カノジョの「アレ」の周期、知ってる? 男女で語った「LOOKING FOR ‘THAT’」朴監督×DIALOG学生部:朝日新聞DIALOG
2021/09/11

カノジョの「アレ」の周期、知ってる? 男女で語った
「LOOKING FOR ‘THAT’」朴監督×DIALOG学生部

By 吉武かおる(DIALOG学生部)
映画「LOOKING FOR ‘THAT’」から

 生理について「アレ」という言葉を使って表現したことはありませんか?

 生理にまつわる、暗黙の了解かのようなタブー意識。

 女性同士であっても生理について話すことはためらってしまう、という方もいるのではないでしょうか。ましてや男女で生理について語らうなんて、かなり珍しい状況でしょう。

 今回、私たちDIALOG学生部は生理にまつわるタブー意識に向き合ってみようと、まさにその「珍しい状況」を実現させてみました。

 生理にまつわる女性や男性の本音を描いた「LOOKING FOR ‘THAT’」(「アレ」を探して)というドキュメンタリー作品を学生メンバー有志で視聴し、内容について語る会を開催したのです。

 そこへはなんと監督の朴基浩さんも駆けつけ、監督と学生たちとで男女の垣根を越えて生理についての考えや葛藤を話し合いました。

LOOKING FOR ‘THAT’
 「THAT」つまり「アレ」。「私」にとっての「アレ」は母と姉からよく聞くものだった——。
 「社会全体が、女性の生理を無視しているような気がした」。そんな問題意識から、男性の視点でインタビューを重ねるドキュメンタリー。「あなたにとって生理とは何?」と女子会で問うことから始まる旅。たどり着いた答えは、日本社会の深層に迫るものだった。

プールの授業で 女子高のトイレで

 最初のテーマは「ゴールはどこ?」。生理と社会……。どういう状態を目的地に設定し、どうたどり着いたらいいのか、具体的に話し合っていきます。

 初めにこれまでの生理に関する理解不足を感じた経験について聞いてみました。

A子 学校のプールの授業を生理で欠席するときです。男の先生が相手だと言いづらさがあるので、「腹痛でプールに入れません」というように、ぼかして伝えることが多かったんです。ただ、それだと先生から「おなか痛いの。トイレ行ってくれば?」と返されることもあり……。もどかしさを感じました。

B子 私の所属していた女子高では、生理用品がトイレに置いてありませんでした。あったとしても有料。「女子高なのになんで?」と思っていました。

初経でお赤飯…父もいるのに

 次にどういう相手にならば生理について話せるのかについて聞いてみました。

 すると男性参加者のひとりは「パートナーとは話すようにしている」。これには朴さんも「大事だし、必要なことだ」とうなずきます。

 女性参加者に聞いてみると「家族になら話せる」という意見が複数あったものの、「家族でも男性には話せない」という声も。

 「初経のときに父親や兄弟もいる家族の食卓でお赤飯が出たことが気恥ずかしくて嫌だった」という意見に大きくうなずく人もいました。ただ、そもそも気恥ずかしさの由来は「男性陣が気まずそうな空気を醸し出したから」とも振り返ります。

 年齢とともに、話せる相手が変わってくることもあるようです。「女子高ではあったけれど、友だち同士で生理について話すことはなかった」と話す参加者。大学生になってから、やっと親密な友だちとなら話せるようになったといいます。

知ってほしい 親しい人には

 では、理想としてはどういう相手に生理について知っておいてほしいのか

C子 パートナーには、やはり把握していてもらいたいです。

A子 学校の先生や親しい友人には知っておいてもらいたいかな。例えば体調不良で保健室に行く状況になったとき、事情をわかっていてもらいたい人たちです。

心身に不調 休める社会に

 これから社会に出ていく大学生だからこそ、将来の職場での配慮を心配する声も上がります。

B子 職場の関係者には把握してもらいたいなと思います。PMS(月経前症候群)は精神面にも影響して、うつ状態になりやすいといわれています。メンタルヘルスに配慮できるように職場での理解は必要だと考えます。信頼できる女性社員に相談できる機会や、何人かで話せるコミュニティーがあったらいいなと。

