シリーズ企画「声の力」 イントロダクション視覚障害とともに生きるということ:朝日新聞DIALOG:声の力
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「声の力」プロジェクト

2019年09月06日公開

シリーズ企画「声の力」 イントロダクション視覚障害とともに生きるということ

Written by 二宮永里那 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル

朝日新聞DIALOGはこの夏、新たなシリーズ企画「声の力」を始めます。障害者による芸術表現を推進する文化庁と連携したプロジェクトで、視覚障害のある高校生たちがプロの声優から声による表現方法を学び、自身の可能性を広げることを目指します。レッスンを重ね、ラジオドラマを制作するのが最終目標です。

このシリーズのイントロダクションとして、視覚障害のある大島康宏さん(22)にインタビューしました。大島さんは今春、朝日新聞社に入社し、販売局販売管理部で勤務しています。視覚障害者としての日常や、働くなかで思うことなどについて聞きました。

鳥瞰図をイメージしながら歩く

—— 3歳のとき視神経に病気が見つかり、視力を失ったそうですね。視覚障害をどのように受け止めましたか?

僕は、右目は見えず、左目の視力は0.01です。気がついたらそういう状態でしたので、つらくて落ち込むといったことはありませんでした。

—— 「声の力」プロジェクトでは、人気声優が四つの視覚特別支援学校(盲学校)に出向き、生徒たちに声のレッスンをする予定です。この特別授業の第1弾は、筑波大学附属視覚特別支援学校(東京都文京区)で行います。大島さんは小学校から高校までそちらで学んだそうですが、どんな学校ですか?

国立大学法人に付属する日本で唯一の盲学校で、当時は、小学校は1学年6人ぐらい、中学校でも12〜13人、高校は17〜18人ぐらいでした。少人数なので先生の目が行き届いていて、いろいろと指導してくれました。普通学校とは違って「自立活動」という授業があります。白杖を使った歩行の練習では、どうやって点字ブロックを探るか、どうやって道順を覚えるか、階段の上り下りをどうするかなどを教わりました。そのほか、料理など基本的な生活方法も教えてくれました。

—— 白杖を使って歩くのは難しそうですが、どのような点に注意していますか?

僕の場合、空間が広がっていることくらいは分かります。それで判断して、何番目の角を曲がるか、といったことを覚えていきます。二つ目の角を曲がればここに行けるとか、あと何歩進むとあの場所に着くといった具合に、頭の中で鳥瞰図をイメージしながら歩いています。音で判断することもあります。例えば、交差点やT字路は音が広がるので、どのような場所なのか認識できます。

—— 初めての場所に出かける際は、どのようにしていますか?

電車の乗り換えなどは事前にネットで全部調べます。Google マップも多少はしゃべってくれるので、初めての場所にもどうにか行けますね(笑い)。旅行が好きで、1人で出かけることも少なくありません。大学2年の夏休みには、カナダの大学に1カ月間、語学留学して、大学の寮で暮らしました。

街づくりの視点で社会の役に立ちたい

—— 高校卒業後は、興味に応じて鍼灸や音楽などを学べる附属の専攻科ではなく、立教大学へ進学しました。

盲学校は狭い世界なので、普通の大学に進みたいと思いました。入学後は、周りの学生に障害のことをわかってもらうまでが、ちょっとつらかった。みんな、障害者への遠慮みたいなものがあって、どう接すればいいか、どこまで踏み込んでいいかが分からなかったようです。僕のほうから周りの学生に自己開示して、助けてくれるようにお願いしていったら、つながりができました。

—— 学科はどちらですか?

コミュニティ福祉学部のコミュニティ政策学科です。もともと社会福祉を学びたかったのですが、僕も視覚障害以外の障害のことはよくわかりません。そこで、視野を広げて街づくりを勉強すれば、政策や社会教育も学べるし、最終的には福祉にもかかわれて、住みやすい環境がつくれるのかな、と考えました。大学では、東日本大震災の復興を支援するボランティアサークルの代表を務めました。映画に視覚障害者向けの音声をつけて上映するサークルでも活動しました。

—— 新聞社に入ったのはなぜですか?

大学で街づくりを勉強していたので、最初は地域づくりをするディベロッパーへの就職を考えましたが、合同説明会で、新聞社には記者職以外にも展覧会などを担当する事業部などがあることを知りました。そういう部署なら社会教育にもかかわれるし、最終的に一人ひとりの学びの価値観が変わっていけば地域もよくなる、と思って応募しました。

—— 同僚や取引先など仕事でかかわる人たちを、どのように覚えていますか?

人は名前と声をセットにして覚えますが、会社ではかかわる人数が多いので、職場でよく会話する人でも、別の場所で会うと分からなくなることもあります。年の近い人かなあと思いフランクに話していたら、後で部長や課長だったと気づくこともあります(苦笑)。社外の人は、会った場所とリンクさせます。役職もシチュエーションとセットで覚えています。

話しかけられるとうれしい

—— 仕事では、パソコンなどのデジタル機器をフル活用しているそうですね。

スマートフォンとパソコン、そしてテキスト情報を点字に変換してくれる「ブレイルセンス」という音声・点字携帯情報端末をいつも持ち歩き、必要に応じて使い分けています。アウトルックやワードなどには読み上げ機能があるので、普通に使っています。名刺を撮影すると文字起こしをしてくれるアプリなどもあるので助かります。最新のアプリについては、盲学校の同級生から教えてもらうこともあるし、自分でもときどき調べて、気になったものはインストールして試してみます。

音声・点字携帯情報端末「ブレイルセンス」

—— 視覚障害のない人が、視覚障害のある人とコミュニケーションを図るには、どれくらいの距離感がいいのでしょうか?

僕は、とにかく話しかけていただいたり、興味を持ってもらえたりすることが一番うれしいです。分からないことは何でも聞いてほしいと思っています。自分のことを理解してもらえると、自分にできないことがあったときに「お願いします」と頼みやすくなりますから(笑い)。

インタビューを終えて

DIALOGの学生記者の二宮永里那です。前向きな姿勢で、新しいことに挑戦していく大島さんの姿がとても印象的でした。インタビューでは、素朴な疑問から、視覚障害者との接し方といった、ちょっとセンシティブなテーマまで、たくさんの質問に率直に答えてくれました。この夏は高校野球関連の業務で忙しかったそうですが、「声の力」プロジェクトにもかかわる予定です。大島さんの挑戦はこれからも続きます。

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