく生きる」とは、どういうことでしょうか。

 会社のビジョンとして掲げている「一人ひとりが自分にしかない価値を発揮して熱狂して生きる」状態、「自分の人生の手綱を握れている」状態が、自分らしく、私らしく生きることだと思います。他者からの承認ではなくて、自分が自分のことを信じられるように行動していくこと。そして自ら能動的に人生の選択を積み重ねていくことが大切だと思っています。そうして小さな成功体験を積み重ねていくことが、最終的に「自分ならできる!」というエフィカシー(有効性)やマインドチェンジにつながるんじゃないかなと。

とにかく行動 留学が転機

——福田さん自身がマインドチェンジを経験したことは?

 転機は大学時代の留学体験です。私、それまではずっと人に流されて、自分の意思で何かを選択することをしてこなかった。中高大も偏差値の基準だけで学校を選び、大学に入ってからもサークルとバイトに明け暮れる、みたいな。自分について考えたり、見直して行動したりすることを全然してきませんでした。

 そんななか、サンフランシスコに留学することになって。近くには、スタートアップの聖地であるシリコンバレーがあり、起業家やエンジニアの友達ができました。

 自分と同じ大学生でも「俺、いまInstagramのビデオ版アプリを開発してるんだよね」ってMacでカタカタとプログラミングをしていました。それを見て「めちゃくちゃかっこいい!」って思ったんです。自分が日々使っているスマホのアプリがこんなふうに作られているんだって。世の中に自分の信じるものをアウトプットして、人々の生活を変えようとしている人がいることに感銘を受けました。

 自分もスキルを身につけて、社会に何らかの良い影響を与えられる人になりたいと、帰国後、デザインやプログラミングを独学で学び、スクールを立ち上げました。

——自己肯定感は、留学前後でかなり変わりましたか。

 全然違いますね。流されていたころは、自分の選択に自信が持てませんでした。スキルも経験も自信も、何もなくて、自分なんかが起業できるなんて全く思っていませんでした。でもいつからか、成功するか分からないけれど、自分に失うものは何もないなって開き直って。とにかく「行動の打席に立つ」ことを留学後からやり続けた結果が今につながっているなって思います。

留学中の1枚=福田さん提供

「私なんか、って言わなくなった」

——「新時代を勇敢に生きる術は『しなやかさ』だと思う」とよく話されていますが、しなやかさとは?

 変化を恐れずに自分自身を変革し続ける。そのなかで、自分の可能性を拡張し、多様な人々と溶け合っていくことだと思います。良い大学に入り、良い会社に就職し、子どもを授かって、家を持って……。これが社会的成功だと思われていた時代から、正解がない時代に変化してきています。

 一辺倒な価値観からそれぞれの幸せの形が多種多様になってきている。過去の成功体験にすがったり固執したりしていては、この時代を乗り越えていけない。時代に合わせて、過去の自分を捨て、アップデートしていくことが求められると思います。

——福田さんご自身がアップデートし続けてきた結果が今。CEOとしてのやりがいは?

 スクールの受講生、SHEメイトさんからダイレクトにご意見を受けたときが一番うれしいです。目に見える成果はもちろんですが、やはり心の変化に触れたときですね。

 子どもを産んで、仕事を辞めて、家で子どもと向き合って。もちろんそれも幸せなのだけれど、社会とのつながりが絶たれ、「自分は社会から必要とされる存在なのだろうか?」と自信を失ってしまう方がいます。そんな方が、新しいことを学び、他者との関わりを取り戻していくなかで、「『私なんか』って言わなくなりました」「いま、子育てをしながら、自分にできる範囲の小さい案件だけれども仕事を受けることができています」というお声を聞くことがあって。

 自分を取り戻すというか、自分をちゃんと受容して、自分らしい幸せを見つめる。そしてそれを実際に達成するために行動をしている人の話を聞くことができると、SHEをやっていて本当によかったなって思います。

産むのは女性 だから、でも

——妊娠、出産を経験して、何か変わったことは?

 それまでは正直、ジェンダーギャップを感じたことはそんなになかったんです。でも自身の妊娠、出産を通して、生物学的に女性しか子どもを産めないことによる、身体的ギャップがものすごくあるなと感じました。私自身、つわりも出産もかなりハードで……。肉体的につらい時期が続いてしまうと、「仕事を頑張りたい」って言っていられなくなってしまうんです。このことは、女性がキャリアを続けていくには、かなりビハインドになってしまうなと。子育ての分担など解決しうる話だけではないところに、ハードルがあると改めて思いました。

 まだまだ社会的に「ママが子どもを見るもの」という先入観が払拭(ふっしょく)しきれていないなと思います。保育園からお便りを渡されるのもママだし、子どもの体調不良の時に最初に連絡が来るのもママだし。「女性が子育てをするもの」っていうのが、まだぬぐいきれていないんだなと身をもって体感しました。SHEから変えていきたいなって思います。

個性を育む 教育から変える

——さまざまなライフスタイル、多様性が生まれています。

 女性のサービスを扱っているため、社内ではどうしても女性の割合が大きくなっています。価値観や属性が似通った人たちだけでいると、知らないうちにその価値観が正しいと思い込んでしまうリスクをはらみます。今後は組織として男女を半々にしたり、年齢、国籍もバラバラな方々を採用したりしようと思います。

——SHEとして携わりたい社会問題は?