D子 男性が生理の全容を完全に理解するのは難しいだろうけど、最低限、女性が生理によって体調不良になって学校や仕事を休むという行為への理解はしてほしい。月経前はパフォーマンスが万全じゃなかったり、感情のコントロールが難しくなったりします。学校や仕事を休むのは、心身の不調による影響から自分だけでなく、相手のことも守るための手段なのです。

E子 生理も含めて、そもそも心や体に不調があったときには休める社会であってほしい。休んでいる人を支えられる社会がいい。

低用量ピルの服用について語る大学生(当時)=映画「LOOKING FOR ‘THAT’」から

#NoBagForMe 選ぶ自由と権利

 学生たちの多様な意見を受けた朴さんは「選択肢がある」というのが一つの理想的な状態ではないか、と話します。

 例えば、生理用品を購入する際の選択肢の多様化を目指す#NoBagForMeプロジェクト。「No Bag For Me」は「紙袋いらない」。2019年、SNSのインフルエンサーや企業が一体となって始まった運動です。小売店で生理用品を購入すると中身を隠すために紙袋に入れられることが多いですが、そうした「生理へのタブー意識」に一石を投じるものです。

朴さん 紙袋で生理用品を隠したい人も、隠したくない人もいる。会社を休みたい人も、平気な人もいる。それなのに片方の選択肢しかない、ということが問題なのだと捉えています。何が正解かはさておき、選ぶ自由と権利があることが大事なのではないでしょうか。

朴基浩(ぱく・きほ)  映画監督。立命館アジア太平洋大学(APU)卒業後、通信制や定時制の高校生が卒業後に進路未決定にならないための活動を展開するべく、NPO法人D×P(現:認定NPO法人D×P)を設立。2015年9月に共同代表を退任後、映像制作を始める。監督を務めたCMがメ~テレと宣伝会議が共催する「モノがたりアワード」でグランプリを受賞。現在は多ジャンルの映像制作や構成を手がける。

男が制作「葛藤しかなかった」

 ここで、男性特有の捉え方について聞いてみることに。

 まず、男性として生理にまつわるドキュメンタリーを制作した朴さん。取材の過程で葛藤はあったかを聞くと、「それはもう! 葛藤しかなかったですよ」との答えが。男子学生メンバーも、生理に言及することには慎重なようです。

朴さん 生理についてお聞きすることは、一歩間違えるとセクハラにもなります。言葉選びや、どこまで踏み込んでいいのか気をつけながら取材しました。質問していいラインを探りながら、まさにドアをノックするように会話を進めました。

A男 生理とはこういうもので、様々な症状があり、対処するためにこういう薬がある……などの正しい知識は自ら学んでおくべきだと思います。ただ、それを個人への対応に持っていくときは、やはり慎重さが必要です。症状の種類や程度、それを周囲に知っていてほしいか否かは、人によって様々だからです。個別に、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大事なのかなと思います。

B男 生理について男性が知ることは必要だと思います。ただ、その知り方については難しいものがあります。

 例えば、やみくもに相手に尋ねてしまうのは良くない。セクハラにもなってしまいます。生理に関する話題は女性にとってパーソナルであり、センシティブな話です。男性がいくら気をつけたとしても、不快にさせてしまう可能性がある以上、それは配慮に欠ける行為なのかなと思います。

 だから、こちらから語りかけるというよりは、聞く、受容するという姿勢を持つのがいいのではないか。相手が心理的安全性を感じて、いつでも相談できるような態勢でいたいと思います。

生理用品 着けて分かった

 生理を経験できない男性。どういう姿勢で女性の生理と向き合っていけばいいのでしょうか。朴さんは「精神的な不調や腹痛を、男性はどう頑張っても体験できない。だから、1週間くらい生理用品を着けて生活したらいいんじゃないですか」と語ります。

朴さん いざドキュメンタリーの撮影を始めようと思ったときに、僕は実際に生理用品にトマトジュースを垂らして着用してみました。ナプキンを着けて生活するのってかなり不快なんです。生理用品だけでもこんな体感なのだから、体調不良も含めた女性の生理の大変さなんて、自分には到底知りえないなと思いました。

