

社会を変えるSDGsアクションのアイデアを競うコンテスト「SDGs Quest みらい甲子園」の2021年度首都圏大会ファイナルセレモニーが3月26日、浜離宮朝日ホール(東京・築地)で、オンライン配信とのハイブリッド形式で開催された。応募総数196チームから選出されたファイナリスト12チームの一部メンバーが集合。各チームの発表・表彰式に続いてワークショップも開催され、2030年の主役である若い世代が、SDGs達成への思いを一層深める機会となった。
SDGs Quest みらい甲子園 高校1・2年生(中高一貫校は中学生も可)がチーム制で、SDGs達成に向けたアイデアプランを競う。持続可能な社会の担い手を育てることを目的として、2019年度から開催。首都圏大会は、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の高校生が対象。
※受賞者は「学校名(都県)チーム名」で紹介します。

SDGs Quest アクションアイデア最優秀賞
一枚の地図から新たな気づきを —ロゲイニングを活(い)かしたまちづくり—
関東学院高等学校(神奈川)ヨコハマ探検隊
地図を使ってチェックポイントを回り点数を競うスポーツ「ロゲイニング」に着想を得たという本チーム。まず、学年のみんなで「多様性と共生」をテーマにした独自のロゲイニングマップを作成した。チェックポイントとしたのは、点字ブロックや車椅子対応の電話ボックスなど105カ所。実際に街を歩いてみると、見逃していたものの多さに驚いたという。
今後は、障がい者・高齢者の「擬似体験」と、「ロゲイニング」を組み合わせたイベントの開催を目指す。参加者の当事者意識の醸成を図るとともに、設備の改善点を自治体などに提案することで、誰もが住み続けられるまちづくりに貢献したいという。メンバーの黒田百合美さんは「いろいろな立場の人のことをみんなが考えられる社会になれば」と活動に込めた思いを語った。

アクションアイデア優秀賞
Spotlighting Refugees
筑波大学附属坂戸高等学校(埼玉)MINTH
日本は難民の認定率が先進諸国と比べて極めて低いこと、さらに、日本ではそもそも難民問題に対する関心が低いということに着目。「日本の難民問題を知ってもらう」ためのアクションを起こした。
昨年10月には、日本に住む難民当事者を招いてオンラインでのディスカッションイベントを実施。さらに12月には、難民ドキュメンタリー映画『東京クルド』の上映会と、監督のトークイベントも開催。地域住民も大勢参加してくれたという。
難民の受け入れには課題も多いが「日本の労働力不足の解消や国際社会での信頼の高まりにも寄与するはず」と考えている。代表の田沼樹さんは「今夏には、難民の民族衣装のファッションショーを開催予定。難民問題に取り組む人は少ないので頑張りたい」と話してくれた。

ファーウェイ賞
児童教育を通して考える多様化との向き合い方
国際基督教大学高等学校(東京)イナズマシックス
メンバー全員が帰国子女という本チームは、自らの経験から「国際理解教育」の重要性を実感。子どもたちに、文化や考え方の違いを肯定的に受け入れてほしいと、児童向けの交流会を開催した。交流会では専門家に取材して得たアドバイスをもとに、海外にまつわるクイズ、体験談のシェア、海外旅行の擬似体験などを実施。代表の村山璃桜さんは、「小学生たちが興味を持ってくれて手応えは十分。今後も小学校や児童館を訪れて活動を続けていきたい」と話した。

審査員特別賞
廃油のアップサイクルを通じた循環社会への探究
三田国際学園高等学校(東京)ænoia
家庭から出る廃油の9割は廃棄されていること、洗剤の原料となるパーム油の生産が森林伐採の原因となっていることに注目。家庭から廃油を回収して洗剤を製造し、それを再び家庭に届ける事業を考案した。
すでに、洗剤メーカーが廃油由来の洗剤のサンプル作りに着手。食品宅配会社でのテストマーケティング実施も決定している。メンバーの野口璃羅さんは「洗剤の試作に何度も失敗したり、いろいろと批判されたりもしたが、立ち上がって続けてきてよかった」と喜びを語った。

審査員特別賞
行動しないSDGs
東京学館浦安高等学校(千葉)ちゃた~ん
「SDGsについて学んだ後も何も行動に移せなかった」という自分たちの経験を生かし、「意識せずに楽しく取り組める」ことを重視した「発電公園」を提案。国内外の事例を参考に、発電できるブランコやシーソー、入れたくなるゴミ箱などを設置する想定。さらに日々の天気予報のように「SDGs達成度」を発信することで、活動の広がりを目指す考えだ。代表の田村杏佳さんは「今回のアイデアを考案する際に知った行動経済学を大学でも学んで、私もいつか社会の役に立ちたい」と抱負を語った。
社会を変えるには私たちが変わらなければ
東京都市大学大学院環境情報学研究科 佐藤真久教授

