環境・地域・企業すべて良し! ストローが吸い寄せた循環ビジネス平間亮太さん:朝日新聞DIALOG

環境・地域・企業すべて良し! ストローが吸い寄せた循環ビジネス
平間亮太さん

By 三嶋健太郎(DIALOG学生部)

 サトウキビ由来の生分解性ストローなど、廃棄物など不要とされるものに価値を加えて生まれ変わらせるアップサイクル商品の販売、そして回収までを手掛ける企業4Nature。ミッションは「ビジネスの力でバランスの取れた優しい世の中に」。代表の平間亮太さん(30)は非営利の環境改善活動が多い中、あえてビジネス化にこだわっています。ストローを取引先へ卸して収益を得る一方、実はストローの使用量が減ることを願っているという平間さん。そして、モノの循環を越えた先にある「地域循環の促進」に、並々ならぬ思いと努力がありました。平間さんが目指す循環型社会のカタチとその道筋に迫ります。

4Natureの取り組む3分野と事例
資源循環 生分解性ストローなどを開発・販売
地域循環 地域の生ごみを共同で堆肥化・活用/農作物を栽培・共有/ファーマーズマーケットを運営
循環サービス 資源循環と地域循環を掛け合わせた循環の仕組みを構築

サトウキビ由来の生分解性ストロー

資源・野菜…地域で循環

——4Natureの事業内容を教えてください。

 大きく分けて三つの分野に取り組んでいます。

 一つ目は「資源循環」です。具体的には生分解性のサトウキビストローやフォーク、スプーンなどのカトラリー、また現在は中断していますが、コーヒーかすを含んだプランターなど、アップサイクル商品の開発・販売をしています。

 二つ目は「地域循環」。これは地域内のコミュニティー形成を促す事業です。8月まで東京の表参道で実施していたコミュニティーコンポストが一例です。家庭ごみを堆肥(たいひ)化して、地域内での活用を目指します。10月からは千駄ケ谷へ活動場所を変えて続けていきます。

 そしてファーマーズマーケットを、東銀座や私の地元、千葉県佐倉市で行っています。さらにコミュニティーガーデン事業の実施に向けて調整中です。畑をみんなで共有して耕作して、野菜などの収穫物も分け合うシステムです。現在は東京・目黒区祐天寺にあるマンション屋上で準備を進めています。

 三つ目は「循環サービス」です。資源循環はモノの循環を、地域循環は人の循環を促進する事業ですが、この二つの循環を組み合わせた事業を提供するのが循環サービスです。

都市と地方も結びつける

——循環サービスは特徴的な事業に感じます。

 地域循環のデザインを考えていたときに、循環を都市部だけで完結させることは厳しいと感じたんです。都市部の人々と地方の人々といった地域間の結びつきが必要だと思いました。しかし空間的な隔たりが大きいと、商品コストがかさんだり人の交流が希薄になったりと課題ができます。モノや人といったリアルなものではなく、サービスとして提供しようと考えて循環サービスを始めました。

——社名にある「4」はどんな意味があるのでしょうか。

 一つは、自然のためにという意味の「for」。もう一つは、自然の元素といわれている「火土水風」の四つを表しています。公表はしておりませんが、弊社の事業として先ほどの3事業に加えて循環コンサルティング事業も行っているので、結果として、取り組んでいる事業数も表していることになりますが、これは偶然です。

循環サービスを表すイラスト=4Natureのホームページから

ボランティア化 絶対しない

——4Natureのミッションには「ビジネスの力で」とあります。環境改善活動と収益化の相性をどう捉えていますか。

 「ビジネスの力で」は私が大切にしている観点です。そもそも企業は社会をより良くするために経済活動をするわけです。世の中を良くすることに尽力しているのに、別の仕事で得た収入で生活をしなくちゃいけない社会の風潮に、私は納得できません。

 私たちの活動に対して喜ぶ人たちがいるならば、そこに収益が発生してしかるべきと思っています。私たちの活動に関わる人の生活を支えられるように、しっかり収益を生み出す仕組みを作っていきたい。ボランティア化することは絶対にしません。