 最終的には子どもの教育に携わりたいと思っています。私自身、滋賀県の田舎で生まれ育ってきたなかで、教育に違和感を覚えることがありました。

 ちょっと個性が強い子が人と違うことをすると、周りに疎まれたり、先生に注意されたりする。それによって自分が凡庸になっていったなと感じています。あの時、自分の個性や、自分がこうありたいと思うことを尊重してくれるような環境があったら、自分のアイデンティティーがもっと変わっていただろうなって思うことがよくあります。

 理想的なのは、子どものころから自分らしさを育めて、それを受容してもらえる教育システムをつくることです。自分で正解を導き出していく力、自分で人生を生き抜いていくような力を養える仕組みをつくりたいですね。

 これからの日本の社会、世界の未来を担っていくのは子どもたちだと思います。子どもの未来を変革するような教育をやりたいし、人生のミッションというか、SHEの中で最終的に成し遂げたい夢ですね。

会いにいこう 私も夜行バスで

——コロナの影響で留学の機会が奪われた学生も多いなかで、「いまできる」視野の広げ方は?

 大学生は何も失うものがない。自分が会いたいと思う人にたくさん会いにいくことを、はじめの情報収集としてやってみるのがいいかなと思っています。本を読むことも大事だけれど、自分が素敵だなと思う大人に会って、どういう経緯でそこに至ったのかを聞いていくと、自分に必要なポイントが効率的に得られると思います。

 学生時代、大阪の大学に通って、自分が会いたいと思う東京の人にTwitterでDMを送りまくって、関西から夜行バスに乗って会いにいきました。女性起業家やビジネスで活躍している女性を中心に10人以上、思考に憧れるなって方に会いました。その人たちの生き方、価値観が、自分の人生のヒントになったとものすごく感じています。

 自分でリーダーシップを発揮して何かを動かす経験ができると、より良いのかな。YouTubeやSNSに素材はいくらでも落ちているから。インターンとかで大人のもとで働くことは近道ですが、「まだない正解を導く」「自分の頭で考えて選択する」って力がつききらないと思います。何もないところから「これをやりたい」「これが課題だ」と思うことをやってみるのはとても価値があるなと思っています。

「女性だから」から解放する

——10年後、女性を取り巻く社会はどうなっていてほしいですか。

 今は時代の転換点だと感じています。やっと女性の活躍に企業や世論が動き出していて。だから10年後には真の意味で、女性たちが「アラサーだから」「ママだから」という固定観念から解放されていて、自分らしさに向き合って、一人ひとりが幸せに生きられる状態になっているといいなと思います。

 それと、日本初の女性総理大臣が出てきているといいな。

——福田さんご自身は、10年後どうなっていたい?

 会社を始めたからには、このビジネスをより大きく成長させたい。そしてSHEのビジョンや概念が新しい時代のカルチャーとして根づいていくといいなと思います。自分たちの成長が社会を変えることにつながっていると信じています。だからこそ、小さく収まらず、社会の公器となることを目指して活動していきたいです。

私よ、変われ きっかけは目の前にある
寺澤愛美(DIALOG学生部)

 女性の社会進出、働き方、ジェンダー、教育、メイクアップ——。どれもあまり関連がないように思えて、突き詰めて考えていくと「多様性」という点で結びつきました。これからは、多様性が認められ、今までカテゴライズされてきたものの境目がなくなって、さまざまな価値観が溶け合っていくのではないでしょうか。

 時代の転換期である今、過去にとらわれず、常に新しいものを取り込んで、自分を柔軟に変革していくことの重要性に、今回のインタビューを通して気づかされました。どこに住んでいても、どんな性別でも、いくつであろうと、「自分らしく」やりたいことに挑戦できる、そんな社会をつくっていきたいです。

 時代の変化や新しい出会いに「しなやか」に対応し、より良い未来のために歩み続けている福田さんに、私はひとりの女性として憧れを抱きました。自分の価値観を180度変えるような出来事は、案外自分の身の回りにあるのかもしれません。

 それに気づけるのか、見つけようと行動してみるのかは、自分次第だと感じました。何かワクワクするものに出合ったら、その気持ちに正直に、思い切って飛び込んでみる、そうして自分の視野を大きく広げていきたいです。


福田恵里(ふくだ・えり)

 1990年、滋賀県生まれ。SHE株式会社 代表取締役/CEO/CCO。滋賀県立膳所高校から大阪大学へ。米国留学を経て大学4年生のとき、女性の初心者向けにWebデザイン講座などを立ち上げ、自ら教壇に立つ。その間、楽天、サイバーエージェントなどでインターンシップを経験。卒業後、リクルートホールディングスを経て2017年にミレニアル女性向けのキャリアスクールを運営するSHEを設立。2020年4月には、産休・育休と同時に代表取締役CEOに就任。最近ではWebデザインやWebマーケティングなどのキャリア支援に加え、トータルビューティープログラムなどを新たに展開。マルチに活躍する。

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