木の可能性にかける 二人だからできる内山浩輝さん・陣脇康平さん×DIALOG学生部:朝日新聞DIALOG
2021/09/09

木の可能性にかける 二人だからできる
内山浩輝さん・陣脇康平さん×DIALOG学生部

By 寺澤愛美(DIALOG学生部)

 「森林問題」と聞くと、木が切り倒され、自然が失われているというイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。しかし、日本の現状はその逆。森林資源の貯蓄が増えすぎたゆえに、問題が発生しています。日本の森林を守るためには、木を切って使っていくことが必要とされています。「もうからない」と思われている林業に新たな可能性を見いだし、木の需要創出に取り組む林業スタートアップ、株式会社konoki共同代表・内山浩輝さん(23)と 陣脇康平さん(25)に話を聞きました。

イノベーターセッション DIALOG学生部は、若い起業家やアーティスト、社会活動家など、明日を切りひらこうとする人たちを定期的に招いています。活動への思いや生き方、めざす世界を共有。その果実をDIALOGウェブサイトで発信します。

森を味わう 需要を広げる

——事業内容を教えてください。

内山 「日本の森で、社会を豊かに。」をビジョンに、新しい森林需要の創出に取り組んでいます。

 今、日本では、使うべき木をどんどん正しく使っていかなければならない状況があります。一方で、木の使い道は、建築材や家具、木工雑貨などに限定され、需要が硬直化してしまっています。「もっといろんな形で幅広い産業に入り込んでいけるのではないか」と感じ、木を使った新しい製品を生み出すことなどで、新たな需要の創出に挑戦しています。

 具体的には、国産ヒノキのバスグッズや森林フレーバーのシーシャ(水たばこ)、アロマ水など。ほかには、木でお茶を作るという世界で初めての取り組みもしてきました。最近は、自宅で手軽にお酒の樽(たる)熟成を楽しめる、家庭用の国産ミニ樽と樽フレグランスというアイテムを作っています。自分だけのこだわりの一杯が作れて、新しい家飲みの楽しみ方を見つけてもらえると思います。

切るべき木 切られず放置

——林業を取り巻く状況を教えてください。

内山 まず、日本と世界では課題が大きく異なります。世界では森林の過剰利用による問題が起きています。みなさんが想像する森林伐採の問題ですね。一方、日本では全く逆の問題が起こっています。木を切らなすぎて管理できていない、未利用による問題です。これは、時代背景をひもとくと分かります。

 戦時中は燃料としての木が必要とされ、どんどん伐採が進みました。戦後は復興需要によって、さらに木材が必要になりました。しかし、過剰伐採によって木が足りなくなり、高度経済成長期には政府主導で拡大造林が行われました。

 とはいえ、木が十分に育つには数十年かかり、木材不足をすぐに解決することはできません。当面は外国産の木でしのごうと、木材の関税撤廃が行われ、安い価格で木材が国内に入ってくることになりました。

 また、燃料革命によってガス・石油の利用が広まり、木材が必要とされない時代になりました。木造建築の減少も相まって木材の需要は頭打ちになり、高度経済成長期に植えて成長した木の行き先が失われてしまったんです。

 木材の単価はどんどん下がり、多くの林業従業者が廃業に追い込まれてしまいました。結果、山を管理する人が足らず、山は手入れされることなく放置されて森林状況が悪化してしまっています。

木材供給量及び木材自給率の推移(林野庁、2020年公表)

——業界の一番の問題点は。

内山 森林資源の需要が足りないことだと思います。もちろん、植林や機械化で伐採の生産性を上げていくことも大切だけれども、やはりアウトプットする先がないから価格が下がってしまう。ここがボトルネックだと思います。だからこそ、新たな需要を作り出していくことが重要だと思っています。

虫嫌い 林業から遠かった僕が

——なぜ、そのような産業に足を踏み入れたのですか。

内山 起業を思い立つ前は、虫嫌いで森に入ったことすらなかったんです。林業なんて、遠い存在だと思っていました。

 しかし、去年の3月、私が在学している大学の学長に、一人の林業家さんを紹介してもらいました。それが今の林業パートナーの三浦妃己郎(きみお)さんです。三浦さんから、衰退する林業の現状や、まだまだ秘められた魅力や可能性を教えていただき、山のことにとても興味を持ちました。

