
「声の力」プロジェクト
2020年02月07日公開朝日新聞DIALOGは昨年夏から、シリーズ企画「声の力」を続けています。視覚障害のある高校生たちが、プロの声優から声による表現方法を学ぶことで、自身の可能性を広げることを目指すプロジェクトです。
その一環として、筑波大学附属視覚特別支援学校高等部と筑波大学附属高等学校(いずれも東京都文京区)の生徒10人が1月に合宿を行い、声優の指導を受けてラジオドラマを制作。文化放送の番組「青山二丁目劇場」でオンエアされます。放送予定は2月10日(月)午後8時30分〜9時です。
本編の収録には、ラジオドラマに出演した生徒2人も参加し、感想を語りました。また、特別授業で講師を務めた声優が全員集まり、思いがけない企画で生徒たちを喜ばせました。いったい何が行われたのでしょうか。
東京にうっすらと雪が積もった1月28日、文化放送のスタジオに、「青山二丁目劇場」の「支配人」を務める古川登志夫さんが入りました。その後に続いたのが、水田わさびさん、岩田光央さん、山口由里子さん、磯部弘さん。いずれも「声の力」で講師を務めた声優です。5人とも青二プロダクション所属ですが、普段は多忙を極めているため、一堂に会するのは極めてまれなのだそうです。
この日、5人は、生徒とリスナーに贈るサプライズ企画を用意していました。それは、生徒たちと同じ台本でラジオドラマを収録し、番組でオンエアすること。つまり、プロの声優が高校生たちと番組の中で“競演”するのです。
リハーサルを終えると、すぐに本番が始まりました。ナレーター役の磯部さんの優しい語り口から始まったラジオドラマが、名だたる声優たちによって彩られていきます。声量や滑舌、抑揚、表現力など、その演技はまさに圧巻。番組出演に備えてスタジオ入りしていた高校生2人も、あまりの迫力に思わず息をのみます。
30分ほどでラジオドラマの収録は終了。続いて生徒たちがスタジオに入り、古川さんとともに「青山二丁目劇場」本編の収録に臨みました。番組は、古川さんの質問に生徒2人が答えるかたちで進みます。そのなかで、生徒たちが出演したドラマが紹介されました。音楽や効果音の入った完成版を初めて耳にした2人は、照れながらもどこか真剣な表情で、スピーカーから流れてくる自分の声に耳を澄まします。 最初は緊張気味でしたが、古川さんの巧みな話術に導かれ、授業の感想や印象に残ったことなどをしっかりと語りました。
収録に参加した視覚特別支援学校高等部2年の田邊和馬さんは、「いつも聞いているラジオに自分が出られて本当にうれしかったです。声優さんの演技は迫力がすごかったし、アニメとかで聞いている声がそこにいらっしゃる、というのが感動的でした」と興奮を隠せません。附属高等学校2年の藤井泰斗さんは、「声の演技は初めてだったので最初は不安でしたが、合宿を通して新しい友達もできたし、すごく貴重な経験になりました。自分から能動的に参加したことや、いろんな人とかかわれたことは、今後に生きると思います」と確信を込めて言います。
古川さんは収録後、今回のプロジェクト全体を振り返り、「最初に、このお話をいただいたときは、レッスンをどうやろうかと悩んだのですが、始まってみるとすんなりいきました。生徒さんたちの素直な表現がすばらしくて、涙を誘われました。私たち声優にとっても、勉強になることが多かったです」と話しました。また、水田さんは「生徒たちがすごく積極的だったのがうれしかった~。明るい表情を見ることができましたし、みんなの将来が本当に楽しみです」と笑顔で語りました。
高校生10人と豪華声優陣が計3チームに分かれて演じたラジオドラマ『異世界食堂』は、文化放送「青山二丁目劇場」でオンエアされます。放送は2月10日(月)午後8時30分〜9時の予定です。ぜひ、お聞きください!
「声の力」プロジェクトとは
文化庁の「平成31年度 障害者による文化芸術活動推進事業」として、視覚障害児が声による伝え方の多様性を学ぶことで、自分の可能性を再発見することを目指すプロジェクト。文化庁と朝日新聞社が主体となり、株式会社青二プロダクション/青二塾と株式会社主婦の友インフォス(「声優グランプリ」編集部)の協力を得て進めている。