大消費地から 社会にインパクト

——活動拠点に東京の表参道を選んだ理由は何ですか。

 表参道で事業をすることには特別な思いがあります。表参道は消費の一大地点です。だから、そこでコンポスト事業などの「消費で終わらない活動」を行うことは、社会に大きなインパクトを与えます。

——平間さんは人々の価値観の転換やコミュニティーを非常に大切にしていますね。

 会社を営む中で「自分が楽しんでやること」と「自分に近しい人たちが幸せになること」を第一に考えています。周りの人たちが幸福を感じ、その様子を見て私が幸せを得る。社会を変えるにはコミュニティーが最も大切だと思います。

コミュニティーコンポストのイメージ

ストロー大量 「やばいね、君」

——サトウキビストローとの出会いから事業化までの経緯を教えてください。

 ロサンゼルスへ留学したときに出会った台湾の友人から、生分解性のサトウキビストローを紹介してもらいました。その後、MBA(経営学修士)を取得するために海外へ行こうとしたとき「このストローの事業案を持って行ったほうが学びになるだろう」と思ったのが起業のきっかけです。

——サトウキビストローを販売するだけでなく、回収もしています。最初は一人で店舗を回っていたそうですが、続けられた原動力は何でしたか。

 行動していくうちに、飲食店とのコミュニケーションが取れていったことが一番大きいです。販売だけではビジネスライクな関係で終わってしまうかもしれませんが、回収まで行うことで店舗スタッフさんと密なお付き合いができるようになったと思います。普段より回収量が多い日には「ホントにその量を持ち帰るの? やばいね、君」とか言われたりしました(笑)。

売ることよりも ワクワクが大事

——一緒に取り組む仲間やネットワークはどのように作っていきましたか。

 友だちみたいな関係の人が多い気がします。ストローを売ることが目的ではなくて、そこから生まれるコミュニティーとか、その先にある楽しさみたいなものを作っていくというのを目的にしています。そのため「一緒にやれば楽しそうだな」とみんなに思ってもらえるのが大きなポイントです。

 回収のアプリも仲間に作ってもらって、喜びを感じてもらえる。もちろん対価もお支払いしていますが、みんなにワクワクして参加してもらえているのが大きい気がしています。

——大手信託銀行から転身して、不安や苦労が多かったのでは。

 大変なことしかありませんでした。輸入の経験なし、在庫管理の方法も分からず、飲食店を経営している知り合いもいない。苦労はしました。

 しかし、この状況をハンディとは全く感じませんでした。完璧な人間になる必要はないですし、むしろ完璧でないからこそ協力者が現れると思っています。

 また実際に人を頼りながら事業化したことで、コミュニティーが広がり、より強く確かなものになっていくと実感しました。苦労はしたけれど、得られたメリットは多かったと感じます。

【明日へのLesson】仲間がいるから遠くへ行ける

「意味あるの?」→「いいね!」

——今までの活動で、印象に残っている出来事はありますか。

 表参道のコンポスト事業に参加されていた女性ですね。初めは「この取り組みにどんな意味があるの?」と疑念を持たれていたのですが、2、3カ月後には「やっぱりこの活動いいね!」と言ってくれたんです。運営側も意図しなかった意識の変化がコミュニティーを通して起きていた。コミュニティーの価値を強く感じた出来事でした。

——自社の存在意義を感じる場面は。

 自分たちを取り巻く人たちからの声ですね。弊社はビジネスとして活動しているので、売上高などの数字からも自分たちのニーズを確認できています。ですが、サービスを提供している地域の人から「こう変わりました!」などの成果を聞くと、存在価値を実感します。以前、ファーマーズマーケットに来たご夫婦から「このマーケットのおかげで離婚せずに済みました」と冗談めかして言われ、うれしかったですね。

