私たちの総選挙レビュー! 選択を終えて何を考える?低投票率・争点のズレ…どうすれば:朝日新聞DIALOG

私たちの総選挙レビュー! 選択を終えて何を考える?
低投票率・争点のズレ…どうすれば

By 降矢桃佳(DIALOG学生部)

 SNS やニュースなどでは盛り上がっているように見えた総選挙。それなのに、いざフタを開けてみると投票率は低いまま……。

 「若者の投票率、このままでいい?」「みんな選挙を通して何を感じていた?」

 そんなモヤモヤを共有しようと、DIALOG学生部は総選挙の「復習」イベントを開きました。投開票から 1カ月。投票するときの判断の難しさ、政治を「自分ごと」として考えることへの課題などについて議論を交わしました。

 1日目はDIALOG学生部メンバーによる事前座談会。2日目は若者への政治参加を呼びかける活動を行っているゲスト2人を迎え、全体の座談会が行われました。どちらもオンラインで、政治について考えを深めました。

DIALOG学生部 このメンバーで議論!
遠藤文香、片野直人、黒澤太朗、鈴木優香、降矢桃佳、堀井香菜子

(左から)堀井さん、片野さん

DAY1:思ったこと まずは言ってみる!

投票は簡単なのに…なぜ?

 まずは、みんな選挙でどんなことを感じたのでしょうか。

遠藤 政治家たちの政策が、非現実的に感じました。コロナ対策や経済政策を強調していましたが、国民の声を反映しようという思いが伝わってこなかったです。一方、コロナ禍で支援が行き届いていなかった人も多かっただろうに、投票率が低かったことにも驚きました。

片野 投票した人が割引サービスを受けられる「選挙割」の実施や、芸能人の呼びかけ、SNSでの盛り上がりなど、若い世代を選挙に取り込もうとする動きはありました。でも、大きな結果にはつながらなかった。SNSや報道での呼びかけは、付け焼き刃感があるような……。

堀井 久しぶりに投票に行って、想像以上に一瞬で終わったことに驚きました。「選挙は面倒くさい」という意識が若者を選挙から遠ざけているのでは? 「投票は簡単」という発信が必要だと思います。

 それでは、どんな争点を重要視していたのでしょうか。

堀井 子どもや少子化対策を重視しました。夫婦別姓に関して、最高裁裁判官を国民審査で罷免する運動にも、周りでは関心を持つ子が多かったです。

遠藤 ジェンダーやコロナ対策です。長期的な政策を重視していました。

片野 長期的な政策という点では、今回の選挙中はそこまで議論が深まらなかったと感じますね。

Twitter・政見放送…見たけどさ

 新聞やテレビのニュース、街頭演説に加え、新たな判断材料も利用されたようです。

堀井 (投票するべき政党や候補者を選んでくれる)ボートマッチも使ってみました。自分の判断の答え合わせになりました。

遠藤 政見放送や討論番組を見ました。より詳しく知るためにHPもチェックしました。

片野 みなさん、投票の質が高い(笑)!

降矢 政見放送って見ていてあまり楽しくない。テレビ離れも叫ばれているし、若者向けではない気がします。

遠藤 見ている人も多くはないのかな。女性候補者を出演させるなど、政党の人選に対する意識は感じました。あとは、候補者のTwitterも見ていました。自分の悪い面を載せる人はいないけれど、人柄を知ることはできます。私の選挙区のある議員さんが自身の飼い犬について投稿をしていて、親しみやすさを感じました。一方、同じような投稿ばかりする候補者も。そういう人たちはマイナスにもプラスにもならなかったかな。

(左から)降矢さん、鈴木さん

地元の候補者 もっと知りたい

片野 若者の声が、本当に政治家に届いているのかな?と思うことがあります。

降矢 街頭演説を見ていても、ひかれる人がいない。話し方があまり刺さらないことが多いです。

片野 私が個人的に政治に興味を持ったきっかけは、田中角栄なんです。彼はだみ声で熱い話し方が特徴的。今は魅力的な話し方をする人が少ないですよね。

降矢 選挙全体の動きはニュースを見て分かっても、地元の候補者の情報を得るのはなかなか難しいなと思います。

堀井 そうですよね。政党の良しあしはニュースを見ていればある程度分かるけれど、自分の選挙区の候補者は比べるのが難しい。候補者を分かりやすくまとめた材料があればいいのに、と思います。