日本のSDGs達成度のランキングは近年悪化しています。その理由の一つが、コミュニティーや男女、官民などの「分断」だと考えられます。人と人、アイデアとアイデア、そして過去とこれからが、動的・包括的につながり、従来のあり方を改善していくことが求められています。
私が好きな言葉に、マハトマ・ガンジーが言ったとされる“Be the change you want to see in the world”(見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい)というものがあります。SDGsの本質はまさに「変容」であり、「社会を変える」ためには「我々が変わる」ことが大切です。今日のこの賞は、獲得することがゴールではありません。みなさんが、これからの社会をつくる変化の担い手として、SDGsの活動を続けてくれることを期待しています。(SDGs Quest みらい甲子園首都圏大会実行委員長)
アイデア実現のために周りの人を巻き込んで前へ
ファーウェイ・ジャパン 田島幸治広報部長

1次・2次審査の過程では、審査員の先生方の間で非常に熱のこもった話し合いが行われました。ファイナリストのみなさんは、鋭く厳しい審査を経て選ばれたことを誇りに思ってほしいと思います。特に、アイデアを実現するために、行政や企業、地域のお店など、周りの大人を巻き込んでいこうという姿勢が見られたことには好感が持てました。みなさんの素晴らしい発想力や行動力を、今後も思う存分、発揮してくれることを願っています。
私たちファーウェイも、デジタル人材の育成、野生動物保護、地球温暖化防止、途上国の教育問題など、様々な国や地域の様々な分野でSDGs達成に向けて力を尽くしています。2030年に向けて、これからもみんなで一緒に進んでいきましょう。
ファイナリスト アイデアこんなに
ボナペティ小金パン~地産地消、地元の特産品のブランド力をあげよう~
千葉県立小金高等学校(千葉)チームインディペ2021
地元・松戸の紅あずま農家と、近隣のパン屋の協力のもと、高校生プロデュースのおいもパンを販売した。今後、特産品のブランド力向上や地産地消の広がりを目指す。
COSBIOシステムの利用〜地球の未来は私たちの未来~
聖園女学院高等学校(神奈川)acqua
食品廃棄物や生ゴミ、し尿などと下水汚泥を混合消化し、バイオマスエネルギーを回収する「COSBIOシステム」に着目。SNSでの情報発信により機運を高める。
プラスチックを削減しよう!~サトウキビのバガスが大変身~
中央大学杉並高等学校(東京) グローバルプロジェクトA
デリバリーサービスの利用増などによるプラスチック容器の廃棄量の増加を問題視。サトウキビの未利用資源・バガスを使った環境負荷の少ないおしゃれな容器を提案。
未来へ繋(つな)げるファッションのあり方~廃棄残布と廃棄食品によるNEWファッション~
香蘭女学校(東京)nkコーポレーション
洋服にする前に捨てられる廃棄残布が、年間約500万トンにも及ぶことに注目。これを再利用し、廃棄野菜などで染色。人にも環境にもよい衣類産業への変革を目指す。
学校電力の地産地消 (57×34741=1980237)
東京都立上水高等学校(東京)ペロブスカイト太新天地班
学校の屋上・壁面に「ペロブスカイト太陽電池」を利用することを提案。1校あたり発電量57世帯分×全国3万4741校で、198万237世帯分の年間の電力を賄えると試算。
圧電素子の調査・研究~(圧電素子)+(既存の製品)=???~
お茶の水女子大学附属高等学校(東京)地球環境科学:発電班
圧力を加えると発電する「圧電素子」を組み込んだ製品(スリッパ、グローブ、傘、床など)の普及により、電力消費量の削減、途上国との電気格差の解消を目指す。
孤独死と空き家問題を同時解決!~地域コミュニティの活性化と共に~
立花学園高等学校(神奈川)となりのトトロ
高齢化やコロナの流行で「孤立死」や「空き家」の問題がより深刻化することを危惧。空き家をリノベーションし、住民の憩いの場として活用することを提案。
※本イベントは、感染症対策に十分留意し開催しました。
受賞校の発表内容は公式サイトでご覧いただけます。
主催 SDGs Quest みらい甲子園首都圏大会実行委員会
共催 朝日新聞社メディアビジネス局
後援 国連広報センター、ジャパンSDGsアクション推進協議会、千葉県、埼玉県、神奈川県、千葉県教育委員会、埼玉県教育委員会、神奈川県教育委員会、八王子市教育委員会、横浜市教育委員会、一般財団法人 東京私立中学高等学校協会、JICA東京、JICA横浜
審査協力 一般社団法人SDGs大学
企画・総合プロデュース SDGs.TV
特別協賛 HUAWEI