不要なモノはいらない 会社さえも

——ストローの使用量が減る社会を望みながら、ストロー事業で収益を得る。複雑な気持ちになりませんか。

 確かに、使用量が減ると売り上げも下がるので、もんもんとした感情にもなりますが、そもそも必要のないモノはなくなるべきだと思っています。そのため、ストローに執着した企業ではダメだと思いますし、そうする気もありません。

 世の中に必要とされることを探し、事業展開を行う。これが会社の役割と考えています。そして「減らしたいけど、売りたい」という矛盾と葛藤しながらビジネスをするのが楽しいです。「不要になったら、いつでもやめていいよね」ってマインドは常に持っています。

——世界全体が気候変動対策に本腰を入れるようになり、「人にフォーカスした経済」が色濃くなっている気がします。

 現在の資本主義が限界を迎えていることが、大きな要因だと思っています。例えば銀行業界なら、融資の判断基準は「返済のめどが立つか」が大きかったのですが、最近は(環境・社会・ガバナンスの要素も考慮した)ESG投資に見られるように「人を喜ばせる事業か」が重視されつつあります。

 逆に、これを明確にしないと、出資者はもちろん、働く人からも納得してもらえず、事業は頓挫してしまう可能性が高いと思います。

辺境の創造性 いまこそ発揮を

——アップサイクル品についての最新情報を教えてください。

 サトウキビ由来のカトラリーを、年内あるいは年明けにリリースする方向で準備しています。回収ネットワークなどに課題はありますが、最近、徐々にニーズが出てきているようなので、動きだすことにしました。

——若い世代へメッセージをお願いします。

 私の好きな言葉に「辺境の創造性」というのがあります。「クリエーティブ思考で革新をもたらすのは辺境地にいる人間のほうが多い」という意味なのですが、まさにコロナ禍で行動が制約されている今こそ、自分には何ができるかを考えて、できることから着々と実行してほしいです。

 今の状況だからこそ得られる発見や、可能なことはたくさんあります。今を悲観せずクリエーティブ思考で突き進んでほしい。そして、幅広い世代の人たちと意見を交わし、それを吸収して、自分を成長させていってください。

モノとともに思いが巡る社会へ
三嶋健太郎(DIALOG学生部)

 ビジネス化、経済的合理性、やって楽しい事業。平間さんが譲れない3要素であり、4Natureのコアだと思います。

 これらのワードを聞いたとき、私の頭の中では、話をしているフィールドが百八十度変わりました。「資源循環の普及を目指す環境活動家の話」改め、「地域循環経済圏を提供する経営者の話」に。

 サーキュラーエコノミー(循環型経済)はSDGs色が強いゆえ、この手のテーマに関しては、非営利で活動される組織が多い印象を受けます。富を嫌厭(けんえん)し、ボランティアを美徳として礼賛する風潮。しかし、平間さんは「社会のために尽力している人が、生活するために二重の労働をしなくちゃならない状況はおかしい」と指摘します。

 判断基準によって平等への評価は変わりますが、貨幣の根本概念「富=社会貢献の対価」に基づくと、平間さんの考え方は正当性があるように思いました。むしろ収益化を図ることで、サービスの質が向上し、協力者が次々と集まり、環境改善事業がより活発化することを、4Natureが示しているように感じます。

 循環型社会は自分の考えと行動が次の世代へ伝播(でんぱ)する社会。できることをやる。楽しくやる。受け取るべきものは感謝して素直にいただく。肩ひじ張らず自分を大切にしてこそ、いい流れができるのかもしれません。


平間亮太(ひらま・りょうた)

 1990年、千葉県佐倉市生まれ。大学卒業後に三菱UFJ信託銀行に勤めた後、2018年に株式会社4Natureを創業、代表取締役。アップサイクル商品の販売回収やコミュニティーコンポスト事業、ファーマーズマーケットを通して、都市部におけるサーキュラーエコノミーの醸成に尽力。また、同じくサーキュラーエコノミーによるサステイナブルな地域社会を目指す団体530weekに所属。一般社団法人ソメイノファーマーズマーケット代表理事。

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