 1カ月のうち生理って5〜7日。始まる1週間前から不調となる方も多いですよね。つまり、多くの女性は1カ月の半分以上が体調不良によりブロックされている。快活でいられるのは1、2週間程度しかないなか、男性と同じだけ働けっていう社会は男性の体調を中心としたものだなと思います。体調に合わせてもっと柔軟に休息が取れるようになるべきです。

 とはいえ、社会は一朝一夕には変わりません。現状でできることといったら「いま、どうしたらいい?」とか「できることがあったら言ってね」とか、男性からしっかりとコミュニケーションを取ることです。その過程で失敗も困難もあるだろうけど、理解しようとするという試みや歩みに意味があるのだと思います。

PMSなどに悩む女性とそのパートナー=映画「LOOKING FOR ‘THAT’」から

性教育 男女別だし深くないし

 さて、男性なりの葛藤を知って、今度は男女の垣根を越えて生理への理解を深めるためには何が必要かについて話し合いました。

 学校での性教育の充実、マスメディアの役割など、様々な論点から意見が交わされました。

 まず「学校で、より公平で充実した性教育を行っていく必要がある」という意見。例えば小中高で生理について学習するとき、男女別々の部屋に分けられた経験を持つ参加者が何人もいました。

 また、そうした保健体育の授業でも「生理については形式的な扱いで、いまいち踏み込めていなかった」という指摘も。ある女性参加者は、学校では深く教わらず、自分で調べてやっと知識を得た経験を語ります。

B子 PMSについては、自分で調べて初めて正しい知識を得ました。男性も女性も学校教育でもっと学べたら理解度が向上し、社会全体の理解につながるんじゃないかな。男性が100%理解するのは難しいかもしれないけれど、理解度の伸び代はまだまだあると思います。

F子 男子とは「アフターピルっていつ使うもの?」と聞かれた流れで生理の話題に派生していくこともあったり……。そういう場面でも肝心な話には踏み込みにくく、その原因にはお互いの知識不足が根底にあると感じます。

 知識の補填を個人の自己学習や意識改革に任せていては、社会全体に変革を起こすのは難しい。やはり、学校での性教育から変えていくアプローチが有効だと思います。

不妊治療を経験した女性=映画「LOOKING FOR ‘THAT’」から

ドラマ・映画…言っちゃいけない?

 次に、マスメディアでの扱いについても意見が交わされます。「マスメディアは大きな役割を担うことができる」と、女性参加者が切り出します。

G子 ドラマ、映画、ニュース、トークショーなどでは、生理についての議論を目にすることはあまりありません。「誰も口にしないってことは、言っちゃいけないことなのかな」。こうした認識が積み重ねられて、タブー意識というものは醸成されていくのではないでしょうか。マスメディアは、生理へのタブー意識を生み出すことができる一方、積極的に理解をリードしていくポテンシャルもあると思います。

H子 オリンピックでも、女性アスリートがあれだけいたら生理の人もいただろうに、ニュースでは耳にすることはありませんでした。ドラマ、小説でも生理についてはあまり言及されません。日常において生理ってとても身近なものなのに、あえて隠されているということが、理解が深まらないベースにあるんだろうなと思います。

朴さん YouTuberだと生理について話してくれる人はいても、テレビではまだまだ表現の一つとして盛り込まれていないですよね。ちまたの人気ドラマで結婚、出産、仕事など生活についてのあらゆる場面が描かれていても、生理の話だけはめったに登場しない。メディアであまり語られない以上、生理について知識を共有するためには周囲の人と話せる環境がとても重要だと思います。

性的な話ではない これは大事

 理解を深めていく過程で留意してほしい点についても指摘されました。

H子 「生理って大変だね」「女性ってかわいそう」というように、同情するべき存在とされるのは嫌だなと思いました。女性としてくくるのではなく、一人ひとりに向き合ってほしい。女性同士でも同意できない議論はあるし、個人個人で捉え方も症状も違うのだから。