遠藤 興味のない人にとっては、候補者は選挙期間に突然現れる存在。短期間で候補者を選ぶのは難しいから、長期的なアプローチをやってほしいです。

片野 地元の政治家の方に、もっといろんな人を巻き込む努力をお願いしたいですね。

18歳では高いのに 継続させなきゃ

 それでは、どんな解決策があるでしょうか。

堀井 難しい……。普段から政治を身近に感じるような環境を整えること。それしか思いつかないですね。

遠藤 メディアの影響で、政治ってマイナスなイメージばかり。10万円給付のニュースも、バッシングばかりで喜びの声があまり出てこなかったように思います。ポジティブな政治の話題がもっと出てきてもいいのでは。

片野 若者の投票率について。18歳の投票率が高く、19歳になると下がってしまうというデータがあります。その結果、シルバー民主主義になってしまう。18歳で選挙権を得た若者に、いかに継続して投票に行ってもらうか。そういう取り組みがあってほしいです。

堀井 住民票のあるところでしか投票できないと思っている地方出身の学生も多いと思います。不在者投票などの仕組みが、もっと利用されるようにしてほしい。

年齢・性別 多様性が大事!

片野 候補者の多様性がなさすぎると感じます。女性や若い候補者の割合が、とても小さい。

降矢 多様性に富めば、興味を持つ人も増えるはずですよね。多様性は大事!

遠藤 まず、候補者の年齢層が高い。候補者の中にいろんな人がいれば、近い考えを持つ政治家を見つけやすくなると思います。

片野 日本では、50代でもまだ「若手」と呼ばれるくらい。男女比に関しても(一定の人数や割合を義務づける)クォーター制などの制度が導入されてほしいです。

ボートマッチ怖い だって

 若者のメディア離れ、政治を判断する材料の不足。ボートマッチの話題も出ましたが……。

降矢 ボートマッチは判断材料の一つになる。政治に興味のない人の入り口の役割にもなるし。次回の選挙以降、より工夫されたものやツールが増えるといいなと思います。

堀井 私も使ってみて、増えそうだし参考にはなりそうだと思いました。ただ、判断経路を単純化することで人が思考しなくなりそうで、怖いなとも感じます。

片野 確かに。私は、自分での判断とボートマッチの判定が異なっていました。便利である一方、判断は個人の政党への先入観も作用するのだと思いました。政治を判断するというよりも、政治に興味を持たせるための役割、という要素のほうが強いのかもしれないですね。

(左から)黒澤さん、遠藤さん

DAY2:政治を若者の手に! 2人を招いて

誰を選べば…自信が持てない

 さあ、2日目です。ゲストは、NPO法人カタリバに所属し、中高生を対象にした主権者教育をテーマに活動する古野香織さんと、「政治を、わかりやすく。」をテーマに掲げるPOTETO Media代表の古井康介さんです。

 論点が乱立する中、どうしたらよい判断ができるのでしょうか。使った判断材料、選ぶ際の苦労について語ります。 まずは、DAY1で話した内容から。

堀井 自分の選挙区の候補者を選ぶのが難しかった。選挙になって初めて知るような人ばかりで、政党を選ぶのは簡単でも、人を選ぶのは自信が持てない。

遠藤 Twitterなどでプライベートや内面も知ろうとしましたが、最後まで自分の選択に自信が持てなかった。

古井さん

そんなに重荷? マジメすぎない?

 なぜ、こんなに判断するのが難しいのでしょう。

古井 発信する側が、分かりやすく発信する努力を怠っている、という点もあると思います。今までは紙で発信することが多かった。しかし、今は SNS の時代。候補者やそのスタッフは SNS で発信するプロではないから、ピントがずれる、ということが発生しやすいですね。

 学生の話から、票を投じる候補者選びに苦労している若者が多い、という結果が浮かび上がってきました。そこでゲスト2人から鋭い質問が。

古野 「一生懸命考えて投票しないと!」というプレッシャーを感じている若者が多いように感じます。私が行ったカタリバの出張授業でも、マジメに考えすぎて逆に選挙に行かない、という人が大量にいました。この責任の重さが、若者を選挙から遠ざけている一因なのかな……。 どんな原体験があって、そこまで重くなっちゃったの?