 そこから、私もチェーンソーを持って実際に木を切らせてもらい、山仕事をお手伝いさせてもらいました。すると、もっと有効活用できる資源が山の中に放置されている状況を多く目にして、宝の持ち腐れ状態に気づいて……。森林資源の有効活用で世の中が求めるものを企画し、カタチにすることこそ、外部の視点がある自分たちだからもたらせられる価値だと思い、本格的に事業として取り組もうと決意しました。

——二人の介在価値は。

陣脇 業界に深入りしておらず、マーケットの視点を持ち合わせている点、営業力や発信力がある点がこれまでの業界プレーヤーにない強みだと思っています。林業の世界では、外向きに発信していくことが苦手な人が多いのが現状です。だからこそ、私たちの持つ強みを生かすことで、これまでにない新たな風を起こせるのではないかと思っています。

正解が分からない日々 だから

——壁を感じたことは。

陣脇 konokiがなすべきことが何なのかについては、創業時から悩み続けてきました。森林課題の根深さに対して、何が最適解なのか、どんな戦略を描けばいいのか。「これでいける」と腹をくくったはずが、1週間後には全く自信をなくしてしまう。そんなことの繰り返しですが、悩み続けることで、行動し続けることで、徐々に未来が見えてきている感覚はあります。

内山 日々分からないことがあって、その壁を乗り越えていく上で、二人でやるからできるのかなと。得意・不得意が分かれていて、異なるタイプの人間なので、多角的な視点で話し合う環境があるからこそ、乗り越えていけるのだと思います。

「このままではダメ」焦り

——お二人の経歴は。

内山 小6のころ、エジプトに行く機会がありました。そこで初めてスラム街を目にした経験から国際協力に興味を持ち、高3まで自発的に活動していました。しかし、大学のAO入試を機に自分の無力さを痛感して、国際協力の夢を見失って抜け殻のような状態のまま、APU(立命館アジア太平洋大学、大分県別府市)に入学しました。

 大学は、世界90カ国から学生が集まる超グローバルな環境だったので「この環境を誰よりも生かしてやろう」と思って様々な活動を行いました。

 ただ、1年が終わるタイミングで、大学生が一堂に会する「G1カレッジ」というイベントに参加する機会があって、行ってみたら、自分に絶望したんです。

 ほかの大学生は自分のやりたいことや明確な目標に向かって突き進んでいるのに、自分はアクティブに活動していること自体に満足していて。「このままではダメだ」と思いつつも、目標がなく焦りを感じたんです。

 必死に人生の目標を見つけようと、いろんな生き方を勉強して、出会ったのが起業という選択肢でした。それからは、大学の起業部に入ったり、ベンチャー企業で支社の立ち上げを経験したりしました。

サッカー・よさこい その熱量を

陣脇 学生時代はサッカーやよさこいに明け暮れる日々を送ってきました。大学院時には、海外でのバックパッカー旅行、スタートアップやメガベンチャーでの就労と、「やってみたい」と思うことには全部飛び込んで納得いくまでやっていました。

 幼少期から好きなように生きてきて、ピカピカのキャリアなんて全くなく、いわゆる学生起業家や意識高い系みたいな人のことを毛嫌いする側だったんです。でも、昔から自信家ではありました。「オレは人とは違う。才能がある」という自負は、ずっとどこかにありました。

 大学3年から地方で就活を始めて、当時は「大企業に入れば人生勝ち組だよね」といった風潮を信じきっていました。でも、実際に大企業の社会人に会ってみて、理想とのギャップがすごくあったんです。「何のために自分は社会で働いていくんだろう」って考えたときに「自分が生きる場所はここじゃない」って思いました。

 大学院に進んで、たまたま出会ったのがバイトマッチングアプリを手がける株式会社タイミーの小川嶺代表でした。

 当時は「スタートアップ」って言葉すら知らなくて。彼が、自分の知らない世界、自分が一生かかっても到底見ることのない景色を見て生きてるんだなってことだけ分かって、自分が情けなくてたまりませんでした。

 「大学を休学して、何かチャレンジしてみたい」と伝えると、タイミーの立ち上げに誘ってもらって。そこで内山とも出会いました。あれがちょうど2年前。その日から人生は百八十度変わりました。

——起業を決意できたのは、なぜ?