朴さん 生理って別に性的な話じゃないということも指摘しておきたい。性別の垣根があるものではあるし、生殖に関わる話だけれど、断じて「性的な」話ではない。微妙な違いだけれど、これはすごく大事な点です。

女子会で目にした生理用品=映画「LOOKING FOR ‘THAT’」から

タブー視→理解不足 悪循環

H子 「生理への理解が足りていない」とは思っていましたが、その認識が漠然としていたことに気づきました。具体的に議論を深めていく中で、自分が実際にどういう場面で何を話したいのか、初めて考えました。

 こうした女性って、実はほかにもいたりするんじゃないかな? タブー視が生理を語りにくくしているし、語りにくいから理解も深まらない、という悪循環がありそう。

F子 「生理を完全に公にオープンに語る必要がある」と強く思っていましたが、必ずしもその必要はないかもしれないと気づいたことが大きな変化です。

A男 女性の中にも、生理について知ってほしい人と知ってほしくない人がいることを知りました。今後は、人によって捉え方が異なるという前提を理解した上で、コミュニケーションを取っていこうと思います。

身近な人と話すことから

C男 パートナーと一緒に、この映画を見たいと思いました。映画の内容や一般論については知識として知っておいた上で、目の前のパートナーはどうなのか、ちゃんと知ろうと思います。

朴さん 僕は、女性の立場に完全に立つことはできなくても、ほんの少しでも寄り添えるような男性が増えればいいなと思っています。「生理って何?」という状態の男性は、可能であれば今すぐ知識を身につけてほしいですね(笑)。

 ただ実際、ほとんどの人は生理の話には興味がないだろうとは思います。僕はよりたくさんの人に知ってもらうために映画を通して伝えてみるけれど、それだけでは社会全体の意識変革ができないというか、なんとなくある「空気」がなかなか変わらない。

 やはり一番効果的なことは、みなさんが身近な人と話すことだと思うのです。パートナー、家族、友人……。身近な人に、ささいな話でもしてみることから始めてくれるといいな。

多様さに触れる 他者に近づく
吉武かおる(DIALOG学生部)

 映画を見て議論を交わす今回の企画。参加者それぞれに、新たな発見があったようです。

 私自身、生理について家族以外と話してみたのは初めての経験でした。実際に話してみると、意外な意見や、考えたことがなかったような論点がありました。多様な考え方に触れることの意義を改めて感じます。

 これまでは、生理が不自然に隠されていることに対する違和感を抱えつつ、無意識に隠してしまっている自分もいました。他者との相互理解を深めたいのならば、その人の日常について正しく知っておくのは重要なこと。生理もまさにその「日常」の一部であるのだから、隠すことなんてないのだなと気づき、以前までの自己矛盾がクリアになった気がします。

 ただ、「完全にオープンに話す方向が理想」と決めつけてはいけないことには留意したいと思います。「オープンに話したくはない」という人のニーズが踏みにじられてしまうからです。誰もが抑圧されることなく望む選択肢が選べる、という状態が理想なのだと思います。

 このような話し合いの場が「珍しい状況」ではなく、「普通」の光景となる日が来るとしたら、それは一人ひとりの行動の積み重ねの賜物(たまもの)。私自身、そんな未来に向けた小さな行動を始めていこうと思いました。

「女性の問題」と片付けない
イベントを企画して 関ゆみん(DIALOG学生部)

 生理に対するタブー意識や偏見は「女性の問題」としてではなく、社会に生きる一人ひとりの問題として捉えられることが必要だと強く感じてきました。

 普段、生理について語り合うことの少ない私たち学生が、映画鑑賞やディスカッションを通して、そのような問題に対してどのように向き合っていくべきか、性別という垣根を超えて、自由に語り合える場にしたいと思い、今回のイベントを企画。当日、司会も務めました。

 一人ひとりの生理の症状や生理に対する捉え方は異なりますし、わかり合えない部分があるのも当然だと思います。でも、だからこそ、互いを尊重し、対話し、理解しようとし続けることが、性別に関係なく、すべての人にとって大切なのではないかと改めて気づくことができました。

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