「正しい判断」なんて必要?

古井 そもそも「いい判断」をする必要はあるんでしょうか? 世間からのプレッシャーが若者をそうさせているのなら、別にその必要はないと思います。政策で判断しなくてもよくて、人やスタンスで選ぶのもあり。みなさんが、そうなってまで「正しい判断」「いい投票」をしたいと思うのはなぜでしょうか?

片野 選ぶなら、ちゃんと考えた上で選びたい、という思いがあります。努力をしないとダメ、という意識が自分の中にある気がします。

古野 なるほど。私は今行っている校則見直しプロジェクトで気になったことがあります。今までマルをもらうための勉強をしてきて、正解を積み重ねることばかりに努力してきた子が多いと思うんです。そしていざ投票となると、気負いすぎてしまう。不確かなものに「?」を追究する教育が足りていないと感じます。

古野さん

投票した人が落選したら…

 ここで、例えば自分が票を投じた人が落選したら自分の判断は間違っていたと思うか?という問いが。学生部のメンバーで「間違っていたと思う」と答えた人はいませんでした。

鈴木 自分の一票が大きく影響するとは思っていません。(自分の判断は世の中と違ったけれど)今の社会はこうなのか、とだけ受け止めるかも。

黒澤 自分の判断と、現実の政治を切り離して認識している部分があります。ただ、そうではない人は「せっかくエネルギーを使って投票したのに、自分の意見は反映されないのか」と感じてしまうのかも。

古井・古野 「自分の一票は効力を発揮しない」と分かっているのに投票するのはなぜなのか、気になります。

ロッテが負けたら 悔しいけど

鈴木 「参加することに意味がある」というアメリカ留学中の言葉が胸にあります。大統領選期間に現地の学生に言われ、納得しました。正しい選択をするために頑張るより、そういうことだよな~と。

堀井 日々のニュースを見ていて、投票に行っていないのに文句を言うのは筋が違うかなと(笑)。

黒澤 投票した人が落選しても、あまり悔しくない。千葉ロッテマリーンズが負けたら悔しいけど……。一喜一憂するような候補者がいないのかな?と思います。

古野 なるほど。めちゃくちゃ好きな政党があって、そこに投票した人はいるのかな?(みんなの反応を見て)いないのね……。カタログから「強いて選ぶならこれ!」みたいな感じなのかな。

政治の話 白い目で見られる

古井 ここにいる人たちは、政治に関心がある若者に属すると思う。だけど、義務感から投票に行ったり、選挙結果に一喜一憂するわけでもなかったりする人が多い。「政治に関心がある」という認識はどの程度のものなのか、気になります。

鈴木 私も日々のニュースに文句ばかり垂れているから(笑)選挙に行かないのは違うかなと。だけど、日々の会話で政治の話はしないし、しても白い目で見られることがあります。「意識高い系」だと思われてしまう。若者が若者を選挙に行かせない、同調圧力のようなものがあると思います。

「目指せ!投票率75%プロジェクト」によるネットアンケート結果から

Z世代の関心 ここです!

古井 政治と生活が地続きになっていない人が多い。子育てや介護の経験があると、改善を求めて投票する人が増える。20代は政治課題を感じる人が少ないのでは? 気候変動や、ポリティカル・コレクトネスの話のほうが熱くなれるのかな。

黒澤 僕の周りでは、夫婦別姓、気候変動に対する意識が高い人が多かったです。

片野 夫婦別姓に興味はあるけど、政権をひっくり返すほどのエネルギーはなく、「そこじゃない感」がありました。やはりワンポイントでは大きく変わらないのだと感じます。

古野 Z世代の発言力が、まだまだ弱いのかな。報道でも、Z世代にとって関心があることが、あまり取り上げられていないと思います。

意見を言えば 何かが変わる

 若者を取り巻く政治要因について、議論が白熱。テーマは若者の教育に移ります。

片野 若者ほど与党に投票するというデータがあります。「与党に投票すればコスパがいいからだ」という視点も。若者は選挙・政治を身近に感じていないのではないでしょうか。