陣脇 まっすぐサッカーとよさこいで生きてきて、これ以上なくやりきることができました。だからこそ、社会でもこれまでと同じか、それ以上の熱量で自分の力を社会に生かす、その場所を探していたんです。

 右往左往しながら、一人の林業家との出会いを通じて日本の木の魅力や、森林課題を知りました。ここなら力を存分に発揮できるな、と直感的に思えたし、「今日より前向きになれる未来(あした)を創(つく)る。」という自身の思いを体現していけると確信したので、決断は早かったです。

補い合って前へ だから負けない

——二人でやる意味は。

内山 一人って限界があるのかなって思います。長所の異なる二人が、不足を補い合えるのがいい。一つのプロジェクトを進めるにしても、自分一人の考えで進めると「大丈夫かな?」って思ったり、気持ちを一定に保つのが大変だったりします。二人でやれば、違う視点で意見が素早く入ってくるし、事業を深く理解した上で意見をぶつけ合える関係性がメリットだと思います。

陣脇 林業課題に取り組むにあたって、二人で補い合うのが一番の方法だと思っています。個々のレベルはそこまで高くないんです。一人では、大した会社も、大した貢献もできないけれども、二人で一つになることで、どこにも負けないような会社を作れると思っています。得意分野の違うお互いが補完し合い、掛け合わさっていく中で、最大公約数になっていくと思います。

新しい風は、ときめきから
寺澤愛美(DIALOG学生部)

 「林業の問題を考えるヒントは、日常のどんなところに転がっていますか?」

 私はこんな質問を二人にしてみました。

 「サステイナブルな考えが先行していれば、林業の問題について考える必要はないよ」「何かにときめきを感じたときは、そのリアルに入り込んでみて」と答えてくれました。

 問題解決への思いが先に来て、行動を変えていくのは素晴らしいことだと思います。でも、そこには限界があることに気づかされました。肩に力を入れて、課題解決せねば!と頭を働かせてばかりでは息苦しいな、と。

 何かひかれるものに出会ったら、その裏側をのぞいてみる。そうすると、複雑に絡み合う社会問題の存在に気づいたり、好きだからこそできる関わり方が見つかったりするかもしれません。そして、好きだからこそ、よりその問題を、現実味を伴って、自分ごとに落とし込むことができると思います。

 自分の好きなことに携わることが、結果的に社会問題の解決につながるような、得意な分野から、社会を眺めることにつながるような、そんなサイクルを二人は作ろうとしているのではないでしょうか。

 二人の話を聞いていて、兄弟のような、親友のような、ライバルのような、そんな印象を受けました。お互いの良い所も悪い所も全て引っくるめて分かり合えているのだと思います。そんな関係性が垣間見えて、うらやましくなりました。

 きっと、この二人なら、林業という世界に、新しい風を巻き起こしてくれると思います。


内山浩輝(うちやま・こうき)

 1998年生まれ、福岡県出身。西南学院高等学校卒業、立命館アジア太平洋大学(APU)アジア太平洋学部在学中。大学2年時にAPU起業部(出口塾)へ入部、株式会社タイミー福岡支社立ち上げ、独立系VC FVenturesインターンに従事。2021年4月に株式会社konokiを創業。

陣脇康平(じんわき・こうへい)

 1996年生まれ、福岡県出身。小倉高等学校、長崎大学卒業。2019年、株式会社タイミー福岡支社立ち上げに従事。2020年 株式会社サイバーエージェントでメディア営業に従事。2021年4月に株式会社konokiを創業。

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