古野 「参加することに意味がある」とはいえ、自分の意見に価値があると思える子が少ないと感じます。自分が何かを言って変わる、意思決定の場にかかわる、という経験をしたことがある子があまりいません。みなさんがどんな教育を受けたかったか、聞きたいです。

古井 私も、政治家の意見を若者に届ける場をつくる活動をしています。もともと若者に全振り(注力)した政治の取り組みが少なかった。政治家の話を動画にまとめて発信するなど、政治家と若者が双方向でコミュニケーションできる場づくりに取り組んでいます。

降矢 高校時代、模擬選挙を行った結果、実際の世間の結果と校内の生徒の結果が全く異なっていました。そのとき私が感じたように、若い人が「自分たちが世に出たときに変えなきゃいけない」と認識できる機会があると面白いと思います。

陸上部 つくろうとしたけど

遠藤 私は高校時代、陸上部をつくろうと署名を集めても結局、実現しなかった。そこで、やっても意味がない、反映されないという諦めが生まれてしまいました。今でも投票と結果を別で見てしまいます。だから、古野さんが行っているような体験はすごくいいなと思います。

鈴木 マルをもらうための教育に関連して考えたのが、自分の選択が間違ってもいい、という雰囲気や環境の必要性です。そういうものがあれば、投票に関してもハードルは下がるのではないでしょうか。テレビや教科書を見ていても、政治は大人の男の人というイメージがあります。その環境が変わる必要もあると思います。

古野 教科書におけるロールモデルの影響のデータも、実際にあります。そう考えると、この会の男女比は素晴らしいですね(笑)。 ※参加者は男女ほぼ半々。

凝り固まっていた考え ほぐれた

 座談会は終了。みなさんの感想を聞いてみましょう。

遠藤 同世代で政治の話をする機会はほとんどないので、貴重な機会になりました。これからも定期的に開催してほしい。

堀井 ゲストの2人に「どうして、そこまでちゃんと考える必要があるの?」と聞かれてびっくりしました。凝り固まっていた自分の考えが、ほぐれました。

古野 みなさんに政治がどう見えているのか、まなざし、原体験に興味があります。また赤裸々に話してほしいです。

選挙は終わらない だから議論を
降矢桃佳(DIALOG学生部)

 私が若者をめぐる選挙課題に目を向けるようになったのは、一連の投開票が終わってからです。画面上で盛り上がっているように見えた投票活動と実際の数値との差に、ショックよりも疑問を感じました。

 私たち学生が、どれほど政治の話を日常的にしていないのか、今回の座談会で明確になった気がします。意見を交わしてみないと分からないことがある、話を聞くことで見えてくるものがあるのだと実感しました。

 私たちには、普段感じているモヤモヤがたくさんあるのだと気づきました。議論は白熱し、予定していた1時間半では全然足りなかったです。

 今回の座談会で、投票することに高いハードルを感じている若者が多くいることが分かりました。良い意味でも悪い意味でも、責任感の強い若者が増えているのではないでしょうか。

 選挙はこれで終わりではないし、これから私たちが社会を担っていく番です。政治について、もっとラフに議論できる社会にしたいです。

政治を気軽に話そう この日が一歩
イベントを企画して——片野直人(DIALOG学生部)

 コロナ禍で、若い世代は今までよりも政治の影響を受けたはずなのに、今回の衆院選で若者の投票率が低かったことに衝撃を受けました。このままでは若者の意見が反映されない社会になるのでは……。そんな不安が今回の企画の原点です。

 企画当初、若者が政治参加をしないのは社会の側に大きな原因があると考えていました。今回の選挙でも、若い世代が関心を持つテーマを政治やメディアが争点としていなかったからです。

 しかし、若者は政治を難しく考えすぎていて、それが若者から政治を遠ざけているのでは?というゲスト2人の言葉に、私たち若い世代の責任も感じました。

 政治を難しく考えず、どのように身近に感じてもらうかが今後の課題です。

 このイベントの参加者の多くが「同世代で政治を話す機会はほとんどない」と言っていました。でも、いったん話し出すと、日ごろの問題意識や、どうしたら解決するかといった一人ひとりの思いがあふれ出しました。このような、政治を気軽に話し合えるコミュニティーを、社会の様々な場で作ることが必要だと感じました。

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